○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
まず、今回の嫡出推定の見直しで無戸籍者をなくせるのかということについてお尋ねをしたいと思います。
資料一枚目は、政府が平成二十六年夏から調査を始めた無戸籍者の数等についての政府資料です。御覧のとおり、以来、累計で四千三百二十八人、うち解消された者が三千五百三十五人、けれど、なお七百九十三人の無戸籍者が把握をされているというのが二〇二二年、令和四年十一月十日現在の状況なんですね。
これちょっと遡って確認をしたいと思うんですけれども、初めて私がこの資料を拝見したのは平成二十七年のときでしたけれども、二〇一五年、この三月十日時点で把握されていた無戸籍者の累計は六百三十八人、うち解消されたのが七十人で、当時無戸籍者は五百六十七人でした。二年後、平成二十九年、二〇一七年の三月の数字は、累計が千三百五人、解消された者は六百三人で、無戸籍者は七百二人でした。
つまり、累計はもちろんどんどん増えている。うち解消される人はいるんですけれども、新たに無戸籍者が発生するわけですよね。だから、減るどころか逆に増えているというのがこの無戸籍者の現実なんですけれども、大臣、これ何でだと思いますか。
○政府参考人(金子修君) 無戸籍者が新たに把握できるということは、お子さんを産んだ方が出生届をしないというケースが起こり続けていて、その方を法務局なりが把握するために増えているということになるんだと思います。
○仁比聡平君 大臣、その出生届をしないという状況が続くということについて、次のページですけれども、戸籍に記載されていない理由という調査がありまして、前夫の嫡出推定を避けるため、これが今の数字で五百八十一人で約七三%なんですね。これ、先ほどの二〇一五年の数字でいいますと、三百九十八人で七〇%、うちDVがあるものが四十一人。二〇一七年、平成二十九年の数字でいうと、五百二十九人で七五%、うちDVは五十四人。今回はDVがあるもの五十三人ですね。つまり、変わらないわけですよ。七割の方々が夫あるいは前夫の嫡出推定を避けるために出生届を出せないということになっているわけですね。
ですから、一枚目に戻っていただいて、年齢の区分がありますね、右上ですけれども、ゼロ歳から九歳まで、これ調査が始まった、あるいは今日の無戸籍者ゼロタスクフォースにつながってくる取組が始まったと言っていいと思うんですけど、その時期から考えたっておよそ八年間ですが、だからこの間に生まれた子供たちが四百七十六人、無戸籍者として把握をされているわけですよ。
つまり、この三百日ルール、嫡出推定を避けるためという、つまり嫡出推定が理由となって出生届が出せずに無戸籍児者が今も増えていると。ここに問題があるんじゃないですか、大臣。
○政府参考人(金子修君) 現行制度の下で無戸籍者が増える理由として推定ルール等が挙げられておりますけれども、現行法にはそのような問題があるということは認識しております。
○仁比聡平君 資料の八枚目、九枚目、大臣、ちょっと御覧いただけますか。
そもそも無戸籍者問題についての深刻さをどう考えているのかということなんですが、その八枚目のNHKニュースウエブの資料は三十二年間無戸籍の女性のことを報じています。
二〇一五年の当時、私も直接この院内集会でお会いをいたしました。お母さんが前の夫の暴力を理由に別居していた期間に別の男性との間に生まれたんですね。出生届を出すと、民法の規定、推定規定で前の夫の子として戸籍に入ってしまうために出生届を出さなかった。その娘さん、その方は本人を証明する書類が一切なかったために銀行口座もつくれない、アルバイト先の給料は親戚の口座に振り込んでもらっていた。調理師になりたいという夢があったんですが、資格を取るには本籍が書かれた住民票が必要というので諦めざるを得なかった。運転免許も取れないし、アパートを借りたりすることもできないという、それが無戸籍という状況じゃないですか。
実際、今把握されている無戸籍者も小さい子たちだけじゃないんですよ。二十代、三十代の方々も多数いらっしゃるんですね。こういう事態を生み出し続けていいのかと、そのことがこの推定規定の見直しに問われています。
ちょっとその観点で改めて大臣に伺いますけれども、この無戸籍者、政府が把握している数だけでもどんどん増えていると、解消してもまた生まれてしまうと。この事態、どう思われますか。
○国務大臣(齋藤健君) 私は、国会でも何度も答弁しておりますが、この無戸籍者問題は何とかこれ減少させていかなくちゃいけないということであります。
それで、御案内のように、なぜ発生するかということは、まあいろんな理由があるんですけど、おっしゃるようなその七五%というものも非常に大きな問題であると思っていまして、これにおきましては、法務省においても、確かに増えてはいるんですけど、平成二十六年から、無戸籍者の徹底した実態把握や全国各地の法務局における丁寧な手続案内等、寄り添い型の取組は行ってきているんですね。
