○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
まず、被害者等の聴取を録音、録画した記録媒体を伝聞例外とするという改正案に関わる議論の前提として、こども家庭庁に今日お越しいただいております。
お配りをしております資料の三枚目をまず御覧いただければと思うんですが、法務省から提出していただいております、これまで、つまり平成二十七年から令和三年に行われた聞き取り対象者十八歳未満の年齢分布という表なんですけれども、これまでに実に九千二百五十五件の児童相談所、警察、検察による代表者聴取が行われているわけですね。対象になった子供さんたちの年齢をまず御覧いただきたいと思うんですが、一番幼い子は二歳です。二十七件の聴取が行われ、三歳で二百七十二人。加えて、四歳、五歳、六歳合わせて千八百三人。七歳から十二歳までのいわゆる小学校の辺りの子供たちが四千九百五十二人。中学生にほぼ当たる十三、十四、十五歳で千七百二人。十六歳で三百人、十七歳で百九十九人という、こういう代表者聴取が取り組まれておりまして。
まず、こども家庭庁にお尋ねしたいと思いますが、これは児童相談所にとってみますと、性虐待を始めとした深刻な被害に遭っている、そうした通告がありケースワークが始まるという中で、家庭、特に性虐待の加害が疑われる親からの分離、けれども、いつまでも分離できるのかということだってありますから、その家庭への再統合という将来も見据えながら、その子供さん、被虐待児の、からのインタビューをどうするかという極めてデリケートな問題なんだと思うんです。そういう場面で行われるということなんだと思うんです。
一方で、そうした性虐待を刑事事件として立件をするという取組が、もう改めて事件の数々申し上げるまでもなく取り組まれてくる中で、警察が身柄付きで児相に連れてくるというようなことも含めて、司法関係者との協働というのがこの近年の大きな課題になる中でこういう代表者聴取というのが取り組まれていると思うんですね。
一方で、児童相談所にとってみると、深刻な葛藤の中で、親権、親の権利を制約したりするという家庭裁判所への審判の申立てなども行っていかなければならないことが間々あるわけですから、そうした下で行われる代表者聴取というのはとても大切なことだと思うんですけれども、その意義について、あるいはこれまでの取組について御紹介いただけますか。
○政府参考人(野村知司君) お答え申し上げます。
児童相談所における調査につきましては、先生御指摘のありましたように、やっぱり子供の気持ちというようなものにも配慮しながら情報の収集を行っていくことが重要であるというように考えております。
特に、やっぱり子供にとって、その心理的な苦痛であるとかあるいは恐怖、不安、そういったものはどういったものであるのかと理解しながら配慮していくということ、さらに、話を聞くことが子供にとっては出来事の再体験となる二次的被害をならないか、そういったことを回避する、あるいは緩和すること、こういったことに配慮しながら子供に与える負担というのをできる限り少なくしていくということが重要であるというふうに考えております。
こうした考えの下、性的虐待を始めとして、虐待事案において刑事事件として立件が想定されるケースにつきましては、可能な限り子供に同じ内容を繰り返し聴取しないよう司法面接を実施しているところでございます。
こうした留意点等につきましては、平成二十七年に当時の雇用均等・児童家庭局の担当課長名で地方自治体と児童相談所の方に通知を発出しているところでございまして、こうした面接の持つ趣旨でありますとか、子供への精神的負担を極力与えないような形で面接に取り組んでいただきたいということを周知徹底しているところでございます。
○仁比聡平君 そのような取組がこれまで行われてきたわけですけれども、その前の資料、代表者聴取における代表者、聞き取り者は誰かという資料を見ますと、年を追うごとに検察官による聴取というのが割合的にも、もちろん絶対数的にも増えておりまして、令和三年でいいますとトータルで二千四百十七件の総数になるんですけれども、七九・二五%が検察官、それから一四・四二%が警察官によるものということになるわけですね。
この検察官、警察官による代表者聴取が、先ほど、こども家庭庁から御答弁いただいたような、そうした趣旨に沿わなければならないと。本会議での代表質問に、担当大臣から、専門性やあるいは面接のその一定の経験というようなものが聴取者というその主体に必要だというお話がありました。
