2018年11月15日法務委員会配付資料

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

外国人労働者問題についてお尋ねをいたします。

政府は、九〇年代以来、なし崩しに外国人労働者を単純労働力の受入れとして、深刻な人権侵害を引き起こしてきました。ブラジル、ペルー系など多くの日系人が二〇〇八年から派遣切りで雇用調整弁にされ、母国に追い返されました。九〇年代の研修生に始まって多くの技能実習生が出稼ぎ労働、人材ビジネスの対象とされ、そこにブローカーが暗躍して若者を食い物にしているということを私は繰り返しこの委員会でただしてきたわけです。

その技能実習生とともに近年急増しているのが留学生です。ちょっと質問の順番変えますが、お配りした資料の一枚目、二枚目は、外国人留学生数の推移、そして都道府県別の留学生数の政府提出資料ですけれども、御覧いただくとおり、留学生三十万人計画、これが策定されたのが二〇〇八年ですけれども、この留学生の数は今の統計になった二〇一一年に十六万三千六百九十七人から二〇一七年の二十六万七千四十二人まで、六年間で十万三千人以上急増するという、うなぎ登りです。水色の折れ線グラフが日本語教育機関に受け入れられている留学生ですけれども、二万五千六百二十二人から七万八千六百五十八人ということで、五万三千人規模の急増なんですね。

三枚目の資料は、厚生労働省の外国人労働者数の推移ですけれども、皆さん御存じのとおり、百二十八万人のうち、二〇・二%を占める技能実習生と並んで、二三・二%の資格外活動、このほとんどが外国人留学生だと私は思います。

そこで、大臣、こうした留学生の資格外活動についてどのような御認識をお持ちでしょうか。

○国務大臣(山下貴司君) これまでも留学生については資格外活動や日本語教育機関の問題等が指摘されており、また、骨太の方針二〇一八についても、日本語教育機関の充実あるいは留学生の適正な在留のための環境整備が盛り込まれてきているものでございます。ただ、やはりこの問題は累次の機会で検討されてきたものであることは委員御指摘のとおりでございます。

法務省においては、例えば資格外活動違反を防止するために、教育機関における入学者選考及び在籍管理の徹底を図るなどの対策を行っているほか、問題である日本語教育機関については調査を行い、指導するなどの対策を取っております。

その上で、現在、留学生を含む外国人一般の受入れ環境整備を行うため、外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策を検討するに当たり、日本語教育機関の質の向上を含む各種取組の拡充が議論されております。

これの総合的対応策については、年内の取りまとめに向けて具体的な検討を進めているところでございます。

○仁比聡平君 結局、現場が現行制度の矛盾に四苦八苦対応してきたということをおっしゃっているだけなんですよ。問われているのは政治の責任です。年内に環境整備あるいは議論するなんて言うけれども、年内って、もう十一月の半ばですよ。

この留学生が学費や生活費のためにアルバイトを認められるのは、これ当然のことです。ですけれども、留学生にも技能実習生同様の実態があるのではないのか。近年、その多くが出稼ぎ化し、日本語学校、専門学校が人材ビジネス化しているという実態があるのではないのかというこの問題について今日ただしていきたいと思うんですけれども。

西日本新聞社が、昨年、「新移民時代」という、出版をされました。私、現場を丹念に取材された本当に優れたルポだというふうに思うんですけれども、この中に、福岡県のJR吉塚駅という博多駅からすぐ隣の、この駅の、夕方、留学生が二百人余りこれ集合してきて、業者が用意したバスに八台、これで運ばれていくと。これ、行き先はコンビニ弁当の製造を請け負う工場なんです。おかず、漬物、そして御飯を盛り付けるベルトコンベヤーが流れるわけですが、そのラインに並ぶ四十人というのは全員ネパール人、約八百名の従業員のうち六割が外国人労働者で、ネパール語のバイト規則もあると、そうしたレポートなんですけれども、農水省、こうした実態を認識しておられますか。

○政府参考人(渡邊厚夫君) お答え申し上げます。

今委員御指摘の当該事例につきましては認識しておりません。

○仁比聡平君 現実に認識していないと平気で答弁というか、ちょっと悔しそうにお答えですけれども、何しろコンビニの弁当を製造する工場ですから。熊本の大地震のときには、突貫作業でこのネパール人のみんなが頑張ったんだということも、ここにルポがあるわけですけれども。それを今度の十四業種でいいますと、飲食料品製造業だとか外食業かもしれないという話がありましたけれども、昨日その受入れの上限なんていうような数字も出されたわけですが、その担当局として認識していないということなんでしょう。

○政府参考人(渡邊厚夫君) お答え申し上げます。

まさに弁当製造業を始めとする食料品製造業につきましては、相当な人手不足という状況は認識しておりますけれども、あくまで今委員御指摘のこの福岡の事例につきましては承知をしておりませんでしたということでございます。

