【15.05.26.】法務委員会「裁判員の実態調査を」

189回国会質問 国会質問一覧

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

今日はこの法案の最初の質疑ですので、私も基本的な大臣の認識をお尋ねしたいと思うんですけれども、これまでお話がありましたように、裁判員裁判、これは重大刑事事件についての裁判員裁判ということに現行の制度ではなるわけですけれども、この六月で施行から六年を迎えると。この間の運用をどう評価するのかという点に関わって、例えば大臣から、おおむね順調とか、あるいは先ほどは、いい方向に定着していっているといった御答弁が繰り返されておりますけれども、そういう評価に至った根拠というのは具体的にはどんな調査なりあるいは分析に基づいているのか、そこがよく分からないんですね。その根拠についてまずお尋ねしたいと思います。

○国務大臣(上川陽子君) 裁判員裁判の評価につきまして、おおむね順調に実施されておると同時に国民の間に定着をしてきているというふうな認識に対して、その根拠ということでございますが、施行以来六年間の中で、今年三月末までの事件件数そして参加件数ということで、実際に参加した方々におきましても大変熱心に審理に取り組んでいただいてきたというふうに理解をしているところでございます。

そして、裁判員等の選任期日に出席を求められた裁判員の候補者のうち、実際に裁判員等の選任期日に出席していただいた方の割合につきましては約七六%に上っているということでございます。さらに、法曹三者におきましても、それぞれ分かりやすい裁判の実現に向けて様々な工夫をしながら取り組んできたということでございます。

裁判所の実施いたしましたアンケート調査というのが非常に注目をするところではございますけれども、これにおきましては、平成二十六年、審理の内容についてわかりやすかったというような御回答をした方も裁判員経験者におかれましては約六五%に達していると、こうしたアンケート調査もございます。

また、項目によりましては、九六%の方が裁判員として裁判に参加したことにつきましてよい経験をしたと感じた旨の回答をしていらっしゃるということでございまして、裁判員の皆さんが真摯にこれに向き合って、使命感を持って取り組まれ、また充実感を持った形で審理に臨まれ、取り組んでいただいてきたのではないかということがうかがわれるようなアンケートの調査の結果でございます。

こうしたことも含めまして、様々な御意見も含めての総体的な評価として申し上げたところが、おおむね順調に推移をしているということ、そして国民の皆さんの間にもいい方向の中で定着をしてきているのではないかと、こうした認識を示したところでございます。

○仁比聡平君 この法案に先立って行われた裁判員制度に関する検討会の取りまとめ報告書を拝見しても、なぜおおむね順調という評価をするのかという分析的な議論はさほどされていないのではないかというふうに私は思うんですね。

大臣が理由の一つとして挙げられました最高裁の行ったアンケート調査の結果ですけれども、これは、問いは裁判員として裁判に参加した感想を尋ねていて、その中で選択肢として、非常によい経験と感じた、よい経験と感じた、あまりよい経験とは感じなかった、よい経験とは感じなかった、特に感じることはなかった、不明という選択肢の中から選んだものを、非常にあるいはよいと感じた人が先ほど大臣が紹介された九六%ぐらいという数字なのであって、具体的な裁判員としての例えば心理的なストレスあるいは社会的なストレス、経済的にどうだったかなどについて踏み込んだ問いではないんですね。

まず、最高裁にここで確認しておきましょう。最高裁が行っているアンケート調査というのは私が申し上げているようなものであって、この結果の中でおおむね順調といった評価をこの調査としてやっているわけではないと思うんですが、いかがでしょうか。

○最高裁判所長官代理者(平木正洋君) お答え申し上げます。

委員御指摘の最高裁判所が実施しておりますアンケート調査は、裁判員制度が順調に運営されているかどうかといったダイレクトな形では質問をしておりません。委員御指摘の該当部分は、裁判員裁判に参加する前の感想と、参加した後の感想という形でお尋ねしているものでございます。

○仁比聡平君 そのようなものなんです。

もちろん、参加された裁判員の方がこうした感想を述べられておることは大切なことだと私も思いますし、大臣が理由の冒頭おっしゃった事件数それから参加者数、参加裁判員数ですね、つまり、その数を考えたときに、これだけの国民が熱心に、真面目に裁判に参加していただいていると、これはもちろん大切なことだと思うんです。

