○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
昨日は国際女性デーでした。日本で初めて国際女性デーが開催されたのは百年前の一九二三年、戦争に向かう暗黒社会の中、女性と子供たちは家父長制の下で戸主に従属する無権利者とされ、参政権も認められませんでした。当時の集会は僅か四十分で解散させられたというのですけれども、翻って今日、ジェンダー平等に向かう日本社会のエネルギーの大きさに感慨といいますか、私、わくわくするような思いがいたします。
そこで、法務大臣にお尋ねをいたしますけれども、同性カップルをめぐる、隣に住んでいたら嫌だ、見るのも嫌だなどとした首相補佐官の差別発言を受け、同性愛差別に反対し、同性婚の法制化を求める圧倒的な世論が明らかになっていると思います。例えば、日本で性的少数者の人権が守られているとは思わないという方が六五%、守られているという人は僅か一五%。同性婚を認めるベきという調査はおおむね六割から七割に上っていますし、特に十代から二十代の若者は八割から九割ですよね。
日本社会はジェンダー平等に向かって既に大きく変わっていると私は思うんですけれども、大臣はどうですか。
○国務大臣(齋藤健君) 大きく変わっているかどうかという点については、多様な観点から様々な評価があるんだろうなと思っておりますので法務大臣としてお答えすることは困難なんですが、その上で、同性婚制度の導入という問題は、我が国の家族の在り方の根幹に関わる問題であり、国民的なコンセンサスと理解を得た上でなければ進めることができないと考えているところでございます。
○仁比聡平君 いや、様々な評価はないでしょう。だって、世論調査の結果、圧倒的多数が同性愛者の差別は駄目で、同性婚は認めていこうと言っているじゃないですか。それをまず受け止めるというのが、私、法務大臣として大切な構えだと思います。
結婚って何ですかと聞かれたら、大臣がどうお答えになるでしょうか。資料に、昨年十一月の結婚の自由を全ての人に訴訟の東京地裁判決の抜粋をお配りいたしました。端的に言えば、東京地裁は、親密な人間同士の結び付きのことですと答えたと思うんですね。婚姻は、親密な人的結合関係について、その共同生活に法的保護を与えるとともに、社会的承認を与えるものである。このように親密な人的結合関係を結び、一定の永続性を持った共同生活を営み、家族を形成することは、当該当事者の人生に充実をもたらす極めて重要な意義を有し、その人生において最も重要な事項の一つであると言うことができるから、それについて法的保護や社会的公証を受けることもまた極めて重要な意義を持つものと言うことができると。
私、とても自然な考え方だと思いますが、大臣はいかがですか。
○国務大臣(齋藤健君) 御指摘の東京地裁判決では、その理由中の判断において御指摘のような判示がされているということであります。この判示自体は一つの考え方を提示したものと理解をしておりますが、法的保護が与えられる人的結合関係としてどのような関係を想定するかという問題は別途検討されるべき課題ではないかと考えています。
いずれにしましても、現段階では、確定前の判決であり、また他の裁判所に同種訴訟が係属をしていることもありますので、その判断等を注視してまいりたいと考えています。
○仁比聡平君 いや、とても残念ですね。
この後に、東京地裁は、だからこの婚姻、結婚というのは個人の尊厳に関わる重要な人格的利益である、同性愛者というだけでパートナーと家族になることが生涯を通じて不可能になることは人格的生存に対する重大な脅威、障害であり、今の現状は憲法二十四条違反の状態にあると。同性愛者というだけで、個人の尊厳に関わる重要な人格的利益、それを享受することができず、人格的生存に対する重大な脅威が及ぼされていると、そう判断をしたわけですね。
大臣といいますか法務省は、その判断の部分について、判断というか結論の部分について異論がおありなんでしょう。ですが、結婚とは何かと。親密な人間同士の結び付きのことですよねと。それを社会的に承認をするということじゃないですかと。いや、これとても自然でしょう。
この裁判で、国の主張の中には、自然生殖可能性を前提とする男女の関係に特に法的保護を与えるものだというような趣旨の議論があるんですね。この生殖可能性と、だから男女だということを殊更に主張すると、大臣、女性は産む機械とかLGBTは生産性がないという考え方と、何というのか、近づいてきませんか。大臣、いかがですか。
