○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

今日は、まず、法案の、著しく長期、多数回の事件を裁判員裁判の対象から外すというこの規定について大臣に伺いたいと思うんですけれども、先週の小木曽参考人の御意見を伺っても、結局、具体的基準はないとおっしゃっているように聞こえるんですね。衆議院からずっとこの議論はあってきているんですが、大臣、結局、除外の基準あるいは判断要素というのは何だということなんですか。

○国務大臣(上川陽子君) 今回の第三条の二というところに記載されております、審判に要する期間が著しく長期にわたる場合又は公判期日等が著しく多数に上ることを回避することができないときにおいて、他の事件における裁判員の選任又は解任の状況、当該事件の裁判員等選任手続の経過等の事情を考慮し、裁判員の選任が困難又は職務の遂行を確保することが困難である場合等において裁判官の合議体で取り扱うこととする決定をお願いしているところでございます。まさに二つの要素が規定されているところでございます。

そこで、裁判員制度の趣旨でございますが、裁判員として国民の皆様に御参加をいただくことによって、そして裁判をしていくということでございますので、これにつきましては裁判員が加わった合議体で行うということが基本であるというふうに思っているところでございます。

しかし同時に、今まで以上に、これまで生じなかったような事態を想定をいたしておるところでございまして、その意味では、施行後当分の間につきましては、他の事件における裁判員の選任又は解任の状況、これのみに基づいて除外決定をすることについてはこれは想定をしていないということでありますので、実際にこのことに該当するかどうかということにつきましては、裁判員等選任手続を実際に行って、そしてその上で、審判が長期、多数に及ぶため裁判員候補者の辞退が相次ぐ、さらに必要な員数の裁判員を選任することが困難である、こういうことが認められるときということで除外決定を行うということを想定しているものでございます。

したがいまして、三条の二によりましての除外決定がなされるということにつきましては、極めて例外的な場合であるというふうに考えております。

○仁比聡平君 条文を紹介をされ、趣旨をおっしゃるだけで、結局具体的によく分からなくて、例えば裁判官だって困るんじゃないかと思うんですよね。選任手続を実際にやってみてというんですけれども、あと一回か二回選任手続やってみたら参加できる人が出てくるかもしれない。だけど、どこかで職権で判断するということになるわけでしょう。

大臣か、局長でもよろしいんですけど、この条文には被告人若しくは弁護人の請求によりという場合もあるんですけど、逆に被告人、弁護人は絶対裁判員制度でやってくれと、この除外に反対しているという場面でも、それを押し切って職権で、いや、これは職業裁判官でやりますという判断ができるというわけですか。

○政府参考人(林眞琴君) 今回の三条の二の要件に当たる場合につきましては、裁判官の合議体で取り扱うこととする決定を行うことができるわけでございます。もちろん、そのこと自体が当事者との意見と異なる場合というのは当然あり得ると思いますけれども、そういった場合につきましても、今回の手続につきましては不服申立ての即時抗告というような形での申立ての制度もございます。そういった中でこの決定の当否というものが審査されていくこととなろうかと思います。

○仁比聡平君 そうなんですけれども、その不服申立ての是非の判断をするのはもちろん職業裁判官なわけですね。その基準がどうなのかという具体的なものは、今の時点で示されているとは私には思えない。局限的な例外の場合だみたいな、これまでには例がない場合だみたいな、そんなことになっているだけなんですよ。

大臣、冤罪事件など重大な否認事件が典型的ですけど、一定期間の長期が掛かるにしたって、そこに市民の社会常識、国民の司法参加を求めることが必要だ、ふさわしい、そういう事件を裁判員制度から裁判官の職権で除外してしまう、これができてしまうとなると裁判員制度の趣旨に反することにはなりませんか。

○国務大臣(上川陽子君) 裁判員裁判、裁判員制度そのものの対象事件ということで、先ほど委員の方から御指摘いただきました国民の社会常識、これを裁判に反映をさせる、そして司法に対しての国民の御理解そして支持を深める、さらには国民の皆さんに対して、この制度そのものを前提とした形での司法に対しての信頼をいただく、こうしたことで取り入れられ、またその対象とする案件につきましても、国民の関心が高く、社会的にも影響が大きい法定刑の重い重大事件を対象とする、こうした観点から定められているということでございます。

今対象となっていない事件の中に様々な種類のものが含まれているということでございまして、今委員御指摘の否認事件ということであります。被告人が公訴事実を否認する事件というだけで、それらが類型的に国民の関心や社会的影響の観点から裁判員制度の対象事件としてふさわしいものであるということにつきましては、なかなか困難であるというふうに考えられるわけでございます。

