○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

今日も、党派を超えて、与野党を超えて強化が必要ではないかという問題提起があっています家庭裁判所の人的、物的体制についてお尋ねしたいと思います。

資料をお配りをしましたが、今年の一月、長崎で発生しました元夫による元妻の殺害事件が社会的に大きな衝撃を広げております。昨年、二歳の長男の面会交流の取決めをして、その約束の履行のために元夫宅に長男を連れていった元妻がめった刺しにされて殺害をされたと。元夫はその自宅で自殺をしたと。結果、その二歳の男の子は、母もそして父も失ってしまったわけです。

二枚目の記事に、昨年十一月末から警察に元妻はストーカー被害についての相談をしていたけれども、ストーカー規制法に基づく対処は求めてはいなかったということが書いてあります。県警は、元妻が面会交流の取決めを守って、家族への危害なども心配して、男の子を連れて元夫宅に行った、そういう可能性があるのではないかと指摘をしているわけですね。

この件はそうではないんですけれども、これ、家庭局長、もしこれが家庭裁判所の調停やあるいは審判に基づくものであったとするならばと考えると、裁判所を始めとした司法関係者の責務の重さというのは、私、本当に痛感するんですね。これ、一たび面会交流の取決めを行っても、相手方がストーカー行為に走るとか、あるいは暴力化するという可能性はあるわけです。あるいは、調停や審判の際にそうしたストーカーあるいは暴力的なことが主張されていない場合もあるかもしれないし、分からないままそうした取決めがされることだってあるかもしれないわけですね。

これ、一旦決めたからといって拘束されるというものではないと思いますし、変えられないものではないと思うんですが、いかがでしょうか。

○最高裁判所長官代理者(村田斉志君) お答え申し上げます。

面会交流に関する定めにつきましては、民法七百六十六条三項におきまして、家庭裁判所は必要があると認めるときはこれを変更することができるというふうに定められております。したがいまして、一度裁判所において当事者の合意又は裁判所の判断により定められた事項につきましても、当事者においてこれをそのとおり履行することが不相当だというような事情が生じたと考える場合には、当事者は定められた面会交流の内容を変更することを求めて、改めて調停や審判の申立てをすることができるということでございます。

当事者からこのような申立てがあれば、家庭裁判所といたしましては、必要な調査を行った上で、申立てに理由があると判断した場合には面会交流の定めを変更するということになります。したがいまして、一度裁判所において定められた面会交流の内容について、事情の変更があってもなお遵守しなければならないということではないというふうに考えております。

○仁比聡平君 そのとおりだと思うんですね。事情変更があった場合も、絶対にそれに拘束されてストーカーあるいは暴力というところに自らの危険をさらして子供を連れていくということであってはならないということだと思うんですが、問題は、そうした状況に置かれる、この事件で言いますと元妻がどこにどう訴えるのかなんですよね。

私は、ある家事事件に携わっている弁護士の、区役所の数ほど家庭裁判所をという言葉を聞いたことがありまして、戦後の家庭裁判所の出発というのはそういうものだったんじゃないのかと改めて思うわけです。もちろん、申立てとかあるいは事件の手続のための相談とかということはあるけれども、仮に調停や審判で離婚や面会交流ということが定められたとすれば、それは子の最善の利益のために子の意見も陳述も聞きながら裁判所が深く関与して定めていくわけですよね。その子供のこと、家族のことを一番そういう意味では専門的に相談をして、そして判断をしていった裁判所のあの調査官の人に、今こんなふうに困っているんだけれどもどうしたらいいだろうかというのを相談できるような、そうした意味で国民から本当に信頼される家庭裁判所になっていくといいますか、ということが複雑困難な事案が増えていく中でとても大事なんじゃないか。

実際、私が、もう随分以前になりますけれども、修習をしていた時代の、私、福岡家裁でしたけれども、あるいは事件の活動の中でも、申立てとかいう難しい言葉は分からなくても実際に困って家庭裁判所に相談に来る、そうしたらば、手続を教えるのはもちろんですが、その事件を知っている調査官だとか書記官がその心情をもおもんぱかっていろんな丁寧な対処をするという現場に、やっぱりそうだよねと思ったことが何度もありましたけれども。そうした困っている人の相談を受ける、問題を、事件を解決していく上で書記官や家庭裁判所調査官の役割というのはとても大事だと思いますが、局長、いかがですか。

○最高裁判所長官代理者(村田斉志君) 委員御指摘のような相談が裁判所に寄せられるということはしばしばあろうかと思います。そのような相談があった場合には、先ほど申し上げたような改めて面会交流の調停や審判を申し立てることができますよといった点も含めまして、家庭裁判所への申立て方法でありますとか申立て後の手続、さらには、面会交流でありますと、その定めたことが守れないといった場合に履行の勧告をするというような制度もございますので、そういったことも含めまして、関連する諸手続ですとかについて説明をさせていただいているものと承知をしております。

裁判所といたしましては、今後も、当事者からのいろいろなお問合せ、御相談に対して、考えられる手続を丁寧に説明するなどして、当事者にとって家庭裁判所の手続が利用しやすいものになるように努めてまいりたいと考えております。

