○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

 今日は、袴田事件と刑事司法改革についてお尋ねをしたいと思います。

 御存じのとおり、袴田事件は、一九六六年、私がまだ二歳のとき、静岡市、現在、清水区のみそ製造会社の専務さんのお宅で一家四名が殺害された強盗殺人放火事件です。この事件の被疑者、被告人とされた袴田さんが三月の二十七日、歴史的、画期的な再審開始決定によって釈放をされました。地方裁判所は、この袴田事件の第二次再審請求について、刑の執行停止とともに拘置の執行停止も決めて、その下で袴田さんが四十八年ぶりに拘置所の中から出てこられ、その様子、あるいはお姉さんの秀子さんから、今、袴田さんは入院をしておられますけれども、伝え聞くその様子を伺うたびに、私は冤罪が生み出す苦しみに胸が本当に痛む思いがいたします。

 この四十八年ぶりの釈放は、お姉さんの秀子さんや弁護団、そしてボクシング協会や、本当に国民的な広がりを見せている支援者の皆さんの努力があってこそのことであって、この関係の皆さんに心から敬意を申し上げたいと思うんですが、この冤罪であるということ、そして私たちは人道的であらねばならないということに鑑みたときに、実際に釈放されて、映像でも大臣御覧になっていると思いますけれども、その様子を御覧になって胸が痛みませんか。政治家としての感想をまず伺いたいと思います。

○国務大臣(谷垣禎一君) 袴田氏につきましては、今委員がおっしゃいましたように、三月の二十七日、静岡地裁によって再審開始決定とともに拘置の執行停止決定がなされまして、それを受けて、検察当局、同日、袴田氏の釈放手続を行ったわけで、私も報道を通じまして御本人の様子を拝見したところでございます。

 しかし、個別の死刑確定者に関わる事項、感想、これは、法務大臣としては今申し上げるのは差し控えたいと思います。

○仁比聡平君 ですから、政治家としてと申し上げているんですね。当然、与党、野党、関係ありません。人道的にこの袴田さんの救援をという声はこの国会の中にも大きく広がっているのであって、私は、そうしたことも踏まえながら、まず袴田さんの拘禁症状について伺いたいと思います。

 既に二〇一一年の一月に、日弁連から人権救済申立て事件の勧告書が政府に出されています。ここでは、袴田さんの拘禁症状について、既に二〇〇七年に後見開始審判申立て事件に関して、家庭裁判所からの鑑定嘱託を受けた医師の鑑定書、それから二〇〇八年の八月にまた別の医師の意見書、そしてこの日弁連の調査の下で行われた三人目の医師の意見書というのが紹介をされているわけですけれども、その二〇〇七年の医師の鑑定書には、袴田さんに精神の障害があり、それは拘禁反応である。もし拘禁が解かれるならば、その能力を回復する可能性は極めて高いと、そう記載をされています。

 二番目の医師の意見書には、袴田さんは拘禁反応に罹患しており、誇大妄想、思考障害を呈している。治療を要し、強制的な投薬を含め、精神科病院への入院が望ましいが、それが不可能な場合には医療刑務所への移送が考慮されるべきである。死刑適応能力を欠いた現状にあると記載をされています。

 三人目の医師の意見書には、袴田さんの場合、そうした精神的障害に対して行われる薬物療法、生活療法、精神療法などが実際に施行されていない。しかしながら、精神障害である以上、通常に実施されるべき治療が必要であると指摘をされているんですね。

 この調査の中で、袴田さんの死刑判決の確定は一九八〇年ですが、その二週間後ほどから精神的変調が始まり、東京拘置所において、一九八四年の十二月以降、妄想的な言動が見られるようになった、八五年の九月以降、実在しない人物の結婚に関する手紙を発信したと、東京拘置所が裁判上の準備書面として事実を摘示しているわけですね。

 矯正局長、こうした日弁連勧告の指摘は事実ですか。

○政府参考人(西田博君) お答えいたします。

 まず、個々の死刑確定者の健康状態でございますので回答は差し控えたいと思いますけれども、ただ、処遇場面での実情を踏まえまして一般論として申し上げますと、担当職員は、死刑確定者に限らず、担当しております被収容者の健康状態はもちろんのこと、日々の生活状況についても常に注意を払うようになります。したがいまして、日々処遇しておりまして何か問題がございましたら、必要に応じまして医務部門に連絡をし、医師の専門的見地から診察を受けさせる等行いまして、慎重な配慮を行っているところでございます。