裁判員制度が制度設計された時点におきまして、司法制度改革審議会の御意見の中にこのことにつきましても触れておるところでございまして、公訴事実に対する被告人の認否による区別を設けないこととすべきであるということについて明確に御指摘をいただいているところでございまして、自白かまた否認かの別を問わず裁判員制度の対象とするということが現行制度の基本的な枠組みになっているところでございます。そうしたことをしっかりと考えて、この制度が現行制度になったものと考えております。

○仁比聡平君 私の問いと違う御答弁があって、今の否認事件について裁判員裁判の対象とすべきではありませんかという問いをこの次に申し上げようと思っていたんですけれども、その御答弁を今いただいたんだと思うんです。

後に議論するとして、先に申し上げたいのは、自白しているか否認しているかを問わず、今大臣がおっしゃったとおり、著しく長期とか多数回に上るというのは、この事案が重大で、あるいは否認していて多数の争点がある、あるいは証人がたくさんいるというようなことが想定されるわけですよね。そういう事件ほど社会的にも重大であり、裁判員の参加、それによる社会常識の反映というのがむしろ求められるんであって、これを職業裁判官の職権だけで対象から除外するというのは裁判員制度の趣旨に反しませんかという問いです。

○政府参考人(林眞琴君) 裁判員制度対象事件というのは、非常に法定刑の重い、国民の関心の深い重大な事件でございます。それを前提として、今回、裁判員制度につきましては、そういった裁判員制度の趣旨に照らせば、対象事件につきましてはできるだけ広く裁判員裁判を実施すべきであるというこの考え方は、それを前提としております。

その上で、ですから、当然、これまで例えば裁判員の参加する合議体で審判することが可能であった事件、その中には非常に大きな、事実認定上も非常に争われて国民の関心も非常に高いといった事件がございましたが、このように、実際にそれで裁判員裁判が行うことが可能であった事件、事案、こういったものについては、これまで同様に、この趣旨に鑑みまして裁判員の参加する合議体で取り扱うべきだと、そういう考え方に立ちまして、その上でも、今回、三条の二で挙げておりますような要件に合致するような場合につきましては裁判官の合議体で取り扱うことができるようにすると。非常に、ここでは極めて例外的にそのような決定を行うことができるというふうにするものでございます。

したがいまして、考え方として、必ず、そういった裁判員裁判対象事件につきましては、まずは裁判員裁判で実施をすべきである、そのようなことを考えた上で、それでも三条の二の条項に合致するような、ここには様々な決定に至るまでの考慮事情が書いてありますけれども、そのような考慮をした上で、結局、裁判官の合議体で取り扱うのが相当であると考えるべきものにつきましては、このような決定をして除外することができるというふうにしているものでございます。

○仁比聡平君 そうした御答弁を伺うと、こうやって新設しても結局除外するという事件は現実には出てこないんじゃないか。むしろ、私たちの責任は、そうした事件でも、つまり著しく長期の事件でも裁判員が参加できるような職場や保育や介護も含めた環境をちゃんと整えると、そこにあるんじゃないのかということを改めて申し上げておきたいと思います。

そこで、先ほど、御答弁が先にあった否認事件、今対象事件とされていない事件、例えば、法制審の特別部会の委員にもなられた周防監督が映画を撮られましたけれども、痴漢冤罪事件とか、あるいは、せんだって国賠訴訟の判決が確定した志布志事件、これは公選法違反事件でした。こうした冤罪事件も含めた否認事件ですね、私は対象として含むべきではないか。その制度設計としては、準備している修正案のように御提案をしているんですが、大臣、量刑は比較的軽いとか、あるいは執行猶予付きの懲役刑だとか罰金刑ということであっても、痴漢冤罪は典型ですけれども、誤った有罪判決というのは人の一生を破壊してしまうでしょう。一般市民の常識は、その有罪、無罪、その事実があったかなかったかと。あったかなかったかは不正確でした、検察官の起訴する事実が証拠によって合理的な疑いを入れない程度に立証されているかということの判断、これは一般市民の常識こそが生かされる分野であって、こうした否認事件こそ、事件の軽重にかかわらずに、私は国民が司法参加する意義があるんじゃないかと思うんです。

死刑が求刑される重大な事件ではなく、一般の市民生活の中で起こり得るこうした事実認定について国民の司法参加を求めるのはむしろ歓迎すべきじゃないかと思うんですけど、大臣、いかがですか。

○国務大臣(上川陽子君) 先ほどちょっと答弁を先取りされたということで御指摘がございましたが、まさに先ほどの私の答弁そのものが今の御質問ということであったかというふうに思いますが。

