○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
 建設アスベスト対策と被害者救済についてお尋ねしたいと思います。
 まず、厚生労働大臣の基本認識を二点伺いたいと思うんですが、一つは、アスベスト公害というべき問題だということなんですね。二〇〇五年に株式会社クボタ尼崎工場で、従業員と工場周辺住民に中皮腫などのアスベスト関連疾患による死者、重大な健康被害が発生したクボタ・ショック以来、アスベスト問題は深刻な社会問題となり続けています。
 お配りした資料の一枚目は、首都圏建設アスベスト訴訟統一本部の作っておられるパンフレットから、「アスベスト被害は、工場から建設現場、そして地域住民へと広がっています」という図を見ていただいています。この首都圏におけるアスベスト労災認定者の広がりを見てもその深刻さは一目瞭然でありまして、小学校の教員が校舎の階段下に吹き付けられたアスベストにより中皮腫にかかった例、裁判で公務災害として認定されたと。あるいは、さいたま市の石綿工場の周辺住民が中皮腫にかかった例も報告をされているわけですね。
 アスベストは極めて強力な発がん物質で、かつアスベスト含有建材として身の回りに大量に残されています。そうした建築物の解体、これは二〇二〇年から二〇四〇年にピークを迎えるという中で、まさにアスベスト被害防止は国民的課題、このパンフレットにあるとおりだと思うんですね。
 そこで、大臣、どこにどれだけアスベスト含有建材が残されているか、これを徹底的に調査をして、厳格、安全に管理をする、そしてできるだけ早く除去、廃棄するとともに、建物の利用、改修、解体に当たって暴露を絶対に防ぐという政府の責任は重いと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(根本匠君) 委員御指摘のとおり、建設労働者の健康障害を防止して安全衛生を確保するために石綿の暴露防止対策をしっかり行っていくことが極めて重要だと思っております。
 今後、二〇三〇年頃にかけて石綿が使用された建築物の解体工事が増加していくことが見込まれており、また、暴露後長期の潜伏期間を経た後で中皮腫等重篤な疾病の発症が起こる可能性もあります。
 このため、厚生労働省としては、労働安全衛生法に基づいて、平成十七年度に石綿障害防止規則を制定して、建築物の解体等の作業における石綿暴露防止対策等について定めて、その遵守を図ってきたところであります。これは引き続き徹底していきたいと思います。
 さらに、石綿を含有する建築物を解体、改修する際には、作業に従事する労働者が石綿に暴露することのないよう、事業者に必要な対策を講じさせることが非常に重要だと思います。
 このため、労働安全衛生法に基づいて、厚生労働省の立場からは、平成十七年に石綿障害防止規則を制定して、建築物を解体、改修する際には、事前に解体、改修を行う建築物に石綿が含有されているかを調査すること、吹き付け石綿などがある場合は労働基準監督署に届け出るとともに作業場所の隔離等の措置を講じること、石綿含有建材を湿潤な状態とすること、解体等の作業に従事する労働者にマスクを着用させることなどを事業者に義務付けております。
 これらの対策が徹底されるように、事業者に対する指導等に取り組んでいきたいと思います。
   〔理事西田昌司君退席、委員長着席〕
○仁比聡平君 大臣が、建設労働者の暴露の防止や石綿則の徹底ですね、今御答弁になった現在の規制というのは、実は歴史的に被害と闘いの中で築き上げられてきたものだと思いますけれども、その建設労働者の防止が重要だということは、そのとおりだと思うんですね。
 アスベスト被害は、言わば建設従事者の命と健康に対する最大リスクというべき問題になっていると思います。これは建設アスベスト疾病の健診や集団訴訟によって明らかにされてきた実態なわけですが、中皮腫、これはアスベストを吸うことによってのみ引き起こされる悪性腫瘍だと言われてきましたが、その死亡者数というのは、人口動態統計によると、一九九〇年世界保健総会で採択基準で統計を取り始めた年に五百人、ここから増え続けて、二〇一六年には千五百五十人と、二十二年間で三・一倍になっているわけです。九五年以降の死亡者数は既に二万二千人を超えているんですね。その多くが建設従事者です。
