○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

今日は、政府が今国会に提出した盗聴拡大法案に関わって、まず警察庁に通信傍受の体制や運用について明らかにしていただきたいと思っております。

どうも、通信傍受の現行法が平成十二年、二〇〇〇年の八月に施行されてから、通信傍受の装置というのが、携帯電話や固定電話の通話を傍受する装置とメールなどパケット通信の傍受令状が出たときにこれを傍受する装置、大きくこの二つということのようなんですね。

まず、携帯あるいは固定電話を傍受する装置の配備は、法施行後、どんなふうに配備をされてきているんでしょうか。

○政府参考人(露木康浩君) お答えいたします。

携帯電話等の音声を傍受するための装置の整備状況でございますけれども、平成十二年度、六十二式、これ予算額四億三千六百三十万円でございますけれども、続いて、平成十三年度、八式、予算額二千二十二万円、平成十六年度、七式、予算額二億二千二百五十二万円、平成二十一年度、五十七式、予算額一億四千四百五十九万円、そして今年度でございますけれども、二十二式、予算額七千七百四十六万円でございます。

○仁比聡平君 メールのみを記録する装置の方はどのように推移しているんですか。

○政府参考人(露木康浩君) お答えいたします。

メール傍受装置でございますけれども、平成十三年度に十六式、平成十五年度に二式の整備をいたしまして、平成二十七年度には一式を整備する予定でございます。

○仁比聡平君 その予算額は、平成十三年度において一億三千二百二十三万円であり、平成十五年度九千二百八十三万円、そして今年度六千二百三十一万円と衆議院で答弁をされておられます。

このメールのみを傍受する装置について伺いたいと思いますけれども、〇一年にまず配備をされた十六式というのは、これ附属装置もあるけれども、イメージとしては、特別のコンピューターが一台というのが一式ということなんだと思うんですね。これは既に廃棄をされたというふうに聞きますけれども、これはいつ、なぜ廃棄をされたのでしょうか。

○政府参考人(露木康浩君) お答えいたします。

まず廃棄の時期でございますけれども、平成二十四年度までに廃棄をすることといたしたものでございます。その理由でございますけれども、機能を向上させました更新機器二式を平成十五年度予算において整備をいたしましたので、平成十三年度の今お尋ねの十六式の機器については使用する見込みがなくなったという時点でそのように廃棄の判断をしたというものでございます。

○仁比聡平君 今お話しの機能の向上というのは、つまり、平たく言うとスペックの向上というようなことになるんだと思うんですね。つまり、様々なパケット通信があるわけです。携帯のメールというふうに一言で言っても、ドコモだとかauだとかソフトバンクだとか、会社によってその方式はいろいろだし、グーグルだとかヤフーだとかというそういうメールもまた別の形になっていると。

近時、SNSというふうに総称されるツイッターやフェイスブックやLINEなどなど、それぞれの通信方式に対応するために機能を向上させてきたその対応が更新だと、そういうことであり、今の二台というのは、それが傍受できる仕組みになっているということですね。

○政府参考人(露木康浩君) お答えいたします。

今委員からお話もございましたけれども、インターネット回線では、例えばですけれども、時間当たりに送信可能なデータ量が年々拡大をいたしております。そのように技術的な発展が大変著しいという分野でございます。したがいまして、メールを傍受するための装置につきましても、その時期時期の状況に応じて実効的に傍受ができるように処理能力の向上を図っているというものでございます。

○仁比聡平君 そうしたことで、二〇〇一年度に配備した十六台は廃棄をして、今スペックが向上した二台、それから今年度もう一台を配備するということになるわけです。日本中にこの二台ないし三台ということになるわけですが、どこに配備して、どう運用するのかと。実際のそういう傍受の必要性というのは、捜査本部というか都道府県警などで起こってくるわけでしょうけど、これはどんなふうにするんですか。

○政府参考人(露木康浩君) お答えいたします。

現有の二式につきましては、現在、警察庁において保有をいたしております。実際に使用するという場合には、その使用する都道府県警察において、通信事業者のところにその機械を警察庁の方から持っていくわけでございますけれども、それを使用して傍受をするということになるということでございます。

○仁比聡平君 警察庁が保有している、管理しているその二台の傍受装置を言わば現場に持っていって、通信事業者のどこかにつなぐわけですよね。そのつなぎ方について、九九年からの国会の議論でも随分な議論がありました。今はどんなつなぎ方をされているんでしょうか。

