【15.06.11.】法務委員会「ヘイトスピーチ根絶は政治の責任」

189回国会質問 国会質問一覧

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

私、今日は、五月二十一日に続いて、在日朝鮮人に対するヘイトスピーチ根絶への政治の責任についてお尋ねしたいと思います。

前回の質疑で、九一年の海部首相の在日韓国人問題に関するメッセージ、あるいは九五年の村山談話を経て、一九九八年の小渕恵三総理と金大中大統領との日韓共同宣言を御紹介をいたしました。この日韓共同宣言では、我が国が過去の一時期韓国国民に対し植民地支配により多大の損害と苦痛を与えたという歴史的な事実を謙虚に受け止め、これに対し、痛切な反省と心からのおわびを述べたという小渕総理の立場を始めとして、これを機に両国間の関係を発展させようというメッセージが確認をされ、在日韓国人が両国国民の相互交流、相互理解のための懸け橋であると、そうした宣言が高らかにされたわけです。

こうした立場を言葉だけでなく行動に示していくこと、日本の政治全体の中で貫いていくことが政治の責任ではないか、先ほども有田議員から御指摘のあった現に起こっているヘイトスピーチは、この歴史的な到達に対する逆流なのであって許されないという私の問いに、大臣も、歴史的な経緯を踏まえた上で、日韓両国の中での取決めが様々な形で行われ今がある、それゆえに、その意味で排斥するというような言葉につきましてはこれは許されることではないという御趣旨の御答弁をなされました。

そこで、今日は、この在日朝鮮人の法的地位の歴史的な経緯について少し概観したいと思うんです。

一九一〇年の韓国併合で、朝鮮人は、自らの意思とは関わりなく、日本国籍を持つ帝国国民として扱われるようになったわけですね。戦後どうかと。まず行われたのは、四五年の十二月に参政権を停止をしたことです。そして、四七年の五月に外国人登録令が出され、台湾人及び朝鮮人は当分の間これを外国人とみなすというふうな勅令が出て、以来、外国人登録証の携帯、提示を強制され、これがその後、指紋押捺の強制になっていくわけですね。そして、五二年の四月に国籍が一斉に剥奪をされました。それが民事局、当時法務府ですけれども、民事局通達として五二年四月十九日に出された通達を根拠にして行われたわけですが、そこで、民事局長、このような内容の通達を定めた理由は何でしょうか。

○政府参考人(深山卓也君) 御指摘の通達は、日本国との平和条約の発効によって朝鮮に属すべき人の日本国籍が喪失したという旨の解釈を明らかにしたものでございます。

平和条約は、その第二条の(a)項において、日本国は、朝鮮の独立を承認して、朝鮮に対する全ての権利を放棄すると規定しているところですけれども、この規定は、日本が朝鮮に属すべき人に対する主権、いわゆる対人主権ですね、これを放棄したことを意味しますので、平和条約の発効によって、その当然の法的な効果として、朝鮮に属すべき人は日本の国籍を喪失したものと解釈されます。こういう解釈を明らかにしたのが御指摘の通達でございまして、この解釈は昭和三十六年四月五日の最高裁判所の大法廷判決でも確認されているところでございます。

○仁比聡平君 今御紹介のあった平和条約の文理そのものから直ちに一義的に民事局長通達が書かれているかというと、これはそうではないんですね。解釈を明らかにしたと今局長がおっしゃったように、これはこの平和条約の条項をどう解釈するのかという解釈があって、それをこの通達に示しているわけですが、その民事局が平和条約の解釈権限があるはずがない。

であれば、例えば外務省を始めとして他省庁と協議をした記録はあるのかと、その理由を私、以前から問い合わせていたんですが、五月一日付けで民事局から紙で御返事をいただいて、具体的な記録については確認した限りではいずれも存在しないという、そういうお答えをいただいていますが、局長、そのとおりですか。

○政府参考人(深山卓也君) 御指摘のとおりでございます。

○仁比聡平君 大臣、この民事局通達というのは、自分の意思によらずに日本国民と、帝国国民とされた人たちの国籍を一斉に今度は剥奪するということなわけですよ。残りたいなら帰化をしろと。その帰化に当たっても、かつて帝国国民、臣民たることを強制したこと、つまり日本国民であったこと、あるいは日本国籍を失ったことを特別に配慮することもしないというふうになっているわけですね。

これ、一旦外国人にして、様々な排除や選別もその後ことごとく国籍が持ち出されることによって正当化されていくという法的な枠組みがここでつくられたわけですが、その通達の根拠を示す記録が存在しないというのは無責任だとは思われませんか。大臣。

○国務大臣(上川陽子君) ただいま民事局長から御答弁をいたしたところでございますが、まさにサンフランシスコ平和条約の発効によって生じたこの日本国籍の喪失ということについて、この御指摘いただいた通達そのものは平和条約の解釈を明らかにしたものということでございます。