もっとも、このような支援による無戸籍者問題の解消には限界が正直ありまして、将来にわたり無戸籍者問題を抜本的に解消していくためには法制上の課題などに取り組んでいく必要があるというふうに考えられてきたわけであります。
本改正案は、そのような法制上の課題等に対応し、無戸籍者問題を解消する観点から嫡出推定制度に関する規律を総合的に見直して、これにより無戸籍者問題の解消に向けて前進をさせていきたいというふうに考えているところであります。
○仁比聡平君 いや、そうおっしゃいながら、離婚後三百日ルールをそのままにすると。それでは、この政府自身が把握している、それでは届出できないじゃないですかということは何にも解決されない。先ほど福島議員の質問にもありましたけれども、この嫡出推定の少なくとも推定ということの意味を抜本的に政府は改めるべきですよ。
そこで、今回の改正で、離婚後、再婚禁止期間もなくなりますから、だから日を置かずに新たなパートナーとの婚姻届を出すというカップルが生まれます。そうすると、離婚前に、前婚の離婚前に懐胎していた、妊娠していたということであっても、後婚、再婚した新たなカップルのその届出、婚姻届によって、その新たなカップルの子供として推定されることになるじゃないですか。だけれども、三百日ルールはなくなっていませんよね。そうすると、離婚後、前婚の離婚後三百日というその推定が、婚姻届、新たなカップルの婚姻届によって破られるということになりますよね。今回の法改正ってそういう意味でしょう。
○政府参考人(金子修君) 改正法案では、母の婚姻解消後三百日以内に生まれた子であっても、女性が子を懐胎したときから子の出生のときまでに二以上の婚姻をしたときは、子はその出生の直近の婚姻における夫の子と推定する旨の規定を設けています。つまり、再婚後の夫の子と推定するということです。
この場合、前婚の婚姻解消から三百日以内にお子さんが出生している場合は前夫の子との推定が働かないとする根拠はなくて、その推定は残っているものと考えていますが、再婚後の夫の子との推定が優先するもの、これはこちらの蓋然性が高いだろうということでそのような制度とすることにしています。
○仁比聡平君 当たり前ですよね。今回の改正、そういうことですよ。
子供が生まれる、私たちの子よね、幸せになろうねと言って婚姻届出すわけですよ。それを、前の夫の子であるかという嫡出推定がなお働いているというので、そこで重複させる、推定規定が重複するということになってしまったらとんでもないことだから後婚の子という推定規定を置くというのが今回の趣旨だと思うんですけれども。
私が尋ねたいのは、つまり、これまで裁判によらなければ覆せないとずっと言い続けてきた推定は、今回の改正によって、新たなカップルの婚姻届によって覆されるということです。これまでも議論あったように、離婚後の懐胎であるということが医師の証明によって明らかな場合にはこれまでも出生届が出されて受理されてきました。これを更に踏み込んで、まあ前倒ししてといいますか、婚姻中であっても別居という事実が明らかという場合に出生届で子供の戸籍を作るという、こういうふうに変えていいじゃないかと、三百日ルールを、そんなにがちがちの推定をこれから先も続けなくていいじゃないかというのは、これ当然のことだと思うんですね。
法制審の議論の中でも、例えばDVのケースで、実際に住民票が異動していなくても、自治体において、対象となる人がDVなんかの事情で住民票を異動させないまま居住しているということを認定して健康保険証を出したり生活保護の受給を認めたりするというケース、取組が進んできているじゃないですか。自治体は、そこにその親子が、母子が住んでいるということをちゃんと認定している、あるいはDV保護命令の決定書がある、あるいは公的な婦人保護施設の入所しているという事実がある、これが証明できる、あるいは裁判所が婚姻費用分担の審判の中で別居しているということを調査の上でちゃんと認定していると、こういうことがあれば、たとえ婚姻関係が法的に続いている中での懐胎であっても前夫の子ではないということは明らかじゃないですか。
だったらば、その書類を付けての出生届を受理して無戸籍児にはさせない、そういう取組、大臣、すべきじゃありませんか。
○政府参考人(金子修君) 裁判によらずに推定を覆すというのが、そこにどこまで踏み込むかという問題かと思います。
一つは、嫡出推定制度というものをどの程度固いものと考えるのかという今の基本的な民法の姿勢ですね。つまり、婚姻を中心に夫婦に同居義務があり、それから別の方と交渉を持てば、それは不法行為になり得るし、離婚原因にもなり得ると、こういう全体の構造の中で嫡出推定制度というのが維持されてきているわけですけれども、その例外をどの程度認めるのかと。もう抜本的に見直すというのは、それは一つの方策だと思いますが、これは嫡出推定制度自体の意義をどう捉えていくかということをきちんと検証しなきゃいけないという問題になります。