 以上でございます。

○仁比聡平君 専門的な医師の診察や配慮が行われたら、どうして釈放された袴田さんがああした状態になっているんですか。二〇一一年のこの日弁連の調査の勧告を読みますと、日弁連の調査に対して法務省は、現時点において、つまり二〇一一年当時において、外部病院における診断、治療を行うべき病状にはなく、医療刑務所に搬送しなければならない病状はないと回答しておられるようですが、その認識を示されたことはそのとおりなのか、今現在もこの認識には変わりがないのか、お尋ねをしたいと思います。

○政府参考人(西田博君) お答えいたします。

 個々の処遇状況でございますので、これも回答を差し控えたいと思いますけれども、ただ、一般論として申し上げますと、東京拘置所は医療法上の病院としての承認を受けておりまして、現在でも、精神科医を含む八名の常勤医師、それから十二名の非常勤医師、それから十名の看護師、十名の准看護師、その他薬剤師等六名の医療従事者が配置されておりまして、夜間においても、当直医師一名のほか准看護師が常に勤務しておりまして、何かあった場合には必要な対応を取る体制になっております。

 また、これ、一般的な被収容者でございますけれども、対応している、処遇している職員の変更も含めまして生活環境が変わったりしますと不安に感じる収容者もいる場合もございますし、それから、先ほど申し上げましたように、二十四時間三百六十五日彼らを処遇して彼らの様子を見ている刑務官がおりまして、確かに手の掛かることもございますけれども、そういうふうに常に注意を払っておりますので、東京拘置所の方において収容して治療するということについては、そういった判断であったんだろうというふうに考えております。

○仁比聡平君 何かあったときとか、刑務官が対応しているとか、刑務官に精神障害、病気を治すことができますか。実際に医師が、三人が三人とも拘禁反応であると言い、その拘禁が解かれるならその能力、精神能力を回復する可能性は極めて高い、二〇〇七年の時点でそう言い、強制的な投薬を始めとして入院が望ましいと言いながら、医療刑務所にさえ送致していないんでしょう。

 大臣、実際に釈放されて、四十八年間、日々死刑の執行におびえながら、袴田さんがどれほど精神的な苦痛を受けてきたか、その中で、医師の診断によれば妄想性障害という、こうした症状に陥っていったか、その有様がどれだけ苦悩に満ちているかというのは、今もう全国民の前に明らかなんですよね。拘禁中の、収容中のこの処遇について、これを是とするのなら、今現在も同様に刑の執行を受けている、あるいは収容されている、死刑の執行であればその執行を待たされている、そうした受刑者がたくさんいるという、収容者がたくさんいるということを否定できないじゃありませんか。

 この医療刑務所にさえ送らない、こうした判断について、これまでの袴田さんに対して行ったことについて、これ大臣、きっぱり反省して謝罪をするべきなんじゃないですか。

○国務大臣(谷垣禎一君) 再審決定いたしまして、これから裁判所の判断があるわけでございますから、私としては、個別の死刑確定者の状況についてコメントをするのは差し控えたいと思います。

 ただ、今いろいろおっしゃいましたけど、例えば東京拘置所は医療法上の病院としての承認を受けている施設であるということは申し添えておきたいと思います。

○仁比聡平君 袴田さんの今後の生活保障について、現在どんな検討を行っておられるでしょうか。

○政府参考人(林眞琴君) この事件につきましては、現在、即時抗告を受けまして、再審開始の要件の有無につきまして審議、審査、審理中でございます。そういったことで、そうした現在の生活保障というようなことについては法務省としては検討を行っておりません。

○仁比聡平君 かつて冤罪事件で、例えば免田栄さんの生活保障に関する手だてを国会も含めて取ったことがあります。皆さんは、再審開始決定については、即時抗告をしているとか、その確定もしていないからというふうに言うけれども、そうやって一方で争いながら、この袴田さんの生活保障について全く検討しないというのは私はあり得ないと思うんですよね。

 これ、大臣、いずれの時期にかこれは私は再審が開始を必ずされて、その再審で無罪が速やかに勝ち取られることを確信をしていますけれども、仮にでいいです、そうした折にはこの生活保障あるいは刑事補償についてしっかりと対策を取ると、それは決意を伺えますか。

○国務大臣(谷垣禎一君) 個別の事件について申し上げるのは差し控えますが、先ほど委員がおっしゃいましたように、刑事補償ないし、あるいは免田法案というのも議員立法で作っていただきましたね。そういった制度があることは当然でございますから、そういった制度の適用というのはきちっとその要件に合えばあるわけでございます。

○仁比聡平君 この袴田さんの再審における無罪が速やかに勝ち取られることを多くの皆さんが願っていると思いますけれども、その下で捜査機関が証拠隠しを続けるのかという問題について伺いたいと思います。

