○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
私は、本改正案が危険物に関する通知義務を新設していることに関わって、民間航空機による武器弾薬、兵員の輸送と安全運航の問題についてお尋ねをしたいと思います。
まず、確認をしたいと思うんですけれども、一九九八年の一月六日に、那覇空港から関西空港に飛行するJAL八九四便に、これ、米軍が小火器類、それから火薬五十七キログラムを運ぼうということになったけれども、結果、その荷物は取り卸されて、遅延をして出発をすると、離陸するということになったという、こういう関係があります。
これ、防衛省はこれは御存じですか。
○政府参考人(辻秀夫君) お答えいたします。
突然のお尋ねでございますので、承知をしておりません。
○仁比聡平君 担当者がおらぬということですが、今の御答弁の意味は。
昨日、この米軍の民間航空機への貨物の取扱いについては防衛省としては承知をしておらないという、そういう御説明でありました。
この件について、二枚目の資料、あっ、ごめんなさい、三枚目になりますが、航空局から危険物の取扱いに係る業務の規程の審査要領という説明をいただいております。貨物として危険物を輸送しようとする事業者は、航空機の出発前に機長に対して、書面によって危険物に係る情報を通知するように定められているということなんですけれども、この私が申し上げているときは、これ、デンジャラスグッズというリストが示されるわけですね。ここに、カートリッジズ、スモールアームズという、こういう貨物の記載があった。スモールアームズというのは小火器だろうと思うわけですが、カートリッジズというのは、これは一体どういうものか。弾薬や火薬ということであれば、これは安全運航に極めて重大な影響があるわけだから、こうしたものを載せて飛ぶことが本当にいいのかという疑問を機長は抱きまして、会社側、運航管理者とやり取りをして、で、機体には乗ったと。実は、前日からこの貨物は積載をされていたようで、けれども、JALの社として、これを載せたまま本当に飛べるのかということについて説明をするという、そういうことにはならなかった。結果、会社の決定でこの貨物は取り卸して離陸をするということになったという理解なんですけれども、私は。
航空局にお伺いをしたいんですけれども、二枚目の資料に航空法の規定を掲載をしました。七十三条の二で、機長は、運航に必要な準備が整っていることを確認した後でなければ航空機を出発させてはならないとされております。この機長の最終判断の責任というのは極めて重いものであって、安全が確認できないと判断をした場合には、今御紹介をしたようなケースというのはこれは当然のことであって、当然どころか、航空法が機長にそのような重い責任を負ってもらっているということだと思いますが、いかがですか。
○政府参考人(高野滋君) お答え申し上げます。
ただいま委員御指摘の航空法の第七十三条の二でございますが、資料にもございますように、航空法施行規則の規定と併せまして、積載物の安全性を含めて、航空機が航行に支障のないことなどを出発前に確認することが義務付けられております。
この積載物の安全性というものの中には、航空運送事業者の機長は、危険物の輸送が行われる場合には、その品目や分類、搭載場所などに関し、的確な措置がなされていることを確認するということも求められております。
御指摘の事案、平成十年一月六日という御紹介でありましたが、ちょっと確認をしたのですけれども、二十年たっているので、実はその詳細な経緯というのが私ども事実関係確認できなかったんですが、委員が御説明いただいたような経過であるとすれば、航空法に照らして問題のあった行為であったとは全く考えておりません。
○仁比聡平君 全く問題がなかったということなんですが、つまり、私確認したいのは、その九八年の事件は別としても、一般論でいいんですが、安全運航に最終責任を負うこの機長の判断、あるいはその権限と責任というのは、これ揺るぎないものであるということを確認をいただきたいと思いますが、いかがですか。
○政府参考人(高野滋君) お答え申し上げます。
航空法七十三条の二の規定にございますように、機長は、航空機が航行に支障のないこと、安全が確認できない場合は、出発前に、運航させてはいけないという御指摘だと思いますが、まさにそのとおりだというふうに考えています。
○仁比聡平君 その上で、危険物の運送ということに当たっては、今申し上げたことが、これは船でも起こり得るわけですけれども、陸でももちろんあってしかるべきなんですが、特に、この航空機においてもし上空で事故が起こると、万が一のことがあるということになれば、重大なことにもこの航空機の場合になるわけです。海の場合もそうですが。
それで、そうした機長の判断で、結果、荷物が運ばれないということになりますよね。そうすると、荷送り人としては、運送人に運んでもらうという契約をしているはずなのに何で運んでもらえなかったのかと。先ほどの件でいうと、米軍がJALに対して、なぜ運ばないのかと、なぜ運べなかったのかと、運ばなかったのかといった責任を追及するというようなことになってしまうと、これは事実上、現場の機長あるいはその他の運航に関わる現場に圧力が掛かる、そうなりかねないみたいな事態になるじゃないですか。