○仁比聡平君 人手不足はよく分かっているわけですよ。それはそうなんです。けれども、実態を認識していないと。精査する、これが上限だと言ってやっと出した数字、それ何を一体根拠に積算したのか、これは全く根拠ないんじゃないんですか。

そうした下で、経済産業省に、次の資料ですが、コンビニエンスストアの店舗数の推移の数字をいただきました。二〇〇八年の四万四千三百九十一店舗から一六年は五万七千八百十八店舗、つまり一万三千店舗以上増えるという右肩上がりで、これ競争も加熱しているというのは皆さん御存じのとおりですよね。

その下で、コンビニ店員に留学生アルバイトが激増していると。これ、東京だけではなく福岡だとか地方でも同じ状況なんですが、これがどれだけの留学生によって支えられているのか。コンビニ店員の中に占める留学生の数だとか、その賃金、労働条件だとか、その実態は把握しておられますか。

○政府参考人(江崎禎英君) お答えいたします。

日本フランチャイズチェーン協会、これコンビニエンスストアの業界団体でございますが、これによりますと、本年八月末現在でございますが、約五万五千人の外国人が大手コンビニエンスストア四社の店舗、これは全体の九二%を占めることでございますけれども、就労しておりまして、その大半が留学生と認識しております。

ちなみに、大手コンビニエンスストア四社における従業員全体に占める外国人労働者の比率は約七%でございます。

以上です。

○仁比聡平君 昨日の夜までその数字がなかったんですけれども、一生懸命徹夜で数字を整えられたようですが。今お話しのように、外国人労働者が五万五千人ほど働いていて、その大半が留学生だという御答弁なんですね。

この留学生たちがどんな教育機関で勉強するということになっていて、その資格外活動の実態というのが、賃金だとか、あるいはいわゆるシフトですね、これが留学生は二十八時間までしか週仕事しちゃならぬということになっているわけですけれども、あるいは、そのダブルワーク、トリプルワークということで夜中に仕事をするということになると、日本語学校、朝九時ぐらいから始まるんですよ、これ行っても全然勉強にならないと。

そういう実態、経産省は把握していますか。

○政府参考人(江崎禎英君) お答えをいたします。

コンビニエンスストアにおきましては、最低賃金法や労働基準法などの関連法理にのっとりまして、アルバイトに限らず、あらゆる労働者の賃金、労働時間を管理しております。システム化もしつつ管理しております。会社によりましては、その時間がオーバーした場合についてはアラートが鳴る、本社及び本部に連絡を取ると、組織もございます。また、雇用対策法に基づきまして、外国人労働者の受入れ及び離職の状況については厚生労働大臣に届け出ているものと承知しております。

○仁比聡平君 何をそんな机の上の話をしているのかと。実際、御存じのように、コンビニの現場の店舗、これはフランチャイズのシステムの中でオーナーは大変な思いしているわけでしょう。人手不足、皆さんよく御存じでしょう。だから、そのオーナーが身を削って死ぬような思いしていると。そういう状況なんだから、最賃以上なんてそんな出せるわけないじゃないですか。だから、今、日本人学生がコンビニの、日本人学生のバイト先としてコンビニというのは、これほとんどなくなってきている。そういうブラックな現場になってしまっているというのが構造的な問題なんですよ。

ところが、今回の法案、政府の法案では、今の十四業種に含まれる含まれないにかかわらず、後は政府の判断だけで受け入れ得るということになるわけです。

もう一問聞きますけれども、このルポの中で、その八台のバスというのは大手運送会社の仕分作業の拠点にも行くわけです。ここの貨物量というのは夜間が特に多くて、日付を越えた勤務時間帯は外国人労働者が八割を占めると、ネパール人が最も多くて、全員が留学生、リーダーは日本人パートにも指示を出すということが報告をされているんですが、国土交通省、こうした実態は御存じですか。

○政府参考人(福田守雄君) 外国人留学生につきましては、出入国管理及び難民認定法に基づき、一定の範囲内で就業が認められる制度となっていることと承知しております。こうした制度の下で、トラック運送事業者の中には、荷物の仕分作業等におきまして外国人留学生が就業しているところもあると承知しております。

○仁比聡平君 いや、それは就業していることがあるのは、それは承知しているでしょう。そんな当たり前のことを聞いているんじゃないんですよ。

私はそこでバイトしちゃいかぬと言っているんじゃないんですよ。それは、制度上、バイトをすることあるでしょう。だけれども、低賃金で過酷な現場。冷蔵庫だとか白物家電なんかを、重さ何十キロもあるのを一人でもう何回も運ばなきゃいけないという本当に大変な現場だということなんだけれども、そこをネパール人を始めとした外国人留学生が支えているということについての認識が、つまり、今の御答弁、ないということなんですよね。

