○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

午前中の有田議員、小川議員に続いて、失踪実習生の聴き取り票に関わる問題についてお尋ねしたいと思います。

法務省が、最賃以下というのはチェックをされていた二十二人であったと。けれども、といいながら、実は、野党が書き取り、分析をしたら、最賃以下は千九百三十九人、六七%に上るということであった。過労死ラインを超える労働時間、これが一〇%に上ると。

こうした実態について、まず、午前中の大臣の答弁の確認なんですけれども、この指摘は重く受け止める、ただ、これは旧制度下で起こったことである、新制度で適正化をしていくのであると。骨子、そういうことでよろしいでしょうか。

○国務大臣(山下貴司君) お答えします。

まず、そうした調査でそういう傾向が見られるという御指摘、これは本当に重く受け止めなければならないと思います。

これについて、まず一つは、新制度についてしっかり運用していくということはそうではあるんですけれども、やはり旧制度下において仮にそういった違法、不正な運用をしていた実施機関、こういうものがあるのだとすれば、それは、やはり今後新たな人材受入れについても受入れ機関となるのは適当ではないのではないか、あるいは、今後、技能実習実施機関として継続的に認めることが適当ではないのではないか、そういった様々なことがございます。

ですから、私は、今回の調査結果を受けて入管局長に対し、違法あるいは不正が認められるものについては徹底的な調査を行うようにというふうに指示をしたところでございます。

○仁比聡平君 傾向と大臣はおっしゃいましたけれども、傾向ではなくて実態だということ。それから、旧制度下で監理団体なり実習実施機関なりを始めたところも当然正されていかなければならないと、これは当たり前のことであります。

私が今尋ねたいのは、新制度で適正化をしていくんだという御答弁についての法務省、法務大臣、歴代法務大臣の認識なんですね。繰り返し新法で適正化すると与党・政府がおっしゃるこの技能実習適正化法の法案が、平成二十八年の十月二十八日、参議院の本会議で審議をされました。このとき、当時の金田法務大臣は私の質問に対してこう答えています。そのまま読みます。「次に、技能実習生の失踪についてお尋ねがありました。 技能実習生の失踪者数は近年急増をしており、この事態を重く受け止めております。入国管理局が実施している失踪原因に関する調査によりますと、技能実習意欲が低く、より高い賃金を求めて失踪する者が多いため、技能実習生には制度の趣旨を周知徹底しますとともに、」云々。

つまり、入管が実施している失踪原因に関する調査、今日午前中からの確認で、今我々が問題としている技能実習、失踪実習生の聴き取りということに至った調査であることはこれは明らかなわけですが、その調査によりますと、技能実習意欲が低く、より高い賃金を求めて失踪する者が多いという答弁を前提に新法、実習適正化法を提案をしたというのが法務省でしょう。

大臣の今日の答弁と全く違うじゃありませんか、大臣。

○国務大臣(山下貴司君) 失踪の原因について歴代の大臣が答えたところ、これはその聴取票の個票の記載のみならず、実際に聴取に当たったあるいは入国警備官、あるいはその技能実習実施機関などからの聴取に基づいて総合的に判断した結果、それをお答えしているのであろうというふうに考えております。

そして、技能実習制度の見直しにつきましては、これは技能実習法の御審議のときにも御検討をいただきましたけれども、それは、例えば監理団体に対する規制が必要ではないか、あるいは送り出し国への対応が必要ではないか、監督体制を強化すべきではないか、技能実習生について例えば同等報酬要件の徹底が必要ではないかなどなど様々な御指摘、これをいただいた上で技能実習法、これを閣法として提案させていただき、これは当時の民進党からも衆議院で修正いただき、そうした中で与野党の、野党の皆様の賛成も得ながら、全てではございません、ただ、与野党の幅広い支持の下で新たにこの技能実習法が制定されたと考えております。

○仁比聡平君 大臣、私が問うているのは、大臣が今、後半、るる時間を使われたその問題ではないんです。そういう言い訳を聞いているんじゃないんです。技能実習生の失踪に当たる深刻な実態について、法務省はどのように認識をしてこれまで制度を積み重ねてきたのかという基本認識の問題ですよ。

金田大臣が本会議で答弁をしている。つまり、技能実習意欲が低く、より高い賃金を求めて失踪する者が多い、この認識に、平成二十八年、新法の提出時、そういう認識に立っていたでしょう。入管局長。

