○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
今日はまず、事件発生から例えば三十年あるいは五十年という長期間が経過をした後に起訴された刑事裁判における証拠の問題を大臣にお尋ねをしていきたいと思います。
発生当初の目撃証人などを初めとした参考人調書の問題ですけれども、これは前回の質疑で松野委員が取り上げられましたが、参考人が死亡した場合は伝聞証拠の例外として証拠採用はされるということになるわけです。私も、はっきり目撃したという調書があって、現場に行ってみますと参考人が述べている場所からは犯行現場は見えないという、そういう事件を経験をしたことがあります。大臣ももしかしたらそうした御経験もあるかもしれませんが、けれども、すぐにその目撃証言の信用性がないということにはならなかったわけですね。その参考人を証人として尋問を実現をすること、そしてその反対尋問を尽くす中で信用できないということを明らかにしていったわけですけれども、その中で、被告人の記憶がはっきりしていたということと、それから、その調書に表れる現場の様子はその尋問までの間に変化をしていなかったということが大変大きな要素になったわけです。そうした反対尋問は、今度の公訴時効の廃止をされる罪において証人が死亡していると、その可能性が高くなるだろうということは前回大臣も松野委員に御答弁なされていましたけれども、そうした反対尋問というのは不可能になる調書が提出されることによる信用性、これをどのようにお考えになってこの法案を提出をされているのか、確認にもなるかもしれませんが、大臣にお尋ねします。
○国務大臣(千葉景子君) 御指摘いただいておりますように、公訴時効が長くなる、こういうことによって確かに供述した者が、あるいは参考人等が亡くなるようなケースというのが率としては高まるということは言えようかというふうに思っています。そうなると、そのときに供述調書、供述に対する反対尋問というのがなされない形で供述調書が証拠として採用されるということも、これは法的に認められているところでございます。
ただ、だからといって、その証拠、供述調書の信用性というのが否定されるということでは必ずしもないわけで、法的には別に否定はされていないわけですけれども、ただ、裁判所が判断するに当たって、反対尋問を受けていないものなんだ、こういうことを念頭に置いてその証拠をどのように評価するかという、そういうことの中では、一定のやはり、何というのでしょうね、証拠信用力というのが比率としては高くなることはなくて、低くなるようなことが多いのではないかというふうに思います。ただ、信用性が否定をされている、法的に否定されているというふうなことはありませんけれども、個々の証拠の判断という中でいろいろな配慮がされていくというふうに私は理解をいたします。
○仁比聡平君 松野議員に対する答弁では、供述調書の証明力の判断に当たって裁判所において適切にしんしゃくされると、こう理解をすべきではないかという御答弁をされておられます。
そこで、最高裁刑事局長においでいただきましたが、この反対尋問ができないということを含めて、調書の証明力を言わば類型的に低くするというような考え方とか、あるいは心証形成における準則というのがあるんでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(植村稔君) 委員御指摘のような供述調書の証明力でございますが、特に準則のようなものは承知しておりません。個別の事件を担当する裁判所におきまして、個別の事案ごとに、おっしゃったような法の趣旨にのっとって判断する裁判事項でございまして、裁判所は事案ごとに適切に判断してきたというふうに考えております。
○仁比聡平君 つまり、刑事訴訟の言葉で言う自由心証主義の場面の問題であって、個々の裁判官ないし裁判体の心証形成にかかる話であるという御趣旨だと思うんですね。
これが市民裁判員にどのような影響を与えると考えるかという点について続けて千葉大臣にお尋ねしたいんですが、調書は、これは警察によってストーリーは明らかな形で作られるということが私たちの経験をするところです。ストーリーは明らかな調書があると。その御本人は既に亡くなっていて、反対尋問はできないし、三十年も五十年も前の事件で被告人の記憶ははっきりしないと。こうした場合に、裁判員は何が真実かということについて極めて迷うだろうと思いますし、その中で調書に寄りかかった心証形成がなされるというおそれは私は強まるんじゃないかと思いますけれども、大臣、いかがですか。
○国務大臣(千葉景子君) 基本的に裁判員裁判という、そういう中では、でき得る限り調書によることではなくして、やはり裁判廷での実際の供述、証言、こういうものを尊重するということが私は大事なところだろうというふうに思っております。
ただ、今お話しのようなケースというのは、それがかなわないわけですので、どうしても供述調書を一つの証拠として採用、そしてそれを証拠として検討しなければいけないということになります。裁判員がどのような供述調書に対して証拠としての価値というか重みを感ずるかどうかというのは、なかなかこれは難しいことだというふうに思いますけれども、できるだけ、供述調書のみならず様々な、できるだけ多様な証拠、こういうものを提示をして裁判員に誤りのない判断をしていただくと、こういう努力はしていかなければいけないのではないかというふうに思います。
ただ一概に、裁判員だからといって供述調書を、非常に、何というのかな、そこに強い印象を抱くということは必ずしも言えないのではないかというふうに思います。
○仁比聡平君 いずれにしても、事件発生から長期を経過した場合に、いわゆる見て聞いて分かる公判を実現するというのは、これ極めて難しくなるということだと思うんですね。
最高裁刑事局長は、もうこれ以上質問ありませんから御退席いただいて結構です。
○委員長(松あきら君) 植村刑事局長は、御退席いただいて結構です。
○仁比聡平君 続けて、DNA鑑定についてお尋ねしたいと思うんですけれども、法制審の中でもDNA鑑定の精度の向上をもって証拠の散逸を言わば否定するという方向の意見もあったやに伺っているんですが、そもそもDNA鑑定の特性といいますか、性格というのはどんなものかと。これ、千葉大臣にお尋ねしたいんですが、そもそもDNA鑑定というのは、DNA型が一致する確率の問題であって、たとえこれがその精度が上がってもそれ