 厚生労働省が石綿による疾病に関する労災保険給付などの請求・決定状況まとめというのを作っていますけれども、これによれば、二〇〇六年度から二〇一七年度までの中皮腫の認定者数は六千八百五十九人、肺がんは五千九百三十人で、合わせて一万三千六百八十六人が労災認定をされ、そのうち建設業は六千七百二人で、全体の約五五%を占める最大の産業になっているんですね。
 ですから、建設従事者がアスベスト関連疾病に罹患するリスク、発症したときの重篤性の重さということを考えれば、まさに見えない時限爆弾というべきリスクであって、だからこそ、暴露を防ぎ、被害を根絶する必要性は極めて高いと思います。この点の認識が私が二つ目にお尋ねしたいと思っていた点なのでした。
 先ほど御紹介した資料は、そうした建設従事者にとどまらず、広く住民、国民に大きなリスクがあるんだということが今問題になっているんだと思うんですが、環境大臣政務官、いらっしゃっていると思いますが、その点の御認識、いかがですか。
○大臣政務官(勝俣孝明君) ありがとうございます。
 石綿の飛散防止のためには、石綿の使用状況を踏まえた適切な除去が重要だと認識しております。
 このため、大気汚染防止法に基づき、建物等の解体、改修前に調査を実施いたしまして、石綿含有建材の使用状況を確認することを解体等工事の受注者に義務付けることで適切な除去を確保しているところであります。こうした石綿飛散防止対策については、現在、中央環境審議会において制度に強化すべき点がないかについて幅広く議論をいただいているところでございます。
 加えて、環境省では、災害時に備え、災害時における石綿飛散防止に係る取扱いマニュアルに平常時から建物等における石綿使用状況の情報を把握、整理しておくことが望ましい旨を明記し、自治体へ周知を図っているところでございます。
 こうして除去された石綿を含む廃棄物に関しては、廃棄物処理法に基づく飛散防止等の処理基準が定められているほか、石綿含有廃棄物等処理マニュアルを作成しまして、排出事業者、処理業者における取扱いについて周知するなど、適正処理を進めているところでございます。
○仁比聡平君 そうした認識の下で、建設現場の問題にもう一度話を戻したいと思いますが、国交副大臣、建設現場にはいわゆる一人親方と呼ばれる従事者が多くいます。実態は労働者そのものなのに形だけ請負にされているという場合も多いと思います。
 こうした一人親方の皆さんが、実際の建設作業の実態を見れば雇用形態で働く労働者と同様に重要な作業に従事しているし、労働実態、作業実態というのは同じで、その果たしている役割というのはとても大事だと、建設産業を支えてもらっていると思いますが、いかがですか。
○副大臣(大塚高司君) 先ほど委員の御指摘のとおり、いわゆる一人親方につきましては、個人事業主として請負契約により建設事業に従事する建設技能者であるわけであります。総務省の労働力調査によりますと、建設技能者の約三百三十万人のうち約五十万人で、全体の一五%を占めており、建設工事現場を支えていただいているものと認識をしておるところでございます。
 一人親方も含めまして、建設業に従事する方の働きやすくてやりがいを持って安全に仕事ができるよう、国土交通省といたしましても、業界とも連携を図りながら、安全、安心な労働環境の整備に向けた取組をしっかりと取り組んでまいりたいというふうに考えております。
○仁比聡平君 実際、建設アスベスト疾病にかかった方々、職人の皆さんにお会いしますと、自分が建てた家が自慢の方、たくさんいらっしゃいますよね。病気一つしたことがない自慢の体が仕事もできない体にされて、しかも次々と亡くなっていくと、その家族を残して逝くという無念あるいは遺族の悲しみというのは筆舌に尽くし難いと思います。
 ところが、我が国では、建設アスベスト対策と被害者救済は世界的に見ても大きく遅れてきました。我が国でアスベストは高度成長期の一九六〇年代に輸入が本格化しましたが、既に一九七二年にはILO、WHOが発がん性を警告していたわけですね。ところが、それを知りながら、政府とアスベスト建材企業は逆に使用を拡大をしたと。
 厚生労働省、政府参考人で結構ですが、石綿含有〇・一%を超える建材の製造、使用を禁止したのは、これいつですか。
○政府参考人(坂口卓君) お答え申し上げます。
 石綿等の製造の全面禁止に当たります〇・一%超の規制を実施したのは、平成十八年ということでございます。
○仁比聡平君 つまり、二〇〇六年、平成十八年、四十年にわたって大量に製造、使用し続けたわけです。法令で禁止したのはその年だということですね。
