○仁比聡平君
日本共産党の仁比聡平でございます。
児童ポルノは、児童に対する最悪の性虐待、性的搾取であって、政府を先頭に、社会全体がその根絶のために断固たる姿勢を示して対策を強める必要があるということは明白であると私どもも考えております。そうした意味で、単純所持の禁止規定を置いて社会全体にその違法性を広く宣言すると、こうしたありようは適切だと考えています。
しかしながら、本法案による単純所持の処罰化条項、具体的に言いますと、七条一項とその構成要件となります三号ポルノも含めた児童ポルノの定義規定が規制目的を達するために必要最小限のものと言えるのかと、この点についてまず議論をしていきたいと思うんですね。
これまでの質疑におきまして幾つもの例が出されましたが、その質疑、答弁を伺っておりましても、本罪が成立するとされ得る事案というのはこれ相当広範に及んで、かつその外延が曖昧なのではないかという疑問を私も拭えないわけです。
そこで、本法案の保護法益についてまず確認をしたいと思うんですが、その前提として法務省刑事局長に、現行法にも定義をされています性欲を興奮させ又は刺激するものというこの法の要件は構成要件ということだと思いますが、先ほど来、これは一般人を基準に判断すべきという答弁が衆議院でもあったという紹介がありましたが、改めて、この性欲を興奮させ刺激するものという定義、そしてこれがどのように判断されるのかという基準についてお答えいただきたいと思います。

○政府参考人(林眞琴君)
今御指摘の性欲を興奮させ又は刺激するものというものでございますが、御指摘のとおり、これは一般人を基準に判断すべきものと解しております。
その判断につきましては、個別具体的な事案の内容にはよるものの、一般論として申し上げれば、その判断要素といたしましては、性器等が描写されているか否か、あるいは動画等の場合にその児童の裸体等の描写が全体に占める割合、あるいはその児童の裸体等の描写方法、こういった諸般の事情を総合的に検討して、それを一般人に当てはめて、その基準で、性欲を興奮させ又は刺激するものに当たるかどうかを判断するものと解しております。

○仁比聡平君
そうしますと、先ほど山田議員始めとした方々の議論にもありましたけれども、一般人が性欲を興奮させ又は刺激されないものであれば、たとえそれが性的虐待あるいは性的搾取という観点から見たときに許されないものであったとしても、この構成要件には該当しないということになるわけでしょうか。

○政府参考人(林眞琴君)
性的搾取あるいは性的虐待、こういったものを防止するという法の趣旨があるわけでございますが、その中で個々具体的な刑罰を科す条文を見ますと、それぞれに例えば今の性欲を興奮させ又は刺激するというものが構成要件としてございます。したがいまして、これに当たらなければ刑罰は科せられないということになります。

○仁比聡平君
例えば、イングランド、ウェールズのこうした児童ポルノに関する事件の量刑について量刑諮問委員会というのがあるそうで、もちろん前提とする法制度が改正案のような趣旨かはいろいろ、国それぞれだと思いますけれども、この中でも参考とされている欧州におけるペドファイル情報ネットワークの闘いという、コパインスケールと言われている、児童ポルノと今のところ申し上げておきますけれども、この中身を分析している基準があります。この中で、例えば下着姿、水着姿などの子供を写したものだと、エロティックでも性的でもないというレベル一、暗示的なものに始まってレベル十まで、最も厳しいあるいは許し難い、そうした画像としてレベル十、こんなふうな定義が示されているわけです。子供が縛られ、拘束され、殴られ、むち打たれ、又は痛みを暗示するその他の行為を受けているところを写した写真、子供を対象とした何らかの形態の性的行為に動物が関与しているところを写した写真。これは、ウェールズにおいては、つまり量刑事情として重く見られなければならないという考え方かと思うんですけれども。
先ほど山田議員の質問にもありましたけれども、私もこうした画像というのは吐き気がする思いだと思います。一般人がそうした画像によって性欲を興奮させ、刺激されるのかという基準でいうと、これはそれには当たらないということになりかねないわけですが、これ、一般人の性欲をということで基準とすると、そういうことになるのではありませんか。局長。

