第186回通常国会 3月27日 法務委員会
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
この法案で判事を三十二人増やして裁判官以外の裁判所職員を三十六人減らすということで、説明のときに、一時期、差引き四人の定員、定数減という表現も聞いたことがあるんですけど、裁判官と裁判所職員を差引きするというのは無理があるのではないかと私はその説明のときに思ったんですね。司法の独立と国民の裁判を受ける権利に応える国民のための司法の実現のために、もちろん裁判官には裁判官の、そして裁判所職員には裁判所職員のそれぞれの職責があるということが大変大事だと思います。
それで、今度の法案について、判事、書記官を増員することは司法の充実に資するものですから私どもも法案には賛成をいたしますが、しかし、裁判所職員のこの定数、定員ということについての考え方、これ数字だけで先に申し上げると、裁判所職員全体で八十人削減ということになるわけですが、これが本当にいいのかということを少し議論させていただきたいと思うんですね。
まず、今度の定数減、裁判所職員の定員減ですが、これは、これまで技能労務職員の方々が行っておられた清掃だとか庭木の剪定だとか、こうした業務の外注化でその定数分が言わば必要でなくなるということになっているようなんですけれども、中村局長、私、例えばある裁判所で、その植木というか、裁判所の構内、たくさん木があるじゃないですか。これがなかなかその剪定が進んでいなくて、とあるときに、いや、ちょっとこれはまずいというので、裁判体の書記官や事務官の皆さんが押っ取り刀で剪定して回るとか、清掃も、突然何だかそういう汚れるようなことがあってしまうと、もうそのままにしておくわけにはいかないので、とにかくその裁判部の職員さんも出ていって一生懸命やるというようなことが最近やっぱり頻繁にあるなという話を、頻繁にというかたまに、まあまああるなという話を伺いまして、天気が良くて気分転換にとかいうのはあって私いいと思うんですよ。それが裁判所らしいと思うんですよ。なんですけれども、やっぱり事務の合理化とか効率化といっても物には限度があるんじゃないのかと。
これまでこうやって合理化、効率化というのを進めてこられたんですけど、もう限界なんじゃないのかと思うんですけど、局長、いかがでしょう。
○最高裁判所長官代理者(中村愼君) お答えいたします。
委員御指摘のとおり、技能労務職員につきましては、その方々が定年等で退職するに際しまして、その業務への支障の有無を考慮しつつ、外注化による合理化が可能かどうかということを判断するとともに、その後、問題が生じていない状態が継続しているかどうかということも確認するなど、慎重な検討を行った上で定員の削減を行っているところでございます。
先生御指摘のとおり、緊急な対応として、例えば木が非常にぼうぼうでその外注業者がすぐに来れないというときに、裁判所職員が押っ取り刀でやるということはあろうかと思いますが、それが常態化するということは、先生言われるように好ましいことではないというふうに考えております。
司法行政事務の合理化あるいは庁舎管理業務の合理化ということについては、裁判事務への支障の有無ということを慎重に検討してまいらないといけないということでございますので、際限なしの事務の合理化、効率化ということは行えるわけではないというふうに考えているところでございます。
○仁比聡平君 その技能労務も含めて、これまで裁判所職員のお一人お一人が担ってこられたお仕事というのは、裁判という職権の行使に直接関わる仕事、あるいは事件当事者に直接接する仕事でない仕事でも、やっぱり全体として公正に裁判を受ける権利を実現するという雰囲気も含めて裁判所をしっかり支えてきた仕事であって、もちろん効率化、合理化は大事なんですけれども、これが独り歩きすると裁判の機能が失われていくということになりかねないと思うんですね。
これまで政府行政部門では国家公務員の定員合理化の計画が進められてきたわけですけれども、その下でも司法制度改革だとかあるいは裁判の実態、そこを見て裁判所職員の定数は増加をさせてきたわけです。それが、今年度といいますか二〇一三年度に一九五五年以来五十八年ぶりに純減となり、二〇一四年度は二年連続の純減ということになるんですね。その数字が八十人削減なんですよ。これが、これから先は裁判所職員も当然削減だと、そういう流れになることは私は絶対に認められないと思っておりまして、裁判所が裁判所として合理化、効率化を努力をしていくということは、それはそうかもしれないが、何かそれ以外のところの圧力で裁判所の機能を損なっていくというようなことは私は絶対にあってはならないと思います。
局長、決意を伺いたいと思うんですが。
○最高裁判所長官代理者(中村愼君) お答えいたします。
政府における定員削減計画ということの御指摘もございました。国の財政事情というのが非常に難しい状況にあるということを踏まえまして、裁判所といたしましても国家機関の一つとしてそれを考慮しないわけにはいかないということではございます。
ただ、先生御指摘のとおり、裁判部門ということの充実強化ということは裁判所にとって非常に重要なところでございますし、それを中心として人的体制の充実強化ということを図りつつ、また、その状況を踏まえて裁判事務に影響がないような形で、政府の行政の効率化の状況も参考にしつつ、無理のない形の事務の合理化、効率化ということは進めてまいりたいというふうに思っておるところでございます。
