○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
昨日、法務省が編集したウィシュマさん死亡に係る七時間分のビデオを拝見をいたしました。私は、収容した外国人を一人の対等な人間として扱わない収容行政に激しい悲しみと怒りを感じて、メモを取る以外は身動きができない思いをいたしました。
そこで、資料一枚目、お配りをしていますけれども、法務委員会調査室にまとめていただいた二〇〇七年以降入管施設内で発生した死亡事案という表ですけれども、まず、入管に確認します。これは、記載されている事実も含めて、これ確認できますか。加えて、これで全てでしょうか。
○政府参考人(西山卓爾君) 当庁といたしましても、記録で遡る限り、二〇〇七年以降は把握しておりますが、この表に記載のとおりでございます。
○仁比聡平君 二〇〇七年以降十八件ということですが、つまり、これで全てということですね。
○政府参考人(西山卓爾君) 把握できる二〇〇七年以降、これで全てでございます。
○仁比聡平君 この実態解明は、私、国会、なかんずく当委員会の重大な責務だと思います。
まず、ウィシュマさん死亡の事件についてお尋ねをしたいと思うんですけれども、二枚目から三枚のつづりで、この問題についての入管庁調査チームの報告書別紙にある血圧等の測定表というのをお配りをいたしています。冒頭に記載されているように、この表は看守勤務者が手書きで記録していた血圧等の記録表から転記したものとされているんですが、これ入管に確認ですが、手書きメモをそのまま書き写したということでしょうか。
○政府参考人(西山卓爾君) 御指摘のとおりでございます。
○仁比聡平君 ウィシュマさんの体調の悪化の中で、このバイタルが極めて不安定というのが令和三年一月の数値からもうかがわれるんですけれども、特に、私たちが拝見した法務省編集ビデオの冒頭、二月二十二日以降、ウィシュマさんは、既に、食べるといってもおかゆをごく少量、飲物も取れないというような状況だったことが明らかだと思います。
その下で、二月の二十三日の火曜日、十九時二十二分という測定時刻のところを御覧いただきたいと思うんですが、最高血圧が百十九、最低血圧が九十二と記載をされています。ですが、ビデオを見る限り、この数値というのは最初から測られたものではないんですよね。
この日、十九時に、あおむけに寝ていて、吐き戻し、息ができなくなった、苦しいというような様子で、ウィシュマさんは担当さんとカメラに向かって呼びます。手は動かしますけれど、体、とりわけ下半身はもう自力では動かせないという状況の下で、激しく嘔吐をします。入室した看守勤務者に対してウィシュマさんは、病院行かせて、点滴お願いとしきりに求めますが、これに対して看守者は、トイレに行こうか、トイレも病院も一緒、痛い以外のこと考えようかなどと話をすり替える、ごまかすという中でバイタルのチェックが行われるわけですね。私の聞き取りが正しければですが、最初に測った時点では、最高血圧が九十八、下が五十五、二回目が、上が百十七、下が六十五、そして三回目にようやく百十九と九十二ということになったと。
これ、ビデオ見る限り、私はそう思いましたが、事実でしょうか。
○政府参考人(西山卓爾君) 今委員が挙げられた数字が、そのビデオでそのように言われたか、ちょっと今正確には把握できませんので、完全に事実かどうかというのは、ちょっと今、今この現時点ではお答えするのは困難でございます。
○仁比聡平君 きちんと調べていただきたいと思います。つまり、問題がないような数字のみが記録されていないかと。私たちがビデオで拝見するとそのときの場面だけなんですけど、ほかにも全然公開されていない、チェックされていない映像があるわけですから、そういうことがこの表の中にあるんじゃないのかと。そこには、看守職員がどんな立場でこのウィシュマさんの介助に当たっていたのかと、あるいは監視に当たっていたのかということが現れているように思うんですね。
この二月二十三日以降の一週間余りの間に急激にウィシュマさんは衰弱をしていきました。特に二十八日から三月に入っていく時期になると、もう自分での訴えはできないと、呼びかけにも反応できないというような急激な衰弱の状況が私にはうかがわれます。
例えば、三月三日、朝の時間、七時五十七分からの時刻のときには、もう右手に、右手首に力が入らないと、ウィシュマさんの利き腕のようですけど。そして、三月四日、このときには、もう、七時に起床ですけれども、このとき、看守者の介助がもうその時刻から入っているわけですよね。完全に脱力して呼びかけにも応じないと、ほぼ応じないというような下で測定しようとしたバイタルが、そこにあるように、脱力して測定できずというふうになっているわけです。
入管庁、この時点で救急車を呼ぶのが私は当然だと思います。自宅で次長の御家族が物が食べられない、飲物も飲めないという状態で数週間推移する、バイタルをチェックしたら測定できないと。測定機器を付けて測るんですね。映像の中では何回も測定しようとしている看守職員の姿があります。その上で、測定できないとなったら、これ一般社会だったら救急車呼ぶでしょう。お母さんが大変だって、一一九番しなさいって言うじゃないですか。なぜしなかったんですか。
○政府参考人(西山卓爾君) その点につきましては、調査報告書にも記載がございますが、その職員らが測定の、このバイタルの測定の目的及び意義を十分に理解していたことも原因としてあったと存じます。
また、先ほどのその三月四日という日は、その当日、精神科医でございますけれども、外部の医者に受診をする予定でもあったということも考えられるのではないかと思っておりますが。