 まず、通告と順番違いますが、確定審、通常審において袴田さんの五つの衣類というのが決定的な証拠とされました。この一つ、ズボンがありますけれども、これは裁判で何度も着衣実験が行われながら、袴田さんはそれをはけないと、入らないということが明らかであったのに、検察はそのズボンに付いているタグ、Bと書いてあるタグがサイズを示すものであると一貫して主張して、そしてそのことが、裁判所によってもその主張が採用されて、有罪の極めて大きな証拠とされたわけです。ところが、そのBという表記はサイズではなくて色のことであったということが第二次再審請求において証拠開示で明らかになりました。

 これ、私もそのメーカーの方のインタビューをテレビでも拝見をしましたけれども、一番最初の当初から捜査機関に対しては、このBというのは色のことですとしっかりと話をしているのに、今更何でこんなことになっているのか訳が分からないと、そうしたコメントをしておられました。

 弁護団がある雑誌で語っているところでは、今回証拠開示に応じた検察官は、この証拠を出す前にメーカーのところに行って、当時の調書によるとBが色というふうに書いてあるけれども、つまり公判には提出してこなかった手持ち証拠の中には色であるというふうに書いてあるけれども本当かと尋ねたところ、メーカーの人から間違いなくBというのは色ですと答えられて、第二次再審で開示をするに至ったというわけですよね。

 これ、局長、なぜ通常審でこの証拠を提出をしなかったんですか。

○政府参考人(林眞琴君) ただいまのお尋ねにつきましては、個別事件における検察当局の活動内容に関わる事柄でございますので、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

○仁比聡平君 提出をしなかったどころか、うその実況見分調書を捜査機関は作っています。色であるということを聞き込んでいるにもかかわらず、それは寸法四、型Bという、そういう実況見分調書を作っているでしょう。局長、違いますか。

○政府参考人(林眞琴君) ただいまのお尋ねにつきましても、基本的に個別事件における検察当局の活動内容に関わる事柄でございますので、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

○仁比聡平君 もう一点聞きますが、袴田さんは、逮捕、起訴の時点ではパジャマを着て犯行を行ったと自白をさせられていましたが、事件から一年二か月後、公判が始まっているときにこの五点の衣類がみそタンクの中から発見をされたと。それで、検察は冒頭陳述を変更したわけです。ところが、この五点の衣類が一年二か月間もみその中に漬かっていたとは考えられない。にもかかわらず、このカラー写真を証拠として持ちながら、これを第二次再審になるまで提出をしませんでした。この五点の着衣のDNA鑑定は、弁護側も検察官側も行った結果、これは袴田さんと同じものとは言えないという結論も出たわけですが、ですが、このカラー写真もなぜ通常審で提出をしていなかったのか。それを提出していれば、一年二か月もみそだるの中に漬かっていたはずなんてあり得ないじゃないかと、明らかじゃないかと。いかがですか。

○政府参考人(林眞琴君) なぜ確定審での段階で開示しなかったのかということにつきましても、個別事件における検察当局の活動内容に関わる事柄でございますので、お答えは差し控えさせていただきます。

○仁比聡平君 私は、今、個別事件、個別事件とおっしゃるけれども、警察もそして検察もどれだけの人数の捜査官がこの事件に関わってきましたか。捜査段階だけではないですよね。第二次再審に至るまで検察官何人も替わっていらっしゃるでしょう。その全ての検察官が証拠の評価を誤ってきたんですか。死刑判決を確定させる、描いたストーリーに反する証拠をあえて不開示にして、なかったものにして、結局、描いたストーリーをずっと維持するためだけにこの四十八年間、袴田さんを苦しめ続けてきたんじゃないんですか。そうしたことを市民が行えば、これは証拠の隠滅であり偽証ですよね。なぜ検察官だけそんなことやって許されるのか。局長、どうですか。

○政府参考人(林眞琴君) いずれにしましても、個別具体的な事件に関する評価にわたることでございますので、お答えについては差し控えさせていただきます。

○仁比聡平君 私は、検察官の証拠提出だって全くの自由裁量ではあり得ないと思います。個々の検察官がその証拠提出を適切に判断したのかと、前提として証拠の吟味が本当に適切に行われたのかということについて、そうやって口をつぐんで検証さえしないと、議論さえ拒むと。そんなことでどうしてこの冤罪を繰り返さないと言えますか。

