○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。お二人の参考人、ありがとうございます。

まず、浅野参考人に、参議院の独自性というふうに言われる議論の仕方について、まず御意見を伺いたいと思うんですけれども。

冒頭の意見陳述の中で、特色というふうにあえて言葉を選ばれたのかなというふうに思うんですが、御指摘のあったとおり、衆議院も参議院も国民代表機関として同等なのであって、参議院の独自性を余りに強調し過ぎて、衆議院との役割分担、機能分担ということになっていくならば、大原則である衆参それぞれの院が最高機関として本来の責務を果たす、今、特に話題になっています国会の民主的統制の問題でも、あるいは予算、決算なんかの問題でも、そうした本来の民主的統制、本来の民主的政治的過程という、そうした在り方が損なわれてしまうのではないか。私は、もう少し言うと参議院が国会として堂々と審議を尽くす、国民代表機関として政府を監視する、こうした在り方がとても大事なのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

○参考人(浅野善治君) 独自性ということではなく特色という言い方をしたわけですけれども、衆議院、参議院がそれぞれ独立だと言われるわけですけれども、全く独立の国家機関として存在しているわけでは実はないんですね。やっぱり国会という一つの機関の中の両議院ということになるわけですから、衆議院が独自の行動を取るとしても、参議院の行動というものを常に意識をしながら衆議院の意思決定がされるということは当然のことでありまして、参議院もまた同様に、参議院で意思決定をしていくに当たって衆議院の動きというものを常に意識して決定をしていくというのも、これまた当然のことになるわけですね。

その中で、じゃ、衆議院と参議院どう違うかといったときに、先ほどお話しいたしましたように、政権に対してその賛否をということ、これはもう衆議院の方が圧倒的にその特色を持っているということだろうかと思います。ですから、そういった意味で、政権に対する賛否の議論というのは衆議院が尽くせばいいわけですね。これは、そういったことをどんどん尽くしていただくというのもやっぱり衆議院の特色なんだろうというように思います。

それとは違って、参議院は、じゃ、どういう形で、その政権の賛否ということ以外に国政の決定ということでどういう役割を果たしていくべきかといったときに、やはりそれはその政権の賛否というよりは、そこにある政策自体の議論をするということに意味があるんじゃないかと。それを堂々として、国権の最高機関としての国会あるいは立法機関としての国会の役割としてそれを生かしていく、あるいは行政監視、行政監督、行政統制権の中でそれを生かしていく、それこそが参議院の特色じゃないか、そういうふうに思って特色という言葉を使わせていただいたわけです。

○仁比聡平君 よく考えたいと思います。

荒井参考人が、先ほど御説明は割愛をされたんですけれども、いわゆる政治的美称説の再検討が必要というふうにテーマを掲げておられて、私が申し上げた問題意識とかみ合うかどうかはちょっと分からないんですが、憲法の最高機関性をどう考えるべきなのかという点についてお尋ねしたいと思います。

○参考人(荒井達夫君) 政治的美称説という言葉自体が私はとても嫌いです、美称だなんという。これはどの学者の方が言われたのかはっきりはしていないみたいなんですが、こんなことを言ったがために国権の最高機関というものがどんどん意識されなくなってしまったんじゃないか。法的な意味合いはないという意味ではそうかもしれませんが、その政治的な意味合いって物すごく重要だということをすごく強烈に主張すべきだっただろう。

そして、今大事なのは、法を誠実に執行するという意味で国権の最高機関というのが大事になっているんじゃないか。それは、法というのは、法律を誠実に執行する、これは憲法に書いていますが、それ以前に憲法を誠実に執行するということです。そのために参議院はできることがあるのではないかというふうに私は思います。そういう意味で、政治的美称説というのを見直すべきではないかと。行政監視を通じて得た経験であります。

○仁比聡平君 法とは、王様や独裁者が国民を支配するための道具ではない、個人の尊厳を始めとして憲法の原則を貫いていくこと、それが法とそして立法機関、最高機関としての国会の役割だと私は思うんですね。

続けて、荒井参考人に、これも私の問題意識とかみ合うかどうかは冒険なのですが、三番目に挙げられた参議院の憲法保障機能と議会拒否権制度の研究という点で、委任政令の統制の在り方が問題であると。特に災害対策基本法、特定秘密保護法というふうに挙げておられますが、どんな問題意識でしょうか。

○参考人(荒井達夫君) これは先ほどちょっとお話ししました。私は非常事態と憲法という資料を作ったんですけど、そのときに感じたのは、現行法が執行されてない、全然執行されてないというのは変だな、東日本大震災でも執行されていなかったのは何でなんだろうと。やっぱり使い勝手が悪いというところがあったんじゃないかと思っていたら、そういうことを言っている政府部内の人たちが確かにおりました。

ただ、それを一生懸命やっていくと、どんどん強い内閣ばかりになっていっちゃう。強い内閣、強い内閣になっていく。だけど、強い内閣には強い国会が対応しなければなりません、権力分立という意味では。それじゃないと民主国家は成り立ちません。そこのことをきっちり考えなきゃいけないというのが、議会拒否権制度を研究しなきゃいけないということです。その場合に、内容としては委任政令の統制というのが非常に重要になってくるだろうと。災害対策基本法もそうですし、ほかの非常事態の規定ももちろんそうなってくると思います。

それから、非常事態に対応するためには、通常時から強い国会であらねばならぬと私は思います。そこのところの研究が必要だと思います。そうでなければ人権保障というのが物すごくおろそかになる。

特に、経済的な自由というのは積極的に制限する必要というのはあるかもしれません、災害のときには。道路を閉鎖したり、自動車を排除したり、場合によっては家を壊してもらって協力してもらうとかということもあるかもしれません。でも、精神的自由、報道の自由とかというものは、これは絶対にやってはいけないんじゃないかというのが私の思いです。それをやってしまったら民主主義国家というのは終わってしまうんじゃないかというような危機感すら感じます。そのためにこの議会拒否権というのは検討されるべきではないかと思います。

○仁比聡平君 もう少しお尋ねしたいところですが、時間が参ったようですので。

私、今のようなお話を踏まえても、やはり非常事態法制について憲法を明文改憲する必要は全くないというふうに考えます。

以上です。