そうした解釈になるのは、これはもうとてもおかしな話なんですが、法務省、どんなふうに考えたらいいんでしょうか。
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
個別の事案におきまして、運送人が運送をしなかったということで債務不履行責任を負うかどうかと、こういったような問題と捉えますと、もちろん、そういった問題につきましては、最終的には、個別の事案におきましては、その運送契約の具体的な内容ですとか個別具体的な状況に応じた司法判断に委ねられることとなるわけでございますが。
あくまでも一般論として申し上げますと、御質問をいただいたような事案のように、危険物であると疑われる又は危険物である運送品について荷送り人から通知された内容が不十分であって、運送人、航空会社からの確認要請にもかかわらず荷送り人がこれに応じない、そういったことから積載物の安全性を確認することができず、そのままでは航空機を出発させることができないと判断した、こういった結果、運送品が運送されなかったと、こういう場合でございますが、仮に運送の義務があったといたしましても、この運送債務の不履行は航空会社の責めに帰すべき事由によるものではないというふうに評価されて、航空会社は債務不履行責任を負わないと、こういうことになることが考えられます。
○仁比聡平君 もちろん、個別の事実関係にはよるでしょうけれども、そもそも運送人の債務となっていたのかと。機長判断で運べないようなそういう危険品、これを仮に事実上は受け入れていたとしても、それは運送するという義務にそもそもなっていなかったんじゃないのかというような考え方だってあり得ると思いますが、それはどうですか。
○政府参考人(小野瀬厚君) 委員御指摘のとおり、これもあくまでも一般論としては、その運送契約の具体的な内容ということによるわけでございますので、そういった個別具体的な状況によりますれば、運送の義務自体がないというように解釈される場合もあり得るのではないかなというふうに考えております。
○仁比聡平君 ありがとうございます。
今まで申し上げてきた例は米軍のということで申し上げてきましたが、政府が民間航空会社、エアラインに自衛隊の軍事物資あるいは兵員の輸送をしてもらうということというのは、特に九〇年代の終わり頃から目立つようになって、安保法制、戦争法の下では、この民間事業者との関係というのが大きな問題にもなってきたわけです。
そうした下で、四枚目に、定期航空協会の一九九九年の五月二十四日付け、周辺事態法に対する当協会の基本的な考え方という文書を、これは航空局に提出をいただきました。これは、申し上げたような民間動員というのが重大な社会問題、政治問題になる中で、九九年に周辺事態法が強行されたわけですが、その協力依頼についての説明の中で、武器弾薬についても排除されないという説明を政府がされたわけです。これが現場で大問題になって、御覧のとおり、民間企業に対する協力依頼は強制力を伴わない、政府から協力依頼があった場合は最低限以下の事項などを確認する必要があると考えるとして、①協力依頼の内容が航空法に抵触しないなど法令等に準拠したものであること、②事業運営の大前提である運航の安全性が確保されること、③協力を行うことによって関係国から敵視されることのないよう協力依頼の内容が武力行使に当たらないことと、こういう考え方が示されているわけですね。
これは極めて重いものであって、現在も一貫して生きている定期航空協会の考え方だと思いますけれども、航空局、それでよろしいでしょうか。
○政府参考人(高野滋君) お答え申し上げます。
先生御指摘の定期航空協会が平成十一年五月二十四日でございますけれども、に公表した周辺事態法に対する当協会の基本的な考え方でございますが、私どもも同協会からこの内容を伺っておりますし、現在もその考え方には変わりはないというふうに承知をしております。
その上で申し上げますと、民間航空の運航の大前提というのはどこにあるかというと、もちろん安全確保にあるわけでございまして、国土交通省としては、こういった法令に基づく輸送の協力依頼をする場合でも安全に十分配慮しなければいけないのであると、そのように認識をしております。
国土交通省といたしましては、今後とも、このようなケースも含めて、民間航空の安全確保に万全を期すように最大限努めてまいりたいというふうに考えています。
○仁比聡平君 この考え方の最後、末尾に、民間航空の安全の確保に国は万全を期すように強く要望するとありまして、今の御答弁はこれにちゃんと応えるという御趣旨だと思うんですね。
防衛省に確認をしたいんですが、現実に発注はされておられるわけです。その上で、運航の安全性は、これは事前の準備とか調整はそれはいろいろあるでしょうけれども、これ、最終判断はエアライン、最後の最後は飛ぶ機長の判断なのであって、間違っても強制すると、飛べと強制するということはあり得ないと思いますが、いかがですか。
