○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
昨日、皆さんと御一緒に名古屋入管を訪ねて、ウィシュマさんが最期の苦しい時間を過ごして亡くなられた単独室に立たせていただいて、大変深く胸が痛みました。
そこで、まず入管に尋ねますけれども、ウィシュマさんの急激な体調悪化と、その下で二月の十五日に仮放免が不許可にされます。その後、二十二日以降のこの単独室でのビデオというのは私たちも拝見をしたわけですが、このウィシュマさんの体調悪化、急激な衰弱と収容の関係ということについてどうお考えですか。
○政府参考人(西山卓爾君) 一般論で申し上げますと、入管収容施設への収容が事案によっては当該外国人の精神状態に悪影響を及ぼすことはあり得るものと認識をしております。
本事案におきましても、ウィシュマさんの収容を続けたことがウィシュマさんの体調を悪化させたのではないかとの御意見があり得ることは理解しておりまして、ウィシュマさんの診察を行った精神科医も、本人が仮放免を望んで心身の不調を呈しているなら、仮放免することで体調が回復する可能性もあり得ると考えた旨述べるなどしているところでございます。
もっとも、本事案につきましては、専門医二名からの聴取等を実施した上、ウィシュマさんの死亡に至る具体的な経過、機序を特定することが困難であるとの結論に至っているところでございまして、収容の継続とウィシュマさんの体調悪化との関係等の特定には至っていないところでございます。
○仁比聡平君 入管局の時代も含めて、この入管の裁量によって上限のない、無期限ということもよく言われますけれども、そうした収容がどのように被収容者の心身に影響を及ぼすか、あるいは健康を脅かすかについて検討、研究をしたことというのはあるんですか。
○政府参考人(西山卓爾君) 御指摘のような、その収容と被収容者の心身の健康の関係について、入管庁あるいはその前の入管局が主体となり何らかの研究等を行ったという実績は残念ながら見当たりません。
もっとも、被収容者の健康の保持と適切な医療上の措置を行うことは国の責務と考えており、入管収容施設におきましては、精神疾患を含め体調不良を訴える被収容者に対して、医師の診療を受けさせ、必要に応じて臨床心理士のカウンセリングを受けさせるなど、被収容者の状態に応じた対応を行っているところでございます。
さらに、被収容者の心身の健康状態をより適切に把握すべく、入管庁においては、職員の研修等の機会を通じ、職員の知識の習得や意識の向上を図っております。具体的には、例えば昨年実施した中堅職員に対する研修の機会には、外部の精神科医師、臨床心理士等を講師として招き、被拘禁者の心理、被収容者へのカウンセリング、被収容者に対するメンタルケア、精神疾患治療の現状等のテーマで全十時間の講義を実施するなど、適切な処遇の実施に向けた取組を行っているところでございます。
○仁比聡平君 いや、驚くべき御答弁で、二〇〇七年以降の死亡事案、前々回大臣にもお尋ねしました。二〇〇五年以降だったでしょうか、そのほかの不適切処遇事案についても前回お尋ねをしました。その多くで、この無期限の収容あるいは入管の裁量に対して、医療関係者から厳しい批判がそのたびごとにされていますよね。なぜ早く病院に連れてこなかったのか、なぜここまで収容を続け、仮放免もしなかったのかと。これは去年起こったことじゃないんですよ。今入管から、対策といいますか、取組として説明があったのは去年の研修の話でした。
そもそも、この入管庁が主体となって行った検討、研究は確認できないということの持つ重みですね、重い意味ですね、これ大臣によく本当に考えてもらいたいと思うんですけれども。
矯正局に確認をしますが、受刑者の拘禁反応とは何か。これ、矯正の当局として、どのように認識を深めて対応してこられましたか。
○政府参考人(花村博文君) お答えします。
拘禁反応とは、拘禁状況というストレス下において起こる反応性の精神障害の総称と言われておりまして、受刑者等の拘禁反応は、刑事施設への拘禁状況を原因として、不眠や不安、抑うつ、身体的愁訴等の様々な症状を呈するものであると承知をしております。
拘禁反応は、様々な症状を総称したものと言われておりまして、症状が多岐にわたることや一過性のものである場合もございまして、拘禁反応の症状を呈している受刑者に関する統計はございません。
刑事施設におきましては、被収容者の心身の状況の把握に努めることとされているため、被収容者と日頃から接する刑務官に対しまして、拘禁反応を含む様々な精神疾患等を適切に理解させるための研修を実施するなどして認識を深めさせているところでございます。
拘禁反応を呈する被収容者に対しましては、それぞれの症状に応じて、必要に応じて専門医の診察を受けさせ薬物療法を実施するほか、刑事施設に収容となった理由や収容の目的等を丁寧に説明するなどの心理社会的療法等を実施するなどして対応しているところでございます。
○仁比聡平君 今御紹介のあった拘禁反応について、私たちが目の当たりにしてきたのは袴田さんです。お配りした資料の一枚目の新聞記事、左側の欄、御覧いただいたらお分かりですけれども。
一九八〇年の十二月、死刑確定から間もないときに、お姉さんの秀子さんと面会をした袴田さんは、昨日処刑があった、隣の部屋の人だった、お元気でって言っていたと語ったことを境にして変調は著しく、面会を拒むようになりました。約三年半ぶりに対面した際は、姉さんじゃない、偽物だと口にし、面会した医師には、死刑判決は儀式で書いただけ、事件などない、無罪の判決をもらっていると語り、妄想性障害などと診断をされました。二〇一四年三月に自宅に戻りますけれども、浜松市内の家に帰ってきてから約二か月間、部屋の中を毎日十時間ぐるぐる歩き続けた。
