○仁比聡平君 日本共産党を代表して、ただいまの動議に反対の意見を表明いたしま
す。
そもそも改憲手続法は、時代に最もそぐわないのは憲法九条、戦後レジームからの脱却と唱えた第一次安倍政権の改憲スケジュールの一里塚として、二〇〇七年五月、国民の反対を押し切り、強行成立されたものであります。しかも、その内容自体、改憲案に対する国民投票の最低投票率の定めがなく、有権者の僅か一割、二割の賛成でも改憲案が通る仕組みになっているという根本的欠陥を始め、国民の自由な意見表明や国民投票運動を不当に制限し、改憲案の広報や広告を改憲推進勢力に有利な仕組みにするなど、できるだけ低いハードルで改憲案を通せるようにした極めて不公正かつ反民主的なものであり、国民主権と憲法九十六条の理念、趣旨に反するものである。
当時、先送りされた投票権年齢や公務員などの運動規制、国民投票の対象という三つの宿題も、また参議院において付された十八項目にも及ぶ異例の附帯決議も、こうした重大問題から発したものでした。
ところが、今回、衆議院から送付された同法改正案の提案者は、繰り返し宿題を解いたと言いながら、参議院附帯決議は一顧だにもせず、結果、こうした根本的欠陥をそのままに、ともかく国民投票を動かせるようにしようというものであります。反民主的な欠陥法をとにかく動かすなど、断じて認めることはできません。
法案は、現行法が義務付けた選挙権年齢等の十八歳への引下げを棚上げし、国民投票権年齢だけを確定するとしていますが、これは、法制定時、選挙権年齢、成年年齢を投票権年齢とともに十八歳とすることは大前提、最低限の条件と答弁をしていた当時の提出者の説明にも真っ向から反するものです。
また、法案は、公務員による国民投票運動を更に広範囲に制限することによって、主権者国民の自由な意見表明や国民投票運動を一層妨げ、新たに組織による国民投票運動への規制を検討条項に盛り込むなど、本来最も自由闊達であるべき憲法改正国民投票運動を抑え込もうとするものになっています。
今日、安倍内閣が解釈改憲による集団的自衛権の行使容認へと立憲主義破壊の動きを強める下で、この改憲手続法改正案は、憲法破壊と日本国憲法との相入れない矛盾を打開するための明文改憲の条件づくりにほかなりません。
この七年、改憲手続法を動かすことができなくても国民は何も困りませんでした。
そして、今、安倍政権の戦争する国づくりへの不安と危惧は国民的に広がり、憲法改悪反対の世論が急速に広がる激変が起きています。国民が求めておらず、欠陥だらけの改憲手続法は、改定ではなく廃止すべきものであります。
国の最高法規である憲法改定に関わる法律改定に当たっては、現行法の問題点も含め、賛否を超えて徹底した審議こそ必要です。
衆議院における参考人質疑でも、憲法は国民のもの、国民の意見を聞いて決めるべき、国民の声を聞き、国会の場でも徹底審議をなどの意見が表明されました。にもかかわらず、衆議院で僅か四日間、十七時間の質疑で採決を強行するなど、到底許されません。
本院においては、本会議を始め、徹底した審議と国民的討論を尽くすべきことを強く求めて、意見表明といたします。