○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

今日は大臣、どうぞよろしくお願いをいたします。

私は、ハンセン病問題について大臣の認識をお尋ねをしたいと思うんですが、二月に熊本地方裁判所に、深刻な偏見にさらされ、差別を受けてきた元患者の家族の皆さんが集団提訴をいたしました。これは、らい予防法が廃止された九六年四月以来、今月末で除斥期間二十年が迫っているという下で提訴されたものです。

私は、九十年に及ぶ強制隔離の被害をこの二十年という除斥期間で打ち切ろうとする、打ち切るということ自体が不当だと思いますけれども、いずれにしても、強制隔離政策によって不当な差別、偏見を受けてきた方々の完全救済が今求められているわけです。弁護団の皆さんにも少しお尋ねをしましたけれども、この局面に何が現れているかと。それは、なお厳しく根深い深刻な差別、偏見が日本社会に残っている、そのことによって手続をためらう方が多く残されているということだと思うんですね。

例えば、親を強制隔離で奪われて以来ずっと社会を疎んで生きてきた、そうしたお子さんがいらっしゃいます。また、無らい県運動の中で入所時に一緒に暮らしていた例えば御兄弟、もう八十代になるわけですけれども、ずっとその人生の中で偏見の苦しみを被ってきたわけですね。家族さえ引き裂かれてきたという被害があります。そうした差別を受けてきた人生史を知られることを恐れて手続をためらっておられると。

そうした下で、国が九十年に及ぶ強制隔離政策の加害者として、差別、偏見をなくしていく、その責任というのは極めて重いと思いますが、大臣、改めて御認識を伺いたいと思います。

○国務大臣(塩崎恭久君) ハンセン病の元患者の方々などが地域社会で平穏な生活を営むことができるようにするということは重要な課題でございまして、元患者の方々などに対する差別や偏見のない社会の実現に向けて、これまでも政府としても、ハンセン病問題の解決の促進に関する法律というのがございますが、これを踏まえてこれまで真摯に取り組んでまいりましたし、これからも同じように真摯に取り組んでいかなければならないというふうに思っております。

政府としては、国立ハンセン病資料館の設置であったり、あるいはシンポジウムの開催であったり、パンフレットの作成であったり、ハンセン病の歴史に関する正しい知識の普及啓発に努め、元患者の方々などの名誉回復を通じて、差別や偏見の根絶に向けた取組を行ってきたところでございまして、今後とも、ハンセン病に対する正しい知識、これを普及していく、啓発をしていくということが大事でありますので、全力で引き続き取り組んでまいりたいと思っておりますし、また、元患者の方々などに対する差別そしてまた偏見のない社会の実現に向けて努力をしていかなければならないというふうに考えておるところでございます。

○仁比聡平君 そうした救済と偏見の克服を進めていくという下で、今月末までというこの期限、迫っているということは重く受け止めていただきたいと思うんですね。

大臣は御地元が愛媛で、四国に香川県の大島青松園という今唯一の離島となっている国立療養所があります。お手元に図を配付をさせていただきましたけれども、この青松園を始めとして、この療養所が一体どういう存在か。

昨年六月に、ハンセン病違憲訴訟の全国原告団協議会、全国ハンセン病療養所入所者協議会、そして違憲国賠訴訟の弁護団連絡会から、超党派の議員懇談会に提出をされた要望書の中には、亡くなられた神美知宏全療協元会長の、人間の尊厳に対する冒涜の歴史、つまり負の遺産であり、永久保存すべき義務がある場所であるという言葉や、亡くなられた谺雄二元全原協会長の、ハンセン病療養所は人権のふるさとだと、そうした言葉が紹介をされています。つまり、誤ったハンセン病隔離政策の教訓を次世代に伝える人権研修の場でもあるということですね。

この大島青松園は、そういう意味では、そうした島なんですけれども、御覧いただきますように、高松港からの船、そして高松市に合併された庵治町からの船、これが唯一の足であり、きずななんですね。

ところが、今この大島と高松港あるいは庵治という島の運航時刻表を園のホームページで見ますと、高松港の方しか記されていない。しかも、元々、「せいしょう」と「まつかぜ」という立派な官用船が二隻あるわけですが、そのうち、「まつかぜ」の方しか就航船として記載されていない。これは何で「まつかぜ」だけなんですか。

○国務大臣(塩崎恭久君) この大島青松園、香川にございますけれども、島に立地をしていることから、船舶が唯一の移動手段、このことは間違いないことでございまして、官用船として所有をしておりますのは今お話がありました「まつかぜ」と「せいしょう」、この二隻を所有をしておりまして、時間帯によって大島―高松、大島―庵治の間を二隻の官用船を使い分けて、実行上、一隻で運航していたというのがこれまででございました。

