○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
外国人労働者受入れ問題についてお尋ねをいたしますが、失踪実習生の実態調査とその総括、そして、権利回復ができないまま技能実習生からの移行である特定技能一による四月からの受入れ拡大はあり得ないと繰り返し申し上げてまいりました。ところが、政府は、三月十二日の法務委員会で、PT調査の内容も昨年下半期の失踪実習生の数も三月末まで明らかにできないと、九割はうまくいっているという大臣の認識も変わらないなどと言って押し通そうとしておられるわけですね。政府のそうした硬直した姿勢の下で、現場では実習生への深刻な権利侵害が続いております。
そこで、まず、長野県諏訪市、上伊那郡にある、Kと今日はイニシャルで申し上げておきますが、K協同組合に関わる問題についてお尋ねをいたします。
資料を、法人登記簿をお配りをいたしましたけれども、この協同組合が監理団体として技能実習生を受け入れている有限会社で、とんでもない権利侵害があっております。まずは社長のパワハラですね。なぜか社長の自宅に実習生が住まわされている。その実習生が激しい声でどなられ続けている録音がありまして、私も聞きました。出ていけ、もう要らない、おまえとは住みたくない、出ていけ、おまえら全部やり直せ、どれだけ高いと思っているんだと、ひどい有様なんですが、何を全部やり直せと言っているかというと、これ、ペットの餌やりや掃除なんですね。
この有限会社は金属加工の会社で、実習生の作業はフライス盤の加工のはずです。ところが、社長の趣味でペットの通信販売を行っている。ホームページには、経営者が趣味を兼ねて、鳥だけではなく小動物や魚、爬虫類、餌、器具を販売しております、趣味を共にできる方をお待ちしておりますとありますけれども、それで、金属加工の実習生たちが早朝、それから夜遅くに鳥の世話をする、夜は社長の家の掃除や餌やりをさせられてきた、休日もそういうことがある。それが気に入らないといって余りにもどなりつけるというので、これ逃げ出してしまったわけです。
これ、まず法務省、金属加工とペット飼育、これおよそ実習計画違反だと思いますが、いかがですか。

○政府参考人(佐々木聖子君) 個別の事案につきましては、プライバシーの保護及び今後の調査への影響の観点からお答えすることは差し控えさせていただきますが、一般論として申し上げますと、受入れ企業が技能実習生に対して技能実習計画とは異なる作業を行わせていた場合、技能実習法違反となり、事案の内容に応じまして、改善を求める勧告、指導、改善命令のほか、技能実習計画の認定の取消しを行うことになります。
また、その他の法令違反行為が認められた場合につきましても同様に、事案の内容に応じて、改善を求める勧告、指導等の必要な措置を講ずることとなります。

○仁比聡平君 その、そうした違法の下で権利侵害を受けてきた実習生が逃げ出して、先々週、技能実習機構に相談をし、先週の月曜日、申告をいたしております。
その中で、取り組まれるんだろうと思いますけれども、この登記簿にある監理団体、この協同組合の、名前は伏せてありますけれども、代表理事、この人物と、それから今申し上げている有限会社の社長というのは、これ同一人物なんですね。全くの一体。これ、適正な監理などあり得ない。
御丁寧にも、このK協同組合の、これ入国して最初一か月の研修というのがありますけれども、講習というのがありますが、これの研修センターというのはペットショップの隣にあって、その期間も餌やりをさせられているというような実態にあるんですが、これ、適正な監理などあり得ないのではありませんか。

○政府参考人(佐々木聖子君) 事案につきましては、一般論で申し上げますと、適切な調査をした上で、技能実習法等入管法令に沿って適切な対応をいたします。

○仁比聡平君 いや、適切な監理なんてあり得ないわけですよ。
私、この相談があっている実習生たちの在留カードを拝見をして、まだ二十一歳、あるいは二十代のベトナムの若い女性たちですよね。本当につらいですけれども、そのうちお一人は、昨年の七月の末上陸許可を受けた一年目の実習生、つまり技能実習一号というんですが、政府・与党がしきりに、これによって適正化していくんだ、あるいはされているんだと言っている技能実習適正化法の下で入国をしているわけです。監理団体は、つまりこの協同組合はその下で許可を受けているわけですよ、入管の。あっ、入管のというか技能実習機構と、それから入管あるいは厚労の。
これ、何でこんなひどい組合が監理団体として許可され、実習計画が認定され、実習に至ってしまっているんですか。

