○参考人(二宮周平君) お手元にレジュメを用意いたしました。大変僣越でありますが、いろんなことをお話ししますので、メモ代わりに使っていただければと思っております。よろしくお願いいたします。
今回、改正提案の趣旨が御説明されていますが、それにプラスして、親子法改正の理念をやっぱり生かすべきではないかと思いました。これを機会に、国際基準に基づく子供の人権保障の視点、これを改正に加えるべきではないか。
金児さんからも御指摘がありました児童の権利条約七条、児童は出生の際、直ちに登録される、児童は、出生のときから氏名を有する権利及び国籍を取得する権利を有するものとし、また、できる限りその父母を知り、かつその父母によって養育される権利を有するとあります。
子を個人として尊重する、個人としての権利、それが出生の登録、日本でいうと、戸籍に記載されること、そして氏名を有し、国籍を取得することです。後段の父母によって養育される権利を有するというところが、今回に関わる、法律上の父子関係の成立と否定に関わることだと思います。この七条では児童という言葉であり、嫡出子、嫡出でない子という子供の区別は設けていません。できるだけ子供を平等に対処する、処遇するということが求められていると思います。
今回の親子法改正では、次の三つが求められると思います。
一つは、血縁の事実の尊重です。
これによって法律上の父子関係が成立します。血縁がない場合には父子関係を否定し、血縁上の父と法律上の父子関係を成立させる手段、子供のアイデンティティーを確保する上でもその手段が必要です。そして、その手段は、手続的負担ができるだけ軽減されるのが望ましいと思います。
二つ目に、親子としての生活事実の尊重です。
血縁がないことから父子関係を否定する、しかし、一定の期間、親子として生活事実が続いている場合にはそれを尊重する。したがって、窪田さんが御説明になったように、出訴権者、出訴期間を制限するということが出てきます。この共通の理念は、身分関係という法的安定性です。それを重視して、血縁がなくても親子であるということを法は認めています。
最後に、子供の平等です。
血縁の事実の尊重も親子としての生活事実の尊重も、全ての子供にとって必要です。嫡出子と嫡出でない子に共通の法理へと展開していく、その格差がある場合にはそれをできる限り小さくしていくということが求められると思っております。
上記の視点から見た今次改正法案の問題点を述べます。
母が離婚後三百日以内に再婚しない場合において出生した子の処遇です。
母が離婚後三百日以内に再婚した場合において出生した子は、窪田さん御説明のように、現夫の子と推定されます。したがって、現夫を夫とする出生届ができます。もう出生届がすぐできると、父子関係が戸籍において明確になります。
ところが、母が離婚後三百日以内に再婚しない、あるいは子供が再婚する前に生まれた、こういう場合については七百七十二項が適用されます。井戸さんが御指摘になったとおりです。したがって、前夫の子と推定され、前夫を父とする出生届を出さざるを得ません。したがって、これを回避するために無戸籍者が生ずるという事態を避けることができません。
配付していただいた資料集、資料編の資料十がありまして、これは無国籍者のうちの分類です。それで、ちょっと私、数値を間違えておりまして申し訳ありません。三百日以内に再婚した後に子供が生まれたというケースは三五・八%です。したがって、再婚をしたんだけど再婚前に生まれた、それから三百日以内に再婚しなかったケースというのは残りの六四・二%ということなので、かなりな無戸籍者が残されるということになります。
今次改正提案の提案者の説明は、嫡出否認権の行使で対応するということでした。この点については、井戸さんが問題点を指摘されたので繰り返しません。父子関係を消滅させるために家事調停、合意に相当する審判、あるいは人事訴訟、これを起こさないといけないので、その手続負担は大変なものになります。
これに対して、出生主義、母の婚姻中に出生した子は夫の子と推定するを採用すると、ここについては窪田さんと私とは見解を異にします、ここで学説上の争いをするゆとりはありませんので、仮に出生主義を取ったらどうなるかということです。離婚後再婚して子が出生すれば現夫の子と推定される、今次提案と同じ結論です。離婚後再婚せずして子が出生した場合には推定する父というのはいません、父のない子になります。だから、父のない子として出生届ができます。前夫を父とする出生届が強制されません。したがって、戸籍にも記載され、無戸籍者は減ります。そして、血縁上の父からの認知も可能になりますので、子の法律上の父と血縁上の父が一致すると、その手続的負担が減少し、子供の平等に近づくと思います。
