第168回国会 政治倫理・選挙制度特別委員会 第4号
2007年12月20日 仁比聡平参議院議員
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
法案を拝見しまして、あいまいな点あるいは矛盾ではないのかというような疑問点を私多々感じているわけですけれども、時間の関係で、政治資金の監査、この意義に絞って提案者にお尋ねしたいと思います。
法案十九条の十三第二項の各号のこの規定ぶりを拝見をいたしますと、導入しようという監査人の責務は、帳簿や領収書などの保存と備付け、それから収支報告書とそれらの帳簿、領収書等との突き合わせということだと思われますけれども、そういった理解でよいのか。そして、そういう監査人制度を新設しようという理由や必要性について伺いたいと思います。


○衆議院議員(棚橋泰文君) お答えをいたします。
まず、登録政治資金監査人による政治資金監査は、委員御指摘のように、会計帳簿、領収書等が保存されていること、あるいは会計帳簿にその年の支出の状況が記載されており、会計責任者が会計帳簿を備えていること、収支報告書が、会計帳簿、領収書等に基づいて支出の状況が収支報告書に表示されていること、領収書等を徴し難かった支出の明細書等は会計帳簿に基づいて記載していることの四点でして、政治資金適正化委員会の定める具体的な指針に基づいて行うこととなっておりますが、いずれも先生、委員御指摘のように、書類が保存されているかどうか、それから書面の記載が整合的かどうかというような形式的なチェックをするというふうに理解しております。
多分、委員の御指摘の趣旨は、特に総務省に置かれる委員会の方で政治団体の政治活動の自由に関して何らかの形で影響があるんじゃないかという御指摘の、多分御疑問の御趣旨かなというふうに今御質問伺いながら御推測したんですが、政治団体が行った支出の中身がその政治資金の使い道として適当であるかどうか、これが総務省の中の委員会の方で決めるという話ではございませんで、支出内容についての評価や判断を総務省の委員会でやるわけではないと。形式的な事項とはいえ、政治資金の透明度を高めると同時に政治活動の自由を確保するということを踏まえた上で、私は各党間でこのような形になったというふうに理解しておりますので、何とぞその点、御理解をいただければありがとうございます。
○仁比聡平君 今の御答弁からしましても、例えば領収書の多重計上といった支出状況の真実性といいますか、つまり領収書、帳簿、それから収支報告書の記載は突き合わされていると、形式的には。けれども、真実そのような支出がされたのかどうかというその問題については、監査の言わば対象外という理解なのかなと思うんですね。
確認ですけれども、監査人にはそういった支出の真実性を見抜く責任、責務、これはないという考え方でよろしいわけでしょうか。
○衆議院議員(大口善徳君) 先生御指摘のとおりでございます。
○仁比聡平君 そうしますと、実際にその監査の過程で、この支出については領収書もあるし帳簿にも書いてあるし、したがって収支報告書にはもう書いてあるんだけれども、支出そのものがおかしいのではないだろうか、もしかしたらこの領収書は虚偽なのではないだろうかという疑いを監査人が持ったり、あるいはもうこれは明らかに虚偽であるということに気が付いたりといった場合に監査人がどうするのかということについて、難しい状況といいますか、複雑な状況が生まれるように私は思うんです。
そういった場合に、収支報告書そのものやあるいはその政治団体の会計処理の在り方そのものを正す責任が監査人にあるということになれば、それにそういった正す責任にふさわしい調査権限だとか、あるいは政治団体の方がいや違うと言っても、その収支報告書を訂正させる権限などを持っていないと監査人はその職責を果たせないということになりかねないわけですけれども、もしそういうことになると、先ほど提案者の方からもありましたけれども、政治活動の自由との関係でも難しい状況が生まれるのではないかと思うんですね。
そういった複雑なやり方を持ち込むのではなくて、本来の基本理念に基づいて、言わばストレートに政治資金の収支を公開するということによって国民の不断の監視の下に置くべきなのではないかと私どもは考えているわけですが、提案者のお考えを聞かせていただきたいと思います。
○衆議院議員(大口善徳君) これにつきましては、政党助成法の政党交付金における外部監査、これが現実に今やっているわけですね。これは税金なわけです。それについて公認会計士が監査をするわけでございますけれども、それと同じような仕事を今回も考えていると、こういうことでございます。
そしてまた、監査マニュアルにつきましては、適正化委員会におきましてこのまたマニュアルを作らせていただいて、それに基づいてやるということでございます。監査人が、何といいますか、偽造かどうかを判断するとかいうことはなかなかこれはその領収書を見て分かるものではないなと思っておりますけれども、そういうことを含めて監査マニュアルでいろいろ規定していくと。
また、いずれにしましても、この政党助成法の政党交付金の扱いで現実に今行われておりますので、それに準じた形になると思います。