○政府参考人(露木康浩君) お答えいたします。

メールなどのインターネット上のデータを処理するサーバーにつきましては、その構成ですとか機能は事業者ごとに様々でございます。したがいまして、一概にこの方式によるというふうに申し上げることはできないのでございますけれども、いずれにいたしましても、私どもの保有しているメール傍受装置を用いてメールの傍受を行う際には、事業者の協力を得た上で、令状に記載された傍受対象のメールを確実に捕捉できるような設備等にその装置を接続するということになるものでございます。

○仁比聡平君 つまり、確実に今お話しのように捕捉をするために、衆議院の答弁でこんな御答弁されていますね。法的、技術的には二つほど考えられる、メールが電気的に通過する伝送路上において、傍受令状に記載された特定の通信手段に係るメールを構成するデータを選別して傍受する方式と、サーバーなどに設けられたメールボックスにおいて、当該メールを受信する都度、即時に当該メールデータを捕捉する方式のその二つがあり、前者の方式を取っているという答弁があるわけですが。

このメールが電気的に通過する伝送路上において選別して傍受するというのは、つまり通信事業者の大きなサーバー、ここの入口の辺りとか、素人的にはそんな感じがするわけですけど、ここに通信傍受装置をつないで、ここを通過する全てのデータの中から、令状対象になっているアドレスなりアカウントなり、そういうものを選別していくという、そういう仕組みだということですか。

○政府参考人(露木康浩君) お答えいたします。

今委員がおっしゃったようなこともあるのかもしれませんけれども、事業者ごとにメールの伝送の仕方、受信をしそれを伝送するという仕方は様々でございますので、一概に、大きなサーバーに私どもの機械を差し込んで傍受をするという方式になるのかどうかについては、これはちょっとそのようになるとは申し上げられないものでございます。

○仁比聡平君 いや、おかしいですよね。今私が紹介した答弁は、露木審議官の御答弁なんですね。つい先日といいますか、今年四月十七日の衆議院の法務委員会での答弁を私は前提にしているんです。

先ほど申し上げた、伝送路上、素人的にはサーバーの近くで取るんじゃないかなと思うんだけれども、という方式と、メールボックスから把握する、捕捉するという方式の二つを挙げて、現在私どもの機器におきましては前者の方式を取っておりますと御答弁されているわけですよ。

だから、メールボックスから捕捉するんじゃなくて、私が申し上げているような形になっているんだ、そういう答弁でしょう。

○政府参考人(露木康浩君) お答えいたします。

私どものメール傍受装置の方式につきましては、今委員がおっしゃったように、メールが電気的に通過する伝送路上において、令状に記載された特定の通信手段に係るメールを構成するデータを選別して傍受をする方式のものでございます。

先ほど私が一概に申し上げられないと申し上げたのは、事業者のメールサーバーに直接私どもの機械を差し込むという方式が、必ずしもそのように今運用されているといいますか、そういう機械であるとは限らないということでございまして、例えばメールサーバーから事業者の方がケーブルを傍受をする場所まで延ばしていただいて、そのケーブルと私どものメール傍受装置を接続するといったこともございますので、その接続の仕方を一概に特定のものに限定してこうであるということを申し上げることはできないという趣旨でございます。

○仁比聡平君 お手元に警察庁の平成二十二年四月三十日付けで発されている通信傍受法の運用に当たっての留意事項という通達を抜粋してお配りしましたが、電子メールの傍受については、警察庁が開発した電子メール用記録等装置を用いて行うものとするというのが原則とされているわけですね。これがサーバーの近くと私が申し上げている件。今審議官がおっしゃったのは、その次のただし書のところの例だと思います。

このつなぎ方の問題について、警察庁が開発をして今配備をしている通信傍受装置のその方式というのは、九九年の当時、法務省刑事局長の答弁とこれ全く違いますよね。

九九年、平成十一年の七月二十九日の当委員会の質疑において、当時の松尾刑事局長は、特定のメールボックスが受信したメールを自動的に転送するような設定を用いて傍受を実施するということが傍受の方法としては適当だという答弁を示されています。これは、通信事業者、プロバイダーのサーバーは余りいじられたくないとか、様々な不安、疑問、そうしたものを反映した、世耕弘成自民党議員の質問に対する答弁ですね。

ちなみに、このときの松尾当時局長は、警察署に転送して傍受することはあり得ません、また捜査官からそのような要求が出た場合には通信事業者の側がそれを断るというのは当然のことでございますと。どれほどこの通信の秘密を侵すことが重大なことかということを前提になった議論がされているわけです。