○政府参考人(和田雅樹君) これまでの累次の国会答弁におきまして、先生御指摘のような答弁をしております。

これにつきましては、技能実習生が行方不明になった際の監理団体及び実習実施機関等から地方入国管理局に対する報告でございますとか、それから先ほどの聴取票における結果、あるいはその際の入国警備官の聴き取り結果などを総合して判断したものでございます。

○仁比聡平君 いや、私が聞いているのは何を根拠に総合的判断したかじゃないんですよ。判断の根拠資料を聞いているんじゃないんですよ。結論としての評価、認識として、実習生たちは、実習意欲が低く、より高い賃金を求めて失踪する者が多いと、そういう認識だったでしょうと。それはきちんと答弁してください。

○政府参考人(和田雅樹君) 御指摘のような認識に立っていたものでございますけれども、あわせて、技能実習生に対する一部人権侵害等があるということもお答えしていることかと思います。

○仁比聡平君 私が、こうした実態は技能実習制度が抱える構造的な問題が根本にあるではないかという問いを次にしておりますが、それに対しての金田法務大臣の答弁は、「一部の制度趣旨を理解しない者によって安価な労働力の確保策として使われたり、一部の送り出し機関により保証金の徴収が行われているといった問題があると認識をしております。」という答弁。つまり、一部の者がやっているだけだと、制度全体はうまくいっているのだという答弁、そういう姿勢ですよ。

ちょっと話を戻しますと、技能実習生について、技能実習意欲が低く、より高い賃金を求めて失踪する者が多いと、この認識に立ったままこの今回の入管法改定、これを政府が提案をしていると、与党もそれをのんでおられると、これはもう明らかですね。

この国会の審議に入って、野党の追及でとうとう失踪実習生のこの聴き取り票というのを閲覧はさせざるを得なくなったと。あなた方は、それでもその一部しか見ることはできないだろうとたかをくくっていたかもしれないけれども、そうはならなかった。国民の皆さんの大きな、このままこの国会で推し進められるのはとんでもないという声にも励まされて、今日午前中、ありますように、書き取りは完了させたわけです。結果、これまでの、つまりこの法案提出に至る法務省の認識、政府の認識は、根本から間違っていたということが明らかになっているわけですね。

これ、法案提出は、失踪実習生について、より高い賃金を求めて失踪する者が多数、受入れ側の不適正な取扱いによる者も少数存在という、そういう認識の上で、その認識の下に立って提出をされたということは、これはもう事柄の経過が明らかにしてあるわけですね。

これ、新法、新法で適正化すると繰り返していますけれども、この僅か二年前の制度趣旨に関わる根本の答弁、これも言ってみれば脇に置いて、この国会のこの審議の場を言い繕って先に進むと、そうやって法務省への白紙委任、政府への白紙委任、これをさせさえすればあとは勝手だと、そんなことは絶対に許されないわけですね。

これ、より高い賃金を求めて失踪する者が多数と、この認識に立って法案を提出したということは事実でしょう、大臣。それから、このより高い賃金を求めてという表現の意味についてはどう考えているんですか。

○政府参考人(和田雅樹君) より高い賃金を求めてという表現でございますけれども、これは、低賃金を失踪の動機としてチェックしている者が多かったことから、低賃金に不満を持って失踪したということから、より高い賃金を求めてという形で取りまとめたものでございます。

○仁比聡平君 何を、大臣に認識を聞いているのに、局長が出てくるんですか。

何しろ、法務省はそうしたより高い賃金を求めて失踪する者が多数だと言っていたわけです。そんな認識で法案を準備したあなた方に、この表現の意味について答弁する資格ないでしょう。何だか、ミスをしたとか、今では、今の御答弁のように、低賃金という言葉を殊更に取り立てて、三分の二を超えるとか最も多いとか言い繕っていますけれども、それは言い繕いでしょうと。

技能実習生が、意欲が低くて、より高い賃金を求めて失踪すると。つまり、大臣、もう一回聞きますよ。このより高い賃金を求めてという表現は、一般には、日本語で聞きますと、一応の賃金をもらっているけれども、もっともらえる仕事の方がいいなあというので、より高い給料をもらえる、多い給料をもらえる仕事に転職をしたい、変わりたい、そういう意味に聞こえるんですよね。大臣はそう聞こえませんか。