それは、こうした人手不足の現場、留学生のアルバイト、これ、このまま支えさせるということで当然だと、国交省、そういう認識ですか。

○政府参考人(福田守雄君) 委員の御指摘のように、業界におきまして人手不足の状況があるというふうに認識しておりまして、そういう中で、先ほど御答弁申し上げましたように、制度の下で荷物の仕分作業等について就業していただいている実態があるというふうに承知しております。

○仁比聡平君 結局、この今申し上げた現場は、人手不足だけれども十四業種には入らないんですよ。だけれども、このままでいいはずがないでしょう。そこをどうするのかというその根本的な解決というのは、皆さん、政府・与党、全然示しておられない。問題意識もないんじゃないのかと。

そうした下で、資料のちょっと一個飛ばして六枚目なんですが、警察庁に出していただきました平成二十五年から平成二十九年入管法違反検挙件数と人員の資料なんですが、これ、検挙件数はこの五年間で合計一万九千九百十九件に上ります。うち二一・三%に当たる四千二百三十六件が留学生関連。そして、検挙人員では一万六千八百七十一件、二〇・一%の三千三百八十八人が留学生なんですね。この五年、ほぼ二割、相当の数で推移をしているわけです。

私は、これと併せて警察庁に、日本語学校などの受入れ機関、それからその留学生の出入国に関与した者の違反件数というのはどうなっているかということをお尋ねしたんですが、下の備考のところにあるように、そうした統計はないのだというのが現時点の答えなんですね。

そこで、国会図書館に調べていただきました。そうすると、報道された重大悪質事案だけでも、学校が、つまり日本語教育機関が外国人留学生の不法な資格外活動を助長し、逮捕、送検されたという事例だけで、二〇一一年以降九件あるんですよ。

その手口、一つちょっと紹介をしますと、二〇一七年に大問題になった栃木県の日本語学校、東日本国際アカデミーという事件があります。これ、ベトナム人留学生を不法就労させたということで入管法の不法就労助長罪に問われた事件ですけれども、これ、その日本語学校の理事長が人材派遣会社をやっているわけですね。自分の日本語学校に留学してきた留学生のパスポートを没収し、借り上げたアパートに住まわせて、部下に派遣先への送迎役を担わせて、派遣先、大体倉庫業というところが主要な不法就労の現場になったみたいですけれども、そこの給料、これの四割を高額の家賃や光熱費名目で天引きして、で、留学生にあとを、余りを戻すという事件なんですね。

これ警察庁にお尋ねしますが、こういう手口によって留学生を不法就労に巻き込み、夢も壊してしまうという事案あるいはその動向、これをどう見ておられるでしょうか。

○政府参考人(小島裕史君) お答えいたします。

ただいま委員が御指摘ございました、平成二十七年九月から同年十月までの間に、日本語学校の理事長を務める傍ら労働者派遣会社を経営している者が、同校の留学生を雇用して倉庫へ作業員として派遣をし、不法就労活動をさせたことから、不法就労助長に係る入管法違反で検挙したというようなものでございます。

○仁比聡平君 いや、つまり、そういう事件がこの統計の数千件の中にあるんでしょう。どうですか。

○政府参考人(小島裕史君) この中にございます。

○仁比聡平君 と言いながら、結局その悪質性をどう見て、どうやって正していくのか。そこの認識さえ今語れないというのが政府の実態なんですよ。

法務省に提出いただいた一つ前の資料、五枚目の資料にですね、御覧いただきたいと思うんですが、申し上げてきた日本語教育機関が、これがどんな設置形態で行われているのかということです。

これ、学校教育法に基づく専修学校とか、それから各種学校というのは一部で、その他が七〇・三%なんですね。下の表、御覧いただくとおり、そのうち株式会社立というのが、専修、各種も合わせて、まあ一、三ありますから、その他のところは三百六十五、合わせて三百六十九校が株式会社、つまり営利目的です。

このうち、先ほどの栃木の件もそうですが、多くのところが職業紹介だとか人材派遣業の許可を受けているのではないか、それが大方なのではないか。厚労省、そうした実態、つまり直近の許可件数というのは、これどうなっていますか。

○政府参考人(田畑一雄君) 御指摘の株式会社である日本語教育機関が労働者派遣事業を行う場合は労働者派遣法に基づく許可、職業紹介事業を行う場合には職業安定法に基づく許可をそれぞれ取得しなければならないこととなっておりますが、お尋ねの許可を取得している日本語教育機関の数につきましては、許可を取得した事業者が日本語教育機関であるかどうかを網羅的に把握しておらず、厚労省としては承知しておりません。