○政府参考人(辻秀夫君) お答えいたします。
防衛省におきましては、民間事業者に対して危険物の輸送を委託をいたしておりますが、これはあくまでも民事上の契約に基づくものでございまして、防衛省として、事業者に対しては、契約を適切に履行することをお願いする立場ではございますが、御指摘のように、契約の範囲を超えて運航を強制するといったことになるものではございません。
いずれにいたしましても、武器弾薬等の危険物の輸送役務につきましては、今後とも、法令等に基づき適正に行ってまいります。
○仁比聡平君 先に上川大臣にお尋ねしておきたいと思いますけれども、今御説明のとおり、契約という形を取っているわけですね、これは当たり前のことです。この契約という形を取りながら、関係機関から強制されるとか、あるいはこの③の部分が懸念をしているように、関係国から敵視されるとか、こういうことがあっては絶対ならない。強制されることはない、自由な意思に基づく、そういうものなんだと。いかがでしょうか。
○国務大臣(上川陽子君) そもそも契約につきましては、「何人も、法令に特別の定めがある場合を除き、契約をするかどうかを自由に決定することができる。」との契約自由の原則、これが妥当するわけでございます。そして、この契約自由の原則の内容には、契約を締結するかしないかの自由や契約の相手方を選択する自由が含まれているということでございます。
そのため、一般論として申し上げるわけでございますが、契約当事者の一方が政府機関である場合であっても他の一方が契約の締結を強制されることはなく、契約を締結するか否かはあくまでも当事者が自由に決められるべきものでございます。
○仁比聡平君 ありがとうございます。
法律上の考え方あるいは国会の答弁ということはそういうふうになるんですが、それは大事なことなんですけれども、現実が本当にそうなのかということを厳しく問題提起をしたいんですね。
資料の一番最後になりますが、まだ全部明らかになっていないいわゆるイラク日報、この中で、二〇〇五年十二月七日のイラク復興支援群の日報から抜粋をしました。「本日の業務」、「イ アントノフ問題」というところを御覧いただきたいと思います。クウェート外務省領事部、あと墨塗りですが、「今回、着陸許可を下ろさなかったのは、民間航空局の安全管理部が当該機を危険な航空機と認識し会社側へ安全上の確認を求めたのに対し何ら説明が無かったことに原因がある。当該機については、安全が確認されない限り、今後も許可を下ろすことはない。」とされているわけですね。これつまり、敵視され、エアラインの業務上あるいは信用上、これは重大な問題になったということだと思います。
この問題にも関わって、既に国会でも御答弁をされている、二〇〇三年から二〇〇九年にかけて、イラク、クウェートに隊員あるいは物資を運ぶために、アントノフ航空にも、ほかブリティッシュ・エアウェイズ、あるいはタイ国際航空、そしてJALにも防衛省は発注をしているわけです。ここでの契約の内容がどうなっているのかと私は検証したい。だから、資料を求めました。
昨日の夕方の時点では、数時間後に整えられると思いますという趣旨の対応をされたけれども、未明の二時頃になって、発見できないという、そういう回答をいただいているわけですね。これ一体どういうことですか。
○政府参考人(辻秀夫君) お答えいたします。
昨日、先生から資料の御要求があったわけでございますけれども、御指摘の資料につきましては、確認できる限りで探索を行いましたが、限られた時間ということもあり、現時点で保有の有無を確認するには至っておらないという状況でございます。
○仁比聡平君 これ、そうした中で、一枚目に、航空自衛隊輸送役務発注書のこれはひな形ですね、が示されているわけですが、品名、個数、重量、あるいは輸送区間、役務内容、運賃欄など、その金額ということが書いてあるだけであって、危険性、その危険品の中身、あるいはこれを安全に運送する上での、防衛省がつまり荷送り人として通知をしなければならない義務がある。これ、航空法の分野でももちろんある、今回の法改正でもそれが強く求められている。これについて書く欄なんというのは、これ記載項目としても存在しないわけですよ。具体的に契約書にはそれは書いてあるのかもしれない。けれども、どんなふうに書いてあるのかも分からないと。
これだけ問題になっている中で、提出がまだできていないということですか。先ほどの御答弁であれば、まだ探せば出てくるんだろうと思いますから、国会で答弁をしている議論ですから、私が求めているこのイラクの件、それから、二〇一六年に南スーダンへ兵員、自衛隊員を派遣したときのものも併せて求めています。
この二通について、きちんと理事会に提出をいただきたいと思いますが、委員長、提出をさせるように御努力をお願いいたします。
○委員長(石川博崇君) ただいまの件につきましては、後刻理事会において協議いたします。
○仁比聡平君 終わります。