 大臣、私、この袴田事件について、これまでも最高検による幾つかの事件の検証というのは行われてきましたが、それは最高検によるもので、私は到底事件の本質に迫ったものとは言えないと思いますが、第三者機関による、日弁連もかねてから求めてきました、第三者機関による冤罪のこの検証、再発防止、そのための刑事司法改革、そうした観点での第三者機関を、大臣、設けるべきじゃありませんか。

○国務大臣(谷垣禎一君) この個別事件に関しましては、今、即時抗告審で再審開始決定の是非が争われるわけですね。そういう段階でございますから、また当然その中で、証拠の評価等が裁判の過程の中で議論されると思います。そういう段階でございますから、私から、何というんでしょうか、これ以上のコメントは差し控えたいと思います。

○仁比聡平君 捜査機関がこの事件でそうしたストーリーを描いていった根源にも、虚偽の自白、違法な自白の強要が私はあると思います。実際に確定審の段階で、四十五通の自白調書のうち四十四通の調書は証拠能力を否定をされました。連日にわたる十二時間あるいは十六時間を超えるというようなそうした取調べ、この下での自白がこの袴田事件でも冤罪の根源にあるわけですね。こうした日本の刑事司法の在り方をきっぱり改めなければ刑事司法改革というのはあり得ないと私は思います。

 そこで、捜査機関による取調べの全過程の可視化について私一貫して求めてまいりましたが、検討状況について端的にお伺いしたいと思います。

 先ほども議論がありましたが、今、検察そして警察において試行が行われています。ここでは多くの場合が例外とされているわけです。その例外というのは、例えば被疑者が拒否しているとか、あるいは共犯者などの供述をすることが困難であるなどという事情で被疑者が十分に供述をすることができないなどというおそれがある場合、あるいは関係者のプライバシーなどの保護、あるいは協力確保に支障が生ずるおそれがある場合など、五つの例外が検察においては定められています。

 まず、刑事局長、この例外に当たると判断するのは一体誰なんですか。

○政府参考人(林眞琴君) 現在、検察において録音、録画の取組、試行を行っておるわけでございます。これは運用上の措置でございますので、これを、当該事件について録音、録画を行うか否かということについては、具体的に立証責任を負う検察官において個別事案ごとに具体的に判断しております。

○仁比聡平君 つまり、取調べを行う検察官がこの例外に当たるという判断をして録音、録画を行わないとしているわけです。

 警察庁はどうですか。

○政府参考人(荻野徹君) お答えを申し上げます。

 警察におきましては、裁判員裁判対象事件のうち、取調べ状況等を客観的に記録することが裁判所等の的確な判断に有効であると認められるものを対象といたしまして、そのうち、被疑者が録音、録画を拒否した場合でありますとか、録音、録画することにより、組織犯罪等において真相解明機能が害されたり、関係者のプライバシー等が害されるおそれがあるような場合、また録音、録画をすることが物理的に困難であるような場合を例外といたしまして録音、録画の試行を行っております。

 こういった警察における録音、録画の試行におきましては、警察本部の事件主管課長又は警察署長が捜査状況、供述等を総合的に勘案いたしまして録音、録画の実施を判断することとしております。こういった例外事由に該当するか否かの判断も含めまして、録音、録画の実施の判断は、警察の場合には個別の捜査員のみということではなくて組織的に行っているということでございます。

○仁比聡平君 そうした判断は、つまり録音、録画をしなかった理由についての判断は、これは何らかの記録になって、例えば裁判において示されることになるんでしょうか、林局長。

○政府参考人(林眞琴君) 具体的な裁判においてそのようなことが争点になるかどうかというのはその事件における審理によりますので、必ずしもそのような形が争点となる事件ばかりではないと考えております。

○仁比聡平君 そういう建前で記録はないという理解でいいのか。それから、そうした理由で録音、録画をしないとか一部にとどめるとか、そうした場合に調書は作成するのでしょう、それでも。

○政府参考人(林眞琴君) まず、具体的な事件で、検察において、現在その試行の録音、録画の対象となっている事件については、原則として録音、録画を実施し、全過程を含む広い範囲での録音、録画に積極的に取り組むとされておりまして、それに対して一部、先ほど御指摘ございましたような例外が定められております。

 そういった中で、録音、録画が実際に実施された場合に、併せてその供述調書を作成するかどうかということについては、これも、それは当該事件においてその供述調書を作成する場合もあれば、また作成しないこともあるものと考えております。

○仁比聡平君 つまり、作成して、なぜこの調書には録音、録画がないのかということが問題となり得るわけですが、その判断は検察、取調べ官やあるいは警察の課で行われるのであって、これが訴訟上に顕出されるわけじゃないということなんですよね。