○政府参考人(林眞琴君)
今御指摘の外国のコパインスケールでございますか、こういったもので幾つかの分類があるわけでございます。これについては、詳細は承知していないわけでございますが、外国の研究者が児童ポルノをその虐待性の観点から幾つかの段階に分けた指標であろうかと思います。
したがいまして、これがどういう形で日本の今回のこの児童ポルノ禁止法に当てはめになるのかというのは、具体的な詳細な対応関係というのはもちろんないわけでございまして、結局のところ、そういった各外国での分類のものがこの児童ポルノに該当するか否かにつきましては、こういった個別具体的な証拠関係に基づいて判断すべきでございまして、結局、そういった写真等が法の二条三項各号の要件を満たすかどうか、そういった場合には児童ポルノに該当することとなり、全ての場合にそれが児童ポルノに該当するわけではないというふうに理解しております。

○仁比聡平君
結局、性的虐待あるいは性的搾取による児童の自由や人格、あるいは身体、生命の安全が保護法益、それが保護されなければならない、ここに対する侵害を抑止しなければならない、そういう立法の意図が貫かれるのであれば、別の定め方が私は十分あり得ると思うんですね。
御存じかどうか、インターネットアーカイブを参照しますと、インターポールが、この児童ポルノという今国際的に使われている名称はこれは不適切ではないのかと。実際に保護されるべき児童の虐待やあるいは性的搾取という、ここの実態を表していないのではないのかという批判がされています。既に二〇一一年の十月にそうした認識がインターポールのホームページに掲載をされておりまして、呼び方として、チャイルドアビューズ・イズ・ノット・ポルノグラフィー、ポルノではなく児童に対する虐待物と認識を一致させるべきではないかという趣旨が示されているわけです。
本法をめぐっても、我が国でも児童性虐待描写物という表記を使ってはどうかという議論もあったように思うんですけれども、そうした考えを取らなかったというのはどうしてなんでしょうか。提案者。

○衆議院議員(遠山清彦君)
仁比委員にお答えを申し上げます。
先ほども山田太郎委員から類似の御質問がございました。おっしゃるとおり、ポルノという言葉だけ考えますと、成人の場合はそれは認められているわけでございまして、それが対象が成人ではなくて児童になった場合に児童ポルノということでございますから、委員が御指摘のとおり、ポルノという言葉イコール性的虐待という含意がないのではないかという御指摘についてはそのとおりでございますし、恐らく、インターポールが、そういった意味でチャイルドポルノグラフィーという英語の中にはアビューズという、虐待という意義が必ずしも入っていないのではないかと、そういう趣旨からの御提言と私どもも理解をしております。
他方で、今回、法律の名前を児童ポルノのまま、つまり十五年前の制定時のまま維持をするとした理由につきましては、既にこの児童買春と並びまして児童ポルノを、今回の本改正前にも提供罪等は既に処罰化の対象にしてきた、つまり犯罪化してきたわけでございまして、そういった意味で、児童ポルノという用語が、その字義の元々の意味を考えれば必ずしも虐待という意味を含んでいるとは言えなかったものの、この法律が制定されてから十五年間の間に社会で定着また浸透していく中で、今回の法律の三条の二にも明確に書かれておりますとおり、誰人も児童に対する性的搾取あるいは性的虐待に係る行為をしてはならないという精神の下にこの児童ポルノ禁止法が作られているという趣旨が社会に十分浸透しているという点に鑑みまして、実務者協議におきましても本法律の名前の変更は取らなかったと、こういうことでございます。

○仁比聡平君
今の御答弁にありますように、改正案三条の二において児童に対する性的搾取又は性的虐待に係る行為を禁ずるのだと、抑止するのだということが現行法も含めたこの法の趣旨であるということが明確にされるのだという御答弁なのであれば、今回の案ではないんですけれども、その趣旨を明確にするという法改正や、あるいは広報、周知も含めて検討をこれからすべきではないかと申し上げておきたいと思います。
趣旨はそうなのだというふうにおっしゃりながら、けれども現実の構成要件は、先ほど指摘をしたように、性欲を興奮させ又は刺激するものという要件があって、これを一般人を基準として判断をする以上、例えば公然わいせつなどにおけるわいせつ性という概念と厳密には一致はしていませんが、ですが、わいせつ性と似通った判断を捜査機関そして裁判所が行うということになるんだと思うんです。しかも、七条一項に言う「自己の性的好奇心を満たす目的」という目的規定にしたことによって、限定されていないとは言いません、限定されていないとは言わないが、しかし主観的要素がこの犯罪の成立に関わるということになるということなんですね。
そこで、まず警察庁にお尋ねしたいと思うんですけれども、性欲を興奮させ又は刺激するものか否かというこの判断は捜査の段階においてはどうやって行うんですか。