裁判員制度のそもそもの対象事件を限定しているということでありまして、国民の関心が高く社会的にも影響が大きい、そして法定刑の重い重大事件を対象とすることが相当であるという観点から定められているということでございますが、その対象となっていない事件の中にも様々な種類のものが含まれていると考えられて、そして被告人が公訴事実に否認するという、こういう事件だけでそれらを全て類型化をして、そして国民の関心や社会的影響の観点から、裁判員制度の対象としてふさわしいというところまで言い切るというのはなかなか困難ではないかという、そういう考え方の中で制度設計がなされてきたというふうに理解をしているところでございます。

先ほど答弁の中でも申し上げたところでもございますが、そもそも、制度設計をする折にも、司法制度改革審議会の意見に基づいて、公訴事実に対する被告人の認否による区別を設けないこととすべきであるという、こうした明確な御指摘をいただいているということでございまして、自白か否認かの別を問わず裁判員制度の対象とすることがこの現行制度の基本的な枠組みになっているというところでございます。

したがいまして、相対的に法定刑の軽い事件について公訴事実を否認する事件のみを対象とするということにつきましては、現行制度の基本的な枠組みについては相入れないものであるというふうに考えております。

また、否認事件一般を対象事件とした場合におきましては、裁判員の皆さんの参加する裁判の実施件数が相当数に増加するということも考えられるということでありまして、真にこれらに対応できるかということにつきましても慎重に検討する必要があるのではないか、そういう意味で国民の負担が過重なものとなるおそれがあると、こういう問題も指摘されているところでございます。

○仁比聡平君 もちろん、裁判員の参加などは増えていくことになるんだと思うんですけれども、その準備をもちろんやりつつ、施行してこの六年で、やはり国民の司法参加によって、職業裁判官のみによる従前の裁判に対して市民の常識が反映されるようになった。ここの積極的な意義を、そうかたくなに法の趣旨をおっしゃるんじゃなくて、立法時の議論をおっしゃるんじゃなくて、現実にこの六年間を踏まえてこれからの見直しを検討すべきだと私は思います。参考人質疑でも、法一条の理念が権利を認めたものではないという、ちょっと、そんなかたくなな法理上の議論を何で今するかと私は思うんですよね。類型的かどうかというふうに決め付けてしまうんじゃなくて、裁判員の参加によって市民の常識が裁判に反映していくということの大事さを今しっかりと踏まえてこれからのことを考えるべきではないでしょうか。

ちょっと次の質問に行きたいと思うんですけれども、三年後の見直し条項、先ほど真山議員も触れられましたけれども、これ政府案にはありませんでした。衆議院の全会一致の修正で置かれることになったわけですが、法案提出後に私、担当者の方から勉強のレクを受けているときに、なぜ置かないのかということについて、裁判員法はこれで言わば完成だからですという説明を受けたんですが、大臣、そういうことですか。

○国務大臣(上川陽子君) 今回、政府原案におきまして検討条項について設けなかったということでございますけれども、だからといって、将来、制度上あるいは運用上の措置の要否について検討しないということを意味しているわけではございません。裁判員制度そのものが国民の皆さんにしっかりと理解をしていただいて、そしてそれが更により良いものに改善し、そして国民の間においても広く定着することができるように、これは更なる改善は絶えずやっていかなければいけないということでございまして、そういう意味で、たゆまぬ改革をしていくということを前提にして組み立てているというふうに承知をしているところでございます。

その意味で、今後も施行状況をしっかりと注視をしながら、必要に応じまして制度上あるいは運用上の措置の要否につきましても検討をしていく、また検討をし続けていくということは必要であるというふうに認識をしているところでございます。

○仁比聡平君 そうおっしゃるわけですから、置かれた三年後の見直しに向けて抜本的な検証と改革を行うように御努力をいただきたいと思うんですね。

この六年間を振り返ってみたときに、裁判員制度というのは、これは重大刑事裁判について行われているわけです。二〇〇九年に施行されたわけですが、その直後に足利事件の菅家さんが無罪ではないかという重大な問題が起こって、その後、再審無罪が確定をします。村木事件も発生し、布川再審無罪判決も確定をします。昨年は袴田事件についての再審開始決定も行われ、政府は、というか検察は争っておられますけれども、せんだって志布志事件の国賠訴訟も確定をした。ここで問われた刑事裁判、とりわけ捜査の在り方の構造的問題について、裁判員制度との関連で、裁判員裁判にどう教訓を生かすのかという関連で、私は見直しがされていないと思うんですよ。

