○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

安倍政権は、強行した安保法制、戦争法を来週二十九日に施行しようとしていますが、国民の戦争法廃止、立憲主義と民主主義を取り戻せと、この怒りの声は大きく広がっています。今日は、戦争法下の民間動員についてお尋ねをいたします。

一枚目のパネルを御覧いただきたいと思います。(資料提示)

これは、神戸の戦没した船と海員の資料館に刻印されている、「海に墓標を 海員不戦の誓い」であります。太平洋戦争では、国家総動員法、船員徴用令、また産業報国会など、海運の戦時統制と精神的動員の下で船員の大半が徴用の対象とされました。海員不戦の誓いは、「中国との全面戦争から一九四五年八月の軍国日本の敗北まで、多くの船員と民間船舶が戦時動員され、南方海域で日本沿岸・周辺海域で犠牲となった。「海に墓標を」は、絶対に記憶を風化させてはならないと叫ぶ船と人の無言の訴えである。 海外諸国との友好と協調によって生きる海洋国日本にとって、平和な海は絶対の生存条件であり、われわれ船員は再び海を戦場にしてはならないと決意する。」、こう述べています。

そこで、総理にお尋ねしたい。

さきの大戦で民間船舶と船員にどれほどの犠牲が出たと認識をしておられますか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 今日の我が国の平和と繁栄はさきの大戦における尊い犠牲の上に築かれており、その中に民間の船舶も数多く犠牲となったと認識をしております。

その正確な数は把握はしておりませんが、民間団体の調査によると、約六万人の船員の方々が尊い命を落とされているところであり、非常に多くの民間船舶やその船員の方が海に散っていかれたものと認識をしております。改めて、衷心より哀悼の意をささげたいと思います。

○仁比聡平君 戦後も政府は戦没船と犠牲者の正確な調査をしてこなかったわけです。

全日本海員組合によれば、撃沈された民間船舶は一万五千五百十八隻にも上ります。六万六百九人もの船員が犠牲となった。これは軍人の死亡比率を大きく上回り、中には十四歳、十五歳で徴用された少年船員も含まれている。痛恨の思いがいたします。

そうした痛苦の反省の上に立って、憲法は平和的生存権、そして憲法九条を定めました。この下で民間船員の戦争動員が認められるはずもないんですね。

ところが、政府は、戦争法と同時進行で民間海上輸送力の活用と称して、有事の際の危険地域への部隊展開に民間船舶を動員する体制づくりを進めてきました。

今月十一日には、特別目的会社高速マリン・トランスポートとの間で、二〇二五年十二月まで、約二百五十億円のPFI契約を締結しました。これは、民間フェリー二隻で商業輸送を行いつつ、自衛隊の任務遂行に必要な場合には優先的に船舶を確保するというものです。しかも、そのフェリーに乗り組む船員を予備自衛官として確保できるように、今度の四月から海上自衛隊に予備自衛官補制度を導入しようとしています。

これは、一般社会人や学生を予備自衛官補として採用し、一定の教育訓練修了の後、予備自衛官に任用する、防衛招集されれば自衛官となると。

中谷大臣、そういう仕組みだと思いますが、おおむねそのとおりですね。

○国務大臣(中谷元君) 防衛省・自衛隊が行っているこの民間船舶の運航・管理事業、これは非常に一層厳しさを増す安全保障の環境と、また自然災害等で大量に物資、人員の輸送も必要になるということから、自衛隊の組織だけでは不足をするこの海上輸送能力、非常に迅速に大規模に行わなければなりません。この点におきまして、民間の資金また能力を活用するPFI方式によって効率的に確保しようとするものでございます。

予備自衛官を活用するということでございますが、そもそも予備自衛官というのは本人の希望と、また志願によってそれがなれるわけでございますので、本人の意思に関係なくこのようなことを強制的に強要するということはあり得ないことでございます。

○仁比聡平君 いろいろ言われますが、私の申し上げたとおりの仕組みなわけです。

その予備自衛官ですけれども、総理、防衛省が予備自衛官や予備自衛官補をどんなキャッチフレーズで募集しているか御存じでしょうか。皆さん、御存じですか。「職業サラリーマン時々、予備自衛官。」というポスターなんですよ。予備自衛官は、つまり日頃は一般の社会人、労働者なんですね。ところが、有事となれば、その展開先は戦場です。そこに民間船舶を運航させる。全日本海員組合が事実上の徴用であり、断固許されないと声を上げているのは当然であります。