○国務大臣(齋藤健君) 繰り返しになって申し訳ないんですが、この判示自体は一つの考え方提示したものであり、また、委員の御紹介したお話もそういったものの一つだと理解をするところでありますけれども、現段階では、繰り返しになりますが、確定前の判決でありますし、また他の裁判所で同種訴訟が係属しておりますので、この段階で法務大臣がこうだああだと言うのは適切ではないと思っていますので、まずはその判断等を注視してまいりたいと考えています。
○仁比聡平君 残念ですね。
女性は産む機械とかLGBTは生産性がないといった考え方は、過去、政治家によって示されてきたもので、大変な批判を受けて撤回をさせられてきたものですけど、その言葉については、大臣、どう思いますか。
○国務大臣(齋藤健君) その点については、言語道断の発言だと私は思っています。
○仁比聡平君 言語道断なんですよ。その言語道断の、つまりジェンダー平等も個人の尊厳も全く理解しない、そういう考え方に政府がくみしてはならないと私は思います。
岸田総理が、同性婚を認めると家族観、価値観、社会が変わってしまうというふうに述べられましたけれども、私は、こうして議論をできるように、既に日本社会、大きく変わっていると思うんです。同性カップルの方々と私も幾人もお会いしてきました。とても幸せそうですよね、お二人でいらっしゃるとき。裁判だとかこの国会においでになって声を上げるというときには本当につらい思いがしますけれども、お二人の姿というのはとても幸せそうでしょう。自分を偽る必要のない相手に初めて出会えたと、自分のままでいていいというのがこれほど楽なのかと初めて感じたと。そのパートナーに出会う前の人生のつらさがどれほどのものだったかということを重ねて考えると、この多様な人々のありようというのもしっかり認めなきゃいけないと思うんですよ。
大臣、いかがですか。
○国務大臣(齋藤健君) 私も、カミングアウトした高校の同級生もおりますし、そういう意味では、今まさに理解増進法をどうするかという議論が行われていますけど、理解の増進を図っていくということは基本的に重要な課題だと思っています。
○仁比聡平君 特定の家族観を押し付けて、豊かな多様性を否定して、みんなの幸せを奪ってはならないと私は思います。パートナーシップ制度が二百五十以上に増えてきた、立憲の石川大我議員が六日の予算委員会で大きな質問をされました。私、聞いていてそのとおりだなと思いました。提出された同性婚を法制化する婚姻平等法案、我が党も大賛成ですので、与野党を超えて是非実現を図ろうではないかと皆さんに呼びかけたいと思います。
昨年十一月に、葉梨前大臣と女性差別撤廃条約選択議定書の早期批准について議論をする中で、条約委員会の、人権の保護における司法の基本的役割は国際的な審査を受け入れることによって強化されるという発言について認識を聞いたら、法務大臣がコメントを差し控えると答弁されて、私は心底驚いたんですよ。
G7広島サミットの年なんですけれども、昨年のG7ドイツ・サミットの首脳コミュニケでいうと、「我々は、女性と男性、トランスジェンダー及びノンバイナリーの人々の間の平等を実現することに持続的に焦点を当て、性自認、性表現あるいは性的指向に関係なく、誰もが同じ機会を得て、差別や暴力から保護されることを確保することへの我々の完全なコミットメントを再確認する。」と言っています。
G7の男女共同参画担当大臣会合の共同声明でいうと、「女性、女児、そしてLGBTIQプラスの人々は、性暴力及びジェンダーに基づく暴力の被害者になる可能性も非常に高いです。」、「ジェンダー平等の達成は緊急かつ必須であり、我々の政治的優先事項であり続けています。」と述べているんですよね。つまり、ジェンダー平等へのコミットメントが強調されているわけです。
国際人権水準に照らして、我が国の人権、ジェンダー平等を全うしていくと、これは法務大臣を含めて日本政府として当然の責任なのではありませんか。
○国務大臣(齋藤健君) 法務省も、政府の一員として、多様性が尊重され、全ての人々がお互いの人権や尊厳を大切にし、生き生きとした人生を享受できる社会の実現ということを目指しているわけであります。当然のことながら、男女平等につきましても、その前進にしっかり取り組んでいかなくちゃいけないと思っています。
その上で、葉梨大臣のお話がありましたので、そこにちょっと私の答弁として補足をさせていただきますが、これまでに採択された女子差別撤廃委員会による日本政府報告審査においての総括所見におきまして、選択議定書の提供するメカニズムが司法の独立を強化し、司法が女性に対する差別を理解する上での助けとなる等の指摘がされたということは承知をいたしております。そして、選択議定書の締結は、条約の意義や司法の責務について理解が進むことにつながり、司法の役割が強化されることになるという意見があることも承知をしております。
