鹿児島県の出水(いずみ)市福祉事務所は、一時金を支給された生活保護を受給する26世帯に保護を打ち切っています(22日現在)。
昨年12月に保護を打ち切られた同市生活と健康を守る会会員の男性(73)は、1月20日に同県に対し、処分取り消しの審査請求を行いました。
「慰謝料」なのに
男性は、若いころから耳が不自由で水俣病の症状に苦しみ、現在は心臓病、高血圧、糖尿病を抱えています。
男性は同請求の中で「(一時金は)水俣病の被害に苦しんできた者への慰謝料として支払われたものである。生活保護受給者は慰謝料を受け取る資格はなしとする差別に他ならず、絶対に認められない」と申し立てています。
ノーモアミナマタ訴訟原告で同守る会会長で生活保護を受けている田上和義さん(52)は「なんでこんな差別をするのか。無念でならない」と語りました。
現在、同訴訟をたたかってきた水俣病不知火患者会は国と協議中で、原告に一時金はまだ支給されていません。しかし、福祉事務所は田上さんが訪れるたびに、「いつ支給されるのか」と問うなど、支給と同時に速やかな保護打ち切りを待ち構えているといいます。
出水市福祉事務所は本紙の取材に、「国の方針に基づき、本人の同意を得て適正に対応している」とのべました。
日本共産党の中嶋敏子出水市議は「同意といっても、再び生活保護を受けられなくなるとの恐れからやむなく同意したもの」と反論します。
細川律夫厚労相は「(一時金の)自立更生に使われる部分については収入から除外し、十分に配慮している」と方針を見直す考えがないことを表明。また、熊本 県の蒲島郁夫知事は、水俣病被害者が生涯にわたって社会的な自立に当てる費用として「特別の需要」を考慮し、一時金を全額収入から除く取り扱いを要望して います。
医療窓口負担も
これに対して、松本龍環境相は「自立更生の部分と一時金の性格はまったく違う」との認識を示しています。そもそも水俣病の被害を放置し拡大させ、被害者が生活保護を受けざるを得ない状況に追い込んだ責任は国にあるからです。
水俣病被害の救済に尽力してきた日本共産党の仁比聡平前参院議員はいいます。「生活保護が打ち切られれば医療扶助が受けられません。医療費の窓口自己負担 が発生します。これでは、一時金申請の抑制につながる恐れもあります。なるべく質素な生活をして、短期間のうちに再申請することのないよう忠告しているこ とも看過できません」(しんぶん赤旗 2011年2月28日)