第186回通常国会 3月26日 災害対策特別委員会

 

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

 今日は、昨年七月末の経験のない集中豪雨を始めとした被災に襲われました山陰の豪雨被害からの復旧について質問をいたしたいと思います。

 災害から八か月がたちながら、生活の基盤である住まいやなりわいの再建という視点から見たときに、私、極めて深刻な状況が続いていると思います。

 お手元に先週の被災現地の写真をお配りをしておりますけれども、一枚目、これは萩市の須佐という地域で、須佐川の氾濫によって周辺の住家がこのように濁流によって破壊をされたわけですが、多くの家屋の再建に手が着いていないという事態です。

 大洪水に襲われた農地の多くは、二枚目、島根県の津和野町の一つの例を紹介をしましたけれども、この土砂に覆われているところは田んぼなんですね。大量の土砂やあるいは流木が流れ込んだまま、用水路やあぜが壊れたままという、そうした農地が数多く、もう無数と言っていいほどあって、今年の作付けができないという事態にあります。

 三枚目は、同じく津和野町の氾濫した川の写真ですけれども、氾濫した河川は橋だとか橋脚あるいは道路が流されたまま手が着いておらずに、次に大雨が来たらどうなるのかと、とにかく六月までには、つまり出水期までには何とかしなければという住民の皆さんからの不安が大変募っております。

 四枚目の山口市阿東地区を流れる阿武川の様子も同じですけれども、御覧のように護岸が全部持っていかれている、その向こうにある田畑には全て土砂が流れ込んだままと、こういう事態にあるわけですね。

 そこで、水管理・国土保全局長に、まず具体的な被災からの復旧について先にお尋ねしたいと思うんですけれども、五枚目の写真は島根県の江津市の桜江というところにある糸谷川なんですが、これは一級河川の江の川の支流に当たりますけれども、ここが御覧のように氾濫によって建物の敷地までが大きくえぐられているわけです。更に大雨が来たら一体どうなるのかと住民の皆さんは不安で仕方がなくて、せめて土のうくらい積んでくれと市に申入れをしているわけですが、県の復旧事業が始まるまではできないといった回答しかいまだいただけていないという状況のようなんですね。これは一体どうするんでしょうか。

○政府参考人(森北佳昭君) お答えを申し上げます。

 委員御指摘の島根県の糸谷川における被災箇所についてでございますけれども、島根県からは、この四月までに応急的に大型土のうを設置する予定であるというふうに聞いております。さらに、本復旧工事につきましては本年六月末までに完了させるという見込みであるというふうに聞いておるところでございます。

 これ以外の他の河川につきましても、県の方は今後早急に総点検を実施をいたしまして、緊急性の高い箇所につきましては今年の出水期までに大型土のうの設置など応急対策を実施する予定であるというふうに聞いております。

○仁比聡平君 国土交通省からきちんと尋ねていただいたことによってそうした前進が図られているのだろうと思います。これを本当に大切にして、こうした箇所がたくさんあるわけです、他県も含めてですね。ここをどう手を打つのかということが今問われていると思うんですね。

 もう一件、山口市の先ほどの阿東地区阿武川ですが、朝早橋、朝の早い橋という橋があって、ここが、濁流で流されてきた流木が、せき止められてしまって、この橋も壊れて堤防も決壊したと。ところが、この壊れてしまった橋脚は川の中にまだそのままになっている、堤防も決壊したままになっている。この橋脚は撤去してくれと、これはもちろん復旧を進めてくれということなんですが、この見通しはどうか。そして、その橋の再建を元のとおりに復旧するということになると、同じように大水で流木がせき止められてしまうじゃないかと、間隔を広げてくれという声もあるんですが、これはいかがですか。

○政府参考人(森北佳昭君) お答えを申し上げます。

 委員御指摘のこの朝早橋につきましては、管理者、山口市でございますけれども、山口市によりまして、被災した橋梁の撤去工事、これ既に発注をされておりまして、この五月末までに撤去するよう今関係機関と調整中であるというふうに聞いております。