二枚目のパネルを御覧いただきたいと思うんですが、これは陸上自衛隊のパンフレットに、即応機動する陸上防衛力を構築するとして示されている図です。御覧のとおり、南西諸島地域での有事に際して、陸自への配備を進めている水陸機動団など先遣部隊ですね、これがオスプレイなどで即応展開する。次に、一次展開として機動戦闘車や輸送ヘリが、そして続けて、二次展開として、伊勢湾辺りにありますけれども、海上自衛隊の大型輸送艦やヘリ空母が、そして三次展開として増援部隊、御覧のとおり、民間フェリーの絵が描かれているわけですね。

なぜ自衛隊の艦船だけではなく、防衛大臣、民間船舶が描かれているんですか。

○国務大臣(中谷元君) 示されたチャートは、これは陸上自衛隊が作成をいたしました「強靱」というパンフレットでございまして、これは防衛大綱や中期防で記述されている防衛力の在り方、また施策について分かりやすく国民に示したものでございますが、まず、こういったケースは島嶼攻撃ですね、そういった攻撃、また大規模災害、これに対応する際に自衛隊が展開をしなければなりませんけれども、大綱で示したように、民間の輸送力と連携を図りつつ、統合輸送能力を強化をするということが必要でございます。

中期防におきましても、これにつきまして、自衛隊の輸送力と連携して民間輸送力についても積極的に活用することが重要であるとの観点から、PFI方式による民間海上輸送力の導入について検討する旨が記述をされておりまして、そういう事態におきまして、安全が確保されるようなことが大前提でありますけれども、こういった事態におきまして、民間の皆様方とよく協議をいたしまして、そういった点において輸送の協力を行うこともあり得るということを示したものでございます。

○仁比聡平君 繰り返しになる答弁はちょっとできるだけ短く、大臣、願いたいと思うんですが、つまり、今の御答弁でも、島嶼有事に民間船舶で輸送させるのだということをお認めになったわけですね。

これまで政府は、有事法制の審議の際にも、有事に防衛出動を命ぜられた自衛隊が行動する危険地域への輸送を民間業者に求めることはないと説明をしてこられました。当時、石破防衛庁長官ですが、そういうことがあるとすれば、もうこれは法の趣旨から全然外れるわけでございますと答弁をしています。ところが、今回、平時からのPFI契約という手法でそれを可能にしようとしている。極めて重大だと思うんですね。

総理、つまり、この図御覧になって、今の大臣の説明をお聞きになって、民間フェリーで、この図にあるように、危険地域まで砲弾や弾薬を運ぶと、そういうことですね。総理。

○国務大臣(中谷元君) 法的な話でございますのでお答えいたしますけれども、武力攻撃事態における運航に際しましては、自衛隊は、民間事業者から船舶そのものを借入れをいたしまして自衛官が乗り組んで運航することといたしておりまして、民間船員が運航するということは基本的にございません。

しかし、民間事業者が運航している場合は、これは安全の確保が大前提でございまして、こういった武力攻撃事態における運航に際しては、改めて国と事業者で協議を行う仕組みとなっております。また、事業者の同意がなければ運航することもございません。また、国として安全が確保されていると判断した場合でも、同意するか否かは事業者に委ねられておりまして、仮に同意をしなかったとしても契約不履行は問わない仕組みとなっております。

このように、いかなる場合であっても事業者の意思に反して運航が行われるということはございませんし、また、この輸送につきまして、武力攻撃事態において、あくまでも輸送を行っている間、すなわち輸送開始から終了まで武力攻撃が予想されない安全な地域に限って行うものでございまして、安全確保には万全を期すということは言うまでもございません。言い換えれば、武力攻撃事態であっても、民間船舶が運航し通常の経済活動が行われている地域、これはあり得るところでありまして、本事業におきましては、こうした安全な地域に限定して自衛隊のために船舶を運航をしてもらうということを想定をしております。