国会答弁でここまで立法提案者が述べながら、これとは全く違うシステムが開発されている。これ、林局長、どう思われますか。

○政府参考人(林眞琴君) 今御指摘のこの法制定当時の議論との関係で申し上げますと、このメールを傍受する方法というものにつきまして、当時の議論の中では、当時の技術を前提に最も考えられる方法というものに関してそのようなお答えをされたものと思います。実際にそういった形で伝送路の中で傍受できるのか、あるいは一旦メールボックスに入ったものを即時に取り出すというような形で行うかということにつきましては、当時の技術を前提に行われておりますけれども、実際にその当時の議論の中でも、その後の技術の発展により、法的に許される範囲で技術的に可能な方法がほかにあれば、それを否定する趣旨ではないというような議論もなされていたと考えております。

○仁比聡平君 その後の技術の発展というふうにおっしゃるけれども、平成十一年にかんかんがくがくの議論の中で申し上げたような答弁をして、十三年度予算で配備している。その十三年度予算で配備したものが申し上げてきたような仕組みなわけでしょう。一応確認です、警察庁。

○政府参考人(露木康浩君) お答えいたします。

十三年度整備のメール傍受装置についても先ほど申し上げた方式でございます。

○仁比聡平君 電磁的に記録するとかあるいは暗号を掛ける、鍵を掛けるなどというけれども、それがどんな仕組みになるのかというのは、それはもちろん技術の発展というのがいろいろあるでしょう。その下でいわゆる素人にはブラックボックスになってしまうんですよね。現に、法をどう具体的に実施する施設を造るか、整備をするかということについては、警察庁が開発をし、警察庁が運用している。

しかも、私が今お配りしているこの資料は警察庁から御提供いただいたものですが、ここの傍受のための機器等とか、あるいは二枚めくっていただいたスポット傍受という項目は、ホームページ上は掲載をされていない、非公開ということになっているわけです。メールを傍受をするというときに、会話を傍受するのと違って、一覧で全部見えてしまうわけですから、どう令状対象の通信と選別をするのか、識別をするのか。これについてはスポット傍受のやり方ということになるわけですが、この提供いただいた通達では、メール傍受についてはスポット傍受の仕方、書いていませんけど、これ、別に何かルールがあるんですか。

○政府参考人(露木康浩君) お答えいたします。

この通達には記載はございませんけれども、当然メールにつきましても、通信傍受法の定めるところに従いまして、令状に記載された傍受対象のメールのみを傍受するというものでございます。

○仁比聡平君 時間が迫ってきましたから、はしょって最後問いたいと思うんですが、国会に報告されている傍受の中身を聞くと、今申し上げているメール傍受は現には行っていないというわけです。それはどういうことを意味するのか。捜査の必要が一切なかったということだったら、もうこんなメール傍受のシステムなんて開発もやめて、こんな法案の提出なんてやめちゃったらいいんですよね。

私は、国民世論と現行法によって、使い勝手が悪いものにはなったものの、傍受の法的根拠ができたと。これ予算を取って、一件も令状請求はしないけれども、IT技術の発展に沿って開発をどんどん進める、そして事業者などとの運用調整も進める、ずっと積み重ねてIT化に対応しながら今回の改正案の提出を念願にしてきたというのが警察庁のこの問題での取組なんじゃないかなと思うんですね。

法案で、現行法の常時立会い、そしてその常時立会人による封印に代えて暗号でやれるんだというふうになっているわけですが、林局長、そうしたシステムというのは存在、完成をしているんですか。

○政府参考人(林眞琴君) 今回の改正法案におけます改正法の通信傍受法の中で特定電子計算機という概念を設けまして、それが具備すべき機能というものを詳細に法律で定めることとしております。それを使った場合には、立会人を立ち会わせた場合と同様の通信傍受の適正を確保することができるというものとしての機能を詳細に定めておるわけでございます。

この機能につきましては、現在の暗号技術等を踏まえるとそのような機能を有する機器を整備することは十分実現可能なものとして規定するものでございます。もとより、現時点においてそういった実際の機器の試作機でありますとかシステム、プログラム等を作成しているわけではございません。

○委員長(魚住裕一郎君) 仁比君、時間です。

○仁比聡平君 いや、だったら、結局、暗号が解かれて、本当は見てはならないはずのものが捜査機関の手のうちになるのではないかとか、そうした犯罪とは関係のない人のプライバシー情報も丸ごとどんどん蓄積されて、これがあらゆる角度から解析されるのではないかとか漏えいするのではないかとか、こうした問題がないという保証はどこにもないということでしょう。

私は、この通信傍受の現実についてこの委員会でしっかりとつかむ、視察をするということも大切だと思います。是非、委員長、御検討いただきたいということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。