 これ、業界が自主規制した後になってからのことなんですよ。輸入アスベストのおよそ一千万トンの八割は、その間に住宅、建物建材として使用され、膨大な被害者を生み出しているわけです。大企業のもうけ優先が引き起こした公害と私は言うべきだと思いますし、その調査、管理、除去、処分、暴露防止、これは政府の重大な責任だと思います。
 そこで、国土交通省にお尋ねをしたいと思いますが、国交省は、この間、アスベスト調査台帳、これを整備する取組を進めてきました。お手元の資料二枚目から四枚目にその政府資料をお配りしておりますけれども、これ、社会資本整備審議会建築分科会のアスベスト対策部会のせんだって三月に開かれた部会の資料から抜粋をしたものです。これ、何を目的に取り組み、現状の課題は何でしょうか。
○政府参考人(小林靖君) お答えをします。
 ただいまお話のございましたアスベスト調査台帳でございますが、これは、国土交通省におきましては、既存建築物の吹き付けアスベストを早期に除去していくために、今、地方公共団体に対してアスベスト調査台帳の作成を求めているところでございます。
 このアスベスト調査台帳につきまして、既に九割以上の特定行政庁で台帳の整備又は整備中ということでございますけれども、一方で、調査がなかなかまだ進んでいないということでございますので、私どもといたしましては、社会資本整備総合交付金などの活用を通じて、この調査の促進に努めてまいりたいと考えております。
○仁比聡平君 元々、今御答弁あったとおり、吹き付けアスベストが露出しているというような、建物の利用者の安全に問題があるという建物を実態を調査するということでおやりになっているわけですけれども、その対象の大規模建築物だけで約二十七万棟、小規模建築物百三十万棟、これ、平成元年以前のものでそれだけだと。平成元年というのは、これは業界が自主規制をした年なんですけれども、以降、先ほどお話のあった平成十八年の法令、製造禁止までに多くの建築がされているわけですよね。
 この四枚目の資料を見ていただいたら分かりますが、その間の長い時期、五%規制ということが法的なものでした。これ、厚労省、五%以下ならアスベスト疾病は発生しないんですか。
○政府参考人(坂口卓君) お答え申し上げます。
 石綿含有率が五%未満であるからということで石綿関連の疾患の発症のリスクがないということはございませんけれども、当然、含有率が低いほど石綿関連の疾患の発症するリスクは低くなるものと考えてございます。
 委員が今御指摘あったような状況でございましたので、先ほど大臣の方からも御答弁申し上げましたとおり、今後二〇三〇年頃までにかけまして、石綿が使用された建築物の解体工事ということが増加していくということが見込まれますので、私どもとしましては、先ほど大臣の方からも御答弁申し上げましたような石綿障害防止規則というものに基づいての、アスベストを含有する建築物を解体、改修する際の暴露対策ということにしっかり取り組んでまいりたいと考えております。
○仁比聡平君 先ほど、国土交通省がなかなか進んでいないという趣旨の御答弁だったんですが、資料の三枚目を皆さん御覧ください。
 建築確認申請の書類からその平成元年以前の建物をリストアップしようというのが台帳整備のまず第一歩なわけですよ。そのリストアップを平成二十九年の九月末までにという通知を出しているんだけれども、そのリストアップさえ終わっていないという特定行政庁が四七%、今年の一月末の時点で半数に上っているんですね。ここに、使用調査の実施が済んだという特定行政庁は僅か一七%、先ほど二割程度とおっしゃったのはここの数字なんです。しかも、特定行政庁であり、この小規模建物などに入るものしか対象にしていないわけですよね。ですから、そのほかは全くつかめていないと。
 これ、不特定多数の者が利用する建築物を所有、管理する業界に対策を周知するなどして優先的な取組を進めましょうというのが国土交通省の立場ですが、そこで、副大臣、これ、昨年三月の東京のホテル、旅館業界の説明会の参加者というのは、これ僅か十六名、横浜の物販店舗業界の説明会というのは僅か二十三名なんですね。こうしたことでは調査台帳の完了がいつになるかも分からないと思いますが、これ、どう進めるんですか。