○政府参考人(宮城直樹君)
お答え申し上げます。
先ほど法務省の方からも、この性欲を興奮させ又は刺激するものについての答弁がございました。その判断の要素といたしまして、例えば性器等が描写されているか否か、あるいは、例えば動画等の場合ですと、その動画の占める割合の問題、それから児童の裸体の描写方法、こういったものを総合的に検討して判断をすると、こういった考え方に基づいて個別の事件の摘発をしてまいると、このように考えてございます。

○仁比聡平君
個別の事件において、そうした性欲を刺激するなり興奮させるなりというふうに言えるかどうかを判断するんだと。これは捜査機関のまず判断に委ねられるということになるわけなんですね。
いわゆる三号ポルノについて、今回の改正案で付加されようとしている「殊更に」とかあるいは「強調」というこの構成要件というのはどう判断されるのか。警察庁に引き続き伺いたいと思いますが、強調されているかどうかというのは、これはもちろん一つ一つの画像の個別具体的な判断でしょうから、結局その現場での判断ということになるのではありませんか。

○政府参考人(宮城直樹君)
お答え申し上げます。
この法の二条三項三号の「殊更に」というのは、一般的には合理的な理由がなくわざわざと、この意味でございます。これは、例えばその画像の内容が性欲の興奮や刺激に向けられているかどうか、また、そういったふうに評価されるかどうかと、こういったことを判断するために加えられたものというふうに考えてございます。
したがいまして、その判断でございますが、例えば性的な部位が描写されているかどうか、児童の性的な部位の描写が画像で占められるのはどの程度になっているか、こういったことを個別のその映像、画像に基づきまして判断して摘発してまいると、こういうふうに考えてございます。

○仁比聡平君
その判断というのは極めて曖昧で、今日質疑で出た議論ですので通告はしていないんですが、答えられればでいいんですけれども、先ほど真山議員がCGの例を挙げられました。実在の児童を描写していればこれに当たるのだと。CGは当たらないが、CGが実在の児童を描写するものであればこれに当たるのだという提案者の御答弁だったと思うんですが、警察庁、これどんな場合に実在をしている児童を描写しているという判断がされますか。

○政府参考人(宮城直樹君)
実際の児童を描写するということでございますが、例えばですが、まさに普通のアニメーションから作られたようなCGというのがございます。一方で、本当にその実際の、実在の画像から作られたもの、CGがございます。ですから、その中で、実在するその写真から作られた、それを加工して作られたもの、それにどれぐらい近いかと、こういったことで個別の判断をしてまいると、このようになろうかと思います。

○仁比聡平君
例えば顔が特定できるとか、体つきが特定できるとか、何か示せますか。

○政府参考人(宮城直樹君)
いわゆる児童であるか、恐らく今のお話は児童であるかどうかということに関連するかと思います。
我々の摘発する側といたしましては、仮に児童で、その児童の人定といいますか、どこの誰さんだということが分からなくても、要するにその画像がまさに児童に係るものであると、もう児童ポルノであるということが分かればそれは摘発するものでございます。
したがいまして、その場合には、例えば、先ほど他の答弁にございましたですけれども、いわゆる医学的な方法を用いまして専門家の方に鑑定をしていただいて、そういった中でこれが児童に係る画像であると、こういったものを判断して摘発すると、こういうふうになるかと考えてございます。

○仁比聡平君
その実在する児童との特定さえされれば当たるのだということになれば、十八歳未満の例えばアイドルの顔を使ったCGというのも当たり得ると、当たると決め付けませんけれども、当たり得るというふうになると思いますが、先ほど御答弁された提案者の方、そういう趣旨ですか。

○衆議院議員(西田譲君)
先生の問題意識は本当に大切なところだと思います。
あくまで実在の児童を描写したものであるかどうかということでやはり判断をしなければなりませんので、たとえCGであったとしても、仮にそうであるのであれば児童ポルノに当たる場合があり得るということでございます。

○仁比聡平君
という御答弁であれば、全く構成要件としては外延は明確ではないでしょう。
自己の性的好奇心を満たす目的という七条一項の主観的要件について伺いますけれども、これについては、先ほど来、客観的に表れている事実を見て判断するのであるという趣旨の御答弁が刑事局長からもあっているんですが、改めて、この目的とは何か、どう判断するのか、お聞かせください。