それから、裁判によらずに戸籍の窓口等で、ある事実を認定することによって推定を外せないか。この問題については、法律上の夫婦というものの在り方の問題もありますが、同時に、その運用する戸籍の窓口において、どういう資料であれば、裁判によらなければ覆せないような現行の推定制度を、現行制度の下で推定される父親と違う扱いをするということができるのか。
しかも、これを非常に形式的な審査でしなければいけないという問題もあり、この問題について推定が及ばない子という判例法理があるので、それについて明文化して戸籍で取り扱うようにできないかという議論もしましたけれども、何分、個別性が非常に強い。
裁判においては、その個別性をその事案に応じて扱うということに非常に適していて、夫婦から御事情を聞いて、いつ別居したのかとか、あるいは夫婦の仲はどうだったのかとか、あるいは場合によってはDNA鑑定をするとか、そういう手段があるわけですが、戸籍窓口で限られているその審査の範囲の中でどこまでできるのかということを併せて検討したときに、今回、離婚後ということであれば、これが非常に蓋然性、仁比先生御質問のとおり、蓋然性の問題はありますが、形式的に審査できるということで、ここについては今までと違う取扱いをしようということに踏み込んだということになります。
○仁比聡平君 前段で一つの方策ですとおっしゃったのは大事なことで、だからこそ法制審でも相当な議論がされているわけですよ。
もう一つは、戸籍の窓口、市区町村の窓口でできないこと、判断できないことがと、そんなこと私はないと思いますよ。離婚後の医師の証明という、離婚後懐胎の医師の証明というこれまでの運用についても、いろんな議論があってそういう運用を定めてきたわけだし、先ほど御紹介したDVケースなんかでは、市区町村の窓口が相当関わって頑張っているでしょう。その同じ親子の推定規定だけは裁判をしないと駄目ですよと、突き放すその自治体の方がよっぽど苦しいじゃないですか、つらいじゃないですか。そこを改めて考えるべきだと申し上げて、もう一問、今日聞いておきたいと思います。
それは、国籍法三条改正に関わる問題なんですが、今日も民事局長が、従前からの確立した規律を維持すると、それを明記するというふうに言うんですが、この従前からの運用ということによって、一度取得をした国籍が遡って失われたという子供たちの件数、それから、その子たちがその後どんなふうに扱われたのか、在留特別許可が何件出たとか、あるいは本国に、とりわけお母さんの国籍のある母国に帰ったとか、その実態というのは一体何件ありますか。
○政府参考人(金子修君) 一旦は届出によって日本の国籍を取得したと扱われる者について、その後、日本国籍が否定された場合についてのお尋ねかと思いますが、その者の戸籍が消除されることになりますが、その取扱いが市区町村においてされているため、その具体的な事案やその件数、それから、その後どういう扱いになったかということについては当省で把握できておりません。
○仁比聡平君 従前の確立した規律なんて言いながら、その実態が国会で説明できないというのは一体どういうことですか。
これ、二〇〇八年の国籍法改正、そのときの衆参の附帯決議によって行ってきたという説明を事前に伺いましたけれども、それは事実ですか。
○政府参考人(金子修君) そのように承知しています。
○仁比聡平君 おかしいじゃないですか。資料の後ろから二枚目に衆参の附帯決議を配りました。
参議院の附帯決議でいうと二項目めですけれども、虚偽認知が行われることがあってはならないと。だから、届出に疑義があるときにはちゃんと調査をしなさいという附帯決議ですよね。どこにも、何年たっても、あるいは今回であれば七年を超えても、遡って国籍奪いなさいなんて書いてないじゃないですか。なのにもかかわらず、これを根拠にしてやってきたという、確立した規律といいながら、その実態さえ説明ができない。
入管にもお尋ねしますけれども、そうやって遡って国籍がなくなったということになったら、非正規扱いして、退去強制の手続なんだという説明がこの間ずっとあっているわけですけれども、その子供、国籍を失った、遡って失った子の扱いが何件あって、それがどのように扱われたのかという数字は分かるんですか。
○政府参考人(西山卓爾君) 今委員がお尋ねのような統計については作成をいたしておりません。
○仁比聡平君 結局、戸籍、国籍の当局、市区町村の窓口と在留審査の入管というのは全く連携していないんですよ。それを何だか人道的な配慮をこれまでもしてきたかのような、そんな答弁というのは私は到底納得ができない。
この国籍法の三条改正については抜本的に考え直すべきだということを強く主張して、あとは次回に譲ります。
ありがとうございました。