私見としては、離婚後の法律上の父子関係の成立に関する法制度について検討を継続していただきたい。
出生主義というのは、窪田さんが御指摘になったように、ドイツのように離婚原因として別居期間が要求される。そうすると、別居しているわけですから性的関係はない、したがって出生主義で問題はないということだと認識いたしました。しかし、経験則として、破綻して離婚を考えている夫婦が性的関係を持つでしょうか。性的関係というのは最も親密な愛情の発露の行為です。双方の合意に基づいて、かつ避妊をしないで性的関係を持つ場合に妊娠ということが生じます。そのような現実が破綻した夫婦の間にあるのかどうか。これを踏まえると、出生主義というのはむしろ経験則に合致しているようにも私は考えている次第です。
次に、二ページ目に移ります。
父子関係の否定に関する嫡出子と嫡出でない子の格差です。
出訴権者が限定されました。父若しくは認知者、子、子の母、否認の訴えも認知無効の訴えも出訴権者は共通です。ところが、出訴期間、嫡出否認は、子は、子の出生を知ったときから三年、子、母は出生のときから三年です。認知無効の訴えは、認知者は認知のときから七年、子、母は認知を知ったときから七年です。身分関係の安定性というのは全ての子に共通しています。だとするならば、同一にすべきです。これによって子供の平等も達成されます。
私見として、親子関係の成否について、可能な限り子の平等処遇に資する法制度を検討すべきと思います。
次に、子の身分関係の安定と日本国籍の確保の問題です。
これは金児さんが今御説明されたので多少重複することはありますが、私はまた別の視点から考えてみました。
今次改正提案、金児さん御指摘のように、認知された子の国籍取得について、認知について反対の事実があるときには適用しない、したがって国籍取得は認めない、取得していた国籍も喪失させるという、ここにつながってまいります。
問題点の一、身分関係の法的安定性、これがあるから嫡出否認、認知無効について出訴期間を徒過すると誰も争えないことにして、子の父子関係を確定させます。法律上の父子関係を前提とする法的効果の享受は覆されません。国籍の取得という社会生活の根幹に関わる権利も喪失しないというのがこの論理的な結論です。
児童の権利条約七条は、先ほど、国籍取得を子の権利としました。金児さんが今日御指摘していただいた八条では、今日の資料にありますように、締約国は、児童が法律によって認められた国籍、氏名及び家族関係を含むその身元関係事項について不法に干渉されることなく保持する権利を尊重することを約束する、すなわち一旦取得した国籍、これを保持する権利ということも掲げられているのです。
最高裁大法廷平成二十五年九月四日決定は、婚外子の相続分差別を全員一致で違憲としたものです。ここで述べられている判決理由の一部を紹介します。父母が婚姻関係になかったという、子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきていると述べています。
仮に不実認知で子が日本国籍を取得したとしても、不実認知をしたのは親であって、子供ではありません。子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由として子に不利益を及ぼすことは許されません。子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるというこの判決理由は、国籍法にも妥当するのではないでしょうか。身分関係の安定という法的利益は子に保障されるべきです。
もう一つ、出訴権者の限定です。それは、法律上の父子関係の成否を当事者に委ねると、国が介入することはしないと、だから当事者が否認権を行使し、認知無効の訴えをするということです。認知について反対の事実があることを覚知したときに、どういう経緯で覚知するかは分かりませんが、覚知したときに、法務大臣が日本国籍を遡って喪失させたいというのであれば、認知無効の訴えを起こすべきです。それが手続保障だと思います。