このような指摘等があることも含めて、女子差別撤廃条約選択議定書に定める個人通報制度もありますけれども、そういったものは条約の実施の効果的な担保を図るとの趣旨から注目すべき制度であるとは認識をしているところでありますが、その受入れについては、通報事案への具体的対応の在り方を含めて、かなりの検討が必要である課題だろうと思っています。
これらの検討事項は法務省だけで解決できるものではありませんので、引き続き、外務省を中心とした関係省庁と連携して、政府全体で各方面の意見を聞きながら、同制度の導入の是非について検討を進めてまいりたいと考えています。
○仁比聡平君 これまでは真剣に検討するとおっしゃっていましたよね、それぞれ課題があるとはおっしゃっていたけど。今、大臣、かなりの課題がある、かなりの課題があるって、これ、あれですか、これまでの共同参画計画にも書いてあるスタンスよりももっと厳しいんだとおっしゃりたいんですか。
○国務大臣(齋藤健君) いや、そういうことではなくて、私がさっと見たときに、ああ、いろいろ問題がありそうだなという印象を述べただけであります。方針は変わっていません。
○仁比聡平君 さっと見て印象を述べないでください。
前段でおっしゃったように、日本政府として重大な課題があるわけでしょう。秋以降、十二月議会でもこの早期批准を求める意見書は地方議会で次々広がっていまして、資料をお配りしていますけれども、今や百八十八自治体に上っています。大臣の御地元の流山市議会も全会一致で意見書を上げていて、その中で、政府は、男女平等を実現し、全ての人が尊重される社会をつくるために、速やかに選択議定書の批准に向けて動き出すべきであると述べているんですね。私、正面から受け止めて、大臣として尽力することを強く求めたいと思います。
次にちょっと進みたいと思うんですが、その条約委員会の二〇一六年最終報告で、家族経営における女性の労働を評価し、女性の経済的エンパワーメントを促すためにと見直しの検討を求められたのが所得税法五十六条です。
財務副大臣、井上副大臣においでいただきましたけれども、井上大臣と私の地元である福岡でも、この廃止、見直しを求める地方議会意見書というのは二十五の市町から届けられています。大きく広がって五百六十六に上るんですけれども、そのうち、資料の七枚目に徳島県議会の全会一致の意見書、御覧いただきたいと思うんですが、所得税法五十六条の規定により、生計を一にする家族従業員に支払った給与は必要経費として算入しないこととされていることから、事業主の所得から控除される働き分は、配偶者が八十六万円、子供などの家族が五十万円とされていると。これ、八十六万円って、年ですからね、年八十六万円。それ、配偶者以外だったらば、年五十万円を事業主の所得から控除するということしか認めないと。
これは、実際に労働した事実、そしてその正当な対価を税法上認めないと、税法上否認するという条文なんだと思うんですけれども、副大臣、戦後七十八年、時代も意識も大きく変わっているじゃないですか。中小業者、零細業者の中での女性や御家族の働き方、役割というのは大きく変わっていますよね。これを変えないというのはおかしなことだとは思いませんか。私は思うんですが。
○副大臣(井上貴博君) お答えいたします。
○委員長(杉久武君) 井上副大臣、マスクの着用をお願いします。
○副大臣(井上貴博君) マスク着用ですね。はい。
現在の所得税法五十六条についてをまず御説明をさせていただきたいと思います。
所得税法第五十六条につきましては、家族間の恣意的な所得分割による租税回避を防止するために、所得税の計算上、家族への給与支払は必要経費に算入しないとすることの規定となっております、現在ですね。しかしながら、青色申告については、帳簿等により給与支払の実態等が確認できることから、第五十七条によって、家族従業者への給与について実額での経費算入を認めているところであります。
他方で、青色申告をしていない個人事業主、要は白色申告者につきましては、青色申告者とは異なりまして、資産の実情まで記録することが求められておりませんで、給与の支払の実態等の確認が困難であることを踏まえて実額による経費算入を認めておりませんが、実際の給与の支払の有無にかかわらず、定額の控除を認めるといった配慮を行っているところであります。
このように、青色申告者と白色申告者の記帳水準の違いを勘案して経費算入の在り方の違いを設けられていることから、委員の御指摘の所得税法五十六条を見直すべきとの御指摘につきましては、白色申告者による記帳や帳簿等の保存の状況も踏まえて、引き続き丁寧に検討していく必要があるというふうに考えております。
