○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

ちょっと通告をしておりませんけれども、まず裁判官の問題について、これまでの議論を踏まえて一問聞きたいんですが、この定員法というのは、国民の裁判を受ける権利、そして何よりも司法の独立、その核心としての裁判官の独立と、これをしっかりと担保する、あるいは法と良心のみに基づいて適正な裁判を行っていくという、裁判をこの日本でしっかりと保障する、そのとても大切な議論なのだと思うんです。

自民党の元榮議員から、裁判官があるべき数に照らしたらそもそも足りないではないかという冒頭問題提起がされまして、弁護士ドットコムも、私、自由法曹団も、その点については全く同じ認識だと思うんですよね。日本は、我が国社会は、司法、これを余りにも軽視し過ぎている。私から言わせれば、今回の裁判官の判事、判事補の定員要求だって、これはもう極めてささやかなものにすぎない。

その下で、先ほど真山理事の指摘のあったケースがあるんですけれども、私の同期あるいは若い裁判官が、手持ち件数は本当に膨大で、けれども、とても優秀な裁判官でしたけれども、若くして三十代の半ばで在職死するという痛恨の思いをこの場でも以前紹介したことがありますが、その下で、裁判所の判事、判事補、そして職員、この定員の要求、これは最高裁として極めて重い思い、重たい思いを持って行っているんだと、それは概算要求にしてもそういう性格のものでしょう。ちょっとまず基本的な認識について答弁をいただきたいと思います。

○最高裁判所長官代理者(中村愼君) お答えいたします。

ただいま委員から御指摘ありましたように、裁判所の使命というのは、適正迅速な裁判を実現するところにあるところでございます。その責務を担っている裁判部門、これにつきましては、それを構成する職員、判事、判事補、その他書記官等、全ての職員の人的体制の充実、これは裁判所にとって最も大きな課題の一つというふうに認識しているところでございまして、毎年この増員をお願いしている、概算要求を含めまして定員法の御審議をお願いしているところは、まさにそういう認識の下に行っているところでございます。

○仁比聡平君 最も大きなというお話があった今年度定員に関する昨年夏に行われた概算要求ですね、ここから差引き十人削っているわけですよ。お手元に表を配っていますけれども、二〇一五年からこの四年間、概算要求から大きく削って差引きがマイナスになるという事態になり、その数が今年度とうとう二桁になったんですね。何千人も要求していませんから、九十七人の増員を要求して、結論十人減員、差引きね。これ、一体何でこんなふうに削るのかと。

私、これまで金額は聞かないでおこうと思っていましたけれども、ちょっとここに至っては聞くほかないと思って伺います。二〇一八年度の概算要求の増員数、これは金額でいえば幾らになって、予算は幾らで、結果差引き幾ら分マイナスになっているわけですか。

○最高裁判所長官代理者(笠井之彦君) お答え申し上げます。

増員要求及び振替増に伴う経費といたしまして、概算要求時には約三億一千五百万円を計上しておりましたところ、平成三十年度の予算におきましては約二億六千五百万円を計上しているところでございます。約五千万円の減ということになっております。

○仁比聡平君 つまり、夏の概算要求で、最高裁判所が来年度この定員は必要であるということを、私から言わせればささやかなですよ、ささやかな要求をしたのが三億一千四百九十万九千円ですよ。国家予算からしたら本当に微々たるものじゃないですか。

その背景には現場のとても重い現実があるわけです。例えば家庭裁判所に、後見も含めていろんな仕事がある。一個一個の事件が複雑困難化する。その問題を個別聞けば、皆さん丁寧に対応していくんだとおっしゃるじゃないですか。

去年の秋に、私、刑事令状、この捜査、差押えなどの令状の夜間執行体制というのは、例えば月に五日の当直のための夜勤をしなきゃいけないし、冬場、少人数庁では書記官が車で何とか行って、それで雪かきして裁判所開けなきゃいけないと。なのに、翌日は休みも取れないでそのまま法廷に臨むと、そういう事態になっているということを紹介して、皆さん驚かれたじゃないですか。それを強いているのが今の裁判所職員の体制ですよ。

その下で、抜本的に本来なら解決するべきところをささやかな九十七人の要求をした。ところが、これを削って、その額は五千万円、四千九百八十八万一千円ということではないかと思いますが、これ何でそんなことになるんですか。最高裁判所としては、この予算、そして定員、これについてどんな認識なんですか。

○最高裁判所長官代理者(中村愼君) お答えいたします。

今の御質問は、概算要求から十人減らしたというところについてどういう考えなのかという御質問ということでお答えさせていただきたいと思います。

委員御指摘のとおり、概算要求の時点から比較いたしますと、増員の数が十人減少しているところでございます。書記官につきましては、家庭事件の処理の充実強化を図る必要があること及び国家公務員の女性活躍とワーク・ライフ・バランスの推進を図る必要があるということから二十五人の増員、そして事務官については、事件処理の支援のための体制強化を図ることと、書記官と同様にワーク・ライフ・バランスの推進ということで二十二人の増員が必要だと概算要求時点では考えたところでございます。

概算要求後、財務省等と意見の交換をする中で、政府が国家公務員の定員についてこれまで以上に厳しい姿勢で合理化に取り組んでいることや、他の行政機関におきましても、定員の再配置により業務の増大に対処し増員を抑制しているということを踏まえまして、裁判所としても、国家機関の一機関として現有の人的資源の有効活用を更に図れるかどうかということを精査いたしまして、改めて増員の必要数について検討し、書記官十九人、事務官十八人の増員を図ることで的確な事件処理を図ることができるものと判断したところでございます。

