【16.03.23.】2016年3月23日法務委員会『性犯罪の刑法改正議論、被害実態から乖離』

190回国会質問 国会質問一覧

 

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

昨日、この法務委員会でヘイトスピーチの根絶と立法措置の在り方を含めた政治の責任について初めての参考人質疑が行われたわけです。これは、本当に歴史的なといいますか画期的なこの委員会が果たしている役割を示すものだと思うんです。

そこで、通告している質問に入る前に、先ほど有田理事が取り上げられた、問われた三月二十日の川崎における事件についてなんですけれども、大臣はお聞きになっておられましたし、刑事局長お聞きになっておられたかどうかよく分かりませんが、先ほどの質問で警察庁は、街宣活動家とカウンターと呼ばれる市民の衝突を防止するために多数の警察官を配備していたということ、動員しているということを認めているわけですね。衝突を防止するために多数の警察官を動員しながら目の前で殴る蹴るを制止できなかったということ、しかも現行犯逮捕をしなかったということ、そして身元は分かっているのに三日間にわたって任意同行さえ求めていないと。

もしそうだとすると、これは警察組織がこの街宣活動家たちの暴行を容認していると社会的に評価をされるものであって、ほくそ笑むのは加害者なんですよ。こんなことが我が国の捜査機関において許されるのかと、私はちょっと怒りが収まらないんですけれども、大臣か刑事局長か、御感想をいただければ。

○政府参考人(林眞琴君) 具体的な事件についての捜査活動について、事案を承知しているわけではございませんので、それに対して見解を述べることはできませんが、いずれにしても、検察ということでいけば、事件として法と証拠に基づいて取り上げるべき事件であれば適切に対応していくものと考えております。

○仁比聡平君 事実関係を通告しての質問ではありませんから、局長の答弁、今のところでとどめますけれども、つまり問題は、目の前で行われている暴行を現に止めていないのが警察組織であるということがこの事件によって明々白々になっているということなんですよ。これは一体なぜかと。これは、法務省も、もちろん警察庁も、そして政権を挙げてしっかりと見極めるべき課題だと、私たち法務委員会としてもしっかり考えなきゃいけない課題だということをまず申し上げたいと思うんです。

そこで、昨日の参考人質疑ですけれども、在日三世の崔さんの意見陳述に、与党、野党といいますか、会派を超えて皆さん胸を打たれたと思います。

先に人権擁護局長に、この参考人質疑を聞いておられての御感想はどうかということと、それから、この崔さんの意見陳述の中心は、私は、これまで多様性を豊かさとして誇りとして共に生きてきた桜本という町、暮らしの町にヘイトデモがじゅうりんせんとして迫ってくる。とりわけ、去年十一月八日、そして今年の一月三十一日のこのデモの場面で、現場で例えば勇気を持って訴えたというのは、桜本を守ってください、桜本に入れさせないでくださいと勇気を持って訴えた中学一年生に対してもヘイトスピーチが浴びせられ、コリアンダブルであるその中学生は、体は半分にできない、心はばらばらにされたと、そうした言葉で被害を語っているわけですよね。

この現場から、崔さんや、それから一世のハルモニ、それから崔さんのお連れ合いが人権侵犯事件として申告をされたわけですけれども、その思いについて私、昨日お尋ねをしました。崔さんは、名を名のって申告をすることでさらされてしまうという恐怖がある。具体的にインターネット上でのバッシングも行われて、息子さんは、駅のホームで前に立たないでくれ、何があるか分からないと訴えておられる。けれども、大人として必ずヘイトスピーチを根絶する、そうした責任感を持って私はこの申告に及ばれたのではないか、そんなふうに決意を受け止めました。崔さんは具体的に実効性ある判断をというふうに政府に求めましたけれども、これに応えなければならないと思うんですね。

この参考人質疑の感想も踏まえて、この申告に対して私は速やかに勧告を出す、そのために直ちに調査を開始し、許さないという宣言をする、そのことが大事だと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(岡村和美君) 私も昨日の崔参考人のお話を伺いまして、今更ながらではありますが、改めてヘイトスピーチはあってはならないものだと痛切に感じております。

そして、委員御指摘の崔さんたちが勇気を振り絞って申告された案件についてでございますが、この事案は、平成二十八年三月十六日、横浜地方法務局川崎支局が、川崎市在住の在日韓国人ら三名から、いわゆるヘイトスピーチにより精神的苦痛を被るなどの被害に遭ったとして被害申告を受けた案件であると理解しております。