 また、その橋梁の復旧につきましては、委員御指摘のように、河川の改修と併せまして、例えばその橋脚の数を減らすことや、また橋の高さを上げる、そういったことなど、改良して復旧するということを検討しているというふうにも聞いております。

 国土交通省といたしましては、この災害復旧が迅速に行われますよう技術的な助言を行うなど、自治体支援を行ってまいりたいというふうに思っております。

○仁比聡平君 そうした二つの例を挙げましたけれども、災害復旧事業全体の数字で見ますと、ようやく査定が終わって、それでも工事の発注がなかなか進まずに、つまり、現場ではやっと今工事が始まったというところなんだと思うんです。

 そこで、山口県の山口市、萩市、それから島根県の江津市、津和野町という四自治体の関係において、査定の全体数、工事の完了数、発注済みの件数及び未発注の件数とその見通し、これ局長に明らかにしていただきたいと思います。

○政府参考人(森北佳昭君) お答え申し上げます。

 お尋ねの三市一町の災害復旧工事の進捗状況と見通しについてのお尋ねでございます。

 まず、山口市におきましては、災害復旧工事、百九十一か所ございます。そのうち八か所が完了済み、百六十二か所が発注済みで現在工事中ということでございます。未着手のうちの七か所につきましては四月に発注する見込みでございますし、また残りの十四か所につきましては本年九月末までに発注する予定というふうに聞いております。

 萩市では五百二十四か所ございます。そのうち七か所は完了済みでございまして、二百六十二か所工事中ということでございます。未着手のうちの二百三十五か所につきましては本年六月までに発注する見込み、また残りの二十か所については本年九月末までに発注する予定というふうに聞いております。

 島根県江津市では四百八十か所ございます。そのうち九十三か所は発注済みで工事中ということでございます。未着手のうちの三百三十六か所につきましては本年九月までに発注する見込みでございますし、また残りの五十一か所につきましては本年十二月末までに発注する予定と聞いております。

 島根県津和野町では二百二十一か所ございます。そのうち八十五か所で発注済みで工事中ということでございます。未着手のうちの百七か所につきましては本年九月までに発注する見込み、そして残りの二十九か所につきましては、平成二十六年、今年の年末でございますが、十二月末までに発注する予定というふうに聞いております。

 国土交通省といたしまして、今後とも迅速に行われるよう、しっかり支援してまいりたいというふうに考えております。

○仁比聡平君 御紹介のように、深刻な数字だと思うんですよ。

 つまり、完了したのは山口市、萩市合わせても十五か所しかなくて、未発注が萩で半分、津和野で六割、江津で八割に上るわけですね。この発注の見通しが九月だとか十二月だとかいうことになってしまうと、これはもう住民の皆さんの不安は本当に募るばかりなんですね。現場の自治体の職員の皆さんが頑張って、もう猛奮闘しておられるというのは私もよく承知をしておりますし、地域の建設業の疲弊ということも背景としてあるわけですけれども、この復旧が進まなければ手を着けられない田畑だとか護岸、道路なども多数あるわけですね。これ、合理的にどう進めるのかということが極めて大事だと思います。

 局長、一言、その決意も伺いたいと思うんですが、いかがですか。

○政府参考人(森北佳昭君) 委員御指摘のとおりでございまして、河川災害におきまして、破堤など甚大な被害が発生した場所につきましては、住宅や重要な施設、背後に控えている被災箇所については早期にやっぱり応急対策を行う必要がありますし、激甚な被害を受けた地域では復旧箇所多数あることから、被害の大きさ、背後地の状況などから優先順位を付けて復旧していかざるを得ないということでございます。

 そういう状況の中で、国土交通省といたしましては、被災自治体の復旧計画等を十分にお伺いして、災害復旧事業を早期に完了するように助言、支援を行ってまいりたいというふうに考えております。

