菅直人首相は12月15日、国営諌早湾干拓事業(長崎県)の潮受け堤防排水門の常時開門を命じた福岡高裁判決(6日)について、上告断念を表明しました。農水省は2012年度にも開門する方針です。

 首相は上告断念の理由について「私なりの知見をもっていたので総合的に判断した。エ事は完了しているが、開門で海をきれいにしようという高裁の判断は重い」と述べました。

 
国の上告断念により、5年間の排水門常時開門を命じた08年6月の一審・佐賀地裁判決を支持し、「堤防閉め切りによる漁業権の侵害は違法」と判断した福岡
高裁判決が確定します。同事業は、「ギロチン」と呼ばれた1997年の堤防閉め切りから13年で、有明海再生へ大きな一歩を踏み出すことになります。

 
堤防閉め切り後、「宝の海」といわれた有明海は、赤潮の多発・大規模化、ノリの色落ちが起き、タイラギ、アサリなどの漁獲は激減しました。長崎、佐賀、福
岡、熊本の有明沿岸4県の漁民は国に開門を求めて提訴。300隻が参加した海上デモ(今年9月)などたたかいを繰り広げてきました。

私たちの声 やっと届いた

 「『よみがえれ! 有明海訴訟』を支援する全国の会」など、漁民を支える輪と開門を求める国民の世論が広がりました。「私たちの声がやっと届いた」とノリ養殖漁業者の金澤徹男さん(73)=佐賀市=が語るように世論と漁民の声に追い詰められての上告断念です。

 今後は「早く有明海が元の海になって息子たちが漁をできるようにしてほしい」(金澤さん)という声に国が一刻も早く応えるかが問われます。

 長崎地裁で係争中の同様の訴訟について、仙谷由人官房長官は15日の記者会見で「和解ということになろうか。話し合いが望ましい」と述べました。

弁護団が声明

 菅直人首相が上告断念を表明したことを受け、「よみがえれ!有明訴訟弁護団」(馬奈木昭雄団長)は15日、「上告断念は、開門をめぐる長期間のいさかいに終止符を打つための大前提で、政府の英断を心から歓迎する」などとした声明を発表しました。

 
声明は「円滑な開門協議さえ実施されれば、判決の執行を強制するような不毛な事態は無用」とした上で、長崎地裁で来年3月に判決が予定されている訴訟など
四つの訴訟が継続していることに触れて、「その解決も含め、今後、裁判の内外で早急に開門のための協議が開始されることを願ってやまない」としています。

直ちに開門準備を 穀田、赤嶺氏が会見 

 日本共産党の穀田恵二国対委員長と赤嶺政賢衆院議員は12月15日、国会内で記者会見し、菅直人首相が諫早湾の堤防開門を求める住民の訴えを認めた福岡高裁判決の上告断念を表明したことについて、喜ばしいと述べると共に、直ちに開門準備に着手するよう求めました。

 穀田氏は、「十数年の長きにわたる漁業者、原告・弁護団、市民団体の運動がつくり出した成果であり、大変喜ばしいことだ」と表明しました。

 
同時に、「”宝の海”を取り戻すために、直ちに開門を実行することが求められる。開門の中身や方法について、原告団・弁護団、関係者が参加する協議の場を
一刻も早く設けて、検討すべきだ」と指摘。「農水省や政府には、被害を受けてきた漁民や農民らの思いをくみとって、解決のため真摯な努力をすることが求め
られる」と強調しました。

 赤嶺議員は、「宝の海としてよみがえり、漁業で暮らしが成り立っていけば、多くの若者も戻ってくる。そういう
活気のある有明を取り戻す第一歩を踏み出した」と指摘。漁民や農家、住民も納得できる開門が実現するよう引き続き全力を挙げて支援していきたいと述べまし
た。(しんぶん赤旗 2010年12月16日)