御説明申し上げましたように、裁判所が財務省等の、との意見交換の中で自主的に判断してこの十人については減少させたというものでございます。

○仁比聡平君 私は、その最高裁が自ら減員したのだと、ここが聞き捨てならないと思うんです。これまで、何で内閣の定員削減計画にそこまで協力するのかと毎年問うてきましたけれども、今年はもう聞き捨てならないと思って聞いているんですよ。

二つ伺いたい。今の中村局長の答弁で、一つは、財務省等々とおっしゃっているんですが、つまり、財務当局と意見の交換をする中でと言っている。いわゆる行政省庁における査定ということを最高裁に対して財務省が行っているのだということが今の答弁ではっきりしていると私は思うんですけれども、財務省等々とおっしゃったのはどこのことですか。

○最高裁判所長官代理者(中村愼君) 失礼いたします。

財務省等々というのは財務省とというところで、ちょっと言葉があれで申し訳ございませんでしたが、財務省との意見交換の中でそういう結論に達したということでございまして、今委員が御指摘になりましたその査定ということでございますが、財務省との意見交換の中では、財務省におかれても司法権を行使する裁判所の特殊性というのは十分に御理解いただいているものと承知しておりまして、先ほど申し上げましたように、この数の点については財務省から査定を受けたということではないというふうに認識しております。

○仁比聡平君 いや、最高裁が財務省を弁護してやる必要がどこにありますか。財務省が三権分立の司法の府である最高裁判所に対して査定をするなんというのは絶対にあってはならない。

もう一点聞きます。国家機関として政府の総人件費の抑制に協力すると、そういう考えなんだと最高裁おっしゃったんですが、私は、その最高裁のその姿勢そのものが誤っていると思うんですね。もちろん裁判所は国家機関です。最高裁も国家機関ですし、一人一人の裁判官が国家機関です。その独立性が正義の担保ですよ。

その裁判所の独立性、司法の独立に関わる重大問題について、財務省から言われて、自らこれはせめてもと要求した概算要求を自ら削ると。そんなことでどうして裁判官やそして裁判所の職員に、誇りを持って国家や社会的権力や、あるいは反社会的勢力であることもある、そうしたもの、紛争に自ら立ち向かえと、法と良心のみに基づいて裁判を受ける権利を実現をするんだと、最高裁言えますか。現場は大変なんだと、ところが、最高裁は財務省の言いなりになって必要な予算を自ら削っていると、やっていられないやと思ったって当然じゃないですか。どんな考えでそんなことやっているんです。

○最高裁判所長官代理者(中村愼君) お答えいたします。

繰り返しになりますが、最高裁判所といたしましては、今の現場の実情等を十分に踏まえまして、毎年毎年必要な人員につきましてその増員要求というのを財務当局に行っているところでございまして、その中で、財務当局と意見交換しながら必要な人的体制の確保というのを毎年検討し、実現していっているところでございます。

○仁比聡平君 毎年そういう努力をしておられるというのは、私は理解しないわけでありません。けれども、その努力というのが、結局、現有人員をこうやって減らされていく中で、その下での効率性という言葉で、あっちからこっちに大きな無理な異動をさせる、一人一人の職員に本当に無理な仕事をさせる、そういう形で現場の負担、とりわけ複雑困難化する中で、その質的な負担というのは本当に大きくなっていると思いますよ。

だから、在職中のメンタルの案件とかあるいは在職死とか、そういう事態が裁判所の中で起こってしまうということになっている。この抜本的な解決には、これは定数を増やすしかないんですよ。

最後一問聞きますが、今日はまだおっしゃっていないように思うんですが、裁判所が定員、定数の問題、予算の問題、議論をするときに、事件数の動向ということで負担の度合いを示す、あるいは議論する、あるいは先ほどの議論だと財務省からもあるのかもしれません。家事事件を除いて各種事件は減少しているじゃないかとか、あるいは横ばいではないかとか。

私は、この事件数、とりわけ新規受理件数とか既済件数とか、この事件数だけで裁判官や裁判所職員の負担の度合いを評価するというやり方そのものが間違っていると思います。手持ち件数が幾らなのか、幾つ解決できたのかというその数だけで現場を締め付けるてこにしてきたのではありませんか。実際に受動機関としての裁判所が新たな仕事をつくるなんということはあり得ないわけですから、ほかの省庁がやっているように、こういうニーズに応えるためにこういう増員が必要ですという議論は裁判所においてはないんですよ。裁判所がやるべきは、裁判を受ける権利をあまねく保障し司法の独立を果たしていく、そのためにはこの定数は絶対必要ですと要求をして、それは国家、財政当局の側は認めるんだというのが憲法の立場ではありませんか。

○委員長(石川博崇君) 時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いいたします。

○最高裁判所長官代理者(中村愼君) 負担の把握という点で、事件数だけでは足りないんじゃないかという御指摘だと思います。

負担を測るために、やはり客観的な指標というのは事件数ということになりますが、我々といたしましてもその事件数だけで判断しているわけではございませんし、その主観的な問題あるいはその事件の困難性といった面も総合的に考えて負担というのを考えているところでございまして、そういうことも踏まえて増員あるいは人的体制の確保というものを検討しているところでございます。

○仁比聡平君 この議論が裁判所の独立につながっていくことを期待して、質問、今日は終わります。