○仁比聡平君 私は、日本共産党を代表して、二〇一八年度一般会計予算外二案に対し、断固反対の討論を行います。

国民の怒りと野党六党の結束した追及の中、とうとう政府は、森友学園に国有地を異例の条件で貸し付け、ただ同然で売り払うことを決めた決裁文書を改ざんしていた事実を認めざるを得なくなりました。

公文書は、民主主義の根幹を支える国民の共有財産であり、現在と将来の国民のための歴史的事実の記録です。焦点の決裁文書は、本院の予算委員会が一年以上にわたって要求し続けてきたものです。改ざん文書を提出して本院を冒涜し、国政調査権をじゅうりんし、国会と行政府の信頼関係を破壊し、国民を欺いてきた罪は余りにも重い。国民主権と議会制民主主義を踏みにじった歴史的犯罪であり、内閣総辞職に値すると言うべきであります。

これほど重大な公文書改ざんを、誰が、誰の指示で、何の目的で行ったのか。その核心について、昨日の証人喚問で佐川前理財局長は全く答えようとしませんでした。訴追可能性を盾に、改ざんへの自らの関与については全く語らず、けれど、総理や夫人、官邸の指示や影響はなかったと、定かな根拠も示さずに断言し続ける。佐川証言には根本的な矛盾があります。与党議員の皆さんは、これで真相が明らかになったと国民に説明できるのでしょうか。

驚くべきことに、佐川氏は、決裁文書と正反対の国会答弁とその理由についても証言を拒絶をしました。政府が原資料である決裁文書を確認せず国会答弁を作るなど、およそ考えられません。なぜ政府は決裁文書と正反対の虚偽答弁を行い続けたのか。

佐川氏の国会答弁は、総理や大臣への野党議員の質問に、総理や大臣をかばう盾となって手を挙げ、時には後ろの職員に確認しながら行われてきました。その答弁を総理官邸や大臣官房と協議していなかったという言い逃れも、国民の納得を得られるものではありません。幕引きどころか、いよいよ疑惑は深まったと言うべきであります。

一体何を隠し通そうとしているのか。

安倍総理は、なぜこんなことが起きたのかと、まるで人ごとのように言いますが、そのたびに国民の不信は広がるばかりです。

そもそも、国有地取引の決裁文書になぜ安倍昭恵さんの名前が出てくるのか。それは総理夫人だからというのが政府の答弁です。いい土地ですから前に進めてくださいという発言の引用を始め、昭恵氏に関わる記述は、政府も大事なことを集約して書くと認めた特例承認を決裁するための経緯の箇所に書き込まれていました。

森友学園と交渉を重ね、身勝手な要求に口裏合わせまで行って満額回答の特別扱いを進める、そのターニングポイントに書き込まれていた昭恵氏に関わる記述、そして日本会議と安倍総理の関わりを示した説明文がごっそり削り取られていた。それは、この国有地処分が安倍総理夫妻が関わる案件であるという痕跡を消し去るためだったからではないのか。そこにはどんな力が働いているのか。

こうした決裁文書改ざんをめぐる真相を徹底して究明し、責任を明らかにすることは、国権の最高機関として国会に負託された重大な使命です。本院の重い責務を深く自覚し、国政調査権を徹底して行使し、昭恵夫人始め関係者の証人喚問を行い、国民の前に真相を明らかにしようではありませんか。

この問題の根本には、安倍政権による五年に及ぶ強権政治と民主主義との避け難い矛盾があります。

加計学園問題で渦中の人となった前川文科前事務次官の講演について、文科省が名古屋市教育委員会に行った異常な調査は、憲法が禁ずる教育への国家権力による不当な介入にほかなりません。そこに自民党議員の関与が明らかになったことは、盾突く者はどこまでも容赦なく攻撃する安倍政権の異様な体質の表れと言うべきです。