ですが、おおむね順調あるいはいい方向に定着していっていると本当に見ていいのかということについて、例えば、二〇一〇年だと思いますけれども、NHKが二〇一〇年の五月二十一日に裁判員経験者と補充裁判員三百三十人の方に実施したアンケートで、回答者が二百十五人のうち、三分の二に当たる六七%の人が裁判員に参加して心理的負担やストレスを感じたと回答されている。そのうち一五%の方は、今でも、つまりアンケートに回答する時点でも心理的負担を感じていると回答されているんですね。こういう問い方をされると、こうした答えももちろん出てくるわけです。これを本当にいい方向に定着していっていると言えるのか。

その問題意識で、この間の推移について小川委員から先ほど確認がありましたけれども、私からもお尋ねをしたいと思うんです。

最高裁は出席率という形で統計を紹介をしておられますが、二つの数字があります。参考に、東京新聞の四月九日の記事をお手元にお配りをいたしました。

この記事は、裁判員裁判、市民参加旗印のはずが、選任要請四分の三応じずというふうになっております。先ほど大臣は七六%の方が参加をしてくれているんだという部分だけを紹介をされたんですけれども、その数字で本当に実態が反映されているのかなんですね。

裁判員の選定は、候補者として選定された方に通知がまず行きます。その通知の行った裁判員候補者のうち、実際に選任手続期日に出席した候補者の数、これは事前に辞退をされた方、それからドタキャンをされた方、含まれるわけですけれども、この数字の推移を最高裁、御紹介いただけますか。

○最高裁判所長官代理者(平木正洋君) 委員御指摘の出席率は、選定された裁判員候補者数を分母とし、選任手続期日に出席した裁判員候補者数の出席率のことであると考えますけれども、その割合を見てまいりますと、平成二十一年が四〇・三%、二十二年が三八・三%、二十三年が三三・五%、二十四年が三〇・六%、二十五年が二八・五%、二十六年が二六・七%となっております。

○仁比聡平君 つまり、二六・七%、四分の三の国民が応じていない、あるいは応じられていないんですね。

この数字が、しかも平成二十一年の四割、出席率が四割程度からどんどん、あるいは漸減して三割を切っているということになってきているわけです。

先に最高裁に確認をしておきたいと思うんですけれども、これは、先ほど小川委員からも質問のありました、法で言う百十二条の過料、正当な理由のない不出頭を制裁する、こうした規定の適用例はなくて、つまり辞退事由は大変柔軟に取り扱われているという個々の裁判体の判断が積み重なった結果だと私は思うんですけれども、この出席率の推移といいますか、数字についてどのようにお考えでしょうか。

○最高裁判所長官代理者(平木正洋君) 委員御指摘のとおり、過料を科すか否かにつきましては個々の裁判体において判断されるものでございまして、その結果としてこれまで過料を科した例がないということでございます。また、辞退の判断につきましても、裁判体がその候補者の方々の申出の内容を踏まえまして個別具体的に判断しているものでございます。

したがいまして、その判断の当否につきましては、個別の判断あるいはその集積ということになりますので、最高裁の事務当局としてお答えすることは差し控えさせていただきたいと思っております。

○仁比聡平君 私は、個々の裁判体の適正な運用がされてきた結果だと思うんです。

この裁判員制度の創設時、立法時ですね、それから施行を前にした時期に、国民の大きな不安として、安心して裁判員になるための条件整備が整っていないではないか、一定期間連続して裁判員として裁判に参加しなければならないけれども、原則として制度上裁判員を辞退できないとされている。けれど、会社員の場合、公休扱いされるかどうかは個々の企業の判断に委ねられてしまっているし、中小零細とか自営業の場合は辞退できるかどうかの明確な基準もないし、それぞれの裁判所の判断に一任されてしまっているということが一つの問題になっていました。

私は、この六年間の運用の実際を見たら、そうした不安も反映してなんでしょうが、辞退は柔軟に認められている、過料制裁は問題となっていない、一例もないと、これは極めて合理的なものだと思うんですよ。この運用は合理的なものだと私は思うんですが、その結果、選定の対象となった国民のうち三割を切る方しか選任期日に出席をされない。つまり、多くの方々が辞退をし、そしてドタキャンをする方もいる。

その数字が増えているというこの現状について大臣はどう思うのか、そこをお尋ねしたいと思うんです。

○国務大臣(上川陽子君) ただいま出席率についての二つの数値ということで、この二十一年以降のトレンドということでございまして、選定された候補者のうちの出席した候補者の比率ということについては、平成二十一年の四〇%から二十六年には二六%ということでございます。これには事前の辞退が認められた者というものも含まれているということでございますので、数値のみをもってそれでということには私はならないというふうに思います。