ただいま、横浜地方法務局川崎支局においては調査を開始しております。申告のあった同日付けで人権侵犯事件として既に立件し、救済手続を開始いたしております。今後は、横浜地方法務局川崎支局において速やかに調査を行い、その結果に基づいて適切な措置を判断いたす所存でございます。

○仁比聡平君 大臣にも感想と決意をお伺いをしたいんですけれども、この参考人質疑の御感想も踏まえて、私、先ほど来申し上げている、共生の集住地域に迫ってくるデモによってどれほどの痛み、悲しみを皆さんが受けられるかということ、その申告をされた在日一世の七十八歳になるハルモニは、出ていけというこのヘイトに対して、人生を丸ごと否定されたような思いだという趣旨のことを語っておられると思うんですね。当然だと思うんですよ。

こうした特定の人種や民族に属する人々に対して憎悪、暴力を扇動し、権利や自由の基礎である個人の尊厳を否定して社会から排除せんとするヘイトスピーチに、崔さんは中立や放置はあり得ないとおっしゃいました。国はなくす側に立つべきだと、なくす側に立つということを宣言すべきだ、そうおっしゃったんですが、大臣はいかがでしょうか。

○国務大臣(岩城光英君) 昨日の崔参考人の意見陳述、私も拝見をしておりました。その中で、いわゆるヘイトスピーチの現場に御子息とともに立たれ、そして自分たちに対する差別的言動、これを身をもって感じ、大変な恐怖感、ショックを受けたというその当事者の生の声をまたお聞きし、そして感じている不安感や恐怖感、こういったものを改めて痛感した次第であります。ヘイトスピーチは絶対に許されないということを更に強く訴えていかなければならないと考えておりました。

また、桜本に入れさせないでという、そういったお話をされた、その在日の方々が集住している地域において当該民族や国籍の人々を排斥する差別的言動が行われたとすれば、そこに住む当該民族、国籍の人々に耐え難い不安感やそして嫌悪感を与えることになるものであって、改めて許されないことであると、そういったことを強く感じた次第であります。

○仁比聡平君 ありがとうございます。

大臣が今の御答弁の中で、そうしたヘイトが行われたとすればという留保付きで御発言になりましたけれども、私は行われたということが昨日の参考人質疑で明々白々であって、だからこそ侵犯事件、人権侵犯事件として、先ほど局長が決意を述べられたように、直ちに調査に入っているということだと思いますので。

私、こうした事件が起こって、これに対して法務省を中心に政府は直ちに対応して、速やかに許さないという宣言をする、この積み重ねが極めて大事だと思いますので、人権擁護局を先頭に是非頑張っていただきたいと思います。

今日は次に、質問を性暴力と刑法改正の問題で続けさせていただきたいと思うんですが、三月八日に、性暴力禁止法をつくろうネットワークという被害者、当事者、支援者、研究者などの皆さんから法制審議会に対して要望書が出されています。これ、確認しましたら、法制審議会の刑事法(性犯罪関係)部会長宛てに伝わっているということなわけですけれども、この中で、このままでは性暴力被害の実態と乖離した刑法強姦罪の問題点が解決されないままに終わってしまうのではないかという強い危惧感が示されているわけです。

大臣、今法制審でこの刑法の問題についての議論が行われているわけですけれども、そもそも問われている出発点が性暴力被害の実態と乖離した現行刑法強姦罪の問題点というのは、私、そのとおりだと思うんですけれども、大臣はいかがでしょう。

○国務大臣(岩城光英君) 諮問に至る経緯からお話をさせていただきたいと存じますが、性犯罪の罰則については、平成二十二年に閣議決定された第三次男女共同参画基本計画において性犯罪に関する罰則の在り方の検討が求められていたほか、各方面から様々な御指摘がございました。

これらを踏まえまして、法務省において性犯罪の罰則に関する検討会を開催しました。ここで、性犯罪被害の実態に詳しい法律実務家や被害者支援団体関係者にも構成員となっていただいた上、性犯罪被害者等からのヒアリングを実施し、これを踏まえて性犯罪の罰則の在り方に関する多くの論点について検討を行ってまいりました。

今回の諮問は、このような検討会の議論を踏まえまして、性犯罪被害や事案の実態に即した対処をするための罰則の整備を行う必要があると考え、諮問したものでございます。

○仁比聡平君 という経過は何度も繰り返し御答弁をいただいているんですけれども、私、焦点になっているのは現行刑法と被害実態の乖離であると、問われているその被害者、当事者の皆さんの声、ここをちゃんとやっぱり聞かないといけないと思うんですよ。