○仁比聡平君 いや、全然分かりやすくないですよ。

今の、自衛官が有事は運航するというふうにおっしゃるんだけれども、その自衛官というのは、船員として、予備自衛官として日頃は民間会社で働いている人でしょう。これを防衛招集して自衛官として運航させるというのであって、元々民間船員なんですよ。

危険地域に運航させるのかどうかの運航協議のお話を今大臣されましたけれども、契約書には七十七条というのがあります。これは、防衛出動下で危険地域と判断されなければ民間事業者が運航することになっている。つまり、防衛出動の下でも民間事業者が運航することがあり得ると、先ほども中谷大臣お話しになったのはそういう意味なんですね。しかも、その運航協議というのは、契約の内容になっている運航判断要件の案によれば、個別の事態の発生状況や具体の輸送所要を総合的に勘案し行われるということになっている。この判断根拠というのは、これ防衛省しか持っていないでしょう。特定秘密でしょう。結局、事態認定を行う防衛省、政府の判断次第ということじゃありませんか。そうなるのは明白です。

今回の契約で、大臣、聞きますけれども、危険物を搭載できるようにフェリーを改修させることになっていますね。何を運べるように改修させるんですか。

○国務大臣(中谷元君) これは、まず、この管理事業につきまして、統合機動防衛力の実現のために必要でございます。

この場合の改修につきましては、防衛出動などの場合に自衛隊が船舶そのものを借り入れて自衛官が乗り組んで自衛隊自ら運航することにしておりまして、防衛出動の場合などに自衛隊が使用する弾薬、燃料といった危険物を輸送するために改修をするものでございます。

○仁比聡平君 ちゃんと具体的に通告をしていたのにお答えにならないから私の方で言いますが、砲用完成弾、弾丸、ロケット、それから軍事車両用の軽油やガソリン、軍需用の灯油、そしてヘリ用のタービンエンジン用航空燃料などを積載して運航することができるように民間フェリーを改修させるわけですよね。戦車、PAC3、輸送トラックや機動戦闘車などもこれに載せて輸送すると防衛省から伺いました。

結局、どう言おうが、民間フェリーで兵たんを行うということなんですよ。それは軍事行動のための輸送であって、戦時国際法上、攻撃の対象にされることになる。それは、出発港から到着港までその航路全域、これが攻撃の対象になるではないかと。ずっと問題になり続けてきたわけですね。有事における防衛出動命令が出るなら、フェリーは速やかに出港態勢を整えなければならないということとされています。

そこで、船員たる予備自衛官はどうなるのか。予備自衛官補は、補になるときは志願だというふうにお話がありますけれども、それは、なるとき、採用されるときの話であって、その後一定の教育訓練を経て予備自衛官に任用されれば防衛招集され、出頭した時点で当然に自衛官としての任務に就くことになりますね。

そこで、大臣、出頭しなかったら、つまり予備自衛官に任用されているけれども、この事態で運航を自分は望まない、出頭しないということになったら、どんな処罰を受けますか。

○国務大臣(中谷元君) 前提を申し上げますけれども、予備自衛官とか予備自衛官補、これは本人の志願でありまして、本人が望まない限りはこういった職を身に付けるということはできません。

さらに、申し上げますけれども、事業において民間事業者から船舶そのものを借受けをして自衛隊自らが自衛官により運航する場合には、予備自衛官の活用も考えられますけれども、その場合には、基本的には退職した元自衛官が志願して採用されるということを想定をいたしております。

今回、陸自で導入している予備自衛官補の制度を海上自衛隊に導入したというのは、元自衛官でなくても志願すれば予備自衛官補として教育訓練を受けた上で予備自衛官となることを可能とすることを予定しております。しかし、これはあくまでも予備自衛官のソースを拡大するということを目的としたものでありまして、海上自衛隊の予備自衛官につきましては、引き続き退職した元自衛官が志願をして採用するということが基本になります。

あくまでも、予備自衛官にしても予備自衛官補にしましても、あくまでも本人の志願に基づいて採用されるわけでありまして、この事業の船員も含めまして、いかなる人に対しても強要、強制、これをすることなく、本事業の民間事業者に対しても、船員の希望、これを尊重するように求めております。そして、本事業の契約書におきましても、予備自衛官を希望しないで船員となった場合について、国及び事業者双方はその希望を尊重し、国は予備自衛官には採用しない旨を明記をしておりまして、民間事業者がこれに違反した場合には契約違反に当たるということでございますので、いかなる意味におきましても強制的な徴用には当たらないということでございます。

