○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
裁判所職員の定員合理化がこの間続く中で、私、昨年も、物には限度があると中村局長にも厳しく申し上げたんですが、今度の法案について、裁判所書記官で見ますと三十四人の増員ということになっているんですが、昨年夏の最高裁判所の増員要求では書記官で四十人の増、速記官からの振替はプラス五で、つまり四十五人増というのが元々最高裁の昨年夏の要求なんです。ところが、法案では三十四人、マイナス六人となっているのは、中村局長、なぜですか。
○最高裁判所長官代理者(中村愼君) 書記官につきましては、民事訴訟事件、家庭事件につきましてその適正、迅速な解決を図るためということで、概算要求の時点では四十人の増員が必要と考えていたところでございます。その後、概算要求後、財務省とも意見交換する中で、政府が国家公務員の定員についてこれまで以上に厳しい姿勢で合理化に取り組んでいるということや、他の行政機関が定員の再配置により業務の増大に対処し増員を抑制しているということの情報も得られましたので、裁判所といたしましても、国家機関の一つの機関といたしまして、現有の人的体制の有効活用を更に図れるかということを精査いたしまして、改めて増員必要数を検討したところでございます。
その結果、今年の一月十三日に、書記官三十四人の増員ということで改めて要求させていただいたということでございます。
○仁比聡平君 昨年夏の増員要求は十分ではないと私は思うんですけれども、元々最高裁として、それぞれの裁判所が役割を果たしていくために、現場、職場の実態から積み重ねてまとめた要求のはずなんです。その認識、つまり現場がこういう増員を必要としているというこのニーズについての認識は、私、変わらないと思うんですけれども、局長、いかがですか。
○最高裁判所長官代理者(中村愼君) ニーズと申しますか、こういう、書記官を増員することで適正、迅速な裁判の一助にするという認識については変わりはございません。
ただ、先ほど答弁させていただきましたけど、その必要人員ということにつきまして、夏から翌年一月までの間、十分に精査したところ、三十四人、四十人から三十四人の増員ということで的確な事件処理が図れるものと判断した次第でございます。
○仁比聡平君 結局、的確なというよりも、痩せ我慢するという話なのではないのかと私は思うんですね。司法の独立、裁判所の独立というのはそんなことではないはずです。
この定員に関して、政府の定員合理化計画があり、これに協力するという説明も受けてまいりました。この定員削減計画への協力というのはどういう意味かということを私、確認しておきたいと思うんですね。
といいますのは、昨年夏の閣議決定によりますと、年二%、五年で一〇%定員を削減する、その後は内閣人事局が合理化目標数を定めて各府省に通知するというのが政府の定員合理化計画の枠組みです。
この枠組みに、まさか裁判所もその中にあるというわけではないと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(中村愼君) 裁判所は行政機関でございませんので、政府の定員合理化計画に直ちに拘束されるものではございません。
ただ、国家公務員の定員をめぐる情勢が厳しさを増す中で、裁判部を充実強化を図っていくという観点からは、他の行政庁と同様に事務の効率化が必要な部分についてはできる限りの内部努力を行って、定員合理化する協力をすることは必要であると考えている次第でございます。
○仁比聡平君 確認をしますけれども、つまり年二%、五年で一〇%という合理化枠だとか、あるいはその後の合理化目標数を定めて、削減ありきで今後進めていくということではないということですねということが一つと、その下で、今事務系職員の話をされましたが、裁判部の充実はもちろんのことですけれども、司法行政に当たる裁判所職員、これまでも効率化だとかIT化だとかいって合理化を進めてきたわけで、その中で繁忙だとか過密という実態というのは本当に深刻になっていると思うんですね。その認識はいかがですか。
○最高裁判所長官代理者(中村愼君) 司法行政事務の合理化につきましても、裁判事務への支障の有無ということをも慎重に検討してまいりたいということは申させていただいたところでございますし、このことに何ら変わりはないところでございます。際限なしの事務の合理化、効率化ということは行えるわけではないというふうに考えているところではございます。
○仁比聡平君 目標枠についてはどうですか。
○最高裁判所長官代理者(中村愼君) 直接この定員合理化計画の拘束されるものではございませんので、これに協力するということでございます。
○仁比聡平君 つまり、職場の実態から見て積み重ねていかなきゃいけないということですし、その裁判所の増員を支える予算の確保は我々政治の責任だということだと思うんです。
少し家裁について伺いたいんですが、先ほどの御議論の中でも、成年後見事件を中心に、申立て件数、それから開始決定がされた後の係属件数がこれ累積していく、増加をしていくということ、かつ複雑困難化しているというお話がございました。けれども、家裁の調査官で見ますと、二〇〇九年までは増員をされたんですが、二〇一〇年以降は増員ゼロが続いているわけですね。
実際に現場を見るとどうかと。先ほども話題になりました、例えば後見人による不正な財産管理をめぐる事件などについても、書記官が提出される書類と実際の口座とのそごなどをチェックするなどの気付きと、そして裁判官も含めたコーディネートをやりながら、調査官がここで役割を果たすという場面も相当あると思います。特に、親族後見人が後見されている高齢者、例えば高齢者の財産管理にいろいろ危ういところがあるときに、親族間の調整もやりながらその後見人の適正をちゃんと援助し指導していくというときに、調査官がその役割を果たしていくというようなやり方もしておられると思うんですね。
これ、書記官もそして調査官も抜本増員が必要なんだと思うんですけれども、いかがですか。
○最高裁判所長官代理者(中村愼君) 調査官の御指摘がございました。