出訴権者に検察官を加えるという、こういう改正があるのであれば一定納得はできます。しかし、同じ出訴権者ですから、二の法理が適用されて、出訴期間の制限には服さざるを得ません。これによって、国家的利益が関わることだといっても、身分関係の安定性という国民の親子関係に関わることを不当に介入することは許されないのではないかと考えています。
虚偽認知という言い方、不正認知という言い方がされますが、それに対する法務省ホームページ、国籍取得の届けに関する詳細な手続があります。認知ということについては、民法ですから、ここには関わりません。でも、認知された子の国籍取得の届出で実に慎重なる対応をしているように思われます。後で御参照ください。
私見として、子供は日本人父との親子関係を基礎として日本国籍を取得するのだから、認知無効の出訴期間の経過により親子関係は確定し、誰も争えない、そうである以上、日本国籍は喪失しないと解すべきだと思います。
不実認知の理由は多様です。知らなかったということもありますし、再婚するので連れ子を自分たちの家族にしようと思って厚意で認知する場合もあります。その全てが国籍の不正取得を目的とするものとは言えません。当事者の家族的事情に配慮した個別対応の可能性も追求すべきです。嫡出子の場合は出訴期間を徒過すると確定する、したがって介入はできないとしています。そういう嫡出子の処遇と同様の対応をすべきだと考えます。このような課題がある以上、国籍の取得、喪失については国籍法の問題として別途検討すべきだと考えます。
時間が参りました。五番、嫡出概念の廃止についてはお目通しいただければと思います。既に国連や欧米諸国では嫡出概念を廃止しています。それによって、その国の法体系、法整備が大変な混乱を生じているということはありません。
以上です。御清聴ありがとうございました。

 

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。参考人の皆さん、本当にありがとうございます。
まず、窪田参考人にお尋ねしたいと思うんですが、今日もこの参考人質疑でも大きなテーマになっています離婚後三百日問題に関して、親子法制部会の議事録を拝見いたしますと、随分議論になって、けれども、別居後などに婚姻関係が破綻した後に懐胎された子について、裁判上の訴えによることなく、戸籍窓口における届出によって出生の届出を許容するというその取扱い、方策については今回の親子法制部会での見直し事項としては取り上げないという結論を出されて、その理由の、幾つかあるんですけれども、その一つとして次のような記載があります。夫は本来であれば嫡出推定が及ぶにもかかわらず、裁判手続によることなく、妻により、子の出生を知らない間に嫡出でない子としての届出がされることになる。
ちょっとぶっちゃけて言うと、これでなぜ悪いと私などは思うんですよ。離婚が成立した後に生まれている子ですよね。その子の本当の父が誰かということを誰より一番知っているのはお母さん、女性なのであって、まずはそのお母さんによる出生届、これを受理して戸籍はもちろん作るという扱いをすることのどこが悪いのかというのが私には理解がいかないものですから、窪田参考人の御意見を是非聞かせていただきたいと思います。
○参考人(窪田充見君) その点は非常に法制審議会の中でも議論があったところです。恐らく、少しだけ御質問の趣旨からそれるのかもしれませんが、恐らく厳密に言うと、これ三百日問題ではなくて、婚姻中であったとしても同じ問題というのが考えられるということなんだろうと思います。つまり、妻の側で出生届を出すときに、結婚していたとしても、父は不明あるいは父の欄は空欄とするというやり方、これは実際に国によってはあり得る仕組みです。
その点に関して一つ問題になったのが、やはりそのケースであっても、誰が父親であるか母が一番知っているはずだとしても、この人は望ましくない、父であったとしても望ましくないという場合にも記載しない、空欄とすることができるというふうになった場合に、本来、父子関係が嫡出推定制度を前提としての説明になってしまいますが、本来は父子関係が認められ得る場面であるにもかかわらず、本人が全く関わらない形でその父子関係が否定される、存在しないことになるという扱い、それに対する説明というのが十分できないのではないかということがあるんだろうと思います。