○仁比聡平君 安倍政権の困ったときの長答弁と。本当に恥ずかしくはありませんか、大臣。今大臣が長々答弁したことは、私は分かっていると言っているじゃないですか。

私が聞いたのは、そうやって志願して、最初はですよ、予備自衛官補になった、訓練を受けて任用されて予備自衛官になった、防衛招集が掛かったというときに出頭しなかったらどんな処罰を受けるかと問うたのに、答えない。

これは、自衛隊法の百十九条一項四号に明白な、明確な規定があって、三年以下の懲役、禁錮なんですよ。その船員、つまり有事には自衛官として運航しなければならない船員を民間事業者が確保するというのが今度のPFI契約じゃありませんか。

三枚目のパネルを御覧いただきますが、事業の目的で、輸送所要に合致した民間フェリーの調達・維持管理・運航、予備自衛官の活用を含む船員の確保等を一元的に行う。つまり、船と人の確保を一元的に行うということがこの事業の目的でしょう。

これ、大臣、この一元的にというのはどういう意味ですか。

○国務大臣(中谷元君) 先ほど、やはり予備自衛官、確かに法律どおりではございますが、あくまでも本人の志願によって採用されるということが前提でありまして、いかなる場合においても本人の意思に反して予備自衛官となることを強制するものではないということでございます。

そこで、一元的にということでございますけれども、これはPFI方式を運営する場合におきまして、運営管理、これを一元的にするということでありまして、一般競争入札で落札した企業連合体が、SPC、これはこういった一元的な会社でありますけれども、例えば、輸送所要に合致した民間フェリーの調達・維持管理・運航、予備自衛官の活用を含む船員の確保といった各事業を実施することといたしておりまして、この業務要求水準書におきまして、このことをもってこれらの業務を一元的に行うということにいたしているわけでございます。

○仁比聡平君 つまり、一元的にというのは、船員を含めて事業者に用意させるということだと、そこははっきりした。

それで、志願とおっしゃいますけど、それは自衛官も志願なんですよ。志願に基づかない自衛官とか予備自衛官とか補とか、それはあり得ないんですよ、我が国で。だから、それは分かっていると言っている。

海自OBも含めて、予備自衛官を平時から雇用を確保する。だから、この防衛省が民間事業者に求めている民間業務の水準に船員雇用・養成業務と、ここに書かれているように、一番下ですが、予備自衛官等である本事業船員の雇用と養成を促進するものとすると、こういうふうになっているわけでしょう。大臣、それはそういうことですね。

○国務大臣(中谷元君) いかにも、予備自衛官の確保を含む船員の確保となっておりますが、これは契約企業が新たに船員を採用する際に、予備自衛官又は予備自衛官補になることを希望する方、これを採用していただきたいということを期待しているわけでありまして、企業に対して既に在職している民間の船員の皆様が予備自衛官補になるように促すことを期待するといったものではございません。

○仁比聡平君 何だかね、私が何にも知らないで聞いているかのように思ったら大間違いですよ。大臣がおっしゃる民間事業会社というのは二月の十九日に新しく設立されたんです。まだフェリーも持っていないし、大臣が言うような船員を持っているはずがない。だから、新しい会社が新たに採用する、それは当たり前ですよ。その下で、海自OBが大型船舶を運航できるのかと。

そうした、つまり、海自OBでいざというときに運航要員として補充できる資格者は三月十七日の現在で十一人しかいないと伺いました。もちろん、その資格を持っている海自OBも民間フェリーの熟練はないわけです。それ以外の海自OB、予備自衛官はもちろんいらっしゃるでしょうけれども、資格をお持ちではないし、もちろん民間フェリーの乗船経験もないわけですね。そうすると、大臣が強調される輸送の所要、その任務を達成できないわけですよ。だから、平時から予備自衛官たる船員の雇用を確保させると、それが必要なわけでしょう、大臣。