○仁比聡平君 これだけ事件が起こっているのにそういう統計はないんだというわけです。

文科省にお尋ねをしますと、この次の資料、外国人留学生の適切な受入れ及び在籍管理等についての通知というのがありますが、これはいわゆる学校に対してちゃんと在籍管理をやってねということをお願いをしているものであって、それ以外の学校に対しては通知さえ出していないと、そういうことですね。

○政府参考人(森晃憲君) 留学生の在籍管理の徹底を求める通知については、学校教育法で定められている大学や専修学校、各種学校に対しては文部科学省から発出をしておりますけれども、それ以外の日本語教育機関に対しては発出しておりません。

○仁比聡平君 日本語学校、専門学校といって来るんでしょう。そうやって看板あるじゃないですか。だけれども、文科省は全く知らないと言っているんですよ。こんな、政府、各省、こんな無責任なやり方ないんじゃないんですか。

法務省は、不法就労防止キャンペーンというのをやっています。次に資料がありますけれども、これは御覧のとおり事業者向けなんですよね。二枚目にあるように、その在留カードの資格外活動許可欄というのをちゃんと確認してくださいね、二十八時間までしか駄目ですよ、風俗営業などの従事は駄目ですよと書いてあることをちゃんと見てくださいねと雇用主に言っているだけであって、私、外国人労働者は一体どうされているのかと思うんです。

留学生には、自分たちはどんなふうに働いていいのか、あるいは働いては駄目なのか周知さえされていません。何をしてはならないとか、あるいは、意に沿わずに申し上げているような低賃金、長時間、そうした労働を強いられて耐えられなくなったと。パワハラやメンタル、パワハラを受けメンタルヘルスを患ったというようなときに、一体留学生は自らの権利を保護するためにどうすればいいんですか。

直方にあった日本語学校、JAPAN国際教育学院というところは、何しろその学校の校門にバスを着けて、そこから工場に送り込むわけです。学校が人材派遣業者になって自己の支配下に置いて不法就労させるというような留学生ビジネスから留学生を守ってこなかったというのがこれまでの政府なんじゃないんですか。

大臣いかがです。

○国務大臣(山下貴司君) まず、御質問の資格外活動を行う留学生が劣悪な環境での就労を強制されたりした、パワハラを受けたりした場合についての留学生からの相談につきましては、今、各都道府県に所在する地方入国管理局等の留学審査担当部門において受け付けているほか、定住外国人が集住する地域、例えば浜松市やさいたま市、新宿区などがございますが、の地方公共団体などと連携して、生活に関する相談や情報提供を行うワンストップ型の相談センターを開設し、多言語での対応を行っており、入国管理局ホームページ等において多言語での案内をしているところでございます。こういった窓口については、引き続き、この連絡先が記載されたパンフレットを活用し周知してまいりたいと思っております。

また、今、外国人材の受入れ・共生のための総合対応策の検討のための閣僚会議、そしてまた、それを受けて法務省はその対策の検討会をしておりますけれども、既存の相談センターの運用の在り方や地方公共団体が開設している類似の相談窓口の協働や連携について検討をしておるところでございまして、それらを踏まえて総合的対応策に反映させていきたいというふうに考えております。

○仁比聡平君 いや、今大臣が述べている項目というのは、これまでも共生だと言ってやられてきたことなんですよ。ところが、その下でこういう現実が起こっているんではないかということなんですね。時間が迫ってきましたけれども、そうした下で自殺未遂あるいは失踪という事態が起こっている。

西日本新聞社が各県警に取材をした中で、各警察署への行方不明の届けというのがあって、二〇一五年に九州七県で少なくとも四百八十人を超す留学生や実習生が学校や職場から行方不明になっていたと、八十人程度が留学生と見られるということを明らかにしています。私はとても大事なことだと思うんですね。ところが、警察庁は、それは把握しておりませんと今言っています。こうした下で、低賃金や劣悪な労働環境、その下で権利侵害、失踪、行方不明に至っている、そうした実態を把握もせずに今回の新たな受入れなどということを推し進めるなんていうのはもってのほかであって、白紙に戻して出直すべきだと思います。

最後の資料を御紹介だけしておきますけれども、法務省が時間掛けて作っていただいたんだと思います。在留資格別難民認定申請数の推移です。これ、技能実習と並んで留学生のビザを持っている人が難民申請をする、これ平成二十六年から急増しているでしょう。

○委員長(横山信一君) 時間が過ぎておりますので、おまとめください。

○仁比聡平君 同じような出稼ぎ労働の実態があるのではないのか、人権侵害があるのではないのか、そのことを示しているんだと。そのことをしっかり認識して、私たち議論していく必要があるということを申し上げて、質問を終わります。