実は、フランスで比較的そうした方向での制度が採用されて、空欄にすることも自由だと、母の方が一方的に決めることができる。その場合にはどうなるかというと、本来は夫が父親であるという場合には訴訟を提起する、父子関係あるという訴訟を提起するということになると。それはそれでいいんだという考え方もあるんですが、本来は利害関係の当事者、父子関係についての当事者というのは父と子ですから、その父を外して法的な認定をする、法的な効果が生じることを認めるというのは、私自身は十分には説明できないのではないかというふうに考えております。
御質問の点については、多分御意見が違うんだろうと思いますが、私自身の理解はそういうふうなものでございます。
以上です。
○仁比聡平君 今の点に、今の問題について、井戸参考人が反応されたので、ちょっとここでお尋ねしたいと思うんですけれども、二〇一五年に、私も井戸参考人と御一緒にお会いした、三十二歳、三歳まで無戸籍のままで来たという方いらっしゃいました。冒頭の意見陳述の中でも、今、この夏やっと取れた方もいる。それは、父とされた母の元夫が亡くなったからだと。そこまで嫡出推定を覆すことができずに無戸籍のまま来たという方とお会いしたんですけれども、その戸籍上の父が死亡して初めてそうした訴えができるようになる、それまではできないという苦しみ。
一方で、どんな場合なのか私ちょっとよく分からないんですけど、離婚後、あるいは婚姻中かもしれません、もう完全に婚姻関係が破綻していて、その下で生まれた子について、俺の知らない間に嫡出でない子として届出するのはおかしいという、そういう観念に対して、井戸さん、どう思われますか。
○参考人(井戸まさえ君) そうですね、二〇一五年、前夫の方が亡くなって、親子関係不存在をして、それでようやく三十二歳で戸籍を取るというような子と一緒にお会いしていただいたと思うんですけれども、あのときでも、結果的に、前の夫亡くなったけれども、前の夫に対して親子関係不存在やると、検察官相手になるんですけれども、それで、親子関係がないとなっても、出生時に遡って、死んだ人の戸籍をまたよみがえらせて、そこにその三十二歳の方は入って、そこから氏の変更というのをやって、離婚をしているので母親の氏に変わるということをやっているんですね。こんなことをする必要あるんでしょうか。そして、三十二歳までそれで無戸籍で、非常にそういう意味では不安定な状況に置かれると。
身分の安定を早期にこれを確定するために嫡出推定というのがあるんですけれども、しかし、その嫡出推定の範囲だとか、先ほどのお話で、前夫の方に対して、例えば関与なくしていいのかという話は、その立場での方はあるかもしれないですけれども、私の意見陳述の中にも言いましたけれども、そんな自分の子供が生まれているのも知らないというような方にずっと嫡出推定が掛かり続けているというのは本当におかしなことであると思うんです。
なので、私としては、やっぱりそもそものルールがおかしいというのと、それを前夫が関わらずにもできるというふうにしていかなければ、やっぱりこの無戸籍問題って絶対解決をしていかないので、これは、ここは本当に肝のところでもあるので、是非、今回の改正ではそこまで行かないんですけれども、引き続き議論というものをしていただかないといけないかなというふうに思っています。
○仁比聡平君 そこで、二宮先生に、今の法制審の議論の様子とか井戸参考人からの当事者の状況とかいうことも踏まえた上で、改めて二点お尋ねしたいと思っておりまして。
一つは、先ほど少し御紹介ありましたけれども、本来、意見陳述の中で御準備をされた、嫡出概念を廃止すべきだという参考人の御意見をきちんと改めて伺いたいと。その中で、この嫡出という概念の差別性といいますか、これが日本の歴史の中でどんなふうにつくられて、社会の受け止めとして差別の象徴になっているというふうに参考人お話しになっているんですが、そこを少し膨らまして伺わせていただけますか。
○参考人(二宮周平君) ありがとうございます。
この嫡という言葉は、大宝律令辺りからも出てきている言葉です。跡継ぎ、正統なる相続人というので嫡という言葉がその頃から使われています。