そこでということなんですが、一枚目の検察における聴取技術の習得に向けた取組が行われてきているわけですよね。ここにありますように、プロトコルと言われますけれども、そうした面接の手法は世界的に蓄積をされてきていて、我が国においては、その資料にあるNICHD、それからChildFirstのこの二社による、二社の民間団体による取組、研修というのがスタンダードになっているというか、いうことなのかなというふうに思うんですが、これは法務省、そのとおりかということと、それから、この資料には、大学教授等による講義や演習に令和三年度でいいますと二百六人の検察官が受講しているということが紹介されていますが、この前、令和二年に検討会に配付された資料によれば、民間団体主催の研修に平成三十年で二十九名の検察官が参加しているということが過去の紹介としてはあったんですけれども、この民間団体の研修というのに検察官が参加するという取組もこれからは行われるんでしょうか。
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
御指摘のプロトコルに関してですけれども、まず、日本で普及している代表的な司法面接的手法のプロトコルといたしましては、NICHDプロトコル、ChildFirstプロトコルが主といいますか、代表的なものであると承知をしております。
検察官のその研修でございますけれども、これは平成三十年に二十九名ですとか、その今御紹介いただいたような数値、これはこの頃に始まったものではなくて、もっと前からずっと研修を行ってきているものでして、その民間団体の研修に派遣されていたこともありますし、その大学教授に講義いただくというのはずっとやっていることでございまして、ちょっと今数字を、正確な数字、経年のものを持っておりませんけれども、今後もそれはいろんな形で検証をするということは続けていくつもりでございます。
○仁比聡平君 そうしたプロトコル、つまり面接の手法をきちんと学んだ、身に付けた聞き取り主体によるものでなければ、この代表者聴取そのものが言わば成り立たないということかなと思うんですけれども。
四ページ目の資料に、このNICHDプロトコルに準拠した代表者聴取の手順、手法についての法務省資料をお配りいたしています。私の方で紹介しますけれども、導入の仕方、グラウンドルールの説明、リラックスした話しやすい関係性を築くラポールの形成、出来事を思い出す練習、それから自由報告、基本はオープン質問で行い、五W一Hの質問はできるだけ最後の手段とする、かつブレークの取り方、休憩の取り方、そして必要に応じたクローズド質問、誘導質問なども用い、情報を得るという場合には、再びオープン質問に戻って自由報告を求めるといった補充質問の在り方、そしてクロージングの仕方。
こうした手順、手法というのが言わば蓄積されてきていることだと思うんですけれども、今度の法案で伝聞例外とする要件について、今日も随分議論がありましたけれども、曖昧ではないか、分からないではないかという議論があるんですが、基本は、これまでこうして取り組まれてきた代表者聴取、これを念頭に置いていると、想定しているという理解でいいんですか。
○政府参考人(松下裕子君) 結論としては御指摘のとおりなんですけれども、面接的手法には御指摘のものを含めまして様々なプロトコルがございますけれども、いずれにおきましても、その中核的な要素は供述者の不安又は緊張を緩和すること、その他の供述者が十分な供述をするために必要な措置、それから誘導をできる限り避けること、その他の供述者の供述の内容に不当な影響を与えないようにするために必要な措置がとられるということでございます。
そこで、改正後の刑事訴訟法三百二十一条の三におきましても、の一項ですね、におきましても、これらの措置が一般的な通常の配慮を超えて個々の供述者のそれぞれの特性に応じた特段の配慮の下にとられたものであるということを明確にするためにこうした措置が特にとられたというふうに規定しているものでございまして、現在運用されている代表者聴取の取組における聴取では御指摘のプロトコルなどが用いられ、先ほど申し上げた措置が一般的な通常の配慮を超えて供述者の特性に応じた特段の配慮の下にとられているものと承知しておりますので、その場合には、改正後の刑事訴訟法第三百二十一条の三第一項の措置要件は満たすと考えられます。
○仁比聡平君 もちろん、私も、今御紹介している二つのプロトコルに限定されるということを申し上げるつもりはないわけですけれども、この取り組まれてきた趣旨から外れると、これは大きな問題が起こると思うんですね。