○政府参考人(林眞琴君)
一般論として申し上げますと、これは目的犯でございまして、目的犯におけるこの目的、自己の性的好奇心を満たす目的、これを立証する場合には、当該の具体的事案におけるまず客観的事情を基本といたしまして、かつ、被疑者、被告人を含む関係者の供述をも踏まえて行うものと考えております。
したがいまして、この自己の性的好奇心を満たす目的につきましては、児童ポルノを所持するに至った経緯、所持している児童ポルノの内容や量、また所持の態様など、これらが客観的な諸事情となりますが、こういった客観的な諸事情を基本としながら、それに関係者の供述を総合して判断することになると考えます。

○仁比聡平君
そうした事情を総合して判断をするというのも、まずは警察の判断に委ねられてしまうということは指摘を先ほどしたとおりですが、例えば先ほど例として出された、一旦所持をしていたものを削除したが復元プログラムを持っていた場合に、復元する意図があるかどうかということが判断要素として述べられました。
そうした点も含めて、この主観的要件を満たすかどうかというのは、つまりは捜査を遂げてみないと分からないということですね。児童ポルノ一、二、三号とに該当し得る画像を自己の支配に置いているという人を見付けたときに、この自己の性的好奇心を満たす目的で所持をしているのかどうかというのは、つまり様々なことを調べてみないと分からないということになるわけです。
となると、その行為者が、このまま自由にしていると証拠を隠滅するのではないか、あるいは逃亡をするのではないかというおそれが捜査機関によって判断され裁判所が令状を出すということになれば、逮捕され得る、勾留され得るということになりますよね。たとえ、裁判で後になって、いや、そういう目的はなかったということで無罪にされるとしても、そういう意味で処罰されないとしても、そうした捜査機関の強制捜査の対象となる。当然、自宅ないし立ち回り先のパソコンなどはガサ入れの対象になる。そういう理解でいいですか。刑事局長。

○政府参考人(林眞琴君)
あくまで、その捜査におきまして、刑事訴訟法の要件に従いまして、あるいは逃亡のおそれ、あるいは証拠隠滅のおそれ、こういったものを、令状請求したときにそれを、裁判所にそういうものがあるということが認定される、そういった資料を提供するまず必要がございます。その上で、刑事訴訟法の要件を満たすとなれば令状が出されて、それに基づいて捜査が行われるということになると思います。

○仁比聡平君
私は、必ず濫用されるというふうに言っているつもりはないんです。そういう規定でしょうと、この改正案はと申し上げているんですが。
三条について伺います。
適用上の注意という表題になっているわけですが、「学術研究、文化芸術活動、報道等に関する国民の権利及び自由を不当に侵害しないように留意し、」という規定ですけれども、これは、構成要件該当性や違法性阻却あるいは責任を阻却するというものではなくて、こうした行動であっても犯罪としては成立するのだと昨日、法務省のレクチャーで伺いましたけれども、刑事局長、そういう理解でいいですか。

○政府参考人(林眞琴君)
この三条の規定でございますけれども、基本的にこういった本法の適用上の注意をしたものでございます。特に、学術研究、文化芸術活動、報道といった、こういった本法の規制と密接な関係を有する国民の権利、自由を今回の法改正で例示として追加して、かつ、その追加されたものを考慮して本法の全般の適用上の注意を規定としてここに掲げられたものと理解しております。

○仁比聡平君
つまり、犯罪としては成立すると。つまり、児童ポルノ一、二、三号に当たり、それを所持をしており、そのときに自己の性的好奇心を満たす目的であるというふうに認定をされれば、それは犯罪としては成立するということですよね。
当然、自己の性的好奇心を満たす目的と、学術研究、文化芸術活動、報道等ということが、その自由、権利が両立し得ないというのであれば犯罪の成否は明確だということになるのかもしれませんけれども、先ほど来の議論でも、それが混在するなり、厳密に切り分けられないなり、そういう場合は逃れさせてはならないというような御答弁もありましたよね。例えば学生が、あるいは大学院生が、こういう児童ポルノや虐待ということについての研究を行おうという目的で世界中に流布されている画像をその資料として蓄積しているという場合を、先ほどの議論では、学術目的だからという言い訳だけで逃れさせてはならないという趣旨の御答弁がありました。
これは、つまり、そうした場面でも、七条の一項の要件を満たすのではないのかということが厳密に捜査の対象になるということなんでしょう。発議者。