平成二十五年度に、船員八名で運航してきたわけでございますけれども、その後、船員が十分確保できない状況にあって、平成二十六年度に船員が八名から六名になったということから、二十七年の十一月からは、主として医療従事者の職員はこの大島―庵治便について民間委託をしたところでございます。

このように、従前から、実行上一隻で運航してきたわけでございますけれども、民間委託の際の官用船の運航に当たっては、乗船する者の人数などを勘案した結果、入所者の了解の下で、「まつかぜ」のみ運航を行っているというところでございます。

○仁比聡平君 今の大臣の説明だと、民間委託で官用船は一隻にしたという御説明になるわけですけれども、それ、我々に対する説明と違いますよね。

元々、民間委託というのは、今大臣がお話しになったように、官用船の本来八名の定員が必要な職員が、低賃金、あるいは他の船乗りさんとの賃金よりも本当に極めて低い劣悪な労働条件で、例えば県の最低賃金さえ下回るというような状況の下で、応募者がなくなるという下で、それでも離島の、島の安定的運航を図るためにというふうに説明されてきたわけです。

民間委託の際に、これ一隻にするという、元々そういう計画だったわけですか、局長。

○政府参考人(神田裕二君) 最初から一隻にするということではございませんでしたけれども、先ほど大臣から申し上げましたように、一般的にこの船を運航する際には四名で運航するということで、船長と機関長、甲板員二名と、四名で運営するということを原則にいたしておりましたけれども、二十三年度、四年度、六年度、その年度には欠員が生じたということでございます。したがいまして、職員その他がきちっと、通勤の足にもなっているということでございますので、通勤できないということになれば入所者の処遇にも問題が生ずるということから、安定的に運航できるということから民間の委託をしたということでございます。

それから、実際上、今「まつかぜ」の運航を行っているということについては、今官用船の方は専ら入所者とか施設の方に、療養所の方の視察等に来られる方が使っていただくということでありますけれども、通勤については今民間委託の船を使っているということでございます。

実態の運航としては、民間の船を使って通航される方が百二十人ぐらい利用されることがありますけれども、官用船の方についてはそれほどの人数がないということから、今「まつかぜ」のみの運航を行っているということでございます。

○仁比聡平君 私の問いに答えていないじゃないですか。「せいしょう」と「まつかぜ」の二隻を、初めから「まつかぜ」一隻にするつもりだったのかと問うているんですよ。それだったらば、それは初めから立ち枯れさせるというつもりですか。そんな計画を押し付けたんですか。

私たちには、「せいしょう」と「まつかぜ」はローテーションで使う、民間委託の船は民間委託の船で、つまり三隻が動くと言っていたじゃないですか。

○政府参考人(神田裕二君) 先ほど申し上げましたように、最初から一隻だけにするということを決めていたわけではございませんけれども、先ほど申し上げたようなことから、実態的な利用人数等を勘案しまして「まつかぜ」だけを運航しているということでございます。

入所者の方でありますとか、あるいは視察に来られる方が主として乗られるということでありますので、多いときで十数人、少ないときには数人というような実態でございますので、この「まつかぜ」というのは年式も新しいし馬力もあって速度が速いということから、主として「まつかぜ」だけを運航するということになったということでございます。

○仁比聡平君 昨日までの私への政府のレクチャーとは全く違う御答弁をされていて、極めて重大だと思います。

「せいしょう」は今、高松港に係留をしている、つまり運航されていないという状態になっているわけですが、大島の港の都合によって、三隻を並べて係留することは問題があるという指摘が関係当局からあってこういうふうになっているという説明を受けてきたけれども、繰り返し質問しても、局長が今言っているのは、入所者が減り、その園を訪ねていくそういう方々のニーズはこれ一隻で足るからであるというような、そんな趣旨の説明していますよね。もしそうなんだったら、これ立ち枯れさせるということじゃないですか。とんでもない話だ。

○政府参考人(神田裕二君) 現在の大島における、係留できるかどうかということでいうと、大型船が二隻は係留できないということでございます。今の利用の実態からしますと、民間船が主として職員の通勤等に使われていて、朝と夕方係留している状況にございます。日中の時間帯、大島と高松の間は「まつかぜ」で運航しているわけでございますけれども、さらに朝夕にこの「せいしょう」を運航させるということになりますと、御指摘のように、現在の民間の委託船と二隻重ねて係留しなければならないということから安全上の問題が生ずると、そういう問題もございます。

○仁比聡平君 今の答弁をされた、問題もございますというのはどういう意味ですか。そうした指摘が関係当局からあるということが「せいしょう」を今のところ係留しているという理由ではなくて、本音があるということですか。