そして、それは、日本の場合は、家制度を構築することによって、家制度の中で、嫡出子と、それから、その当時は庶子、私生児という、子供を三つに分類しました。嫡出子が基本的に家督相続、家の跡継ぎとなるという、そういう言葉で嫡というのを使っていたので、その当時、庶子とか私生児という立場にいる人はかなり差別的待遇を受けて苦しんでおられたと。なので、社会の受け止めはそこから始まっているのではないかと思います。
ですから、歴史的経緯をたどると、私たちの中に位置付けられたのはやっぱり家制度が確立してからだろうと思います。それは、今日は家制度は廃止されましたけど、家父長制の意識はまだまだ残っておりますので、婚姻をして子供をもうけて育てていく、これが正統な家族だという、そのような意識からすると、婚姻外で子供をもうけたり事実婚であるということは、これは規範に反することだという、そういうレッテル貼りがなされてきたのだろうと思います。
今日、そういう意識は多少は緩和されているとは思うんですけれども、やっぱり条文の中に、嫡出子、それから嫡出でない子、すなわち何かではない子という否定的な名称で呼ばれる子というのは、やはりあってはならないと思っています。
○仁比聡平君 ありがとうございます。
もう一度、もう一問、二宮先生に。
そうした嫡出概念の下での嫡出推定という規定、しかも、裁判の困難な訴えによらなければ覆せないという強い推定というこの七百七十二条が差別を生み出し、皆さんを苦しめてきたということはもう間違いないと思うんです。
その下で、仮に先生のおっしゃる出生主義を取らないとしても、今の懐胎主義の下でもこの出生届で推定を覆すということは私はできるし、これまで現にやってきたんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
○参考人(二宮周平君) 今を去ることもう二十数年前に、私はそういう主張をしたことがあります。でも、なかなか受け入れられなかったです。それは、現在のやっぱり嫡出という、嫡出という言葉を使いますから、嫡出の推定なんですね。嫡出というのは、婚姻中に妻が懐胎したということが大前提です。つまり、貞操義務があって、一夫一婦制の下で妻は夫以外の男性と関係を持たないことが期待され、義務化されている、そこで妊娠したから夫の子と推定する、それが嫡出子で正統な子供であるという、そういう大前提が根強く残っているからだと思われます。
窪田さんも御紹介にあったように、立法の形式としては、出生届を出すときに父不明という形で出せば、嫡出推定を、まあ父性推定ですね、父、夫の子であるという推定を外すという、そういう立法例はありますので、仁比さんがおっしゃるようなことは立法技術としてはあり得ることだと思います。
でも、私は、やはり懐胎主義、つまり妻が婚姻中に懐胎した、そういう貞操を守り、一夫一婦を守り、けなげな妻、そういう子の産んだ子だから夫の子と推定するという、そういう固定観念が根強くあるのだと思うから、そこは今回の改正でやっぱり変えていくべきではないかと思っています。そういう立場を取ってもおっしゃったような工夫はできるとは思いますけれども。
○仁比聡平君 改めて、抜本的な見直しが引き続き必要だということを確認されたのではないかと思います。
金児参考人に最後お尋ねしたいんですが、国籍法の三条改正の問題について、今日の質疑の中でも、遡って国籍が失われた子が非正規扱いをされるという、その非正規扱いをする入管当局が、市区町村始めとした戸籍、国籍の関係当局とおおよそ連携してこなかったんじゃないかということが明らかになりつつあります。
そんなことはあってはならないので、連携を掛け声だけにするんじゃなくて、ちゃんと市区町村を軸にした無国籍にさせないという取組がとっても大事だと思うんですけれども、そういう自治体の窓口に期待されること、何かあればアドバイスを下さい。
○参考人(金児真依君) 御質問ありがとうございます。
自治体の対応、一番最初に窓口として行くところですので、大変重要だと思います。
やはり、まずはその国籍、無国籍。本人は無国籍だということを気付いていないことが多いんですね。ミャンマーのロヒンギャの方たちですとか、教育の問題もありますけれども、自分はやはり有国籍者だとかですね。そういった、自分は絶対に国籍を持っているんだということでいらっしゃることも多くて、そうすると、本人の言うとおりにその国籍が認定され、それは入管庁で在留カードを出すときもそうですけれども、もちろんちゃんとした審査はなさっていると思うんですけれども、やはり正確に無国籍を認定する必要があるということで。