○国務大臣(山下貴司君) これはもう文字どおり、今もらっているよりも高い賃金ということで、その今もらっている賃金が、これが最低賃金以下であれば、これはやっぱり法令違反ということになります。そして、契約時の賃金と違うということであれば、それは話が違うということでございまして、そういったことについて違法、不正が認められるものについては、これは反面調査等で調べなければならないというふうに思っております。

そして、この技能実習生がしっかりと技能実習に行って、専念していただくためには、これはやはり賃金関係においてもしっかりした対応が必要だということで、この新たな技能実習法におきましては、同等報酬要件の徹底が必要だということで、例えば計画認定申請の際に実習実施者が説明した、同等額以上であることを説明した書類の提出が必要であることであるとか、あるいは定期に負担する費用について、その額が適正であることを説明した書類の提出が必要であるということをしっかりと担保するための制度を新たに設けているということでございます。

○仁比聡平君 野党の追及によって実態を暴かれての言い逃れ、甚だ見苦しいと言わなければなりません。

あなた方は、技能実習生の現行の実態をゆがめて認識をしてきた。で、その実態が今あらわになっているわけです。より高い賃金を求めてという意味を、低賃金、一般にくくって、多くがより高い賃金を求めているというふうに今認識をしているというのがせいぜいのところでしょう。

今大臣も少し答弁の中で触れざるを得なかったけれども、一応賃金もらっているけれども、それよりも多いお給料が欲しいということと最賃違反ということは、これは質は全く違う。

大臣に伺いますけれど、旧制度化では実習生の給料、賃金は最低賃金以下でもよかったんでしょうか。

○政府参考人(和田雅樹君) もとより最低賃金以下は許されないことでございます。

○仁比聡平君 最賃以下は認められないと。その原則をこの国会でも答弁をするようになったのは、もう本当に血のにじむような技能実習生の闘いがあったからですよ。最賃以下でも、それで働いているんだったら立入りもできないと政府はずっと言い続けてきたじゃないですか、九〇年代、二〇〇〇年代に入って。それがただされて、最賃以下はこれは許されない、最賃法を始めとした労働者としての保護を行うんだという答弁にやっとなってきたのが二〇〇九年に至る法改正のプロセスですよ。

その下で、技能実習計画に賃金はもちろん適正に書かれなきゃいけない、日本人と同等以上でなければならないと、だからこれを入管がチェックするということで適正化するとしてきましたが、その旧制度の下で、最賃以下千九百三十九人、六七%という失踪実習生の聴き取り結果が出ている。そのことについて大臣はどんな認識なんですか。

○国務大臣(山下貴司君) まず、そのような報告がなされたということについて重く受け止めなければならないと思っています。

他方で、これ午前中も申し上げましたけれども、これ聴取票の記載というのは一枚紙において月額が幾ら、そしてあるいは労働時間が幾らとか、そういった記載がなされているにすぎない。これは、この失踪という、いわゆる失踪したとされる技能実習生からの聴き取りのままでございます。したがって、正確な実態というのは、これはやはり反面調査等を適切にやらなければならないというように考えておりますし、そのことについてしっかりとするように入管局長に指示をした次第でございます。

○仁比聡平君 いや、反面調査をやらなければならないと、本人たちが失踪してからどれだけの時間がたっていると思っているんですか。今のこの平成三十年の十二月になって、反面調査をやらなければならないというような答弁が何の言い訳になると思っているんですか。私は、聴き取りをやった入国警備官に対しても失礼な話だと思いますよ。

この聴き取り票というのは、性格としては、本人が、失踪実習生が書いたんじゃなくて、失踪実習生からの聴き取りを入国警備官が行って、我々法律家の用語ではいわゆる供述録取に当たるそうした項目を警備官の認識として記したものでしょう。確かに、最賃以下だというふうに本人が申告したのは二十二なのかもしれません。けれども、実際には六七%が最賃以下だと。最賃以下で、あるいは超長時間、過労死ラインを超えて働かされているのに、それを最賃以下だという認識を持てずにいる、その下で失踪をせざるを得なくなった。

つまり、実習生たちは無権利状態に置かれているということですよ。自分たちは最賃、幾らの金額以上は絶対にもらう権利があるんだということを認識していたら、こんな事態にならないでしょう。最賃以下しかもらえなかったら最賃以下でしたと言うじゃないですか。だけれども、幾らもらえる権利があるのかさえも認識できない状態に置かれて、追い詰められて失踪するんですよ。