一方で、そうした冤罪事件が、あるいはその下での検察や警察の態度が次々と明るみに出る中で、一層、刑事司法への国民の信頼はなくされてきている。うさんくさい、関わりたくない、そういう国民意識が広がることは、大臣、自然だと思いませんか。

○国務大臣(上川陽子君) 裁判員制度におきましては、国民の皆さんの社会の常識をしっかりと裁判に反映していただくということで、大変長い議論の上で導入をされ、そしてこの間、国民の皆さんの真摯な御参加をいただいた中で一定の評価を得、また今後とも改善をしながら進めていくということが大事だという、そうした流れについては、これを大きな太いものに、力強いものにしていかなければならないと私自身考えているところでございます。

その意味では、様々な御指摘、そして様々な課題、問題、いろんな角度からお示しをいただきながら、それについて検証を加えながら検討をし続けていく、そして改善をしていく、あるいは制度的な、今回お願いをしたような御審議もいただくということで今に至っていると思っております。この流れにつきましては、今後とも改善をしていきたいと思っているところでございます。

○仁比聡平君 この冤罪を生み出してきた日本の刑事司法、とりわけ捜査の在り方を構造的に正すということ抜きに裁判員として重大刑事事件に関与してほしいということを国民に願うというのは、私は背理だと思うんですよね。

裁判の手続の中で一問だけ最後聞いておきますが、泉澤参考人が、証拠の厳選という考え方について警鐘を鳴らしました。小沢参考人の、先ほど真山議員の御紹介、そのとおりだったと、同じことだったと思うんですけれども、大臣、証拠を厳選するといって、つまり裁判員に負担を掛けられないからといって捜査側に不都合な部分が隠蔽される、そんなことはあってはならないと思いますけど、大臣、いかがですか。

○国務大臣(上川陽子君) ただいまの御指摘でございます。裁判員に負担を掛けられないから証拠を厳選するというようなことを名目に不都合な証拠を証拠請求をしないということ、これはあってはならないということで、制度そのものの中にはそうしたことが起こらない仕組みを導入しているというふうに考えているところでございます。

現行刑事訴訟法下におきましては、公判前整理手続におきましての争点及び証拠の整理と関連付けまして、段階的な証拠開示ということで、類型証拠開示とそして主張関連証拠開示ということでございます。被告人の防御のための準備のために必要かつ十分な証拠を開示するという仕組みになっているところでございます。

検察官が被告人の特定の供述調書の証拠調べを請求した場合におきましては、被告人の供述調書であって検察官が証拠の請求をしていないものについては類型証拠として開示をされる、そういう仕組みになっているところでございます。

このように、証拠開示制度によりまして検察官の請求証拠以外の証拠も広く被告人、弁護人の知るところとなり、このような証拠開示の制度の下では、検察官が証拠請求を控えることによって特定の証拠を隠蔽するというような御指摘のような事態ということにつきましては、想定し難いものであるというふうに思われるところでございます。

○委員長(魚住裕一郎君) 仁比君、時間です。

○仁比聡平君 時間がありませんから一言だけ申し上げておくと、想定し難いといって、現に起こっているじゃないですか。何を言っているんだと。制度上そうなっていないから抜本改革が必要なわけでしょう。それが捜査全過程の記録化、可視化であったり全面証拠開示であったり、代用監獄の廃止やあるいは弁護人の立会いなどの問題なんですよ。

これからのこの委員会の中で徹底した審議が必要だということを申し上げて、質問を終わります。

 

 

 

○仁比聡平君 私は、日本共産党を代表して、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正の動議を提出いたします。その内容は、お手元に配付されております案文のとおりであります。

まず、修正案の提案理由を御説明申し上げます。

裁判員制度は、冤罪を繰り返してきた我が国の刑事司法に対し、国民の司法参加によって刑事裁判に市民感覚、国民の常識を反映させ、とりわけ事実認定を適正なものにすることが期待されて導入されました。

同時に、法制定時にも、また施行後も、自白強要の温床となってきた代用監獄を始め人質司法が改められていないこと、取調べの全過程が可視化されず、証拠の全面開示制度も実現しないことによる誤判、冤罪の危険性、裁判員参加のための職場環境の整備の遅れ、裁判員の厳しい守秘義務、重い心理的負担など、様々な問題が指摘されてきました。施行されて六年になろうとしている裁判員制度の見直しは、こうした様々な問題を国民的な議論の下に解決するものでなければなりません。ところが、政府の改正案は、この間指摘されてきた様々な問題を解決するものとはなっていません。