○衆議院議員(遠山清彦君)
法務省の刑事局長からも御答弁があったかというふうに思いますけれども、この学術研究の目的で集めていても、実際には、客観的証拠から自己の性的好奇心を満たす目的を持って自己の意思に基づいて所持するに至ったと立証された場合は処罰の対象になり得るという理解でございますので、これ、先ほども佐々木さやか議員からも御質問ありましたけれども、正当な目的の中に学術目的は当然に入るわけでございますから、もし正当な業務行為であるとすれば、刑法三十五条上、違法性が阻却されるという解釈も私ども理解をしておりますので、そこは、それぞれの個別な事例における客観的な証拠で、本当に学術目的で所持に至ったのか、そうではないのかということを、やはり収集した証拠に基づいて当局が立証されない限り処罰はされないと、こういう理解でいるところでございます。

○仁比聡平君
そうした御答弁でも犯罪成立の外延が明確になったと私には思えないんですね。
アメリカやカナダの児童ポルノをめぐる規制については、例えば恋愛関係にある男女の間の性的行為の記録という概念が議論されているようでございまして、例えば日本でも、婚姻適齢を、婚姻要件の年齢を考えても、十八歳未満の女性と男性がそうした性的行為に及ぶ、それを自分の記録として保管するということはあり得ることで、これだけインターネットや動画撮影も可能になっている社会において、そうしたら、それを全て単純所持だといって禁ずるのか、そういう議論さえ起こり得るわけですが、私は、そういう場合、つまり個人の私的領域に刑罰をもって立ち入るということは、それはすべきではないのではないかと思いますけれども、提案者、いかがでしょうか。

○衆議院議員(遠山清彦君)
仁比委員、これも個人的な、今おっしゃったような恋愛関係とかあるいは法律上婚姻している関係の男女においての性的行為を自らの意思で記録に撮ったものの所持についてどう扱うかということでございますが、特に今回の場合、児童ポルノでございますので、女性あるいは男性どちらかが十八歳未満というケースに限られるとは思いますけれども、これは、私的な記録として所持をしている場合と、それを他の目的、つまり、例えば他者に頒布する場合には、その他者の性的好奇心を満たす目的というところに該当するような形態の中でそういう事案が出てきた場合には、当然に児童ポルノの所持という定義に合致するケースもあり得るかと思います。
しかしながら、単に婚姻関係にある男女が私的に記録で撮ったビデオを所持していることだけをもって、即この児童ポルノの禁止法の処罰対象になるとは考えにくいかと思っております。

○仁比聡平君
その御答弁はもっともだけれども、それは法文上は明確でないと思います。
児童ポルノを根絶するという観点で少し議論を進めたいと思うんですけれども、イタリアの児童虐待・児童ポルノ防止団体に虹の電話というふうに呼ばれているNGOがありますが、二〇一一年二月の報告によりますと、九六年以来、インターネット上で流通している児童ポルノや虐待の動画像というのは三十三万五千件以上に上ると。その流出元はヨーロッパが五四%、北米が四三%であるというのです。つまり、ほとんどが欧米だという調査なんですね。その報告では、日本発のものは二〇一〇年で順位でいうと十七位、ワーストワンは米国で、二位はドイツ、そういった報告もされているわけです。二〇〇九年の段階でこの団体が確認したサイトというのはおよそ五万件で、日本はそのうち五十四件で〇・一%であると。
そうした指摘がありまして、こうした欧米諸国では単純所持を罰則化すると、そうした規定が先行しているわけですが、この単純所持を処罰化したからといって、製造やあるいは流出、提供といった、とりわけインターネット上の拡散を防止するという効果があるとは言えないのではないのか、処罰規定はむしろ成功していないのではないのかという意見もあるんです。
これ、警察庁にお尋ねしたいんですが、日本政府として、世界のインターネットを中心にした、国際的に児童ポルノというのがどんな実態にあって、その中で日本の行為者やプロバイダーなどがどんな役割を果たしているのか、そういった調査というのは行ったことがあるんですか。

○政府参考人(宮城直樹君)
お答えいたします。
児童ポルノに係る電磁的記録でございますが、これはインターネットを通じてオンラインで流通するということでございまして、その全貌を把握することは極めて困難というふうに考えてございます。
ただ、我が国について言いますと、これは捜査の現場の感触でございますが、外国の捜査機関からの積極的な情報提供や捜査協力の申出が増えてございます。こういったことから、日本に関わるものが増加しつつあるのではないかと、このような認識はしてございます。
いずれにしましても、国際的な捜査協力を推進することによりまして、我々としては児童ポルノの事犯に的確に対処してまいりたいと、このように考えてございます。