○国務大臣(中谷元君) 平時におきましては、そういった海技資格を持った方の船員が必要でございます。しかし、あくまでも、自衛隊は、武力攻撃事態においての運航に際しては民間事業者から船舶そのものを借り受けいたしまして自衛官が乗り組んで運航することといたしておりまして、その際に民間船員が運航するということは基本的にはないということでございます。

○仁比聡平君 だから、そのおっしゃる自衛官というのは、元民間船員を防衛招集して自衛官にしているんでしょうと言っているんです。契約では、民間船舶の運航に従事した経験を有することを重要な考慮事項として積極的に確保するとされている。これは当然なんですよ。

総理、大型船舶の運航ということをイメージするだけで私たち専門外の者にも理解できるんですが、その船の特性に熟練した、船長さん以下、航海士さん、機関士、船員さん、こうした船員のチームワークによって初めて安全かつ迅速な輸送ということが達成できる。それぞれの船というのはそれぞれに特性があるわけですから、それぞれごとに熟練が必要だと。例えば、物資の積み方だけでいいましても、最大限効率よく、同時に、どう揺れてもバランスを崩すことがないように配置し、固縛という言葉使うようですが、固縛するには、船体と浮力の重心のバランスを計算してバラストタンクの注水を操作する、こうした熟練が必要です。こうしたチームワークと熟練が必要だ、総理、そうじゃありませんか。

○国務大臣(石井啓一君) 一般的に、船舶の運航は必ずしも同じメンバーによるチームで行われるわけではありませんが、船舶の安全運航には、船員がその船に習熟し、各船員間の連携が図られることは重要であると認識しております。

なお、本事業を実施する事業者からは、本事業に用いる船舶の船員については、自衛隊OBの方を中心として新たに雇用し、十分な習熟の訓練を行った上で運航を行う計画であると聞いております。

○仁比聡平君 つまり、大臣、国交大臣がお認めになるように、それぞれの船ごとの熟練が必要なんですよ。もしバランスを崩せば重大な惨事になる。これは様々な船舶事故で明らかであって、総理、チームワークなんですから、だから、自分が志願しなかったらほかの仲間が行かなきゃいけなくなる。それは労働者にとって耐え難い二者択一なんですよね。だってそうでしょう。日頃、団結して、その船を運航するのに頑張っているんですよ。その中で自分が行かないとなれば、代わりに誰かが絶対行かなきゃいけない。それは一つの船だって交代要員はいるわけですから。そうした二者択一をこれ強いることになりませんか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 先ほど中谷大臣から答弁をさせていただいたところでありますが、民間事業者から船舶そのものを借り受けるわけでありますが、つまり、この借り受ける船舶については、日頃からその船舶の運航について訓練も行うわけでございます。その上において、海上自衛隊の使用する船舶として自衛隊自らが運航する場合には関係法令の適用が除外されることから、海技士の資格は不要であるわけでありまして、したがって、海技士の資格を有する船員の方を予備自衛官にしなければ危険な海域での運用ができないということではないわけでございまして、つまり、こうした考え方の下に、先ほど、最初に申し上げましたように、日頃しっかりとその使用する船舶について乗り込みながら訓練を重ねているということでございます。

○仁比聡平君 有事に自衛隊艦船に船舶法などの適用が除外されると、それは自衛隊法に書いてあるんですよ。総理が今おっしゃったとおりなんですけれどもね。だけど、肝腎のことを忘れていらっしゃるんですか、見ないようにしているんですか。

つまり、日頃は民間船員なんですよ。この人を予備自衛官に任用して防衛招集を掛けたら、自衛官としてその人たちが運航するんですよ。その仕組みを今こうやって踏み出そうとしている。同じ船に乗り続けたいと願うだけで、予備自衛官補への志願を求められる、船員にとってはそういうことにもなります。裸傭船をして志願者で運航するというなら、それは志願しない多くの船員たちからなりわいを奪うということでもあります。船舶の徴用というのはそういうことなんですよ。

結局、本人の意思を尊重すると繰り返すだけで、民間船員を自衛官とし、有事に民間船舶を危険地域に動員する体制づくりにほかならない。こうした有事の民間動員は日米合意でも繰り返し強調されてきました。今度の契約でも、在日米軍の輸送役務も輸送対象に含まれております。