この最賃以下のチェック欄が二十二にとどまっているというのは、私はそういう意味で逆に実習生たちの深刻な無権利状態こそ示していると思うんですね。その警備官たちは、そうした実態に追い込んでいる実習先あるいは監理団体、ここを何とか適正化しなきゃいけないと思ったと思いますよ。けれども、実際には、入国審査官も含めて、これだけ膨大な失踪を生み出す矛盾した制度、これを全面的に正すって、できないでいるじゃないですか。

それができるんだったら、今日の答弁だって、この二千八百七十人について、これこれという調査をし、これこれという是正をさせ、これこれという不正をきっぱり正しましたと。厚労省に情報共有したというだけじゃなくて、結果としてどれだけの者が処罰を受けましたと、退場を迫られましたと答弁できるはずでしょう。それが答弁できないというのは、つまり、これほどの深刻な実態がありながら、それを身勝手で不心得な一部の者のせいだと表現をして、制度全体はうまくいっている、だから、そこの実習を三年終えた者を今度は特定技能一だといって働かせるというふうになるんじゃありませんか。

大臣、そういうことなんじゃないんですか。

○国務大臣(山下貴司君) まず、この入国警備官においては、これは、例えば違法等そういったものが認められたような場合について、必要な調査を行うほか、労働基準監督署を含む関係機関への情報提供といったことはこれまでも行っているというふうに承知しております。

その聴取票の記載というのは、先ほども繰り返し申し上げますように、例えば何時間働きましたかということが一枚紙に書いてある、そして幾らもらいましたかということが書いてある。しかし、毎月毎月その給料なのか、毎月毎月その時間なのかということはやはり反面調査でなければ判明しない部分があるんだろうということで調査を改めて指示したところでございますし、またそれ以前においても、先ほど申し上げたように、労働基準監督署を含む関係機関への情報提供等は行っているというふうに承知しておるところでございます。

○仁比聡平君 これだけ問題が浮き彫りになってきながら、情報提供する、これから調べる、そんな法務省を中心にした政府がつくり上げてきたのが日本の事実上の外国人労働者受入れ施策ですよ。人手不足が深刻なそうした例えば下請零細の製造業あるいは建設業や農業などの分野に、その低賃金あるいは超長時間労働と、こういう劣悪な労働条件の下でも、言わば従順にそれに従って、その下で働き続けるほかない労働力を提供すると。母国の送り出し機関と悪質なブローカーが結んで国内の受入れ機関を隠れみのにして、これ横行する。

これ、局長にちょっと尋ねたいと思いますが、最賃以下の実習先の多くに、私たち、これ書き取りで閲覧する中で、不正な監理団体だったり、それを隠れみのにした悪質なブローカーの存在があるということを感じてきているんですね。これまで国会で私ただしてきましたが、例えば高額の監理料名目で、実習実施先から例えば月に一人頭四万円とか五万円の監理料を不当に受け取る、あるいは高額の宿舎代、あるいは光熱費名目で実習生の給料から天引き、ピンはねをして我が懐に入れると。

こうやって、送り出しの時点での手数料だとかあるいは保証金だとかいうのとはまた別に、受け入れてからのこの三年間の間に毎月毎月実習生から搾り取る、人手不足で深刻な実習実施先を一層困難に追い込むという、こういうやからが最低賃金千九百三十九人というケースに結び付いてこれ存在するんじゃありませんか。

○政府参考人(和田雅樹君) 御指摘の点は深く受け止めるところでございまして、不当な金銭等を徴収する監理団体等につきましては、適正に、旧法の場合ですと入国管理局による事実の調査等でございますけれども、新法下におきましては、厚生労働省及び外国人技能実習機構と連携いたしまして適切な調査等を行って適切に処理してまいりたいと考えているところでございます。

○仁比聡平君 つまり、そういう悪質なブローカーも含めた実習生の搾取が、現に今この時間帯も実習生三年目として働いている人たちの中にある構造なんですよ。これが政府がこれまで進めてきた技能実習制度の構造的な問題なんですよ。

これをこれから調べるとか労基当局に情報提供しますなどと言って言い逃れることなんて、これ絶対できないと思うんですけれども、こうした実態が浮き彫りになりながら、その下で働いてきている実習生を、政府は十四業種のうち、特定技能一を受け入れるという十四業種のうち十三業種で技能実習からの移行を前提にしています。