○政府参考人(佐々木聖子君) それぞれの場で調査等を尽くしておりますけれども、入国後、事後的に実地検査などをしたときに問題が発生をしましたら、技能実習機構、それから情報提供を受けた厚労省、それから入管も含めて必要な対応をし、最終的には認定の取消し等々に至るという手順で行ってはいます。

○仁比聡平君 局長が言っているのは手順の問題なのであって、それはそういう仕組みですよね。けれども、こうしたひどい権利侵害が問題になってきて、これを適正化する、そのために監理団体が監理を行うんだというのが皆さんがつくってきた仕組みじゃありませんか。それが機能していないでしょうと。監理団体を幾ら許可制にしたと胸を張ってみたところで、現にこういう現実があるじゃないですか。そうした不正を排除することができるんですかと。現にできていないじゃないですか。そして、事後的に正すって、それはそういうことありますよ。
だけれども、先々週もう相談しているでしょう。一週間前には申告しているじゃないですか。けれども、残っている実習生がいます。その実習生たちや、それからこのK協同組合が受け入れているほかの会社に実習している人たちが掃除をさせられているんですよ、今日も。この有限会社には十二人の実習生がいたそうですが、四人がそうした中で逃げざるを得なくなったという。
私は、ちょっと大臣先ほども手挙げられたけれども、伺いたいのは、この実習生たちは、今労働組合につながって実習機構も相談に乗ってくれていると、申告も受け付けてくれているという形になっていますから、これはまだ法務省も失踪者とは言わないんだろうと思うんだけれども、そうした支援にたどり着かなかったら新たな失踪者が生み出されていくということになるでしょう。この有限会社でも、十二人の実習生のうち四人が逃げざるを得なくなったというんですね。
不適正な実習によって実習が継続できないという相談や申告がされたときは、直ちに調査を遂げて、残る期間、別の適正な実習先につなげていくという仕事。それからもう一つは、その間、それ、確かに調査だとか不正認定だとか次の実習先探すって、一定の期間が必要なんですよ。その期間、安心して生活できるシェルターを保障することが重要だと、大臣、思いませんか。

○国務大臣(山下貴司君) まず、幾つか御質問がありましたので。まず、いや、これはもう個別のお話についてはちょっとお答えを差し控えさせていただきますが、先ほど申し上げたように、新法の下で、まず事前の許可申請であるとか認定において適合性についてしっかり審査をさせていただく。その許可の後、仮にそういった不正不当な事実が分かれば、これはそういうことが把握すべく外国人技能実習機構が定期的に又は事案に応じて臨時に現場に赴いて、不適正な行為や取消し事由に該当する行為がないか否かを確認して、相談、申告を受け付ける、不適正なところは排除すると、場合によってはですね、取消しということで。そういった仕組みをつくっているわけでございますから、まずはこの仕組みの適切な運用に基づいてやらせていただきたいと考えております。
そして、技能実習の継続が困難となった場合に速やかに調査を行うということについては、これは御指摘のとおりでございまして、継続が困難となった場合には監理団体等は技能実習生の転籍を支援しなければならないということになっております。この監理団体自身がそういった支援をしていない場合、これについては、これはもう外国人技能実習機構において、技能実習生本人の実習継続意思などを確認した上で、技能実習の継続に向けて新たにその監理を行うこととなり得る監理団体の情報を提供するという支援を行っておるところでございます。
そして、三点目のシェルター等でございますが、シェルターというのがどういう機能を持つかということについてはいろいろ中身の問題がございますが、法務省では、人身取引被害者や難民認定申請中の者など、保護するべき外国人に対しては民間の支援者等と協力してシェルターを確保するなどの取組を行っております。技能実習生につきましては、シェルターというか、実習先の変更の支援を行うだけではなくて、変更がなされる間の保護を図る観点から、全国規模で、これは一時宿泊先と呼んでおりますが、その提供の支援を行っているということでございます。というのが、今現在技能実習生について行っているところでございます。