昨年四月に合意した新ガイドラインでは、日本有事のみならず、重要影響事態そして存立危機事態のそれぞれにおける後方支援の項目に、民間が有する能力を適切に活用すると明記をされていますね。総理、重要影響事態や存立危機事態における米軍の人員、物資の輸送を行うんですか。

○国務大臣(中谷元君) 基本的に、我が国の武力攻撃事態等におきましてこういった物資の輸送を行うということが目的でございますが、重要影響事態やまた存立危機事態におきまして、これはあくまでも安全が確保されるということが前提でございますけれども、そういう事態は排除できないと考えております。

○仁比聡平君 お認めになったわけですよ。重要影響事態や存立危機事態で米軍の人員、物資の輸送を行うことは排除できないと、今、中谷大臣お認めになったわけですよ。重大じゃありませんか。日米合意はそういう合意になっている。戦争法はそういう事態を行えることにした、百八十度転換をした。今これを日米軍事一体で具体化をしていっている。

元々、自衛隊の下、幹部たちが、日本有事であれ周辺事態であれ、民間等の協力、支援が不可欠である、作戦の成否はまさに民間の協力をどれだけ確保し得るかに懸かっているという研究を発表をしたことがあるわけですね。

しかも、二〇〇五年の米軍再編に関する2プラス2合意では、高速輸送艦、HSV、ハイスピードベッセルによる海上輸送を拡大するという合意がされていたんですが、パネルを御覧いただきたいと思います。

上が、これ二〇〇三年のイラク戦争のときに米軍が兵たんで使っていたスウィフトと呼ばれる高速輸送艦ですが、これ今新しい船に転換中だと聞きますが、下が今度の契約で防衛省が確保するというナッチャンワールドですね。これ、御覧のとおり、同じ船、同型艦なんですね。これ、高速の双胴船、同じ会社が造った同じ船、大臣、そうですね。

○国務大臣(中谷元君) お尋ねの米国の高速輸送船スウィフトとこの民間船舶であったナッチャンワールドは、両方ともオーストラリアのインキャット社が製造した同じ型の高速船であると承知しております。

○仁比聡平君 つまり、今度の契約というのは、日米新ガイドライン、対米誓約の実行に踏み出し、米軍のニーズを満たす大型で高速の船舶を常時確保する、その乗組員を予備自衛官、その補として常時民間事業者に確保し、いざというときはすぐ使うという、そういう仕組みなんですよね。

時間がなくなりましたから私の方で紹介をしますが、イラン・イラク戦争のときにはペルシャ湾内で民間船舶の攻撃が現実化をしました。船員たちは跳弾を防ぐために土のうを船室に積んで休息を取った、そうした事態でしたけれども、その下で、被弾した船舶が十九隻、日本人二名を含む四人が死亡し、負傷者は十九人、うち日本人がお一人、拿捕された船舶は五隻、イラク領内に閉じ込められた船舶は七隻に上ると。

総理、私、これは本当に凄惨たる犠牲だと思います。二度とこうした犠牲を起こしてはならない。こうした有事の民間船舶の動員は撤回し、戦争法は廃止すべきじゃありませんか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 先ほど来、中谷大臣から答弁をさせていただいておりますように、民間事業者に二隻の船舶を維持管理してもらい、必要に応じて自衛隊の輸送のために迅速かつ優先的に船舶を運航してもらう仕組みであります。

これは、もとより、民間事業者に運航してもらう以上、これ安全の確保が大前提でありまして、武力攻撃事態における輸送については、あくまでも輸送を行っている間、すなわち輸送開始から終了まで武力攻撃が予想されない安全な地域に限って行うものであり、安全の確保のために万全を期していくことは言うまでもないわけでございます。

と同時に、国が安全が確保されていると判断した場合であっても同意するか否かは事業者に委ねられているわけでありまして、同意をしなかったとしても契約不履行は問わない仕組みとなっているわけでありまして、戦時徴用とはこれは全く違う仕組みであるということは御理解いただきたいと思います。

○委員長(岸宏一君) もう時間ですからね。

○仁比聡平君 はい。

もう、そんな安倍政権の暴走は国民が必ず審判を下すと宣言をして、私の質問を終わります。