その手法のグラウンドルールの説明のところをちょっと御覧いただきたいと思いますが、面接の約束事として、面接者は知識を持っていないという項がありますよね。子供たちはとても敏感で、暗示や誘導ということにとても脆弱だということもあり、目の前にいる大人、聞き取り者がどんな認識で自分に向かっているかということは、これは気付くものですよ。そのときに、当該事件の捜査を担当する、例えば、その子の性虐待について刑事事件に問われている親がいる、その事件を捜査している警察官やあるいは検察官がつまり証拠を全部握っているし、ほかの関係者の取調べもやっているという捜査官が子供に対して面接に及ぶということになれば、それは予断を持っているに決まっているし、何かを聞き出そうとする、言わせようとするというそうしたおそれ、あるいは公正らしさを害する、そうした状況というのが生まれますよね。
私は、この手法を取るときに、事件の捜査を担当する検察官が主体となってはならないと思うんですが、局長、いかがですか。
○政府参考人(松下裕子君) グラウンドルールの説明というところに記載しておりますとおり、子供から話を聞くときには、私は何も知らないと、あなたから話をしてもらいたいということを徹底するということがルールとして決まっておりまして、一定の結論なり答えに誘導するようなことは厳に慎むということがもうこの基本的なルールですので、そういう考え方で聴取を行うものだと理解をしております。
また、できるだけ早いタイミングで、その記憶が汚染されないようなタイミングで誘導などを行わずにできるだけ少ない回数で話を聞くというのもこれらのプロトコルの考え方でございますので、御指摘のように、全ての証拠を全部分かっていて、事実関係も全部分かっていて聴取するというような状況かどうかという、実際の事件によっていろいろありますけれども、必ずしも捜査官であれば何もかも分かっていて、子供に何かをこう暗に誘導するというようなことでもないのかなというふうに思っておりますし、聴取の主体に関しては、改正後の刑事訴訟法第三百二十一条の三は特に限定をしておりませんので、このプロトコル、これらのプロトコルのような一定の措置がとられたものという手法で聴取をすることができるものであれば聴取主体の限定はしていないところでございます。
○仁比聡平君 条文上そういう限定をしていないから、私はあえてこういう質問をしているんですよ。
大臣、ちょっとお尋ねしたいと思うんですけども、伝聞法則というのは、供述の認知から表現に至るまでのプロセスを法廷における直接供述をただしながら行われるからこそ効果を発揮するわけですよね。それが憲法の保障なわけですよ。
実際、こうした脆弱な子供たちの供述というのが重要な証拠になるときに、これを伝聞例外にするという要請そのものを私全面的にゼロだと言うつもりは全然ないんですけども、けれども、例えば、事件の後、被告人、被疑者、被告人が特定されたとしても、例えば精神鑑定などを要して数年公判までに時間が掛かるというようなことだってあり得ますよね。小さい子が何年も前に録音、録画されたものが主尋問に代わるものとして法廷に顕出されると。これに対して大臣は反対尋問をさせると言っていますけど、何年も前の、あのときどんな人からどんなふうな話を聞かれたかも分からなくなっている子供に、供述当事者に、反対尋問は事実上なかなか効果を上げることは難しいと私は思うんですよ。だからこそ、今日申し上げているような、これまで性虐待の被害児に対して取り組まれてきたような代表者質問、その蓄積されてきた手法に限定すべきだと、運用は。
条文上は、今局長がおっしゃったように、主体も、あるいは対象犯罪も、あるいは被害者の年齢も限定はされていないんですよ。だからといって、あらゆる犯罪であらゆる関係者の供述、子供だけじゃなく、供述を録音、録画してそれを主尋問に代えたらいいって言ったら、もう刑事裁判壊れちゃうじゃないですか。それは憲法違反なんですから、そんな運用は絶対しちゃならないと。そんな運用をしたら、それは反対尋問権侵害であり、デュープロセスに反する許せないことだと、許されないことだということを私は明確にすべきだと思いますが、大臣、いかがですか。
○国務大臣(齋藤健君) 改正後の刑事訴訟法第三百二十一条の三第一項におきましては、録音・録画記録媒体に記録された供述の信用性が吟味できるよう、証拠能力を与える要件として証人として尋問する機会を与えなければならないと、こうしているわけであります。
被告人側の尋問が法廷供述について直接行われないことにより反対尋問としての機能が限定的となるのではないかという御指摘でありますが、次のようなことをちょっと申し上げたいと思います。