○政府参考人(神田裕二君) 御指摘のように、大島港に民間の委託船と「せいしょう」という比較的大きな船舶を二隻停泊させることができないということもございます。

それから、先ほど申し上げた、なぜ「まつかぜ」を運航しているかというと、実際の入所者の了解を得た上で、実際に乗船する人数も勘案しまして、それから、先ほど申し上げた「まつかぜ」の能力ということも勘案して「まつかぜ」を運航しているということでございます。

○仁比聡平君 曖昧にしちゃならない問題なんですよ。官用船は唯一の足であり、きずななんですよ。これから大島青松園の将来構想を考えていく上でも、この足をどうするのか、そこが一番大事なことなんですよ。この責任を曖昧にするような、そんな答弁は絶対に許されないですよ。私、この問題、引き続き徹底して追及をしていきたいと思いますけれども。

元々、官用船は自家用船として、入所者、職員、そして生活物資の輸送などの任務を果たしてきたわけです。だからこそ、大島港にいて、そこから庵治や高松に行き来をするということが極めて大事なんですよね。ところが、これ民間委託をしたという下で、海上保安庁においでいただいていますけれども、二月の二十五日午後四時頃、その民間委託をされた船が事故を起こしています。概要を御報告ください。

○政府参考人(秋本茂雄君) 今御指摘の件につきましては、本年、平成二十八年の二月二十五日でございますが、旅客船「べんてん」が香川県高松市の大島港に入港する際、岸壁に接触し、その弾みで乗客が負傷した可能性があるということでございまして、現在、業務上過失傷害等の容疑で高松海上保安部において捜査を行っているということでございます。

○仁比聡平君 捜査を行っているということは、つまり業務上過失傷害あるいは業務上過失往来危険罪も含めた容疑があるということなんですよ。

大臣、ちょっとお尋ねしたいんですけれども、これまで官用船でこうした母港の大島港に岸壁に衝突したとか、そんな事故は起こしたことはないんです。入所者も乗るんですよ。そうした船がこうした事故を起こすというのは、これは、今回の事案は今から捜査を尽くされるんだと思うんですけれども、一般論としてそうした事故というのはあってはならないと思いますけれども、いかがですか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 二月の二十五日に大島―庵治便において民間委託をした今の船が大島港に着岸する際に事故が起きた、そして負傷者が生じたというのは事実でございまして、遺憾に尽きるというふうに思います。

本件につきましては、今お話があったとおり、高松海上保安部において捜査中ということでございます。私どもからは、委託先会社に対して、今後このようなことがないように安全運航を徹底するよう指示をしておるわけでありますけれども、いずれにしても、こういった大事なルートで民間委託をした中でこういう事故が起きたことは大変残念なことだというふうに思っております。

○仁比聡平君 そうした下で、私は安定的な運航のためにも、この間、船乗りさんたちを海事職として処遇するようにするという方向を大きく踏み出して、実際に応募者も増えているわけです。

となれば、官用船に戻すということを考えていいと思うんですけれども、そのときに、行(二)職員だった時代の実質手取り賃金よりも、海事職に処遇されることになったのに逆に実質賃金が減るのではないかという大きな不安があるんですね。これは実態は調査をしてもらいたいと思いますが、最後一問、大臣、これ、これまでの収入よりも下がるというのはおかしな話。これ処遇を上げるわけですから、これまでの処遇よりも上がるというのが今度の方針の理由だといいますか趣旨だということで御確認はいただきたいと思いますが、いかがでしょう。

○政府参考人(神田裕二君) まず事務的なことについてお話しさせていただきますけれども、勤務環境ということで、超勤の実態については私どもつぶさに把握させていただいておりまして、二人の船長につきまして、四月から十二月まで平均いたしますと平均六百時間ぐらいの残業をしているということでございます。これを九か月分を十二か月、一年間に換算しますと八百時間ぐらいの残業になると。それが民間委託以降、この船長さんたちの超過勤務というのは三か月で百時間、年間でいいますと四百時間ぐらいに減るということでございますので、超過勤務の実態としては大体八百時間のものが四百時間に減るのではないかというふうに考えておりますが、勤務実態についてはしっかりと今後も把握していきたいというふうに思っております。

○仁比聡平君 大臣、いかがですか。私の問いに答えてくださいよ。

○委員長(三原じゅん子君) 申合せの時間が過ぎておりますので、簡潔にお答えをお願いします。

○国務大臣(塩崎恭久君) 今局長から答弁いたしましたけれども、いずれにしても、この超過勤務などについてはしっかりと調査をした上で処遇を決めていかなければいけないことでありますので、引き続きその調査をしっかりとやった上で、処遇についても考えていきたいというふうに思います。

○仁比聡平君 処遇を上げなきゃ駄目なんですよ。

終わります。