○仁比聡平君 目の前で衰弱している人のバイタルが測定器によってチェックができないという状態のときに、そのまま、自らが医療関係者、医療者でもないのに救急車呼ばないというのは、それは漫然と放置するということでしょう。
救急車呼ばないと。確かに精神科受診しましたよね。けれど、そこでは点滴もされずに、そのまま翌日も脱力して測定できない。そして、最後、亡くなられた三月の六日、脱力して測定できないと。バイタルがチェックできないけど、そのまま放置するということを入管は続けましたよね。それは、一般社会で社会的に相当な医療を提供しなきゃいけないというその重大な職務上の義務に反しているということでしょう。何でそんなことになっているのかということなんですよ。
このときに、その職員とか、看守職員とか、それから庁内の医師とかは、この状態からウィシュマさんが持ち直すとでも考えていたんでしょうか、看護師さんも含めて。私は到底思えないんですね。御飯食べられない、水も飲めないというような状況になっているときに、バイタルがチェックできないでしょう。それをそのまま漫然と放置して持ち直すかといったら、持ち直さないですよ。それはどんな事情があったって、直ちに少なくとも点滴をする、これが当然の国家の義務だと思うんですね。
昨年秋の臨時会のときに、牛久の判決を照らして、社会的に相当な医療を提供するというのは国の義務だと入管庁もお認めになったし、大臣もお認めになった。だったら、点滴せめて打てるようにするのは当たり前のことで、自分のところでできないんだから、救急車呼ぶしかないじゃないですか。持ち直すと思っていたんですか。
○政府参考人(西山卓爾君) その前に、私、先ほど職員が測定の目的及び意義を十分に理解していたともし発言したとすれば、誤りでございまして、訂正させていただきます。
職員らが測定の目的及び意義を十分に理解していなかったということを調査報告書でも指摘されているところでございまして、その上で、調査報告書において、看守勤務者にバイタルチェックを行わせるのであれば、その目的及び意義を看守勤務者によく理解させるとともに、測定不能であった場合の対応方法を定めておくべきであったなどとしているところでございます。
それ以上に、今委員から御質問がございましたが、それ以上の点につきましては、現在訴訟係属中でもありますので、詳細お答え差し控えさせていただきたいと存じます。
○仁比聡平君 そう御答弁されるだろうと思ったんですよ。遺族から国家賠償請求訴訟が起こされていて、当然重大な争点になるんですよ。
だけど、それを最終報告、最終じゃない、これ最終とは書いてないから最終報告書とは呼びたくないけれども、この入管庁のチームで報告書に書いて、そこで記載をしておきながら、そしてこういう資料も出しておきながら、国会で答弁差し控えていてどうするんですか。おかしいですよ。というのは、個別事件の問題ではなくて、あるいは職員の意識の問題ではなくて、制度の問題でしょう。全件収容で、かつ外部への医療提供というのもこのように現実にしないというこの制度が問われているんでしょう。
だから、私は、この一枚目にお配りをした二〇〇七年以降の死亡事案十八件について、それぞれの死亡者がどんな事情の下で収容されたのか、死に至るまでの収容期間、うち単独室に置かれた期間、死亡に至った経緯及び死因、そして、とりわけどのような医療上の対応、治療がなされたのかについて、これ全て、入管庁がせめてウィシュマさんの件についてやっていらっしゃるように、調査の結果をこの国会に提出する、公表すべきだと、実態解明をし、そしてその責任を明らかにし、制度の在り方というのを徹底して議論すべきだと思うんですが、大臣、いかがですか。
○政府参考人(西山卓爾君) 今委員から御指摘がありましたそれぞれの死亡事案につきましては、発生の都度、当時の判断に基づいて必要な事実確認を行い、対応してきたものと承知しております。
その上で、各死亡事案に係る詳細な事実関係等については情報公開法上の不開示情報にも該当するものと考えておりまして、このような事柄の詳細を国会等で明らかにすることについては、個々の事案の内容等に応じて個別に判断すべきと考えているところでございます。
○仁比聡平君 過去のこの委員会の、ちょうど一年前の委員会の場で、既に四件の公表をしている、最終報告書の、と答弁されているんですけど、入管のホームページには二件、二〇一九年のナイジェリア人男性が餓死をした事件と、そして本件のウィシュマさんの事件、この二件しかホームページにはアップされてないんですよ。残りの三件というのは、存在はするらしいけれども、公表していない。昨日どこにありますかと聞いて、今のこの時刻までお答えがないというのが今の現状と。そういうのを公表と言わないんですよね。
ほかの事件についても、庁内での調査は書面でしているという答弁をされているんですが、例えば、その上から十二番目の二〇一七年の三月に牛久でベトナム人男性がくも膜下出血で亡くなったという事件については、報道で、亡くなる一週間前から頭痛を訴えていたという事実があります。それに対してどんな対応がされたのか。
あるいは、東京入管で二〇一四年の十一月にスリランカ人男性が急性心筋梗塞で亡くなられましたが、この件については、朝日新聞が入手した内部文書においてという記事で、胸の痛みを訴えて、けれど、その重篤性の判断を誤って、直ちに救急搬送しなかったと第三者委員会から指摘をされていると。
けれど、それが、こうやって求めても、個々の事案ごとだと言って、明らかにしないというわけですよね。そんなことで実態解明なんてできないでしょう。
○委員長(杉久武君) 仁比委員に申し上げます。申合せの時間ですので、おまとめください。
○仁比聡平君 そうした事態をもたらしてきた現行の入管法の改定をこの国会で議論しろと。そんな、大臣、おかしいですよ。
徹底してこれは明らかにするべきだということを強く求めて、質問を終わります。