○仁比聡平君 自治体を本当に全力で支援をして、先ほどの見通しも前倒しで行われるように是非強く求めたいと思うんです。

 厚生労働省にお尋ねをしたいと思うんですが、須佐川の川べりにある市立須佐保育園というのがございます。ここ、先ほどのような濁流で建物の中まで川が流れて、幸い日曜日で子供たちはいなかったわけですけれども、建物そのものが平家で逃げる場所もないということもあって、保護者の皆さんからは現地建て替えなどでは危なくて通わせられないという強い声も上がりまして、萩市の方では高台への移転を決めたわけですね。ここで国からの補助が出るのかということが課題になっているそうなんですが、私は、高台移転というのはもっともなことであって、現地復旧でなくても当然補助事業とすべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(鈴木俊彦君) お答え申し上げます。

 今御指摘のありました被災した社会福祉施設の災害復旧でございますけれども、御案内のように、実地調査を行いまして被害額を確定し、それで復旧に要した費用の一部を予算の範囲内で補助を行うと、こういうスキームでございます。

 実地調査によりまして復旧費を算定する際でございますけれども、今御指摘ありましたように、被災前の位置に被災施設と形状、寸法、それから材質の等しい施設に復旧する、いわゆる原形復旧が原則ということではございます。ただし、原形に復旧することが著しく不適当であって、その施設に代わるべき必要な施設の新築を必要とする場合など、こうしたときにはこうした原則によらずに災害復旧事業の対象とすることは可能でございます。

 ただいま御指摘のありました須佐保育園のケースでございますけれども、このケースが、原則によらず、移転改築工事を災害復旧事業の対象とすることができるかどうか、これは諸基準に照らして現在精査をしているという状況でございます。

○仁比聡平君 是非、補助がかなうように頑張ってもらいたいと思うんです。

 次に、農地、農業用施設の復旧について農水省にお尋ねします。

 まず、島根県、山口両県について、災害復旧事業の査定と着工及び査定前着工の件数はそれぞれ幾つでしょうか。

○政府参考人(室本隆司君) 島根、山口両県におけます災害復旧の進捗状況でございますが、まず、島根県では、津和野町、江津市などにおきまして五千四百六十八か所、被害額としては約九十二億六千万ということでございます。山口では、萩市、山口市などにおきまして三千九十三か所、約六十五億一千万という被害額となっております。

 災害査定の状況でございますが、両県とも昨年の十二月中には完了しておりまして、件数でございますが、島根においては約一千四百か所、山口におきましては約九百か所という状況でございます。

 災害復旧工事に着工した件数でございます。島根県におきましては約四百か所、山口県におきましては約百四十か所という状況になっております。

 最後に、査定前着工の件数でございます。島根県、山口県両県とも六件ずつという状況になってございます。

○仁比聡平君 私はこの査定前着工を強く求めてきたわけですけれども、各県で僅か六件ずつしか行われていないですね。どうすればもっと査定を迅速、合理的に行えるか、ここからどう教訓を引き出すかということについては、ちょっと今日時間が限られていますので別の機会に議論をしたいと思うんですけれども、この被災現地でいいますと、とにかく査定は終わっているわけですから、この現場でこれからの復旧をどうすれば早く進められるのかと、これが本当に急がれると思うんですね。

 例えば、萩市の田万川あるいは小川という地区では、例年であれば三月下旬の今は田んぼの荒起こしや用水路の掃除が始まって、五月には田んぼに水を張って、五月十日頃には田植をするという大事な作付けの季節になるわけです。ですから、遅くとも四月いっぱいに仮復旧ができなければ、仮復旧もできなければ丸一年棒に振ってしまうということになるんですね。何としても間に合わせなければならないと思いますけれども、部長、どんな構えで進めていかれますか。

○政府参考人(室本隆司君) 一つ、今回の豪雨災害の特徴としては、張り付いている農地が河川の近傍にあるといったところが結構ございまして、その復旧に当たっては、例えば河道の変更を伴い、下流から順次復旧を進めていく、そういったところが非常に多うございます。こうした規模の大きい他の復旧事業との調整が必要な箇所につきましては、関係機関と密に連携をしながら計画的に復旧を進めていく必要があると考えております。