○副大臣(大塚高司君) 先ほどの御提言を受け、国土交通省におきましては、同年六月に建物の関連する団体と連携するなど、重点的な周知活動を行うよう地方公共団体に対しても通知をしたところでございまして、また、国土交通省におきましても、対策を進める上で影響の大きい不動産関連業界を対象にモデル講習会を開催し、蓄積されているノウハウの提供をすることにより、地方公共団体による説明会の開催を推進してまいりました。
 さらに、地方公共団体が業界団体向けの説明会を円滑に開催できるよう、地方公共団体職員を対象とした講師養成講習を平成二十九年度から開催をしておるところでございます。当該講習に参加した地方公共団体職員が講師となり、昨年度までに約八割の都道府県で、各都道府県の宅地建物取引業協会や不動産協会などから業界団体向けの説明会が開催をされておるところでございます。
 引き続きまして、地方公共団体と業界団体とが連携した取組を推進してまいりたいと考えております。
○仁比聡平君 そうした取組ももちろん推進して、とにかく速やかにこの目標を達成してもらいたいんですよね、私は。ですが、今のような講習なり研修なりがあっていても、現場の認識の希薄さというのは、これは深刻です。
 五枚目の資料に、福岡県大牟田市エリアの地元紙有明新報二月二十二日付けをお配りしましたが、ここにあるとおり、大牟田市は、整備を検討している絵本ギャラリーについて、昨年十一月に示した中間報告以降に見直した案を発表したと。中身が何かというと、旧老人福祉センターを解体するということなんですが、その解体費用はアスベスト除去工法を見直すことで二千五百万円縮減するという事業費見直しなんですね。
 これ、市の事業そのものが、採算性だとか必要性だとか、大問題になっている事業なんですけれども、それが問題になると真っ先にアスベスト対策費を削るということじゃありませんか。これ、総務省か厚労省か、こうした状況を確認できましたか。
○政府参考人(多田健一郎君) お答えいたします。
 地方団体の財政状況、私ども確認を、調査をいたしております。そういう立場で福岡県の大牟田市に事実関係を確認いたしましたところ、同市は、本年二月二十一日に開催されました同市議会におきまして、絵本ギャラリーの整備等について、旧老人福祉センターの解体に伴うアスベスト除去工法の見直しなどによりまして、全体の概算事業費を当初予定額から四千九百二十万円減の二億六千五百四十万円に縮減したという報告を行ったものと承っております。
○仁比聡平君 アスベスト対策の軽視というのは、官民共にこれは深刻なんですよ。政府が調査の必要性を認め台帳整備をするとしながら、限られたところでしか行われていないと。そういう下で、私、三つ大臣に提案したいと思うんですね。
 第一に、専門職による調査を法的に位置付けることです。
 次の資料に、国土交通省の建築物石綿含有建材調査者講習という制度、その修了という制度の資料があります。専門的な知識を有する者として、国土交通大臣が登録している講習を修了してもらう、この人たちに頑張ってもらうということなわけですが、修了者は千人を超えたんですけれども、これ圧倒的に足りないんですね。東京で二百二十六、福岡で三十一、多くの県で一桁です。これ、抜本的な育成を進めなきゃいけないと思います。本来答弁していただきたいところなんですが、時間がちょっと限られていますので。
 この調査者の課題として、次のページに、いわゆるレベル3建材、この調査も実施できる知識を習得してもらおう、あるいは三省連携、つまり、国土交通省だけじゃなくて環境省、それから厚生労働省、この三省で連携した仕組みとして、今、厚生労働省の規則で作業に義務付けられている石綿作業主任者などにも活躍してもらうようにして、つまり専門家を増やさなきゃ駄目じゃないかという問題意識だと思うんです。私、そのとおりだと思うんですよ。
 そこで、この取組を更に進めて、大臣、建物の調査、それからアスベスト含有の有無の分析、残されたアスベストの管理、除去作業時の気中濃度の測定、それから除去作業の監視、完了検査、こうした高い専門性が必要な、けれども困難な仕事に適切な資格、ライセンス制度をつくって、そうした専門職による調査を法的に義務付けるべきだと思うんですね。