すなわち、まず供述者が被告人側の尋問時に事件の記憶を維持している場合には、法廷で主尋問が行われた場合と変わりなく尋問を行え得ること。そして、被告人側の尋問や検察官側の尋問を通じて事件の記憶を喚起した上で尋問を行うことが可能となる場合もあること。そのようにしても事件の記憶が喚起されず証言できないのであれば、仮に法廷で主尋問を実施したとしても同じ結果となるということ。さらには、事件の記憶が喚起されない一方で、供述者が聴取時には記憶していた事件の内容を供述した旨述べる場合もありますけれども、そのような場合、現行法の下でも、反対尋問の前提となる供述は主尋問での証言ではなく捜査段階で作成された供述調書ということになることから、改正後の刑事訴訟法第三百七十一条の三に特有の問題ではないこと。こういったことから、尋問する機会を与えることを要件として証拠能力を与えることに問題はないというふうに考えています。
○仁比聡平君 丁寧にではありますけれども、これまでの立法の提案を繰り返されました。大臣としては今日そうおっしゃるしかないのかもしれませんが、私、先ほど指摘したような場面になったら、これはもう現実の裁判の舞台では重大な争点に発展してしまうと思います。そんな運用は絶対にしてはならないと。
そもそも、イギリス、アメリカの司法面接というのは、子供たちが暗示や迎合によって体験していない事柄を供述して、それによって冤罪事件が起こってしまったという反省に始まった取組なんですよね。これを逆に使ってしまうということは絶対行ってはならないということを厳しく申し上げて、次の質問に移りたいと思います。
斉藤参考人、おとといの参考人質疑でとても重要なことをおっしゃってくださいました。私が特に印象に残ったのは、性暴力や性犯罪は学習された行動である、なぜ性犯罪を繰り返すようになったのかというと、この社会の中で学習してきたものだからだと、だからこそ、学習し直すことでやめることができる、そこに専門の治療が最もエビデンスがあるし、刑罰プラス治療をしていくことが重要であるという、こうした認識を述べられたんですが、矯正局にお尋ねしたいと思いますけれども、お配りをしている五枚目の資料は、犯罪者、性犯罪者処遇プログラム受講者の再犯等に関する分析結果、令和二年のものですけれども、これらも踏まえて、この斉藤参考人の指摘についてどのように受け止められますか。
○政府参考人(花村博文君) お答えします。
刑事施設におきましては、強制性交と強制わいせつなど性犯罪を行った者の中で性犯罪の要因となる考え方に偏りがある者、あるいは自己の感情や行動を管理する力に不足がある者などに対して、再犯につながる問題性の大きさを判定し、その度合いに応じて刑事施設の職員や処遇カウンセラーが認知行動療法に基づく性犯罪再犯防止指導を行っております。
認知行動療法は、問題行動の背景にある自らの認知のゆがみに気付かせ、これを変化させること等によって問題行動を改善させようとする方法であり、具体的な内容としては、受刑者にグループワークの中で性犯罪につながる要因を検討させるとともに、その要因に対処するための知識やスキルを身に付けさせ、それらを出所後の生活で実践するための再発防止計画を作成させております。
刑事施設における性犯罪再犯防止指導につきましては、その効果検証を行った結果、一定の再犯抑止効果があることが統計的に認められているところであり、引き続き処遇プログラムの充実を図ってまいりたいと考えております。
○仁比聡平君 この令和二年三月の分析結果の表にあるように、効果は上がっているということなんだけれども、強制わいせつや迷惑行為防止条例違反事犯者についてはそれが見られないとか、再犯リスクや問題性が特に大きい群について指導の充実を検討しなきゃいけないという課題はやっぱり大きいんですよね。
そうした中で、二〇一四年十一月の性犯罪の罰則に関する検討会で、大阪の藤岡淳子教授が極めて示唆に富む指摘をしておられます。資料を二枚お配りしておりますけれども、処遇プログラムの先進国と言われるカナダでの取組が効果を上げているということなんですね。
その際の議事録をそのままちょっと紹介しますが、CoSA、コーサは、刑務所を出た性犯罪者、コアメンバーと呼ばれる人を、一般の市民たちが友達になることと監視することと両方の役割を担って毎日支える。そして、その市民たちを専門家たちが週に一度会議を開くなどして支えるというものです。これは、カナダのクエーカー教徒たちから始まって、今、イギリスやアメリカに広がっています。再犯率を七〇%から八〇%低下させたということで非常に注目を集めている方法ですと。このグラフ、御覧のとおり、ピーク時の半分近くまで下がっているわけですよ。
もう一枚は、厳罰化の代表として藤岡先生が紹介された韓国における認知件数なんですが、これずっと上がっていますよね。