○仁比聡平君 取りあえず役所の書かれた答弁をお読みになったんだろうと思うんですけど、いや、副大臣、それ、頑張っている中小事業者の特に女性家族従業員、あるいは跡継ぎになれるかもしれないという青年たちの前で言えますか。
最後おっしゃったように、丁寧に検討していきたいということは大事なことなんですよ。なんですけど、いつまででも漫然と検討するというだけでいいのかというのが、私、問いかけたいんですよね。
だって、青色でも労働実態と給与が違うということがあって、実際、税務調査でこれ正していくじゃないですか。その所得分割というのは、家族内での所得分割というのは青か白かで関係ないですよ。白も一九八四年から記帳義務が付いたでしょう。以来、もう四半世紀、もっとか、たっているわけでね。その間にいろんな会計ソフトなんかもできたりとかして、白色申告の方々の記帳っていろんな形で努力されているし、それをまた女性が担っているということもあるでしょう。そういう中で、何で女性差別撤廃条約の委員会がこの問題を指摘したのかということを考えてほしいんですよ。
昨年の総務省の労働力調査でも、家族従事者の圧倒的多数は女性が占めています。八割が女性なんですね。だから、ジェンダー平等の大問題なんですよ。
全商連の婦人部が、婦人部協議会が調査をした二〇二二年の全国業者婦人の実態調査、是非お読みいただきたいと思うんですけれども、この家族従事者の半数近くの人が、半数近くの女性が、四六・九%、働いた分の報酬を受け取っていません。特に、白色申告の営業では六三・四%の女性がただ働きという状態になっている。
農村の女性たちもそうですよね。ちょっと前ですが、二〇一五年に農民連女性部が行ったアンケートでは、農業での報酬を月ぎめでもらっているという人は僅か一三%ですよ。小遣い程度というのが四割ぐらい。本家と分家とか、長男と次男とか、その嫁とか、そういう様々なジェンダー不平等があって、これを解決していくというのがこれからの地域経済を良くしていくために求められているじゃないですか。
だから、この問題での意見書というのはどんどん広がっていて、時間が迫りましたから一つだけ紹介しますけれども、九枚目の葛城市議会、ここでは議員の多くの方が自営業もお勤めになっていて、家族従事者というのは本当に大変だとか、様々な活発な議論がされたんだそうですよ、奈良の葛城ですね。最後のところに、人権問題として、差別的税制をこれ以上放置せず、家族従業者の労働の社会的評価、働き分を正当に認めるため、所得税法第五十六条を廃止することを求めますとあるじゃないですか。
だから、徴税の方のニーズとか仕組みだけじゃなくて、このジェンダー平等、女性の人権という観点を持ってこれ丁寧に検討をしてもらいたいと思いますが、副大臣、どうですか。
○副大臣(井上貴博君) 現行の五十六条、五十七条の状況を踏まえて、今の実際問題の青色申告者自体が、全体の申告者が三百七十万人ぐらいいらっしゃると思いますが、その中で青色申告をやっていただいている方々が大体平成二十九年で二百二十万人ぐらいで、それで白色申告の方自体が百五十万人ぐらいなんです。
それで、そういう中で、実際は、五十六条に基づいて、できるだけ青色申告で申告を促したいというふうには思っておりますが、諸般の事情で、いろんな今、中小零細企業、それから様々、家族構成、それからいろんな諸般の事情で白色申告でやられている事業者の方々がたくさんいらっしゃると思うんです。ですから、そこの部分を配慮して、これは男女問わず、現実問題、八割は女性の方ですけれども、二割は男性の方もいらっしゃいまして、男女平等のことを考えて、全体を勘案して検討していくことも必要だというふうに思っていまして、この五十六条、五十七条の今の現行の状況を、御指摘をいただいたことも踏まえて十分検討していきたいというふうに思っています。
○仁比聡平君 残念ながら時間が来てしまって、ちょっと今度もお呼びしましょうかね。
制度上、女性は差別すると書いていないですけど、圧倒的に女性。そういう実態がある以上、これは是正しなきゃいけないというのが女性差別撤廃条約や、そして我々の憲法の要求ですよ。かつ、年八十六万円で配慮しているなんて、とんでもないでしょう。学生のバイト代にも満たないじゃないですか。だから、深刻な人権侵害だと指摘をされるわけです。制度が、多様な生き方だとか、あるいは人の人生や暮らしのありようを侵してしまうということ、侵害してしまうというようなものになっては絶対にならないと思います。
引き続き丁寧な検討を速やかに行って、見直し、廃止をしていただくこと、かつ法務大臣にまだまだ聞きたいことがたくさんあったんですが、それは次の機会に譲らざるを得ないということで、今日は終わります。
ありがとうございました。