自治体に関し、そうですね、まずは、自治体は恐らく在留資格カード等を御覧になるんだと思うんですね。最初に恐らく皆さん入管庁に行かれて、そこで発行されたもの。ごめんなさい、どっちですかね、順番は分かりませんけれども、それで、市役所では恐らく国籍の認定というものは、いずれにしても、在留カードも認定というわけではありませんけれども。そういったことはせずに、入管庁、そして民事局等に照会されるかもしれませんけれども。
やはり、例えばその無国籍者に在留カードが、両親が無国籍となっている在留カードがあったら、そうしたら、日本国籍法の二条の三号で、じゃ、戸籍を編製することになりますねと、そういう案内というのをしていただきたい。それは必ずしもされるわけではなくて。どこの国でもそうなんです、実は。実は、その市役所の窓口の、一番最初の窓口に座っている皆さんが、日本国籍法ですと二条の三号、そして八条の四号について御存じないということがありまして。そういった事例もこちらの報告書に載っていますけれども。
やはり、それを、こういった国籍法の規定があるよということを全国皆さん、例えば研修ですとかマニュアル化をするとか、又は支援者、弁護士の皆さんですとかそういった方に、どういったケースがあるかとかそういったことを聞き取って、こんなパターンもある、あんなパターンもある、例外もありますし。また、私どもの国籍法データベースもございますけど、どんどん変わるんですね、国籍法が。実は無国籍だと思っていたけれども違った、逆にそういったこともあるかと思いますし、逆もまたしかりですから、そういったことをする必要もあるのではないか。
そして、入管庁が中心に在留カード等も出されて、あとまた民事局も国籍法の運用をされていますけれども、やはり無国籍の認定というのは非常に難しい。なぜかというと、ないことというものの証明というのはすごく難しいんですね。国民として認められていないんですというふうに言っても、それをもちろん確実に証明するということはできません。それは当然で、午前中も政府の方がおっしゃっていましたけれども、まずは有国籍、国籍、外国籍を持っているということも日本政府としては認定できない。それは本当に正しいことでして、できません。でも、無国籍に関しても確実に認定できません。それも正しいんですが、確実に認定しなくてもいいんです。
実は私ども、無国籍認定のハンドブックを持っておりますけれども、そちらにかなり詳しく書いてございますけれども、やはり合理的な程度、無国籍というものが証明されれば無国籍者として認定するんだと。で、合理的な程度ですけれども、つまり、裏を返せば、有国籍だということをかなりしっかりとした証拠によって認められなければ。結局、例えば当局に問い合わせて、当局に問い合わせられない場合はどう対応するかという問題もハンドブックで書かれておりますけれども。
結局、外国籍というものが確認できない。合理的な努力をして、すごく証拠集め頑張って、政府の側も頑張る、無国籍者側も頑張る。やはり無国籍者だけではできませんので、政府の側も一生懸命手伝って、その立証、証拠提出責任というものを負担して、それで認定というのを手伝い、それで合理的な期間内に何らかの国籍を有しているということが認められなければ、ハンドブックでは六か月又は例外的な場合は一年ですけれども、無国籍と認める。これが私どものハンドブックの基準でございまして、そういったものを日本国でも御活用いただけることがあるのではないかと考えています。ごめんなさい、話が長くなりまして。
あと、ごめんなさい、加田先生には先ほどいただいていた御質問に一つお答えしておりませんでしたけれども、私ども、虚偽や詐欺が関わっているケースに関してはコメントの二十から二十一段落で扱っておりまして、基本的に、そういった虚偽や詐欺ということで、無国籍にしても仕方がないという例外というものが、まあ六一年の条約、すごく古くて、それからまた人権法上は発展しておりますけれども。確かにそういった例外があるんですが、それは帰化の場合というふうに大体解されておりまして、こういった身分関係、親子関係が無効となった場合のところには適用がされないというふうに解釈、大体されておりますということを御覧いただければ、二十一から、二十一段落ですね、どうぞよろしくお願いいたします。
済みません、長くなりました。
○仁比聡平君 ありがとうございました。