 それと、補助災害復旧を中心にやっていくわけでございますけれども、市町村が単独事業で取り組めるよう、私どもとしてもしっかり連携を図りながら営農再開が可能な必要最小限の対応も含めて積極的にやっていきたいというように考えております。

○仁比聡平君 今、御答弁の中にも出た市の単独事業についてちょっと紹介をしたいんですが、萩市では、重機のレンタルだとか揚水ポンプをレンタルする、あるいは流入土砂を集落がみんなで力を合わせて取り除く、小河川を復旧すると、こういった共同作業にもおおむね二十万円を補助するということによって被災農家や集落自らの力で復旧作業を行うと、ここを柱にした制度が大変活用されてきました。地元の農家には建設土木業の経験がある人も多くて、技術や能力はあるわけですね。査定が現実には進まない、発注もままならないという下で、小規模の被災箇所なら集落で力を合わせて復旧に当たれるという、これは農業収入の見通しが立たない生産者の意欲をつないでいく上でも極めて大事だと思うんです。

 その事業と併せて、幾つかの集落や集落営農法人では、みんなで意見を出し合った上で、中山間地域等直接支払交付金だとか農地・水保全管理支払交付金の積立てを活用して、例えば時給千円といった日当を出すようにするということによって一層その集落の力を合わせるという、そういう取組も行われているんですね。こうした交付金というのは災害復旧に必要な共同作業の日当としても活用できると今度のことで明らかになってきた、私も学んだんですけれども、これ、もっと活用するべきじゃないかと思いますが、部長いかがでしょう。

○政府参考人(室本隆司君) 委員御指摘の中山間地域等直接支払、それから、私ども別途、農地・水保全管理支払というのをやっておりまして、こういった中では洪水、地震等の発生時におきまして地域の共同活動による農地あるいは農地周りの水路、農道等の見回り、あるいはその畦畔の補修等の応急措置に係る活動についても支援対象としております。

 一方、中山間の直接支払の交付金につきましても、これは本来制度の趣旨が平地地域との生産条件の不利を補正するものでございまして、集落協定等に位置付けることによりまして、委員御指摘の災害時の応急復旧等にも活用することが可能となってございます。

 このように、今申し上げた両交付金を活用することにより災害発生時における農地等の迅速な復旧や二次災害の発生防止に資することが可能と考えておりまして、今後とも災害発生時におきまして両交付金の活用が促進されるよう周知を図っていきたいというふうに考えております。

○仁比聡平君 大臣に最後に、決意と、また御提案も実はありまして、一つは出水期や作付け、これに何としても間に合うように、そうなると四月いっぱいがまず大きな勝負なんですよね。間に合わせるためにあらゆる手を打つという決意で是非臨んでいただきたいということと、それから、今交付金のお話いただいたように、コンクリートの作業まではできなくても、被災農家自らが行える、そういう復旧に向けた事業というのは現実にあると思うんです。農業収入が絶たれる中で、この災害時にそういう集落に日当としても活用できるような交付を行うとか、あるいは請負施行で行われる補助事業で地元農家の就労機会の確保を本当に進めていく上で、請負業者にこの施工管理の負担がかさむことも踏まえたインセンティブにもなる上乗せ、そういうこともやっぱり含めて考えて、できることは何でもやるという観点で臨むべきではないかと思うんですが、いかがでしょう。

○委員長(竹谷とし子君) 古屋大臣、時間を過ぎておりますので、御答弁、簡潔に願います。

○国務大臣(古屋圭司君) はい。じゃ、一言。

 国交省並びに農水省からもう答弁ありましたように、できるだけ早く復旧をさせていくということで取り組んでいただいているというふうに思います。

 内閣府としても、引き続き、できるだけ早く取り組んでいくように督励をしてまいりたいというふうに思います。

○仁比聡平君 ありがとうございました。