訴訟弁護団・前参院議員 仁比聡平

 日本共産党は、国政でも地方政治においても一貫して営農も漁業も成り立つ有明海再生を求めてきた党として、菅総理の福岡高裁判決への上告断念を歓迎するものです。開門にむけた準備に早急に着手し、営農者から出されている不安を解消することこそ国と関係自治体の責任です。いまこそ心をひとつに再生の具体的一歩をふみだすときです。

 2002年春の短期開門調査は開門すれば有明海はよみがえることを示しました。原告団・弁護団が提案してきたのは、この短期開門調査レベルの開門から始める「段階的開門」です。潮受け堤防内の調整池の深刻な水質汚濁は海水導入によって劇的に改善されます。

 干拓地の農業用水について、国は中海干拓でも活用されている簡易ため池などの「代替水源の確保」にすみやかに着手すべきです。取水実績は約23万立方㍍(08年4月から12月)で十分可能です。農業用水にふさわしくない塩害や、汚濁水の悪臭も解決されます。

 一方、農水省の言い分に反して潮受け堤防閉め切り後もくり返されてきたのが後背干拓地の湛水被害です。私も国会でとりあげてきましたが、元来排水が不良な低平地では排水路や樋門、排水機場の整備こそ必要です。佐賀や福岡の地先干拓地では当然なされてきたのに、諌早干拓では「潮受け堤防ありき」で背を向けてきた国の姿勢を改め、地元の要望をすぐに具体化すべきです。高潮時の防災機能は開門しても必要時に閉じることで確保でき、操作方法の権威ある研究もなされています。
 上告断念を受けて、原告団・弁護団の参加する開門協議会をすみやかに設け、開門方法や時期の検討を急ぐべきです。(しんぶん赤旗 2010年12月16日)