 その方向での検討を是非してもらいたいということと、当面、例えば、自治体が調査者協会との協定を結んで、制度上位置付けを明確にするということぐらいはすぐにやるべきじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(坂口卓君) 厚生労働省といたしましては、まずもって、今委員の方から御指摘ございましたこの石綿障害予防規則に基づく事前調査の実施者につきまして、今、指針におきまして石綿に関し一定の知識を有し的確な判断ができる者であることとして、具体的には、通知によりまして所定の講習を受講して修了した者が含まれることとしているところでございます。
 ただ、その上で、今後、石綿含有建材を使用いたします建築物の解体等が増加することが、先ほど申し上げましたように増加することが見込まれる中で、適切な能力を有するこの事前調査者を着実に育成、確保するということが求められているということについては私どもも認識しております。
 このため、昨年の七月から有識者にお集まりいただいて検討会を開催をしておりまして、その方策としまして、この能力の習得のための講習制度等の整備のほか、事前調査者の具体的な要件等を明確に法令等に位置付けることということを検討をしているというところでございます。
○仁比聡平君 大臣、そういうことで、法的に位置付けることを検討しているというんですね。それの重要性というのは、先ほどの大牟田の例ではありませんけれども、きちんとアスベストを除去していく、それを事前に調査するというのは手間とコストが掛かることなんですよね。だから、これ現場任せにしてしまうと、これ後回しにされる。だから、解体現場、私の例えば福岡市なんかでもいっぱいありますけれども、単に幕が張ってあるだけで、アスベストを含んでいる建材がぼろぼろそこに落ちているとかいうことが現に、皆さん注意して見られればたくさんありますよ。
 それは今日御答弁いただく時間はありませんから次の機会に譲りますけれども、レベル3という輸入石綿の約八割が建材として使われ、その九割が成形板になっている。それが、内装、外装、屋根、床、あらゆるところに使われている。ここには大防法上の事前調査の義務付けというのはこれ行われていない。こういうところを抜本的に見直すことが今必要だと思います。
 その上で、三つ目に、私は、先ほどもちょっと御答弁の中で触れられたハザードマップの整備というのは、これ極めて重要だと思うんですけれども、国土交通省が進めてこられたリストアップを土台にして、建築基準法令の対象建材に限るんじゃなくて、専門家にちゃんと平時から調査をしてもらって、リストの上にその実態調査をしっかりとハザードマップにしていく。これ極めて重要だということは、東日本や熊本、西日本豪雨で、大規模災害で一気に家屋が倒壊したというときに、もう地域全体が解体現場になってしまうというその事態、教訓からしてこの必要性というのは明らかだと思うんですね。これ、是非進めるべきではありませんか。大臣、いかがですか。
○国務大臣(根本匠君) 厚生労働省としては、解体、改修工事に従事する労働者が石綿に暴露することのないように、解体、改修工事を行う時点で対象となる建築物に石綿が含有されているかどうかを確実に事前調査をする、これが重要だと考えております。
 このため、石綿障害予防規則によって、事業者に対して事前調査の実施を義務付けているところであります。その確実な実施が図られるように、労働基準監督署による立入調査等を行っているところであります。さらに、石綿暴露防止対策の強化を図るために、対策の強化について有識者、労使関係者等による検討会、これを開催しているところであります。この検討会の議論も踏まえながら、対策の充実を図っていきたいと考えています。
○仁比聡平君 先ほどの私の質問に国土交通副大臣や環境政務官もうなずいていらっしゃって、今もそうなんですが、つまり、事前にどこに危険なものがあるかということをあらかじめ自治体だとか労基署が把握しているということが、これ暴露を完全に防ぐためには絶対に必要なんですね。
 欧州議会は、二〇一三年の三月に既存アスベスト廃止の展望に関する決議というのを採択していまして、二〇二八年までにEUにアスベストゼロ社会を実現するということを決めています。我が日本でもそうした目標、そしてその達成のために必要な規制や予算、これを抜本的に確保するということを強く求めたいと思います。
 あと七分、六分の時間なんですが、そうした中で、被害者救済の国の責任についてお尋ねしたいと思います。
 今、調査と完全な暴露対策をここまで困難にしている、それは国の責任なんですよ。その下で広がった被害者救済の責任というのは極めて重いと思います。