○仁比聡平君 そうした子供が関わる事件、面会交流が関わる事件というのは急増しているわけですけれども、その下で最高裁判所がDVDを作っています。

これ、私が端的に趣旨を受け止めているのは、夫婦間の葛藤、争いというのはとても深刻なわけですね。ですから、夫婦の間の互いの言い分が違うんだ、相手の言い分は違うんだと、そうした思いでいっぱいになって裁判所に来られる方がほとんどだと思うんですよね。そういう意味では、互いに対する憎しみでいっぱいになっている。その下で、子の福祉、子供のこと、子の最善の利益というのを本当に考えてほしい、考える必要がある、だからこのビデオを見てそこに気付いてほしいと、それがこのDVDを作っておられる趣旨なのではないかなと思うわけですけれども、裁判所のホームページにアップされていたり、みんなが待合をする部屋でずっと流されたりとかはしているんだけれども、だけれども、それって目や耳に入らないんですよ。

むしろ、見てこない方、見ない方にどう見てもらって考えてもらうかということが大事なのであって、そうしますと、例えば大都市のある家裁の庁で家事調停が平日の午前、二十五件から三十件入っていると。そのうち子供に関する事件でそのビデオを見てもらうべきだと調査官が感じる事件というのが五、六件はあると。本当だったらそのお一人お一人を部屋に案内するなりしてビデオを見てもらう、で、いろいろ大変ですねと声を掛けたり、あるいは見てもらった後にいかがですかと声掛けをする、そうした対応の中で事件を本当に解決していくということが必要なんじゃないのかと。だけれども、その人的、物的な体制がないという声に、家庭局長、どんな思いですか。

○最高裁判所長官代理者(村田斉志君) 委員御指摘のDVD、まさにお話ございましたとおり、面会交流の意義等に関して御理解いただけるように作成をしておりまして、御指摘にもあったとおり、裁判所のウエブサイトにおいても一部を御覧いただけるように配信もしております。

ただ、このような動画を御存じでない方、御覧になってこられない方もいらっしゃいますので、このDVDを見ていただくことが望ましいと考えられるような場合には、調停手続を行うまさに手続の中でDVDを視聴していただくということもございますし、あるいは家庭裁判所調査官の調査の中で、家庭裁判所調査官が内容について御説明をしながらDVDを見ていただいてというような形で、実際の事件処理の中でもDVDを活用しております。また、規模の大きな庁では、何人か同じような立場におられる方にまとまってそのDVDを見ていただくような取組をしている例もあるかと承知をしております。

このように、こうしたDVDの視聴が有用であるという場合には、どの家庭裁判所においても見ていただけるように環境は整備をしているというふうに認識をしておりまして、最高裁判所といたしましては、こういったDVDの活用も含めまして、事件を合理的かつ効果的に活用していくために必要と考えられる家庭裁判所の取組について、最高裁判所として今後とも支援をしてまいりたいというふうに考えております。

○仁比聡平君 実際、調査官が一緒にビデオを見ながら、ここの場面で止めて語り合ってみたりというような取組もあっているようで、そうした複雑困難な一件一件のケースに対して本当に丁寧に調査と判断を進めていくということが、とりわけ専門家としての調査官に求められているわけですよね。そのケースが、一枚目の日経新聞の記事にありますように、家事事件全体として年間百万件を超えたと。

先ほど、調査官が〇九年に五名増やされたというお話がありましたけれども、それは八年前のことであって、この真ん中に、子供の面会をめぐる法的トラブルとして調停、審判の件数が挙げられていますけれども、今や一万四千二百四十一件、この十年間で約二・五倍に増えているわけですね。〇九年からしてみたって、急増しているということはもう明らかなわけです。

その下で、複雑困難化する事件の調査のために調査官が共同調査を必要とする、行うというケースも増えていると思うんですが、どんな御認識でしょうか。

○最高裁判所長官代理者(村田斉志君) 委員御指摘のとおり、子の監護をめぐる問題など、慎重な調査を要する事案も増加しているというふうに認識をしておりまして、一つの案件について複数の家庭裁判所調査官が共同で調査に当たる事件というのも近年増加しているというふうに認識をしております。

○仁比聡平君 そうした下で、今回の法案というのは、書記官、事務官、裁判官を増員します。これは私は評価をいたしますけれども、政府の定員合理化計画に最高裁が協力をするんだということで、全体としてとうとう五年連続の純減なんですよ。事件は、この家裁の件を中心に急増している、複雑困難化していると。だから、その事件に対する処理の在り方も質的、量的に大きく変化をしている中で、職場は繁忙になっているわけですよね。にもかかわらず、限られた人員に限ってしまうということになると、適正、迅速な司法の役割は果たせなくなってしまうのではないですかと。

その下で、この長崎の事件のようなことが絶対起こってはならない、それだけのプレッシャーと専門性の中で調査官、仕事をしているわけでしょう。その調査官の研修が、この間、半分にされているというような動きがありまして、八年目を迎えた調査官は、同期およそ五十人の人たちと中央の和光の研修所に集まって十日間ほどの専門研修というのを行ってきたんだけれども、昨年からこれを五日間に絞ってしまうということになってしまったようです。

こんなことではなくて、調査官の数を抜本的に増やして、必要なそうした研修も行えるようにすべきだということを強く申し上げまして、時間参りましたので、質問を終わります。