よって、裁判員制度の抱える問題点を解決するため、裁判員法改正案に対する修正案を提出するものです。

次に、修正案の概要について述べます。

第一は、対象事件の見直しです。

一つは、政府案にある著しく長期間の審判を要する事件の裁判員裁判からの除外規定を削除することとしています。二つは、否認事件については、被告人が請求したときは裁判員裁判として取り扱うよう、対象事件を拡大することとしています。

第二に、無罪推定の原則を始めとした刑事裁判の原則について、公開の法廷における裁判員等への説明を裁判長に義務付けることとしています。

第三に、死刑判断に関する評決要件を全員一致によるものとしています。

第四に、裁判員等の心理的負担を軽減するための措置を講ずることを義務付けることとしています。

第五に、裁判員等の守秘義務について、違反に対する罰則から懲役刑を除き罰金刑に限定するとともに、裁判員等の任務終了後は、守秘義務の範囲を、正当な理由がなく他人のプライバシーを漏えいする行為や評議の秘密のうち他人の意見を明らかにする行為、及び財産上の利益等を得る目的で正当な理由がなく評議の秘密を漏らす行為に限定することとしています。

第六に、否認事件についての対象事件の拡大の規定の施行後三年を経過した場合において、新法の施行の状況について国民的な検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとしています。

第七に、刑事訴訟法に関わる事項として、改正法の施行後速やかに検察官が保管する全ての証拠の開示を義務付ける制度、並びに被疑者の取調べの状況等の録画及び録音、いわゆる取調べの全面可視化を義務付けるとともに、その取調べの際に弁護人の立会いを認める制度を導入するため、必要な法制上の措置その他の措置を講じなければならないものとしています。

以上が、政府案に対する修正案提出の理由及びその概要です。

委員各位の御賛同を心からお願いをいたします。

○委員長(魚住裕一郎君) ただいまの仁比君提出の修正案は予算を伴うものでありますので、国会法第五十七条の三の規定により、内閣から本修正案に対する意見を聴取いたします。上川法務大臣。

○国務大臣(上川陽子君) 本法律案に対する修正案については、政府としては反対であります。

○委員長(魚住裕一郎君) これより原案及び修正案について討論に入ります。

御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。

○仁比聡平君 私は、日本共産党を代表して、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部改正案に反対、日本共産党提出の修正案に賛成の討論を行います。

政府案に反対の第一の理由は、著しく長期にわたる事件を裁判員裁判から除外する規定の新設です。

著しく長期又は多数回とは何をいうのか、その要件、判断基準は審議を通じても極めて不明確なままであり、除外を必要とする具体的な立法事実も示されていません。それを職業裁判官が職権で判断し裁判員裁判から除外できることとなれば、国民の司法参加によって国民の社会常識を裁判に反映させるという裁判員制度の趣旨に反することになるからです。

冤罪事件など重大否認事件こそ、裁判員の社会常識、市民感覚を裁判に反映させ、適正な事実認定がなされることが期待されます。裁判員の負担軽減のためには、裁判員が参加しやすくなるよう、有給休暇制度の導入などの職場環境の改善、保育所、学童保育の利用の確保などに積極的に取り組むべきです。

第二に、本法案が、裁判員制度についてこの間指摘されてきた様々な問題の解決を棚上げしていることです。

裁判員制度は、冤罪が絶えない刑事司法に対し、国民の司法参加によってとりわけ事実認定を適正なものにすることが期待されたものですが、同時に、代用監獄を始め人質司法はそのままとされ、取調べ全過程の可視化も証拠の全面開示も行われないことによる誤判、冤罪の危険性、裁判員参加のための職場環境の整備の遅れ、裁判員の厳しい守秘義務、重い心理的負担など様々な問題が指摘されてきました。

裁判員裁判が始まって六年がたつのに、裁判員の辞退率は増え、出席率は低下している背景には、この間も相次いでいる冤罪事件、冤罪を生み出す我が国刑事司法の構造的問題に対する国民の厳しい不信があると考えるべきです。数々の冤罪がなぜ生み出されたのか、その第三者による検証こそ求められているのに、本法案はこれらの問題の解決を盛り込んでおりません。

我が党の修正案は、裁判員制度をめぐる諸問題を解決するための最低限の提案であります。

衆議院において、政府案になかった三年後の見直し規定が全会一致で設けられました。政府が刑事訴訟としての裁判員制度の問題点を深く掘り下げることを強く求めるものです。

なお、災害時における辞退事由の追加、非常災害時における呼出しをしない措置、裁判員等選任手続での被害者特定事項の保護の改正点は、この間の実情を踏まえた妥当なものであると考えます。

以上です。