山陰地方の農林水産関係に大被害をもたらした豪雪。島根県内の農・漁業者からは「行政の支援なくては再建できない」と悲鳴が上がっています。

 「こういう雪害は初めて。1000万円以上の被害です。施設・作物共済には未加入なのです」(安来市のイチゴ農家)、「ハウスの撤去・新設に反当たり500万円必要。苗木を植えても5年間は収入がない」(同ブドウ農家)…。1月8日、被害調査に訪れた日本共産党の山下芳生参院議員らに寄せられた声です。


辞めるしかない

 同市は県内有数のイチゴやブドウの生産地。JAやすぎや安来市によるとイチゴ農家68戸のうち31戸で、ブドウ農家48戸のうち36戸で被害がでました。農済東部によると、ハウス共済加入戸数はイチゴ農家で33戸(支払対象19戸)、ブドウ農家で3~4戸(同1戸)。再建は農家負担しかありません。

一方、漁業関係では「漁業継続には船やエンジンを買えば約100万円必要。償金するなら辞めるしかない」(漁船3隻が転覆の松江市の漁師)、「このままでは魚介類の供給が途絶える。船の引き揚げ・修理への支援に力を」(中海漁協副組合長)などの声が出されました。

 転覆・沈没した小型漁船(1㌧未満)の大半は波の穏やかな中海などでの漁業です。多くが、引き揚げやエンジンの修理費用などに支払われる漁船保険に未加入です。県によると漁船保険加入率(1㌧以上)は中海漁協5・7%、宍道湖漁協7・5%、日本海に出るJFしまねは87・4%です。少ない漁獲量や事故の可能性が低いことなどが低加入率の理由です。

 農林水産関係の被害額は1月17日現在、県のまとめで10億8000万円余。調査が進めばさらに増えそうです。

激甚指定穫和も

 日本共産党の有坂哲夫農林・漁民局次長や山下議員、仁比聡平前参院議員が相次いで島根入りし、地方議員と松江・安来両市で農・漁業者に要望を聞くなど調査。それを元に、松本龍防災担当相にたいして①被害の全容把握を急ぎ②甚大な被害を受けている農・漁業者への支援③除雪費用への弾力的な支援――などを申し入れました。国は漁船被害について局地激甚災指定要件緩和を検討する意向を示しました。

意欲おきるよう

 党地方議員も松江・安来の両市、東出雲町に申し入れました。尾村利成県議は県議会農水・商工委員会で「前例のない被害であり、前例のない最大限の支援を」と、岐阜県が雪害(2006年)支援策で県と市で復旧事業費の80%まで助成したことを紹介しました。

 しかし、県は水産関係では第一義的には漁船保険、未加入者には既存の融資制度で、農業関係では共済加入者とのバランスを含め検討したいと答えるだけでした。
 尾村県議は話します。「雪害を機に、農業・漁業をやめる人が増えれば地域経済の疲弊がすすみます。被災者の再建意欲がおきる積極的な支援施策を求めていきたい」(しんぶん赤旗 2011年1月19日)