働かせ放題大改悪法案をめぐって、ずさんな調査に基づくデータを更に捏造し、裁量労働制の方が一般の労働者より労働時間が短いかのようにごまかそうとした安倍政権の責任は重大です。審議を通じて、その背景には、安倍内閣の二〇一四年日本再興戦略があることが浮き彫りになりました。高度プロフェッショナル制度を含め、政府は、過労死と長時間労働を広げる働き方改革一括法案の提出をきっぱり断念すべきであります。

アベノミクスの五年間で、大企業や富裕層の利益が大きく増える一方で、実質賃金は年額十六万円も低下し、家計消費は二十二万円も落ち込みました。全く足りない認可保育所、引き下げられる年金、高過ぎて払えない国保や介護保険料、取り上げられる介護サービス。国民の暮らしと地域経済は一層深刻の度合いを増しています。

ところが、本予算案は、賃金引上げ、投資促進を口実に、更に大企業に減税し、中間層を含むサラリーマンに増税を押し付けるものです。一層広がる格差を是正し、低所得世帯の大変な暮らしの応援こそ必要なのに、生活扶助基準の引下げを始め、社会保障関係費自然増の千三百億円削減によって、あらゆる分野で更なる給付減と負担増を招こうとしています。

高速道路に一・五兆円もの財投資金を十四年ぶりに投入し、国際コンテナ戦略港湾などの新規大型開発事業を優先し、リニア中央新幹線の建設を推し進めながら、文教予算は四年連続削減、中小企業、農業予算も連続削減です。この上、来年十月消費税一〇%への増税を強行し、更に格差を広げることは許されません。富裕層のための政治から、九九%の国民の暮らしを応援する経済政策への抜本的転換を強く求めるものです。

東電福島第一原発事故から七年、ふるさととなりわいを奪われた被害者の苦しみを忘れたかのように、本予算案が、原発再稼働や破綻した核燃料サイクルを推進するものとなっていることは重大です。原発即時ゼロの政治決断、野党が共同して提出した原発ゼロ法案の成立を強く求めるものです。

さらに、本予算案は、政府が安保法制の具体化を進める下で、際限のない大軍拡に踏み込んでいます。

安倍政権の下、軍事費は四年連続で過去最高を更新して五兆一千九百十一億円。イージス・アショア関連経費やオスプレイ、F35ステルス戦闘機調達など、有償軍事援助、FMSによる米国からの兵器調達は四千百二億円に上るとともに、次年度以降の後年度負担は、年間予算に匹敵する五兆七百六十八億円に膨れ上がっています。アメリカの兵器を買えというトランプ大統領追随の姿勢は断じて容認できません。

長距離巡航ミサイルの導入を決定し、「いずも」の空母への改修まで狙っていることは、これまで政府も憲法上認められないとしてきた敵基地攻撃能力の保有に踏み出すものにほかなりません。

沖縄や青森で相次ぐ米軍機事故は、米軍言いなりの政府の姿勢こそが、子供たち、住民の命を脅かす屈辱的な事態をもたらしていることを示しています。民意を踏みにじる辺野古新基地建設の中止、普天間基地の即時閉鎖、撤去、日米地位協定の抜本的改定を強く求めるものです。

さらに、政府が、米国の核軍備拡大戦略と言うべき核態勢の見直し、NPRを高く評価するとするだけでなく、国民の知らないところで核削減の妨害役を果たし、沖縄への核貯蔵庫や米軍との核の共有など、国是である非核三原則を踏みにじる外交を行っている重大疑惑が明らかになりました。日米軍事一体に戦争する国づくりをやめ、安保法制は廃止すべきであります。

噴き上がる国民の怒りに今や土台を揺さぶられながら、先日の自民党大会でもなお改憲への意欲を示す安倍総理の姿勢は、余りにも異常です。

日本共産党は、安倍政治を終わらせ、憲法が生きる政治を切り開く、市民と野党の共同の発展を心から呼びかけ、全力を尽くす決意を申し上げ、討論といたします。(拍手)