藤岡先生、こうおっしゃっています。二〇〇七年に電子監視を取り入れていますが、それにもかかわらず認知件数は上がり続けて、ようやく一昨年、二〇一二年のことですけれども、プログラムを韓国でも始めているところですと。下に否定的効果として差別やヘイトクライム、監視対象者が増加し監視が行き届かなくなり、再犯が増加する可能性があると。住所登録だったり電子監視というような取組というのはこういう逆効果を生んでいるじゃないかという指摘があるんですが、こうした点について、保護局になるでしょうか、どんな御認識でしょう。
○政府参考人(宮田祐良君) CoSAの点についてお答え申し上げるのがいいかなと思うんですけれども、CoSAの取組というのは私ども大変注目をしております。
やっぱり市民とともに再犯あるいは健全な生活を営んでいくということは非常に重要でありますし、やはり刑事手続も含めて、あるいは刑事手続終わった後も、やはり必要な支援を地域で継続的に受けられる仕組みというのが大変重要であるというふうに認識をしております。
この点について、日本の我が国の取組としましては、現行でも保護司とかあるいは協力雇用主とか、やはり本人の身になって隣人として支えてくださる人たちが現にいて、CoSAと同じ取組ではないですけれども、やはりそういった人たちの協力が非常に重要だと思っておりますし、引き続き注目して関心持って、払っていきたいというふうに思っています。
○仁比聡平君 時間が迫っていますので、大臣にお答えいただければと思うんですが、そうした点について、もう一つの斉藤参考人の指摘は、結局、受刑者に対する取組と社会内処遇での連携というのがこれはうまくいっていないじゃないかと、連続した処遇というのが必要じゃないかということなんですけれども、そうした指摘に対してどうお答えになりますか。
○国務大臣(齋藤健君) まさに性犯罪者の再犯防止のためには、この地域において必要な支援につながっていくということ、これが極めて重要であると考えています。
矯正施設や保護観察所では地域における支援を確保するための取組を行っているところであります。具体的には、矯正施設において把握した処遇情報等を基に矯正施設収容中から釈放後の支援を確保できるよう、保護観察所において、例えば、同じ問題を抱える人たちが集まり相互理解や支援を行う活動をしている民間支援団体、専門的なプログラムを実施する医療機関、心の問題について相談できる精神保健福祉センターといった地域において支援を行っている関係機関、団体と調整を実施し、当該関係機関等とつながりをつくっているほか、保護観察中においても必要に応じてこれら関係機関等と連携した処遇を実施しているところであります。
じゃ、これが完璧に連携できているかとおっしゃられれば、私は完璧にはなっていないと思いますので、引き続き、性犯罪者の立ち直りのために切れ目なく地域での支援が受けられるよう、連携強化を図ってまいりたいというふうに考えています。
○仁比聡平君 そのための体制強化や、あるいは民間の、あるいは専門家の力を生かしていくための予算措置だとか、もう日本でやらなきゃいけないこと、カナダのCoSAのような取組を、近づけていくためにやらなきゃいけないこと山ほどあるということを指摘をし、時間が本当にいよいよ迫って、警察庁、厚労省の皆さんに御答弁いただくわけにちょっといかないかもしれないんですけれども、後のこの資料に、SNSに起因する事犯として、警察庁の資料、罪種別の被害児童の数の推移が極めて高い水準で推移していると。この中には、次の資料ですけれども、優しかった、相談に乗ってくれた、あるいは、寂しかったとか暇潰しとか、そうした心理でSNSを通じた被害に遭い、そして、自尊心を奪われ精神的にも身体的にも大きなダメージが残る、そうした子供たちや若年女性がいると。これ、もう御答弁いただかなくてもはっきりしていると思うんですけど、そうした実態をしっかり捉えた、五年後という附則に基づく徹底した調査が必要だと思うんですよ。
前回も問いましたけれども、小西参考人、島岡参考人は、そういう実証的な調査というのが日本では非常に欠けている、あるいは、まさにそれが一番日本で足りないことだというふうにもおっしゃいました。
前回、大臣は、手法や範囲について深く検討していきたい、受け止めてほしいというお話あったんですが、そうした法務省からの要請があったときに、内閣府男女共同参画局のこれまでの知見生かして、私、是非受け止めて取り組んでいただきたいと思うんですが、内閣府、いかがでしょうか。
○政府参考人(畠山貴晃君) お答え申し上げます。