○仁比聡平君 大臣も私の提起している課題が重要であるということはお認めになっておられるんだと思うんですよ。その構えやよしなんですけれども、現場で一体どうですかと。最後におっしゃった一時宿泊だって、ホテル借りて泊まってもらうということなんですけどね、必要な数あるいは日数、できるわけもないですよ、予算。だから、実際は、労働組合だとかNPOの保護なしには権利の申告などというのはできないことが実際なんですよね。それも含めて、入管それから技能実習機構の体制を抜本的に強化をしなければ、幾ら速やかにやると言ったところで、先々週この人相談して、今日まで解決していませんから。そうすると、収入もない、一体どうするんだということになっていくじゃないですか。それが今の実習生の実情なんですよ。
ちょっと時間がそんなにあるわけじゃないので、本人からの手紙を全部紹介するわけにはいきませんけれども、あんまりにも罵られるので、OTIT、実習機構のことですね、OTITに訴えると言ったら、帰国させると脅される。一年間電話を使うこともできませんでした。何もしていないのに怒られてばかりで、私も腹が立ち、ですから書類を持って逃げました。これ以上いたら、電話を取り上げられ、誰にも助けを求められなくなるのが怖いと考えたと。なるほどそのとおりだなと思いました。私はもちろん怖いです。でも、帰国させられるか逃げるかなら、逃げますと言っているんですね。なぜなら、日本に来るまでにたくさんのお金が掛かっています。借金がたくさんあります。今帰国したら、借金の元金が残ったまま、二年間何もできなかったことになります。どうか私を助けてくださいというのが、この労働組合を通じて機構に訴えられている手紙なんですよ。
ベトナムの在日大使館が、ベトナム青年がだまされないようにと真剣に呼びかけているという件は秋の国会で御紹介をしましたけれども、こうした実態が後を絶たないからなんですよね。
外務省にお尋ねをしたいと思いますが、そうした中でどう取り組んでおられるか。
昨年十月の十三日に、ベトナム中北部のハティン省で在ベトナム大使館後援の技能実習や留学に関するセミナーが開かれたと。ここで、一等書記官が多数の関係者を前に、技能実習生の失踪者数、刑法犯の検挙件数はワースト一位です、ベトナムの若者は夢や希望を抱いて訪日しており、決して最初から犯罪をしようと思って日本に行っているのではなく、犯罪をせざるを得ない状況に追い込まれています、ベトナム、そして日本において、悪徳なブローカー、業者、企業がばっこしており、ベトナムの若者を食い物にしていますと、日本の外交官がベトナムの青年たちや送り出し機関に訴えているんですね。
こうした報道なんですけれども、どういう取組なんでしょうか。

○政府参考人(高橋克彦君) お答えいたします。
今委員御指摘のとおり、ベトナム人留学生や技能実習生による犯罪が発生をしておりまして、この背景には、ベトナム人から保証金や違約金を徴収する悪徳ブローカーの介在が指摘をされております。
技能実習、それから留学生に関していろいろな覚書を結びまして悪質な仲介業者の排除に努めておりますけれども、一方におきまして、ベトナム人の技能実習や留学生による犯罪等の問題については、日本国内のみならずベトナム双方において適切な対策を講じることが必要と認識をしておりまして、在ベトナム大使館の取組はこのような認識の下で行ったものでございます。
昨年十二月に策定された総合的対応策においても、外国人材の受入れのための悪質なブローカー等の排除、徹底して行うことが明記されておりますので、外務省としては、在ベトナム大使館と協力し、また国内関係機関、ベトナム政府と一緒に情報共有を行いながら、不適切な仲介業者からの留学ビザ申請の受入れ停止など、悪質なブローカー排除に向けて引き続き取り組んでまいりたいと考えております。