具体的な事件で少し議論してみればと思いまして、資料をお配りしました。これ、ゴルフの教え子で十八歳の高校生だった女性に対して、ゴルフ指導者、練習場経営者が準強姦罪に問われた、けれども、これ、最高裁まで争われて無罪となったという事案なんですけれども、何を私言いたいかといいますと、性犯罪でこの事件は初めて検察審査会による強制起訴が行われた事件だということなんです。そこで二回の検察審査会の起訴すべきであるという議決によって、検察官は起訴しない、嫌疑不十分だとしたけれども、弁護士が検察官に代わって起訴をする、公判を維持するということになったわけですが、その二度目の審査議決をお手元にお配りしました。

めくって二ページ目を御覧いただきたいと思うんですが、市民が中心の、市民によって構成されている検察審査会は、ゴルフの指導を口実にホテルに連れ込んだ、そこで部屋の鍵を締めて三十分ほどゴルフに関しての話をし、安心させたり説教したりしてから急に姦淫行為に及んだと。被害者は、頭の中が混乱して、また信じ切っていた加害者から姦淫行為に及ばれて、裏切られた悲しさとショックでパニック状態になり、体が固まってしまって逃走や抵抗ができなかったとして、起訴相当である、つまり刑事法上罰するべきであるという判断をしたわけですね。私、これ市民の感覚だと思うんですよ。ところが、検察官は不起訴にした。ここには、被害実態と市民感覚と検察官の乖離、もしかしたら現行刑法規定の乖離というのがあるんでしょうかね。局長、いかがでしょう。

○政府参考人(林眞琴君) 委員お尋ねの事項につきましては、やはり個別具体的な事件において実際に具体的になされた検察官の処分に関わる事項でございますので、法務当局からはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。

○仁比聡平君 そうおっしゃるんですけれども、この事件では、地方裁判所が抗拒不能という成立要件、構成要件が認められないとしました。高等裁判所は、抗拒不能ではあると認めながら、被告人に故意がないというふうにして無罪の判決をしたわけですけれども、この裁判を通じて、刑法そのものの解釈というのがどんなふうになっているのか、ここ問題、問われていると思うんですよ。

これ、一九六五年の「注釈刑法」という法律家にはよく知られている本がありますけれども、ここでは、ささいな暴行、脅迫の前にたやすく屈する貞操のごときは本条によって保護されるに値しないという表現があります。女心の微妙さを考慮に入れよという言葉も刑法の解説書に書いてあるんですが、これ、刑事局長、法務省としてになるのか、刑法は所管しておられるんですが、同じお考えですか。

○政府参考人(林眞琴君) 御指摘のその注釈については、これはあくまでも注釈書の記載でございまして、私どもといたしましては、この抗拒不能の意義につきましては、やはり過去に行われた裁判例にのっとって理解しているところでございます。

○仁比聡平君 時間がなくなって本当に悔しいんですが、その裁判例とおっしゃる法律実務の中で、なぜ抵抗しなかったのかということを捜査機関やあるいは法廷で尋問をするということがもう当たり前のようにあります。なぜ抵抗しなかったのかとなぜ被害者に問うのか、それがどういうことなのかというのは大問題なんですよね。抵抗や逃走ができなかったというそうした状態の被害者に対してそれを問うこと自体は、これは人権侵害だと思うんですが、女性差別撤廃委員会から〇九年八月七日の最終見解でこういう指摘があります。「委員会はまた、本条約の精神、目的及び規定が十分に認識され、裁判において活用されるように、本条約及び委員会の一般勧告に対する裁判官、検察官、弁護士の意識啓発の取組を締約国が強めることを勧告する。」と。

最高裁に聞きますと、お手元の資料のように、裁判官がそうした研修を……

○委員長(魚住裕一郎君) 時間です。

○仁比聡平君 できているというわけではないんですが、最高裁、もし一言いただければお願いしたいと思います。

○委員長(魚住裕一郎君) 最高裁判所事務総局平木刑事局長、簡潔にお願いします。

○最高裁判所長官代理者(平木正洋君) お答え申し上げます。

性犯罪の被害者を始めとして、犯罪被害者の方々のお気持ちや心情等について理解を深めておくことは裁判所としても重要であると考えております。委員が配付されました資料に書いてございますような種々の研究会などを実施しておるところでございます。

裁判所といたしましては、今後もこうした取組を通じて性犯罪の被害者の方々のお気持ちや心情などに配慮する理解を深めてまいりたいと考えておるところでございます。


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