農・漁業が両立してこそ

 国は、上告を断念したものの、開門の実施を2012年度まで延ばそうとしています。早期開門は、漁民の切実な願いです。

一刻も早く…

 瑞穂漁協(長崎県雲仙市)の石田徳春組合長は「漁民の状態はもう限界です。このままだと沿岸から漁民がいなくなってしまいます。一刻も早く開門してほしい」と訴えます。

 福岡高裁の判決を受けた原告弁護団声明は、来年3月に判決を控えたものを含め、開門を求める訴訟が4件、長崎地裁で継続中であることを挙げ「(訴訟の)解決を含め、今後、裁判の内外で早急に開門のための協議が開始さ机ることを願ってやまない」と要求しています。

 漁業と干拓地での営農との両立も原告漁民が求めているものです。

 長崎地裁に提訴している松永秀則さん(長崎県諌早市小長井町)は、同市で開かれた報告集会(11日)でこう訴えました。「有明海の再生と同時に、私たちは農業と漁業が両立する開門の実現をこれからも求めていきます」

 「開門絶対反対」を主張する長崎県は、この間、「開門すれば農業ができなくなる」「水害で大変な被害が発生する」などと宣伝してきました。同県議会は16日、上告断念に抗議する決議を賛成多数で可決しました。

防災止問題なし

 日本共産党の堀江ひとみ県議は反対討論で、開門しても、排水施設の整備、高潮が予想される際には水門を閉めるなどすれば防災上問題がないこと、代替水源
の確保が可能であり、塩害のおそれもないことを指摘。「営農者も漁業者も同じ長崎県民。これ以上、県民同士で争うという図式を続けてはならない。営農も漁
業も防災も成り立ち、有明海の再生につながる道に踏み出そう」と訴えました。

 有明海の異変について研究している熊本県立大学の堤裕昭教授(海洋生態学)は「まずは、国の責任で開門しデータを集め精査すべきです。開門すれば有明海に変化が起き、因果関係がはっきりしてこれまでの対立が解けるはずです」と指摘します。

 石田組合長は「私たち漁民は〝漁民さえ良くなれば″などとは決して思っていません。防災や農業用水の確保などの対策は、国の責任でやるようこれからも求めていきます」と語ります。

 今後の展望について「『よみがえれ!有明海訴訟』を支援する全国の会」の岩井三樹事務局長は言います。「漁業者も農業者も国によって分断され、口を封じられ、お互いに対立させられてきました。今こそ、漁業者と農民が同じテーブルに着き、有明海の再生と諌早の未来について知恵を出し合う時なのです」(しんぶん赤旗 2010年12月18日)


12月15日に発表された「よみがえれ!有明訴訟弁護団」の声明を紹介します

 

- 声明 -

 

上告断念の政治決断を受け


20101215

よみがえれ!有明訴訟弁護団

 

 本日、佐賀地裁に続き、ふたたび諫早湾干拓潮受堤防排水門の開門を命じた福岡高裁判決に対し、菅首相みずから、政府は上告を断念すると発表した。

 上告断念は、開門をめぐる長期間の諍いに終止符を打つための大前提であり、政府の英断を心から歓迎する。

 

 当弁護団は、これまで一貫して、漁業と農業、防災が共存する開門を実現するため、短期開門調査レベルの開門から全開門に至るまで段階的に開門し、早期開門を実現しつつ、農業と防災への配慮を実現し、かつ、開門に伴う弊害が生じないようにするという、安全・安心の段階的開門方法を提唱し、開門協議を呼びかけてきた。

 円滑な開門協議さえ実施されれば、判決の執行を強制するような不毛な事態は無用である。

 

 現在、長崎地裁には判決を間近に控えたものも含め、4つの訴訟が継続している。その解決も含め、今後、裁判の内外で早急に開門のための協議が開始されることを願ってやまない。