○仁比聡平君 私、まず、遅まきながら真剣に取り組もうとする変化を私は感じておりまして、そこはまず評価をしたいと思います。
ただ、ベトナム青年の自己責任であるかのように呼びかけるだけでは駄目なんですよね。今、ビザの関係など外務省でできることについてはお話しになったけれども、全体のこの実習生の受入れ、これは出稼ぎ留学生だったり、これからの特定技能一の関係にも密接に関わってくる問題だと思うんですけれども、この外国人労働者受入れの不適正に対して、情報を共有するという立場だけで問題は解決しないんじゃないんですかと思うんですよ。
前回、三月十二日の委員会で入管局長は、私が送り出し機関は調査したのかと、失踪実習生に関わる、と問うたのに対して、外国に所在するために直接の調査というのは困難というふうに御答弁になったんですね。けれども、この送り出し機関は我が方の法制度でだってちゃんと把握をされているわけです。
ちょっと時間がありませんが、端的にお答えいただければ。
まず、二国間取決めに基づいて我が国が不正情報を通報、共有するということをやっています。その送り出し機関について、ベトナム政府が調査、指導、認定の取消しと、これが取決めに書かれていることですけれども、これやったのは何件、どんなものがあるんですか。

○政府参考人(佐々木聖子君) 本年の三月十四日現在、ベトナムとの二国間取決めの枠組みで我が国からベトナム側に通報した件数については約三十件です。通報事案の主な内容は保証金や不当な金銭の支払の要求などに係るものでありますが、その後のベトナム側の対応等につきましては、個別案件になりますので詳細についてお答えは差し控えますけれども、通報後も二国間取決めに基づく定期協議の場で必要な情報共有を行うなど両当局が連携をしておりまして、ベトナム側による調査等の必要な対応が取られているものと承知をしています。

○仁比聡平君 その二国間の覚書によると、ベトナムの認定送り出し機関の取消しの情報を日本側が受領した場合には、当該情報を日本において公表することとなっているんですね。今答弁できないということは、つまり取り消された例はないという、そういう理解をするほかないと思うんですが、そうですか。

○政府参考人(佐々木聖子君) 今のところ、そういう状況です。

○仁比聡平君 だから、取り消されていないんですよ。やっているんですよ、今だって。
そういう下で、次の資料は、私は、これ、外国人受入れに関わる団体というのは、職業安定法に基づく職業紹介の事業の認可などを受けなければなりません。その下で、この一件だけ、この保証金を取って、言うことを聞かないと返還されないぞと思わせて支配力を行使して、禁じられている労働者供給事業を行ったとして処分された例として、大阪労働局のこの例を挙げました。
これは技能実習生ではないんですよ、技能という労働者だと思いますけれども。監理団体だとか送り出し機関も、こうやって職安法違反でこれ処分すべきじゃないですか。厚生労働省、いかがですか。

○政府参考人(田畑一雄君) 職業安定法第四十四条とか、職業安定法に違反する疑いがある事案を把握した場合には調査を行いまして、法違反があった際にはその是正指導を行うとともに、悪質な法違反に対しましては行政処分を行うなど厳正に対処しているところでございますし、また今後もそういった姿勢で臨んでまいりたいと思っております。

○仁比聡平君 厳正に対処すると言うけれども、技能実習制度の監理団体や送り出し機関がこのようにして処分をされた例はないんですよ。これ、二国間とか多国間だとかいって調べられないなんて言っている場合ではないと私は思います。二国間取決めをこれまで積み重ねてきたと、その経験も踏まえて、この送り出し機関や監理団体が少なくとも不正な高額手数料を徴収したような場合には厳正に処分されるように、法的拘束力を持った二国間協定にもう発展をさせるときだと思います。
本来、大臣とここで議論をさせていただきたいと思っていましたけれども、時間が参りましたので、それはまた次回に譲らさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。