 昨年九月二十日の大阪高裁判決は、本件において、石綿含有建材の普及は国の住宅政策に起因した面は否定できない、有害物の製造禁止は国の規制権限の行使が労働者に対して直接影響を及ぼす場面であると、国の責任を厳しく断罪をして、建材メーカーとともに国が負うべき賠償責任を二分の一といたしました。そうした下で、被害者の苦しみというのはこれ深刻で、先ほども早く事態が進行してしまうというお話をしましたけれども、この裁判の提訴から十一年がたちますが、現在では七割に上る被害者本人が亡くなられています。
 これ政府として、このアスベスト関連疾病が極めて早く進行してしまうという認識はありますか。環境大臣政務官。
○大臣政務官(勝俣孝明君) 石綿による健康被害については、石綿への暴露から発症まで潜伏期間が長いこと、広範な分野で石綿が利用されてきたことから、個々の健康被害の原因者を特定することが極めて困難となっております。加えて、中皮腫や肺がんは重篤な疾病であり、発症から一、二年で死亡するケースが少なくありません。
 環境省としましては、こうした石綿による健康被害の特殊性に鑑み、平成十八年に創設された石綿健康被害救済制度の安定的かつ着実な運営により、石綿健康被害の迅速な救済に更に促進してまいりたいというふうに考えております。
○仁比聡平君 厚労大臣も被害者の声を直接お聞きになった経験がおありかもしれませんし、是非聞いていただきたいと思うんですが、ある原告団長は、皆命を削って裁判を闘っている、こんなに苦しい裁判をしなくても救済できるようにしてほしいと、そう声を上げておられます。
 実際、先ほど環境大臣政務官から御紹介のあった環境省の審議会の答申を、八枚目の資料を配りましたが、このような重篤な疾病を発症するかもしれないことは一般に知られておらず、知らないままに暴露し、自らに非がないにもかかわらず、何ら補償を受けられないまま亡くなられるという状況にあることから、民事責任等を離れて迅速な救済を図るべき特殊性が見られるというので、いわゆる石綿救済法が制定されるに至っているわけですね。
 これ、厚労大臣、裁判で国と企業の民事責任を求めているのは労災認定を受けた方なんです。労災認定までに大変なハードルを越えていかなければならないんですね。ちゃんと診てくれるお医者さんにたどり着かない、労災をなかなか認めてくれない、何年も掛かると。その上に、更に十年以上の裁判を闘って、十たび国の責任は断罪をされているのに、救済されずに次々と亡くなっていくと。これ本当にむごい仕打ちだとは思われませんか。
○国務大臣(根本匠君) 国は、今も環境省の方から話がありましたが、住民に対する石綿健康被害救済制度、そして私の方の厚生労働省では労災保険による補償制度によって救済を行ってきております。
 引き続いて現行の救済制度の実施にしっかりと取り組んでいきたいと思います。
○仁比聡平君 それでは救済がされない、被害者が置き去りにされるなら根絶はできない、国と企業の責任を明確にして完全救済を図るというのが今政府がやらなければならない責任ですよ。断罪された高裁判決に対して最高裁に上告をして、その判決を待つなんというようなことをやっては駄目だということが、次のページに、建設アスベスト訴訟の全国連絡会のリーフレットをお配りしていますけれども、NHKの「時論公論」で、アスベストの健康被害の場合は急速に症状が悪化して亡くなる人もいます、行政がより迅速に救済を行う方が望ましいのではないでしょうかと。これが世論でしょう。
 さらに、次のページに、平成二十五年十二月十七日の東京の府中市議会が総理大臣宛てに出した早期救済・解決を求める意見書、それから今年の三月十九日に江東区議会議長の名前での意見書、それぞれお手元に届けていますが、この間、京都府下では、府議会を始めとして全市町村議会でこの同趣旨の意見書が決議されているんですよ。本当にすごいことだと思いますよね。埼玉では四十二、東京二十四、千葉二十三、神奈川十六、そして福岡では四十二自治体の議会が同様の意見書を上げています。
 つまり、これまでの労災や石綿救済法では解決ができない、その事態がもう国民みんなに共有されているわけです。だからこそ、もう今日説明する時間がありませんが、運動が求めている裁判によらずに完全救済を図ることのできる基金制度を実現をするために、厚労大臣やそれから国土交通省、環境省、みんながイニシアチブを是非とも発揮していただきたいということを強く求めて、質問を終わります。