調査官につきましては、その特色であります科学性、後見性といいますか、専門職種としての知見というものを、これ、とりわけ子の意思というようなところの子供の関係でその専門知見を活用していただくということが極めて重要なんだろうというふうに思っております。
そういう意味で、成年後見事件におきまして、調査官の活躍分野というところにつきましては一定の限界はあると思いますが、ただ、調査官のそういう専門知識が生かせるような運用ということはこれからも十分考えていかないといけませんし、書記官、家裁調査官を含めまして、人的体制の充実ということは極めて重要なことであるというふうに考えているところでございます。
○仁比聡平君 調査官の中での言わばシフトみたいなものを全体の枠を限る中では考えざるを得ないというような悩みが今の局長の御答弁ににじみ出ているように思うんですけれども、子の意思の確認のために家事事件手続法が施行されたのは〇九年以降のことでございまして、そのために調査官の役割が大きくなるというのは当然。けれども、成年後見事件においても現場でそうしたニーズがある以上はやっぱり増員によって対応する、それを私たちも含めて財務当局にも認めさせていくことが必要なんだと思うんです。
こうした家裁の繁忙化の中で、別の角度で伺いたいのは、地裁や簡裁から家裁への定員のシフトが行われている結果、地裁や簡裁が、書記官、事務官が大変になっていると。やっぱりそれは全国的に見られる傾向だと思うんですね。もう一つは、大都市部の民事事件など、あるいは家事事件もそうだと思いますが、極めて繁忙化、複雑化をする中で、地方から大都市部へのシフトというのがここ三年ほどの間見られると思うんです。
そのことが地裁、簡裁をどんなふうに限界に追い込んでいるかということの象徴的なものが、お手元に資料をお配りしましたが、裁判所職員が三人しかいない三人庁、そして裁判所職員が二人しかいない二人庁の存在だと思うんです。
かつてから、三人庁というのは、庶務課長さんの役割を果たす書記官さんと、もう一人書記官と、そして事務官、この三人しかいない裁判所で、裁判官はもちろん必要なときに填補してくるわけですね。この三人庁だって大変だと思っていたんですけど、伺うと、二人庁が広がっていると。最高裁から資料を提供いただいて御覧いただいているとおりですけれども、何と二十八庁も職員が二人しかいない裁判所があるわけですよ。インフルエンザにかかったらもう裁判所閉鎖かと。年休は取れないし、まして、女性、産休だったり、あるいは男性も育休だったり取れるはずがない。
これ、全て裁判所職員はほかの裁判所から必要に応じて填補してこなきゃいけないというそんな事態になっているわけですが、私、これはもう限度を超えていると思うんですね。増員していくということが本来の筋ではありませんか、局長。
○最高裁判所長官代理者(中村愼君) 二人庁が増えているという御指摘がございました。このいわゆる職員が二人しかいない二人庁、これは独立簡裁でございますが、これにつきまして事件動向を見ますと、ここ三年間の民事訴訟事件で見ますと、二人庁につきましては平均で年間三十件という程度にとどまっているところでございます。三人庁でも平均年間八十件という程度にとどまっているところでございまして、人員の有効活用という観点から、やはりこの事件数を見た執務体制ということになっているということは御理解いただければと思います。とはいいましても、利用者に対する司法サービスの低下につながるおそれがないかどうか、休暇取得、緊急時の応援体制が的確に組めるかどうか、これは業務体制の確保という観点から十分に検討しているところでございます。
今後も、人員の有効活用という観点から、全国的な配置を考えていく中で司法サービスの低下あるいは現場の職員に過度な負担が掛からないように、こういうことに注視してまいりたいというふうに考えております。
○仁比聡平君 あまねく、どの地域に暮らしていても、司法の独立と、そして全ての国民に裁判を受ける権利を保障するということがこの問題の出発点の議論であるべきです。日本の裁判所予算というのは、国家予算の〇・四%を割って〇・三四%という、半ばシーリングでもあるのかという状態が八〇年代から続いておりまして、私、これを打ち破って抜本増員の予算を確保するために大臣の決意を一言伺いたいと思うんですが、いかがでしょうか。
○国務大臣(上川陽子君) 裁判所の予算の原案につきましては、最高裁判所がそれぞれの実態の中で御判断をいただいて、それに基づいて内閣に提出をするという、そうしたものであるというふうに考えております。
ただ、裁判所の予算も含めまして、最終的に予算案ということを作成するのは内閣の責務ということでございますので、その意味で、内閣としての意思決定の段階におきまして、裁判所を取り巻く様々な状況を適切に予算に反映できるようにということにつきましては、内閣の一員として努力してまいりたいというふうに考えております。
○仁比聡平君 終わります。
○仁比聡平君 私は、日本共産党を代表して、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
本法案は、判事三十二人、書記官を速記官からの振替五人を含めて三十九人、事務官一人を増員しようとするものですが、一方で、速記官からの振替を含めて書記官四十五人の増員をという最高裁の元々の増員要求から六人減らし、さらに速記官、技能労務職員合わせて七十六人の定員を削減するという極めて不十分なものです。
司法権の独立の下、国民の裁判を受ける権利に存分に応えるためには、裁判官及び裁判所職員の抜本的増員こそ必要です。最高裁は政府の定員合理化計画への協力を言いますが、新たな政府の定員合理化計画とは、今年度から二〇一九年度までに一〇%以上、毎年二%以上の定員削減を求め、その後五年ごとに内閣人事局が各府省の合理化目標数を決定し通知するという、これまでの定員削減を更に深刻化し、国民の権利保障機能の後退を招くそれ自体が不当なものであり、裁判所がこれに協力すべきものではありません。
裁判所職員の定員は現場のニーズに基づき積み重ねていくべきものであり、これを壊す削減ありきの合理化は許されないことを厳しく指摘し、反対討論を終わります。