前回尋ねた建設業を始めとして、その多くが、八〇%からほぼ一〇〇%、技能実習からの移行だと、初年度はと言っています。来年三年目を終えて特定技能一に無試験で移行できるという人たちについて、前回の質疑で大臣は旧制度下で入国した人たちだということはお認めになりました。

だったらば、今日、有田議員から要求のあった、平成二十六年からでしたか、この失踪実習生についてこれ聴き取りを行ってきた、今年度の前半の分も二千ある、これ全て国会に提出をして、今どんな実態の下において実習生たちが働かされているのか、あるいは働いているのか、そのことを明らかにするのが審議の土台なんじゃないですか。それ抜きに、実習生から移行すると言っている特定技能一を含む新法の審議を前に進めることはできないじゃないですか。

大臣の認識はいかがですか。

○国務大臣(山下貴司君) まず、仁比委員御指摘の技能実習制度、これ抜本改革すべきだという御提言なんですが、だからこそ、それに基づいて二十八年の十一月に技能実習法が定められ、この技能実習制度、これは旧来の在留資格、これが抜本改革されたんだというふうに私は思っております。そして、この僅か一年前に施行されたばかりのこの抜本的な改革である技能実習法、これを誠実に運用していくこと、これがまず今の法務省に求められているのだろうというふうに考えております。

そして、今回新たな特定技能で入国される方というのは、これは自らの意思でこの契約を結んで、そして在留資格を得て、そして日本で働こうと、働きたいという方に在留資格を認めるというものでございまして、劣悪な状況の中で、じゃ、縛り付けて、それでまた特定技能に送り込むといった制度ではないということは、これは是非御理解賜りたいというふうに考えております。

○仁比聡平君 僅か一年前に新法を施行したわけですよ。その実態が分からない。それを今から検証する、正させるというふうに自ら指示をしておきながら、抜本的にこれまでの考え方を変える、私に言わせれば建前もかなぐり捨てるという今度の入管法改正について、何が何でも来年四月からと、拡大をするんだという、そんなことが国民的に合意ができるわけがないじゃないですか。

二〇〇九年改正後、二〇〇九年法後、二〇一六年の改正、昨年の施行、この昨年の施行というのは二〇〇九年以来取り組んできたことを法文化したものですよ。その下で実際にたくさんの失踪者が出ている。最賃以下は賃金としては認められないということは二〇〇九年以来そうでしたと、実はもう少し前からそうですけど、といいながら、実態は六割、七割が最賃以下だと。それをそのままにして前に進められるわけがないじゃないですか。

この実態の解明は、これは国会の重大な責務なのであって、参議院において自民、公明の与党もこの問題を真剣に受け止めて、この委員会に提出をさせるべきです。

委員長、御協議を願います。

○委員長(横山信一君) ただいまの件につきましては、後刻理事会において協議いたします。

○仁比聡平君 別の問題でお尋ねをしますが、ちょっと頭を冷やすのに、入管局長、特定技能一という在留資格で働くことにしようと政府がおっしゃっている労働者は、これ例えば派遣会社に勤めるとか、それによって派遣先の工場に送られることになるとか、あるいは工場の仕事を請け負うというふうにしている会社に正規、非正規という形で雇用をされるとか、こういうあらゆる形態はあり得るわけですね。

○政府参考人(和田雅樹君) お答えいたします。

今回の制度で受け入れる外国人の雇用形態は原則として直接雇用とすることを考えているところでございます。ただ、もっとも、分野ごとの特性に応じまして派遣形態とすることが真に必要不可欠な業種があれば、派遣先において現在受入れ機関に課すこととしております厳格な基準を満たすことが可能かどうかなどを関係省庁と連携して検討の上、最終的に分野別運用方針に派遣形態を認める旨を記載し運用していただくこととなりますことから、間接雇用もあり得るという意味ではあり得るものと考えているところでございます。