○仁比聡平君 そうはおっしゃっても、監査人が現実に気が付いたとか疑いを持ったというような場合にどうするのかというのが今のお話でもよく分からないんですよね。
今お話にありました法案十九条の三十に言う政治資金適正化委員会の所掌事務としての政治資金監査に関する具体的な指針なんですが、これには監査人がどこまでやれば法律上の義務を尽くしたということになるのかといった内容もゆだねられるということになるんでしょうか。
○衆議院議員(棚橋泰文君) お答えをいたします。
今の御質問に関する登録政治資金監査人がどこまでの権限で監査するかという話ですが、基本的には先ほどお答え申し上げたように、まず形式的な事項についての監査であると、内容について実質的な内容の監査には及ばないと、そういう理解でおります。
○仁比聡平君 そうしますと、この規定ぶりだけではよく分からないんですね。具体的な指針ということになれば、そういった真実性の監査などもやるべきであるとか、その手法だとかというようなことも書き得るような感じもするんですけれども、そういったものではないということでしょうか。
○衆議院議員(棚橋泰文君) この問題は各党の中で大変議論をしていただいて、正に委員御指摘のように政治活動の自由を確保するということと、政治資金の透明性をどこまで国民の信頼にこたえてきちんとやっていくということ、この二つをきちんとバランスを取りながら御議論いただいたと思っております。
この法改正自体の趣旨は、当然のことながら公開、特にいわゆる一円領収書も含めて一万円以下の領収書もというような、まず国民の皆様方にきちんとお見せするというのが大原則、その上でさらに、形式的事項とはいえ登録政治資金監査人がその形式的事項に関してはチェックをするという、私はそういうところで各党各会派の御議論がまとまったと、そこのところは深い議論をしていただいた上でここに落ち着いたんではないかというふうに思っております。
○仁比聡平君 監査人の登録についてもう確認をする時間がございませんけれども、これまでの勉強でいえば、政治家と例えば顧問関係にある弁護士や税理士や公認会計士が、その国会議員関係政治団体の監査のために登録をして監査をするということは妨げられないというふうに理解をしております。ちょっと答弁いただけますか。
○衆議院議員(大口善徳君) それは妨げられないということになります。
○仁比聡平君 登録にその裁量の余地があったりしてはならないのはもう当然のことですし、団体の側が任意に監査人を選べるのはもちろん当然のことだということになると、ただ、独立した第三者のチェックというように言われるほどのものなのかというのは、やっぱり改めて疑問だということを申し上げて、質問を終わります。


反対討論
○仁比聡平君 日本共産党を代表して、本改正案に反対の立場で討論いたします。
本法案は与野党協議の合意に基づくものとされていますが、我が党は、監査制度や適正化委員会は導入すべきでないという観点から、実務者協議の合意事項には同意できない旨を表明してきました。にもかかわらず、法案は衆議院の倫理選挙特別委員会提出法律案とされ、十分な質疑が尽くされないまま、本委員会でもわずか一時間余りの質疑しか行わないのは極めて問題です。
政治資金の公開は、政治団体がその収支を公開し、国民の不断の監視に置くことによって国民の判断にゆだねるというのが基本です。国会議員関係政治団体に係る領収書の一円以上の原則公開のために、なぜ登録監査人による監査や第三者機関の導入が必要なのでしょうか。
法案は、国会議員関係政治団体が収支報告書の提出に当たって登録監査人による政治資金監査を義務付けていますが、その監査は収支報告の記載内容と会計帳簿、領収書などを突き合わせるものにすぎず、監査人は収支報告書の記載内容の形式的適正を確認するにすぎません。
結局、この政治資金監査は弁護士、税理士、公認会計士という専門家のお墨付きを付けたいだけだとのそしりを免れません。そのために適正化委員会という新たな組織をつくり、そのための予算をつぎ込むことは全く不必要であります。収支はそのまま公開すればいいのであって、監査人のお墨付きが求められるのではありません。しかも、今後監査のチェックを厳しくするなどという方向になれば、それは政治活動の自由への介入になりかねないという点を指摘しておきます。
また、収支報告書の提出に当たって監査報告書を義務付けたことを理由にして、その提出期限を三月末から五月末に遅らせ、さらに収支報告書の公開も現行の九月三十日から十一月三十日に遅らせたことは公開に逆行するものです。収支報告書が提出されれば、速やかにインターネット等によって公開するべきであります。
なお、政党交付金は税金を原資とした政治資金そのものであり、受領政党の収入の大半を占めています。にもかかわらず、政治資金の支出におけるすべての領収書公開を義務付けながら、政党交付金の支出の全面公開を今回の法改正の対象から除外したことは極めて不可解であり、遺憾であります。
最後に、政治と金をめぐる最も重要な問題である企業・団体献金や政党助成の問題など、政治資金の入りの問題を本格的に検討することが国民の政治不信を払拭する上で不可欠であることを指摘し、反対討論を終わります。