出席を求められた候補者のうちの出席した候補者ということの数値は、二十一年の八三%から平成二十六年には七一%ということでございます。その意味で、施行後間もない時期と比較いたしますと低下はしているということでございますが、依然として七割の水準にあるということにつきましては、私は、国民の皆さんの参加意識は依然として高い水準にあるというふうに考えております。

しかし、この裁判員制度そのものが、国民の皆さんの主体的なまた積極的な参加が何よりも重要であるということでございますので、その意味で、この出席率の推移につきましては大変大事な指標の一つということで注視をしてまいりたいというふうに思っておりまして、そしてその意味で、これからの取組につきましても、こうした数字についての分析、そしてそれに対してどのように対応するかというふうなことも関係機関の皆さんとも連携をしながら、さらに意識啓蒙も含めまして、最大限環境整備を図りながら一層の努力を積み重ねていく必要があるというふうに考えております。

○仁比聡平君 裁判員制度の政府がおっしゃってきた趣旨からすれば、国民の裁判に対する理解と信頼が深まっていくということならば逆に出席率は上がっていく、つまり、運用によって裁判員参加をしていくための社会的ないろんな条件、環境が整備をされていくし、一人一人の国民の中での意欲も高まっていくと。もちろん大変な仕事ではあるけれども、選任をされれば応えようじゃないかというその高まりがある、つまり好循環が生まれるというのが想定なんじゃないかと思うんですけれども、逆でしょう。

悪循環とまでなっているのかよく分からないけれども、少なくとも今日の御答弁の中でも、最高裁からも今大臣からも、出席率の低下の歯止めという言葉が問題になるような状況なんですよね。これ、制度の当初の想定と見合っているんですか、大臣。

○国務大臣(上川陽子君) 当初予定されていたときの、出席率とか辞退率について想定をして御議論いただいて、その上でスタートしたということではないものと私自身承知しているところでございまして、六年間のこれまでの裁判員裁判の実施された実績とその運用の実態ということについて今回検討をしていただきながら、今回の法案も提出させていただいているところでございます。

先ほども申し上げたところでありますが、やはり国民の皆さんの主体的な、かつ積極的な御参加によってこの裁判員制度が支えられているということでございますので、その意味でも、積極的な参加をしていただくことができるようにしていくということについては、これはもう対応をしっかりとしていくことについては、これまでもそうですし、これからも更に力を入れていかなければならないというふうに思っているところでございます。

○仁比聡平君 積極的に参加をしてもらうための対応をと言わば抽象的にはおっしゃるんですけど、私、今回の検討会やこの法案提出のプロセス見ても、まず裁判員の負担という言葉をよく使われるんだけれども、その負担についての分析や、あるいはその実態の調査を本当にされているのか。されていないのではないかというふうに思うんですね。

これ、法案提出に当たって、裁判員の負担というのは現にどのようなものかという整理をした政府の文書というのはありますか、大臣。

○国務大臣(上川陽子君) この裁判員制度に関しましての検討会におきましては、裁判員の皆さんの御負担ということについても議論をされているところでございます。

裁判員の皆さんがどのようなことに負担を感じていらっしゃるかということについては、裁判員の職務遂行から直接生じる負担として、人を裁くことに対する重圧でありますとか、公判や評議に出席する負担、とりわけ凄惨な状況に係る証拠を取り調べる御負担というようなこともございますし、育児あるいは介護、仕事、こうしたことに伴う様々な御負担ということもございました。いろんなレベルで御負担を感じながらも、しかし前向きに御参加をいただきながら審理に真摯に向き合っていただいた上で、この六年間、この制度が運用されたというふうに理解をしているところでございます。

文書の中でこのような形でというところの明文的なものはございませんが、しかし検討会の中でもそうした御議論はなされてきたというふうに考えております。

○仁比聡平君 今大臣が最後におっしゃったように、分析して整理をし、その実態を調べていく、検証していくというアプローチはされておられないんですよね。今御紹介の長々あった議論というのは個々の委員の発言なのであって、その背景というのを整理をされてはおられません。

裁判員ネットワークのアンケートの紹介が先ほどありましたけれども、そのネットワークを担ってきた弁護士の皆さんの論文などを拝見しますと、この裁判員の心理的な負担、社会的、経済的あるいは家庭的な負担などと並んで心理的負担というのを踏み込んで随分分析をしておられます。

裁判員の心理的負担として、残酷な証拠を見ることによる負担と人の運命を決めることの重い負担の二種類があるというふうな整理もされておられるんですけれども、この間、問題になってきた福島地方裁判所の郡山支部が昨年の九月三十日に判決を出した裁判員の方のPTSDによる国家賠償請求事件というのがありまして、この地裁判決文をちょっと私読んで、この心理的負担というのは本当に大変だなと改めて思っているんですね。