 先ほど議論がありましたが、特別部会の基本構想において示されているこれからの可視化のありようについて、録音、録画の対象とする範囲は取調べ官の一定の裁量に委ねるとなっています。一定の例外事由を定め、取調べ官の裁量に委ねるというわけですね。私は、取調べ官による密室における人権侵害や誤判のおそれが厳しく指摘をされる中で議論をされているこの可視化について、その判断を取調べ官の裁量に委ねるということ自体が背理だと思います。

 大臣、そう考えませんか。

○国務大臣(谷垣禎一君) 今これは法制審で御議論をいただいているところですから、私はその結論を待ちたいと思います。

○仁比聡平君 この特別部会での、例えば映画監督の周防さんが東京新聞に厳しいインタビューを載せておられます。

 この基本構想は、密室での取調べや供述調書の作文を問題視するどころか、国民に支持され信頼を得るとともに治安維持に貢献してきたと言い切っている。捜査機関は取調べを根本から見直そうとは全く思っていない。ショックでした。取調べの全面可視化、証拠の全面開示、人質司法を改善することの三点の実現は最低限必要だと思っていた。だけど、検察、警察は自分たちを省みるつもりは当初からないと痛感をしたと語っていらっしゃいます。捜査側は十人の真犯人を捕まえるためなら一人くらいの間違いは仕方がないと思っていると感じたとも語っておられます。委員としてこの特別部会に参加をしてこられた方のこうした厳しい指摘をどう受け止めるのか。

 もう一つ、この特別部会を置く大きなきっかけとなったのは冤罪事件ですが、袴田さんのお姉さんである秀子さん、そして布川事件の桜井さん、杉山さん、足利事件の菅家さん、氷見事件の柳原さんが打ちそろって、この特別部会の在り方はおかしいと。例えば、袴田さんの声でいえば、取調べの可視化が骨抜きにされている、巌のようなことが二度と起きないようにしてほしい、こうして特別部会に要請に来られていますが、その中身は、全面可視化、全面的な証拠の開示、取調べへの弁護人の立会い、代用監獄の廃止ですよね。

 私は、今度の袴田事件の再審開始決定を受けて、こうした冤罪を繰り返さないという角度で始まった、そういう原点で始まったその特別部会の原点に立ち返って、冤罪を根絶するために出直しの議論をするということが今ほど求められているときはないと思うんですが、大臣、いかがでしょう。

○国務大臣(谷垣禎一君) 今の法制審の御議論が、村木事件等々を踏まえて、検察の在り方がどうあるべきかと、取調べの在り方がどうあるべきかという問題意識で議論をしていただいているわけですね。私は、真摯に議論を行っていただいていると思っておりますので、その結論を待ちたいと思っております。

○仁比聡平君 四月の三十日にもこの取りまとめに向けての事務局案が出され、それが法制化されていくのかというようなことが伝えられる中で、当事者たちは極めて憤りを持っているということなんですね。

 最後に、この中でも新しい捜査方法と言われている盗聴、通信傍受の拡大について伺っておきたいと思いますけれども、かつて二〇〇一年に読売新聞に、二〇〇二年三月までに主要都道府県警や管区警察局に十数台の電子メール傍受装置を配備する計画というのが伝えられました。当時、FBIが秘密開発した傍受装置と同様の機能だと言われていて、サーバーを通過する全てのメールを一旦取り込んで、その後容疑者のメールだけを拾い出すという仕組みだと言われているが、本当に容疑者のメールしか記録しないのかどうかはプログラム自体を吟味しないと分からない、プログラムの中身を警察庁は公開する予定はない、そういうふうに報じられているんですが、これは実際に配備をされたのか。その後十数年たちますけれども、実際にメールやそしてSNSの通信傍受というのは可能なのか、お答えください。

○政府参考人(荻野徹君) お答え申し上げます。

 電子メールに係る通信傍受令状が発付された場合において、傍受を許可されたメールのみを記録するための装置といったものを平成十三年度予算に配備を行ったところでございます。

 それから、SNS等についてのお尋ねでございますけれども、警察といたしましては、通信の形態は電話、電子メールからいわゆるSNSと言われるものまで種々の形態があるわけでございますけれども、法律で認められた通信傍受が技術的にも可能になるように努めているということでございます。

○委員長(荒木清寛君) 仁比君、時間が来ておりますので、よろしく。

○仁比聡平君 はい。

 この部会では、そうした、私は恐るべきと思いますけれども、これまでの限定された対象犯罪から、窃盗なども含めた極めて広範なものに拡大しようという議論が打ち出されている中で、こんなことは絶対に許されないということを強く指摘して、質問を終わります。