○仁比聡平君 局長にもう一回聞きますけど、確認しますけど、その真に必要な場合というのは、これ法案の何条のどこに書いてあることになるんですか。

○政府参考人(和田雅樹君) お答え申し上げます。

法案には直接の記載はございません。

○仁比聡平君 原則直接雇用だというのはどこに書いてあるんですか。

○政府参考人(和田雅樹君) これは政府基本方針で定める予定でございます。

○仁比聡平君 法案にはもうまるで書いていないんですか。これまでの説明で、法案二条の五に言う本邦の公私の機関と締結する雇用に関する契約、これが特定技能雇用契約という契約ですが、この今私が述べた本邦の公私の機関と締結する雇用に関する契約というものが今局長が言っているようなことを意味するんだというような趣旨を説明を受けてきましたけれども、それは違うんですか。

○政府参考人(和田雅樹君) お答えいたします。

この条文そのものは特段、本邦の公私の機関と締結する雇用に関する契約でございますので、制約が加わっているものではございませんけれども、この契約の中身といたしまして直接雇用、原則として直接雇用とする旨を政府基本方針において定めるということを予定しているものでございます。

○仁比聡平君 つまり、二条の五においても政府の裁量を何ら縛るものにはなっていないということをお認めになったわけですよ。そうすると、例えば派遣あるいは請負などの雇用形態についても、これは政府の判断によって定めていけるということになるのではないのか。もしそうなれば、どんな重大な事態が起こるのかと。

皆さんも報道で御存じかと思いますが、三重のシャープ亀山工場で外国人労働者が多数雇い止めにされていました。昨日、労働組合と弁護団が記者会見をしていますけれども、それによると三千人に達するわけですね。

日系人の方々が大きな数を占めるんだと思いますが、昨日のその当事者の記者会見によりますと、外国人労働者が雇用契約を結んだ派遣会社が一か月、二か月単位で派遣会社を転々と変えると。労働者にこれまでの派遣会社への退職届を書かせて、その子会社の派遣会社への契約書などを作らせたりして、あるいは、その中にはペーパーカンパニーをつくったり壊したりということもあるようですけれども、そうやって、本来与えなければならない有給休暇やあるいは社会保険料の負担を免れるという形で外国人労働者を一層搾取をしながら、シャープ亀山の工場にとにかく生産拡大だということで三千人送り込む、これが雇用の調整弁とされて一気に三千人が解雇をされると、こういう事態が起こっているわけですけれども、こういうことというのはこれ特定技能一で起こらない保証はないですよね。

○政府参考人(和田雅樹君) 個別の事案につきましてはお答えを差し控えたいところでございますが、ただ、一般論として申し上げますならば、基本的には、先ほど申し上げましたように、特定技能の場合には、直接雇用を原則といたしておりますので、派遣は極めて限られた場合に、限られた業種において行われるということでございます。

また、派遣形態を仮に取るような場合であったとしても、派遣元はもとより、派遣先につきましても、受入れ機関の基準等、労働法制をきちんと守っていること、雇用者に対してきちんと支援がなされること等が法律上の要件となっておりますので、これらを守られない受入れ機関等につきましては、その受入れ停止等を含めまして制裁措置があるということでございます。

○仁比聡平君 いや、制裁措置があると言ったところで、現にそうした外国人労働者の派遣というものが通用してきたわけじゃないですか。

シャープ亀山工場って、それは名立たる大企業じゃないですか。その名立たる大企業において、そうした安上がりの労働力として外国人労働者が現に使われてきて、今、解雇をされ、深刻な事態になっていると。これをつくり出してきているのが、法務省が所管をしている、あるいは政府が担ってきている外国人労働者受入れ政策でしょう。これに対して、正すと言うけれども、これ実際にはそうはなってきませんでした。

厚生労働省、おいでいただいていますけれども、まず、外国人材をリクルートする、あるいは紹介する業界団体ないしは法人というのは今現在どのようなものがあるのか、そういった国際的な職業紹介事業の直近の許可ないし届出数を教えていただきたいと思います。

○政府参考人(田畑一雄君) 許可又は届出等により職業紹介を行う事業者のうち、国外にわたる職業紹介事業を行う旨の届出をしている事業所でございますけれども、平成三十年十月末時点で、有料職業紹介事業の許可を受けている者につきましては八百三十三事業所、無料職業紹介事業の許可を受けている者については百三十三事業所、無料の職業紹介事業の届出を行っている特別の法律により設立された法人については千八百七十二事業所、無料の職業紹介事業の通知を行っている地方公共団体については二事業所でございます。これは、今申し上げた許可又は届出等により職業紹介事業を行う事業者全体、約二万六千事業所でございますが、その約一割となっております。