この事件では、強盗殺人事件で被害者が殺害された直後に血の海となった現場の状況を撮影した写真や、十か所以上に刺し傷がある被害者夫婦の頭部や頸部の写真も裁判員用のモニター画面に証拠調べの中で映し出されたと。犯行に用いられたと思われる被害者の血が付いたままの軍手や発泡スチロールで作られた被害者の頭頸部の模型などの写真も全てカラー写真で証拠調べが行われたと。被害者である妻が、犯人に刺されながらも必死で消防署に救いを求める電話の音声が録音されたCD―Rの取調べも行われたなどの中で、裁判所が、こうした事実経過に照らせば、原告が本件裁判員裁判において審理、評議、評決に参加したことと、原告がその後に急性ストレス障害を発症したこととの間には相当因果関係があると認めるのが相当であると認定しているんですね。

裁判員に参加することがPTSDあるいは急性ストレス障害を起こすことがあり得るという、これは、私は重いと思うんですが、大臣、どう考えられますか。

○国務大臣(上川陽子君) ただいま委員の方から具体的な訴訟事件についての御言及がございましたけれども、このことについては直接的な形では答弁は差し控えさせていただきたいと思いますが、心理的な負担が大変大きな課題になっているということについては、これは認識をしっかりしていかなければいけないというふうに思っております。

こうしたことに対しまして、当初予定をしていたところでも、この心理的負担については御議論いただいて、そしてそれなりの対応をしてきたということでありますが、さらに六年ということが経過する中で、こうしたことについて、運用の面でありますとか、それぞれの裁判体の中でも徹底していくということが大変大事ではないかというふうにも思うところでございます。

検察においての取組ということでございますが、公判前整理手続におきまして必要かつ十分な証拠の取調べ請求、これを行うよう留意するということでございます。特に、証拠中に凄惨な写真等が含まれる場合につきましては、あらかじめそのことを裁判員の皆さんに告げるということで、あるいはカラー写真に代わりまして白黒の写真で、さらにはイラスト等で対応できる場合についてはこれを用いるというようなこと、そして事案におきまして、負担軽減の観点から様々な工夫をした形での立証活動に一層努める、こういうことの説明をしているところでございます。こうしたところの対応によりまして、御指摘のような負担が、しっかりと対応することができるように、運用上の努力も含めまして更に徹底をしていく必要があるのではないかというふうに思うところでございます。

先ほど、もう一つの視点の中で、人の将来に対して大変大きな影響を与えるというものである、そういう意味での心理的負担ということについても御指摘ございまして、そういう意味では、合議体による裁判ということでございますけれども、裁判官と裁判員とで話合いをしっかりとしながら進めていくということで、一人でしょい込むものではないというようなことも含めまして丁寧に説明をしていく、そういう中での過度に負担を感じることがないように配慮をする、そして配慮も徹底をして行うということが何よりも大事だというふうに思います。

○仁比聡平君 残虐な証拠の件ですが、大臣がおっしゃるような配慮をしたとしても、そうはいっても、刑事裁判なんですからそうした証拠を調べる必要というのはあるんですよ。

その心理的負担を負いながら真面目に裁判員に取り組むという中で、先ほど来御紹介の裁判員ネットワークの皆さんの交流会、ここのレポートを見ますと、戦友に出会ったようで心が癒やされたとの参加者が多いとか、あるいは生の声で、フラッシュバックや人の運命を決めた重さの負担について率直な意見交換ができて心が開かれるといった、つまり守秘義務を制限的にでも解除して、裁判員が終わった後にきちんと意見交換ができる場というものが保障をされるなら、裁判員の負担軽減にも、それから裁判員制度の検証にも大きな意義があるではないかと。日弁連を中心にそうした第三者検証機関の提言があります。

私は、今後、検討、検証をしていく上で、こうしたものも当然可能性あると思うんですが、大臣の感想だけを伺って、今日質問を終わります。

○委員長(魚住裕一郎君) 時間ですので、答弁は簡潔にお願いします。

○国務大臣(上川陽子君) 心理的な負担を軽減をするというよりも緩和していくということで、何よりも国民の参加をしっかりとお願いをするということでありますので、不安をなくす、そして負担を軽減するということについては様々な取組をしっかりとしながら、また交流会等の成果もしっかりと生かしながら、あらゆる方法で対応していくことが大事だというふうに改めて決意をしているところでございます。

○仁比聡平君 終わります。


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