重ねての御質問で、その関係の文書についてはということでございまして、それにつきましては確認をしたということで私も報告を受けているところでありますが、その限りの中ではそれに係る文書については存在をしていないと、こうした状況でございます。

その中での判断ということでありますが、まさにこの通達そのものは平和条約の解釈を明らかにしたものということでございます。

○仁比聡平君 納得いきませんけれども。

むしろ、平和条約に至る戦後の日本政府の態度は、在日朝鮮人やあるいは台湾人の国籍選択の自由を前提にしていると思われるんですね。

選挙権を停止する、そのときの国会で、堀切内務大臣が、これまでの例によれば、内地に在留している朝鮮人、台湾人に対しては、日本国籍を選択し得るということになるのが例であって、今度も恐らくそういうことになるのではないでしょうかと。長く日本に親しみ、全く内地人と何ら差別なく、また今後どういう変化が起こってもやはり日本の国籍を選択してそのままでいこうという多数の朝鮮人、台湾人があるであろうということを私どもも認めているのでありますというふうに答弁をしているわけです。

今日、外務省においでいただいていますが、四九年の十二月二十一日、当時の川村政府委員が、国籍は銘々の希望に沿うだろうとは思いますが、これはまだ平和条約が決定しなければ見通しははっきりしませんという趣旨の答弁をしていますが、この国籍は銘々の希望に沿うだろうという答弁の根拠は何でしょうか。

○政府参考人(吉田朋之君) 今委員お尋ねのございました一九四九年十二月二十一日の答弁でございますが、これは衆議院外務委員会におきます佐々木議員と川村外務政務次官のやり取りだと承知いたします。

この答弁は、平和条約の準備の段階、過程においてなされたものでございまして、その答弁の中で、朝鮮人等の国籍の扱いについては平和条約で確定されるものとの認識を前提とした上で御指摘のような答弁、やり取りがなされておると承知しております。

その根拠についてお尋ねがございましたけれども、これはあくまで、もう数十年も前のことでございますので確たることはよく分かりませんけれども、そういうことでは推測の域を出ませんが、その後の一九五一年十一月五日の参議院平和条約及び安全保障条約特別委員会におきまして、当時、西村条約局長が、日本に相当数の朝鮮人諸君が住んでおられます、これらの諸君のために、特に日本人としていたい希望を持っておられる諸君のために、特別の条件を平和条約に設けることの可否という問題になるわけであります、その点を研究いたしました結果、今日の国籍法による帰化の方式がございますので、この帰化の方式によって十分在留朝鮮人諸君の希望を満足できるとの結論に達しまして、特に国籍選択というような条項を設けることを要請しないこととしたわけでございますと述べておられます。

一九四九年から、先ほどの川村外務政務次官の答弁、四九年から五一年、今の西村局長答弁にかけて様々な検討が行われる過程で、政府内で一つの可能性として国籍法による帰化の方式について検討がされていたと推測されます。戻りまして、四九年十二月二十一日の外務政務次官の答弁は、その時点における見通し、見方を述べたものと承知します。

○仁比聡平君 いや、戦後、四五年、つまり終戦直後の時期、それから四九年の年末の時期には国籍選択の自由を前提にしているわけですよ。それは否定できない。

実際、他国の例を見ても、ドイツの敗戦によるオーストリアの独立に当たっては、旧西ドイツではドイツ国内に居住するオーストリア人に国籍選択権が認められました。イギリスからの新独立国の市民も外国人とは扱われませんでした。そういう国際法の様々な到達点の下で、とにかくこのときには国籍選択の可能性があることを前提にしていた。ところが、平和条約の審議に当たっての、今御紹介のあった五一年十一月五日のこの条約局長の答弁はそれを否定するわけです。

しかも、御紹介のあったように、日本政府として特に国籍選択というような条項を求めることを要請しないことにしたというふうに答弁しているんですが、これは日本側として求めなかったからこういう平和条約になっているという意味だと思うんですが、これは確認ですが、どうですか。

○政府参考人(吉田朋之君) 先ほどお答え申し上げましたとおり、当時の答弁のやり取りを申し上げることしかございませんけれども、その西村条約局長は、当時、特別な条件を平和条約に設けることの可否という問題になるわけであります、その点を研究しました結果、国籍法による帰化の方式がございますので、この帰化の方式によって朝鮮人諸君の希望を満足できるとの結論に達したということで、国籍選択というような条項を設けることを要請しないこととしたわけでありますというふうに答弁しておられます。