国外にわたる職業紹介事業を行う旨の届出をしている事業者の事業主体について網羅的にお示しすることは困難でございますが、例えば株式会社や、中小企業等協同組合法に基づき設立された事業協同組合などが存在すると承知しております。

○仁比聡平君 今御紹介いただいたように、膨大な数の外国人労働者の職業紹介を行う事業所があるんです。今御紹介いただいたように、大きな会社もあります。例えば、パソナなども国際的なそういう人材リクルートというのをもう大きな売りにしているわけですよね、竹中平蔵さんが会長を務めておられます。ちなみに、未来投資会議の委員もされておられるんだと思うんですけれども。

一方で、技能実習制度に関わってきた監理団体、これはブローカーが送り出し機関やあるいは監理団体を隠れみのにして横行すると、暗躍するということになってきた、不正行為も数々起こってきたわけですけれども、協同組合が職業紹介の許可ないし届出をしているという実態もこれたくさんあるわけです。

こうした事業が、表向き、それは適正に行っているというふうに届け出るし、実態は明らかにならないようにするでしょう。だけど、先ほどから紹介をしているこのシャープ亀山に関わってきた派遣あるいは請負、外国人の受入れ、これもそういう形を取ってきたわけでしょう。だけども、実態が明るみに出てみたら、こんな深刻な、つまり職安法四十四条の労働者供給事業の禁止、あるいは無許可による労働者派遣の禁止は労働者派遣法五条に規定をされていますが、こうした事態に反する、重大な法違反が外国人労働者の受入れをめぐって起こっているということなんじゃないんですか。

大臣、どんな認識なんですか。

○国務大臣(山下貴司君) 先ほどの触れられた個別の事件については、これはコメントをというか、は差し控えさせていただきたいと思っております。

ただ、この新たな外国人材の受入れ拡大に関してどのような措置がとられているかということに関しましては、そういった、例えばその特定技能雇用契約、これを結んで、それを、例えばそういう関係の資料を、例えば在留資格認定証明書を交付する際にきちっとしたそういった契約を出してもらって、そして我々が、その受入れ機関、適正かどうか、あるいは不当なその保証金とか、そういったブローカー関与していないかということをしっかりと調べると。そして、受入れ後も、例えば適時の報告を求め、必要があれば立入検査であるとか報告徴求を求めるということでしっかりと管理していくという制度になっておりますので、しっかりとお認めいただけましたら運用してまいりたいというふうに考えております。

○仁比聡平君 いや、そんな、入管庁が届け出られた書類を見ているだけで分かるような、そんな甘いものだったら苦労しないんですよ。

局長にお尋ねしますが、技能実習制度にこれまで関わってきた監理団体は、今、私が問題提起をしている職業紹介だったり、あるいは新法の下における、新法というのが今の入管法改定案に言う登録支援団体にこれはなれるわけですね。登録拒否事由を繰り返しておっしゃっているのでそれは繰り返してもらわなくていいんですが、会社の登記とか申請書類の中で、自分がこういう不正行為に関わっていましたなんというようなことを表に出すはずがないわけです。そんなもの、届け出られた書類を見ているだけでは絶対にチェックできないんです。これは一体どうやって正すつもりなんですか。

○政府参考人(和田雅樹君) 登録支援機関の申請に当たりましては、様々欠格事由等を定めているところでございまして、そうした欠格事由に当たらないかどうかということにつきまして、関係諸機関とも情報交換を適切に行いながら情報を収集し、適切に判断してまいりたいと考えているところでございます。

○仁比聡平君 私の前半の質問、技能実習制度の監理団体は、これからの国際的な職業紹介だったり登録支援団体に、これ、なれるんですね。

○政府参考人(和田雅樹君) 登録支援機関の要件を満たしている者につきましては、それを排除するものではございません。

○仁比聡平君 これまで監理団体を隠れみのにして行われてきたその不正行為について、見抜けないで来たんです、法務省は。政府はこれを正せずに来たんです。それが技能実習生の失踪実態ですよ。これをそのままに横滑りさせると。それは、技能実習生はその影響下にあるというのはこれ当然なのであって、大臣が今日もおっしゃった、特定技能一は自由な契約だとか双方の合意だとか、それは実態をまるで脇に置いた机上の空論なんですって。そんな、もうあしき法律家の典型のような牽強付会、そんなことでこの外国人労働者問題というのをこれ議論しては絶対ならないと思いますよ。