○仁比聡平君
今の答弁でお分かりのように、そうした調査はないんですよ、していないんですよ。現場の肌感覚で増えているというのは、先ほどの統計の数字でも、それは私もそう思いますよ。だけれども、どうやって根絶するかということを真剣に考えるには、その調査をしないと、実態をと思います。
もう一つ、先ほども話題になりましたが、昨年五月に第二次児童ポルノ排除総合対策が犯罪対策閣僚会議として出されているわけですね。
ここで、私、特に捜査の中でも被害児が特定されていく、六百数十人というお話が先ほどもありましたが、その一人一人の児童がその後どう保護されているのか、その点は極めて重要なことだと思うんですが、どうも、昨日来伺いますけれども、昨年の五月以降、そうした関係省庁の間での連携、例えば警察が、そうした被害児が特定されたときに例えば児童相談所に通告をする、そうした行動がどうなっているのか、実情が。その通告をされた後、児童相談所でどんな苦労があっているのか。あるいは、被害児にPTSDを始めとしてどんな苦しみが発現しているのか。そうした意味での連携ということが着目されていないのではないのか。
それぞれの機関が一生懸命やっておられるのは私は信じたいと思いますが、だけれども、連携して児童ポルノの被害児に対してどう臨むべきかという認識はないのではないかと思うんですけれども、厚労省、おいでいただいていますが、いかがですか。

○政府参考人(鈴木俊彦君)
お答え申し上げます。
児童ポルノ事犯は多くの場合、御指摘のように、警察の捜査を通じて把握されることになります。警察におきましては、少年サポートセンターにおきましてカウンセリングの実施が行われていると承知いたしております。そのプロセスにおきまして、その児童について保護者による監護が不適当な場合など、児童相談所の関与が必要と警察が判断した場合には児童相談所への通告が行われているところでございます。
そこで、児童相談所におきましては、こうした通告を受けた場合に、児童心理司によるカウンセリングでございますとか、あるいは児童福祉司による指導、援助を行う、医療ケアが必要な場合には病院等の専門機関をあっせんする、さらに、緊急の保護を必要とする場合には一時保護、生活の立て直しが必要な場合には、場合により児童福祉施設に入所させるなどの支援を実施しているところでございます。

○仁比聡平君
児童相談所に引き続き私は頑張ってもらいたいと思いますけれども。
大臣に、時間が参りましたので、二点だけお尋ねを最後にしたいと思うんです。一つは、今の児童ポルノの加害被害の実態の国際的な調査をすべきじゃないか、加えて連携を強めるべきじゃないかという点が一つ。もう一つは、この児童ポルノ法も今度対象範囲に拡大しようという通信傍受についてなんですけれども、これ、どうも警察庁にお尋ねをしても、この中身を聞かせてはもらえないような現況になっておりまして、ちょっと今日質疑をする時間はなくなっているんですが、この政府の今の案には、現行法で処罰対象となっている行為についての通信傍受も対象にするという提案なんですね。
これ、今度の改正で七条一項が新設されるとなれば、これも含めて通信傍受の対象犯罪という提案を、進んでいく方向があるんですか。

○国務大臣(谷垣禎一君)
今回の改正法案、それからいろいろなその対応、議員立法でやっておられる最中、法務大臣としてお答えが大変しにくい、ですから踏み込んだことは私は申し上げません。
ただ、私自身、平成十一年にこの法案ができる前、当時、準備の段階は自社さ政権だったと私の記憶では思います。私、その与党の児童ポルノ・児童買春法を作るときの座長を務めておりまして、法案を提出するときは閣僚になっておりましたので提案者にはなっておりませんが、私自身としても非常に思い入れのある法律、今日改正を審議していただいているんです。当時、私どもが気付いていなかったこと、それから、当時にはそういう事態がなかったこと等々についていろいろこの委員会でも熱心に御議論されていることにまず心から敬意を表したいと思っております。
その上に、やはり、先ほど警察からの御答弁もございましたけれども、特に当時は意識していなかったインターネット上のものが非常に出回ってくることになりますと、国際的な連携というのは、委員の御指摘のように、これは極力図っていかなければ効率的な児童ポルノの根絶というのはできないだろうと思います。どういうふうに実態を調べていくかということはこれは工夫をしなければなりませんが、この犯罪実態がどこにあるかということは我々も今後十分関心を持って取り組んでまいりたいと、このように思っております。
それから、今、通信傍受のお話がございました。これは今法制審で御審議中でございますので、私は、法制審でどういう結論を出していくか、バランスの良い結論を出していただきたいと思っておりますが、今私の立場で御報告できる段階ではまだございません。

○仁比聡平君
終わります。