これが拘禁反応と、そして釈放されても消えないという状態であり、昨日、名古屋刑務所の保護室で、恐らく拘禁反応であろうと私は思いましたけれども、お二人ほどそうした様子をビデオを通じて拝見をいたしました。
この拘禁反応について、衆議院の法務委員会で、二枚目の資料ですけれども、二〇〇三年五月二十一日に、当時日本医師会常任理事として西島英利参考人、その翌年自民党の参議院議員になられましたが、こう意見を述べられています。
拘禁反応に対しては、一番大きなのは拘禁昏迷という状況があると、無動無言、外部からの刺激には全く反応しない、食事を取らない、失禁をする、全く動かない、こういう状況の方々に対しては、やはり精神科としての専門的な医療をする必要性があるであろうと。
先ほど矯正局長からお話があったのもこうした趣旨だと思うんですよね。
遡って、昭和四十年版の犯罪白書の未決拘禁者処遇上の問題点という項には御覧のとおりの記事がありますけれども、ちょっと時間がありませんから一点だけ、真ん中ほどに、また、拘禁の影響は、心因反応としての拘禁反応を誘発し、単に心的症状のみならず、消化器系、循環器系などに身体的反応をもたらすことは既に知られているところであるという記述がありますが、これ、矯正局長、そのとおりですか。
○政府参考人(花村博文君) 先ほど申し上げましたように、拘禁状況というストレス下において起こる反応性の精神障害の総称が拘禁反応であるというふうに理解しております。
○仁比聡平君 この犯罪白書に書いてあることが現に起こっているんじゃないのかと。
このウィシュマさんの死因について、今日は資料をお配りしませんでしたけれども、昨年八月三十一日の朝日新聞の報道で、名古屋地検の事件記録を閲覧した遺族側が、二〇二二年二月の医師の鑑定書には食欲不振による脱水と低栄養などが影響し多臓器不全に至ったという記載があったと。
入管は、先ほども御答弁のように、死因は明らかでないというふうに言うけれども、医師の鑑定によって脱水、低栄養などが影響した多臓器不全に至ったという死因が明らかになったという報道なんですが、入管庁はなお死因は明らかでないと言うんですか。
○政府参考人(西山卓爾君) 入管庁としましては、先ほど答弁申し上げたとおり、調査の結果、死因の特定には至らなかったということでございますし、お尋ねは、御指摘の点は、その検察当局が収集した様々な証拠の一部を取り上げて指摘するものだと承知をしておりますけれども、検察当局におきましては、所要の捜査の結果、ウィシュマさんの死因や死亡に至る具体的機序を特定するには至らなかった旨判断したものと承知をいたしております。
○仁比聡平君 いや、医師がこうした死因を診断した、鑑定したということは今も否定はされませんでした。
つまり、ウィシュマさんが亡くなられて、三十三歳ですよね。元々、妹さん方がおっしゃるように、とても健康で明るかった方が、八月の入管収容以来、体調を悪化させつつ、私は、二月の十五日に仮放免が不許可になったということは大きなインパクトだったのではないかなとも思うんですけれども、特に二月の下旬以降、急激に体調が悪化して、ああした形で三月六日、亡くなってしまったと。
これは事実なわけで、なぜ健康だったそうした女性が急激に衰弱をして亡くなってしまうのかということについて、いや、分かりませんでしたと言うでは済まない、大臣、済まないですよ、これ。どうして入管でこういうことが起こっているのかということなんですよ。
前回、前々回指摘をしたように、これ繰り返されているでしょうと。ウィシュマさんに関してだけ偶発的に起こったことではない。拘禁反応かどうかは私も分かりませんよ。けれど、この狭いところに拘禁されるという、そうした状態によって、心因反応としての心的症状のみならず、消化器系や循環器系などに身体的反応をもたらすということは既に知られていると、昭和四十年代から言われていながら、だけど、入管庁は収容と健康を脅かすということの関係について自ら研究、検討はしたことがないというわけじゃないですか。これ、とんでもなくないですか。
先週金曜日に衆議院で改定案、入管法改定案の参考人質疑がございまして、ついこの間まで東京入管の局長をお務めになっておられた福山参考人がこういう意見を冒頭述べておられるんですね。仮放免に関わる問題ですが、暴力行為の常習者、性犯罪、殺人、傷害、強盗、放火、薬物犯罪の前科がある者、配偶者間暴力の加害者であっても、収容の長期化や病気により仮放免許可への圧力が高まります、しかし、仮放免中に性犯罪や殺人など新たな犯罪に手を染める例も少なくありませんと。
私、在留特別許可を得られずに収容されているそうした外国人みんなが何だかすべからく犯罪者であるかのような、そんな認識に立つのは間違いだと思います。そんな認識に立っているから、仮放免許可しない、自らの裁量だけで無期限に拘禁し続ける、収容し続けるということになるんじゃないですか。これ、絶対改めなきゃいけないと。だって、刑務所はそんなことやっていませんよ。裁判所の判決があり、あるいは仮釈放だって第三者機関が入って審査もすると。
これ、改めなきゃいけないんじゃないですか、大臣。
○委員長(杉久武君) なお、申合せの時間が過ぎておりますので、答弁は簡潔にお願いいたします。
○国務大臣(齋藤健君) 御指摘の点を含めまして、調査報告書の中において、検討が行われて、その結果、改善すべき点ということも指摘をされておりますので、それについてはしっかり取り組んでいきたいと考えています。
○仁比聡平君 調査報告書で指摘をされていることは、そこをついたものになっていない、だから厳しく申し上げているんです。大臣の猛省促して、また更に質問続けたいと思います。
ありがとうございました。