ちょっと、数々質問を通告をしているんですけれども、あと一問程度しか取り上げられないのかもしれませんが、私は、この外国人労働者の受入れ拡大というのは、申し上げてきたように、まさに労働問題だと思います。労働行政固有の問題だと思うんです。労働政策審議会では全くこれ検討をしてこられていません。

これ、厚生労働省、何で労働政策固有の問題として労政審において公労使の三者で議論をしないんですか。

○政府参考人(田畑一雄君) お答え申し上げます。

現在御審議をいただいている新たな外国人材の受入れ制度は、法務省が所管する出入国管理及び難民認定法の改正案に基づくものでありますことから、労働政策審議会への諮問は必要ないものと考え、お諮りをしていないところでございます。

○仁比聡平君 いや、とんでもない答弁だと思うんですよ。

個々の労使関係に起こり得る重大問題についても、それから労働市場に対する、政府の今受入れ見込みだというので三十四万人という、これがもたらすインパクトについても、これ労働問題そのものでしょう。労働政策、労働市場問題であることはこれ間違いない。けれども、厚労省は労政審議会での審議を必要ないとまで言っている。

これ、一体法務省がこの重大な労働問題についてどんな働きを行うことができるのか、私はもう重大な問題があると思うんですけれども、前回の質疑で雇用許可制について、入管局長が自民党の質問に対して国際的な人材獲得競争の競争相手と言わんばかりにして御答弁をされたので、ちょっと聞きたいと思うんですけれども、韓国の雇用許可制では、二国間協定に基づいて、送り出しのプロセスというのは政府対政府の問題になっています。だから、ブローカーや仲介業者の介在する余地というのは全くなくなって、それに伴って、平均の送り出し費用も、二〇〇一年は三千五百ドルだったものが、二〇一一年には九百二十七ドルに激減をしています。

求人とマッチングは、直接当事者間で行われる場合もあるけれども、多くは、韓国産業人力公団というんでしょうか、という公共機関が代行するんですね。標準雇用契約書があって、雇用期間は当初三年が多い。せっかく来てもらったんだから長く働いてもらいたいという当事者の意思にも合致しているわけですね。加えて、失職した人、労災やあるいはハラスメントを始めとした人権侵害から保護する、特に女性を保護するというので、公設シェルターが全国十四に置かれている。

こうした韓国の雇用許可制の下で、つまり選抜、導入、管理、帰国支援、全プロセスを公共機関が行うというものになっている。これ、局長、そのとおりだということでいいですか。

○政府参考人(和田雅樹君) ただいま御指摘ございましたように、韓国の雇用許可制度につきましては、外国人労働者の受入れに際しまして、政府内に設置されている外国人材政策委員会が決定に関与するなど、政府機関が関与しているものでございます。

○仁比聡平君 私が紹介した事実関係を、制度の概要を局長もお認めになったものだという前提でちょっと大臣に認識を聞きますけれども、韓国でできることをなぜ我が国はしないんですか。法律で国の関与、公共機関の関与というのをしっかり定めて、そして受入れ見込みの問題だって、そうした政府が責任持って決めていくという仕組みもこれつくっているわけですけれども、そうではなくて、全部政府の自由裁量、我々に任せてくれと。何でこんなひどい法案を押し通そうとするんですか。

○国務大臣(山下貴司君) これ、新たな受入れの制度設計に当たっては、様々な諸外国における就労可能な主な在留資格について調査検討を行ったところでございますが、どのような外国人をどのような制度の下で受け入れるかという点については、各国固有の政策判断によるものということで、他国の制度を単純に採用できるような性質のものではないというふうに考えております。

例えば、韓国の雇用許可制ということでありましたら、例えばその外国人政策委員会が上限等を決めるということであったり、あるいは雇用主の許可がなければ転職が原則としてできないというふうな制度であったりするわけでございます。

そうした全体のバランスの中で、我々としては、この新たな受入れ制度における対応について、しっかりとした外国人保護の法制も入れながら御提案させていただいているところでございます。

○仁比聡平君 各国固有の政策判断だと言って、安倍政権の判断が間違っていると、こんな法案をこんなやり方でごり押しをしようということなど絶対に認められません。徹底した審議の上で廃案を強く求めて、今日は質問を終わります。