○仁比聡平君 御答弁ができればで構わないんですけれども、概算要求を見ますと、元々は四十人の書記官増員を最高裁としては求めておられたのだろうと思うんです。この法案は、二十九人の増員で、加えて、事務官、速記官からの振替が十五人ということになっているわけですね。この概算要求のプラス四十人、つまり、振替も含めれば六十五人というこの要求が認められなかったというのか、二十九人になったというのか、これはどうしてなんですかね。
○最高裁判所長官代理者(中村愼君) 裁判所は司法権を行使するということで、予算についても一定独立ということは配慮いただいているところでございます。
概算要求数と今回の増員数が異なるというところにつきましては、当初要求していたところにつきまして、財務省等といろいろ協議した結果、国の財政状況あるいは他の行政府省の要求状況を踏まえまして、現有勢力の有効活用ということがどこまでぎりぎりできるかというようなことも考慮して、ぎりぎりの検討ということで二十九人の最終的増員ということをお願いしたということでございます。
○仁比聡平君 通告とちょっと違うんですけれども、大臣、よろしいですか。
最高裁のそうした事務の合理化、効率化の努力というのは、私、その全てが現場でそのとおり大賛成ですと思っているわけでは実はなくて、もっともっと現場のニーズを踏まえた方がいいんじゃないかと思うところは僕自身はたくさんあるんですよ。
ですが、司法の独立ということを考えたときに、様々な検討の上で最高裁がこうした概算要求をされると。これはやっぱり基本的に尊重されるべきものであって、財政上の理由や最高裁がそれに配慮するということはもちろんあるんでしょうけれども、だけれども、この最高裁の求めさえ大きく削られるというのはちょっと違うんではないかと思うんですけれども、大臣、御見解ありますか。
○国務大臣(谷垣禎一君) 私は、最高裁判所の裁判官を含めた人的体制をどういうふうに整備していくかということは、まず裁判所自身が適切に御判断なさるべきだというのは、これは司法の独立の一つのある部分で意味を成し、司法の独立の意味も持っているというふうに私は思っております。
ですから、今の委員のお尋ねも、私も昔勉強してちょっと記憶はうろ覚えでございますが、予算に関しても、あれは何といいましたか、二重予算、何とかいう制度が裁判所はお持ちなわけですね。つまり、自分でやはり、行政府と折り合いがうまく付かない場合は御自分の判断で案を出せるというような権限も認められているわけでございます。
ですから、そういう意味で、裁判所の司法の独立というのは、こういう財政あるいは予算の面でも国の制度としてある程度配慮されていることは間違いないと思いますが、現実のいろいろな国の行財政の事情の中で相当裁判所も御苦労されながら体制の整備を図っておられるなと。私も行政府にはおりますけれども、司法の独立あるいは法の支配と非常に近いところで仕事をしておりますので、その裁判所の御苦労は感ずる次第でございます。
○仁比聡平君 この法案も所管もされる法務大臣として、おっしゃった裁判所の御苦労をしっかりと実らせるために是非御努力いただきたいと思います。
最高裁総務局長、今大臣の御答弁の中に出てきた裁判所の予算に関する権限といったものの正確な紹介を一つと、それから続けて、そうした下で、実際に繁忙な職場というのがもうこれまで出ているようにありますですね。今でいうと、成年後見をめぐる事件と家裁というのは大変長時間の残業だとか、その中でのメンタルヘルスというのも私は秋の国会で指摘もさせていただきました。ここに定員を増やすということが本来の解決の道だと思うんですね。
どうしても、裁判所は受動的な機関ですので、事件がたくさんあるところというのに持っている人材を何とか動かして対応しなければということになりがちで、ですからかつては、破産、執行部が大変なときにそこに人員が配置される、裁判員裁判の導入の時期にはそこの手当てのために配置をされるなどの形で、例えば民事、刑事、家事、それぞれの分野を超えて職員の異動が行われるということも間々あって、それが長期的な目で見たときに、書記官を始めとした裁判所職員の養成や確保という観点でいうとマイナスの面も私はあるのではないかと思うんですね。やっぱり、裁判所の予算をしっかり確保して、大きな目で見て裁判所全体が国民のための司法を実現していくことができるように、最高裁としても大きなビジョンや計画を持って臨むべきではないかと思うんですが、局長、いかがでしょう。
○委員長(荒木清寛君) 中村総務局長、恐縮ですが、時間が来ておりますので、答弁簡潔にお願いいたします。
○最高裁判所長官代理者(中村愼君) お答えいたします。
先ほどの予算の関係はいわゆる二重予算権ということでございまして、そういう権限を持たせていただいているという関係で、概算要求との関係でも改要求という形にさせていただいています。
最後の御質問の関係でいいますと、裁判所が国民のニーズに応えていって、裁判を受ける権利を保障するためにやはり人的体制の充実ということは重要であるというふうに考えておりますので、今後とも計画性を持って適正、迅速な紛争の解決を図るべき体制の整備ということは努めてまいりたいと考えているところでございます。
○仁比聡平君 ありがとうございました。