平和条約におきましてその条項を入れなかったのは、一九五二年四月二十八日に発効したサンフランシスコ平和条約によって我が国は朝鮮独立を承認して、朝鮮の領土並びに朝鮮の方々に対する主権を放棄し、これに伴って在留朝鮮人の方々は日本国籍を喪失したというようなことで、従来から政府としては御説明、答弁してきている次第でございます。

○仁比聡平君 問いに答えないじゃないですか、質問時間も短いのに。私が聞いているのは、要請しないことにしたというから、それは日本側の意思でしょうと聞いているんですよ。

実際、その理由をうかがわせる答弁が、その委員会、五一年十月二十九日に、当時の吉田茂首相によって行われています。吉田総理は、もうはしょりますけど、何か騒動が起きると必ずその手先になって、そうして地方の騒擾その他に参加するという者も少なくない、いいのと悪いのと両方あると在日朝鮮人に対して根拠もない悪罵を投げ付けて、朝鮮人に災いを受ける半面もありまたいい面もある、政府としては朝鮮の将来の関係もありますが、特に朝鮮人に日本の国籍を与えるについてもよほど考えなければならぬ、密貿易であるとか密造であるとか、あるいは泥棒であるとか、いろいろな問題が朝鮮人に関して紛糾した状態で起こっているなどという答弁をしているんですね。

帰化というのは、つまり日本国家が、自分の意思で国籍を選択するといいますか、相手を日本国民にできるかどうか決めるというわけでしょう。それ、法務大臣ということになるわけじゃないですか。吉田総理は、そういう理由と私は思うけれども、その委員会で述べているわけですよ。

そういう理由から日本国として在日朝鮮人の国籍選択は認めないと、そういう意思だったということなんじゃないんですか、外務省。

○政府参考人(吉田朋之君) 当時のやり取りにつきましては、先ほど申し上げましたとおり、数十年前のやり取りでございますので、それ以外に何かその背景として何らかのことを示すものがあったのかどうかについては定かではございません。

繰り返しになりますけれども、一九五一年十一月五日の条約局長答弁では、委員御指摘のとおり、国籍選択というような条項を設けることを要請しないことにしたわけでありますというふうに言っておりますので、それ以上でもそれ以下でもないだろうと思います。

○仁比聡平君 何ではっきり言わないんですか。それ以上でもそれ以下でもないって、そう言っているんだから日本国側の意思でしょうと。外務省が何でそんなことを認められない。外交交渉、それでできるんですか。日本側の意思なのか違うのか、私、それはっきりさせなきゃいけないと思いますよ。

外務省、お尋ねしますが、この吉田当時総理の答弁を、もっと分かりやすくその意味を述べたと私は思うんですが、マッカーサー宛ての手紙というのが、恐らく四九年の八月末から九月初旬に書かれたと推定されるものがあります。

ここでは、朝鮮人居住者の問題に関してはというくだりで、彼らは総数百万人に近く、その半数は不法入国であります、大多数の朝鮮人は日本経済の復興に全く貢献しておりません、更に悪いことには、犯罪分子が大きな割合を占め、共産主義者並びにそのシンパで、最も悪辣な種類の政治犯罪を犯す傾向が強く、常時七千名以上が獄中にいるという状態にありますなどと事実誤認と民族的偏見に満ちた手紙を、述べて、その結論は、だから原則本国に送還すべきだと。在留を希望する朝鮮人は日本政府の許可を受けなければならない、許可は日本の経済復興に貢献する能力を有すると思われる朝鮮人のみに与えられるんだ、そういう仕組みにすべきだ、それだったら私はお金を出すと、そういう手紙になっているわけですよ。

そういう手紙ありますよね。この委員会に提出いただきたいと思いますが、いかがですか。

○政府参考人(下川眞樹太君) 今委員から御指摘のありました、吉田総理がマッカーサー連合国軍最高司令官に宛てたとされる書簡につきましては、様々な文献で紹介されていることは承知しておりますが、政府として、その書簡につきまして現時点で確認できていないところでございます。

○仁比聡平君 私は、在日朝鮮人の法的地位の戦後の出発点に関わる極めて重要な文書だと思います。この委員会で繰り返し議論されているヘイトスピーチの根絶に向けての政治の責任をはっきりさせるためにも、この委員会への提出を理事会で是非協議をいただきたいと思いますが、委員長、いかがでしょうか。

○委員長(魚住裕一郎君) 理事会で協議をいたします。

仁比君、時間です。

○仁比聡平君 時間が来てしまいました。

本当はこれを前提に、こうしたヘイトスピーチの論理として、今、在特会などが主張している問題が、戦後の日本政治の中でも抱えられてきた極めて重大な政治問題の逆流なんではないのか、それと同じ論理が使われているのではないのか。これを根絶するために、法務大臣始め私たち政治家の重い責任が問われているということを引き続き議論していきたいと思います。

今日は終わります。


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