内閣府においては、統計法に基づく一般統計調査として、三年に一度、男女間における暴力に関する調査を実施し、無理やりに性交等をされた経験の有無、被害時の年齢、被害後の相談の有無や相談の時期等について尋ねるなど、性犯罪、性暴力の被害の防止や被害者支援等のための施策の検討に資する調査の実施に努めてきたところです。
引き続き、関係省庁とも連携しまして、性犯罪、性暴力の状況が的確に把握できるデータの在り方を検討するとともに、効果的な施策の立案等に資する調査を実施してまいりたいと思います。
○委員長(杉久武君) おまとめください。
○仁比聡平君 はい。
性暴力、性犯罪というのは、個人の尊厳を脅かす、あるいは否定してしまう人権侵害ですから、その原点を絶対に揺るがずに、法務省にも、そして関係省庁にも全力を尽くしていただきたいと思います。
皆さん、お疲れさまでした。
○委員長(杉久武君) 他に御発言もないようですから、両案に対する質疑は終局したものと認めます。
これより両案について討論に入ります。
御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
○仁比聡平君 日本共産党を代表して、刑法、刑事訴訟法一部改正案及び性的な姿態撮影行為等の処罰等法律案について賛成の討論を行います。
以下、主要な点について意見を述べます。
第一に、本改正案が、明治刑法以来、命懸けで抵抗をしなければ、あるいはしなかったとみなされれば、性被害者が逆に泣き寝入りを強いられ、二次被害のおそれから沈黙を強いられてきた大きな原因であった、暴行、脅迫、抗拒不能要件を根本的に改め、同意の有無を中核とした構成要件に変えることは大きな前進です。声を上げ続けた、上げ続けてきた被害当事者の皆さんに心から敬意を申し上げます。
罪名そのものを不同意性交等罪とし、暴行、脅迫、心身の障害、アルコールや薬物、睡眠その他意識の不明瞭、不意打ち、恐怖、驚愕、虐待、地位に基づく影響力による不利益の憂慮という列挙事由により、同意しない意思の形成、表明、全うを困難な状態にさせ、又はその状態に乗じて行った性的行為を処罰対象とすることにより、処罰されるべき性暴力が適正に処罰され、抑止されることを期待します。
また、地位、関係性を利用する類型の創設、さらに、性的行為には相手の積極的同意を必要とし、個人の尊厳を保護法益と捉え直す更なる検討を求めます。
第二に、性的同意年齢の十三歳から十六歳への引上げを明記し、中学生まで原則保護することは重要ですが、小西参考人が完璧な解決とは言えないと述べたとおり、五歳の年齢差要件に合理性があるかは疑問です。とりわけ、十八歳以上の者による十六歳未満の者に対する性加害、性搾取の実態を把握し、更なる改正を真剣に検討すべきです。
第三に、公訴時効を現行より五年ずつ延長するとともに、被害者が十八歳に達するまでの期間を時効期間に加算する改正は前進ですが、本改正によってもなお、被害をようやく認識し、相談した時点で公訴時効が成立している事態が起こり得ます。とりわけ、幼少期、思春期の性被害による脳の萎縮やPTSDなど、脳科学的、精神医学的知見に基づき、ドイツやフランス、アメリカなどの取組に学んで、国として、大規模、国民的な被害実態の調査を行い、三十歳に達するまで時効を停止するなど、更なる改正を強く求めます。
第四に、盗撮の被害は、インターネットやスマートフォンの高性能化により深刻化し、被害者が知らないまま画像が拡散、販売されるなど、デジタル性暴力と合わさることで取り返しの付かない侵害を受けます。法案が定める一定の要件の下での性的姿態等の撮影、映像の提供、送信、記録などの行為の犯罪化、画像などの押収、消去、没収規定の新設は重要です。
第五に、被害者等の聴取結果を記録した録音・録画媒体を伝聞法則の例外として扱う点について、本改正案が、対象犯罪も対象者の年齢も限定せず、供述弱者に限らない条文になっていることは問題です。イギリス、アメリカの司法面接が、子供たちが暗示や迎合によって体験していない事柄を供述し、それによる冤罪事件の反省から始まったことを重く受け止めるべきです。法改正後の運用は、専ら中立的な児童心理等の専門家によって行う体制を整え、捜査機関から独立した聞き取りとすべきです。これまで、性虐待被害児に対して、児童相談所、警察、検察、三者で取り組まれてきた代表者聴取、すなわち専門的な訓練を受けた面接者が誘導、暗示に陥りやすい子供の特性に配慮し、その供述結果を司法手続で利用することを想定して実施する事実確認のための面接で蓄積されてきた手法に限定し、当該事件の捜査に携わり、予断を持つ検察官による聴取は排除すべきです。
そうした限定のない運用は憲法が保障する被告人の反対尋問権を侵害し、デュープロセスに反するものとして許されないことを指摘し、討論といたします。