○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

森友学園との国有地の取引に関する財務省の決裁文書が改ざんされた上で国会に提出されたという前代未聞の重大疑惑が、とうとう事実であったということが明らかになりました。

この問題について、まず大臣の認識をお尋ねをしていきたいと思うんですけれども、そもそも公文書は民主主義の根幹を支える国民の共有財産です。そして、改ざんされた公文書は、一年前の国会で野党が強く提出を求め、与党もその必要を認めて、参議院予算委員会として政府に要求したものです。ところが、政府は国会に改ざん文書を提出し、国会と国民を一年以上にわたって欺き続けてきました。国民主権と議会制民主主義を踏みにじる歴史的犯罪と言うべきであり、弁明の余地はありません。私は内閣総辞職に値すると思いますが、上川法務大臣の御認識はいかがですか。

○国務大臣(上川陽子君) ただいま委員から御指摘の決裁文書に係る問題につきまして、現在、財務省において調査中であると承知をしております。

その上で申し上げるわけでございますが、法務大臣は内閣を代表してお答えすべき立場にはないということでございまして、私からの答えにつきましては差し控えさせていただきたいというふうに思います。

○仁比聡平君 一昨日、衆議院の法務委員会でそのような御答弁をされたのを聞いて、私はこれは情けない限りだと。だからあえて今日お尋ねをしているんです。

上川大臣、憲法六十六条に国会に対する内閣の連帯責任が重く定められているのは御存じのとおりですね。それは、総理ではないんだから内閣を代表する立場ではないというのはそうかもしれないが、財務省が調査中だからなどといって、所管が違うという問題ではないでしょう。政府が国会に改ざん資料を出したという前代未聞の事態であり、そこには検察庁法によって大臣御自身が指揮監督権限を持っている、その検察による捜査というのが大きく関わっているわけでしょう。

上川大臣自身が、この国会と政府の関係に関する民主政治の根幹を揺るがしているこの問題、国権の最高機関である国会の国政調査権をじゅうりんしているという極めて重大な問題についてどう認識しているのか、そのことは法務大臣としてのその所信が問われる問題ではありませんか。所管違いだから差し控えるという話は私は通用しないと思いますが、いかがですか。

○国務大臣(上川陽子君) 御指摘のただいま決裁文書の問題につきましては、現在、財務省におきまして調査中であるというふうに承知をしているところでございます。

その上で、私自身、法務大臣として申し上げるわけでございますが、内閣を代表してお答えをすべき立場にはないということでございまして、この答弁につきましては、先ほどの御質問でございますが、お答えは差し控えさせていただきたいと存じます。

その上で、様々な国政調査権の行使に関わることにつきましては、法令の許す範囲でできる限り協力すべきものというふうに考えているところでございます。

○仁比聡平君 そもそも、公文書の在り方について、これ、一昨日の衆議院での御答弁では、大臣御自身が私は初代公文書管理担当大臣でございますというお話もありました。

民主主義の根幹を支える公文書、将来の世代に歴史の事実を記録する公文書、これが改ざんされていたということについての認識をお答えになろうとしないと。これは極めて情けない限りだと重ねて申し上げておきたいと思います。

今大臣が法令の範囲内でというふうにおっしゃった国政調査権との関わりについて続けて伺いたいと思うんですけれども、この間、経過を見ますと、改ざん疑惑が発覚してなお、政府は検察による捜査を盾のようにして事を隠蔽しようとしてきたと言わざるを得ないと思うんですね。

そこで、今枝財務大臣政務官においでいただきました。財務省は具体的に、本件、つまり森友学園への国有地処分決裁文書の改ざん事件について、大阪地検特捜部から、改ざん前の文書の国会提出は捜査に支障があるといった、そういう趣旨の要請を受けたり、あるいは財務省の方から問い合わせてそういう回答を受けたり、そういうことがあるんですか。

○大臣政務官(今枝宗一郎君) 仁比委員にお答えをいたします。

まず、国民の代表である国会の場に書き換えた決裁文書を提出したことは大変ゆゆしき事態であり、財務省として大変申し訳なく考えております。深くおわびを申し上げます。

その上で、当問題につきましては、国会の議論の中で大変な問題になったことを重く受け止め、財務大臣から指示の上で、全省を挙げ、職員への聞き取り、文書の確認を行い、捜査当局の協力も得て、書換えの事実について調査を実施したところであります。

捜査に全面的に協力をしている立場といたしましては、捜査当局との具体的なやり取りについてお答えをすることは基本的には差し控えておりますけれども、少なくとも、検察当局から国会に対して提出をしないように求められた事実はないと報告を受けております。

○仁比聡平君 大阪地検から差し障りがあるというふうに求められたことはないんだというお答えなわけですね。

この件について、三月八日の予算委員会で、矢野官房長が、どなたの要請ということではございませんで、捜査にかかずらわっている事柄の性質としてというふうに答弁をされています。

この誰の要請ということではないんだと。財務省が検察の捜査に差し障りがある可能性があるなどと言ってきたのは、財務省の判断なんだという意味ですね。

○大臣政務官(今枝宗一郎君) 国会からの御要請に丁寧に対応していくことは非常に重要だと考えておりますし、国会に提出した決裁文書について、お尋ねの限りできるだけ丁寧な説明等も行ってまいりたいと思っております。

ただし、捜査当局と財務省との具体的なやり取り等については、捜査に全面的に協力をしている立場といたしましては、捜査にどのような影響を与えるか予期し難いので差し控えさせていただく点につきまして、委員にも御理解を賜りたいと思っております。

○仁比聡平君 いや、だから、大阪地検特捜部から具体的にこの事件について差し障りがあるということは言われていない、自らも確認していないということは先ほどはっきりしたわけです。

財務省が、あるいは政府がこの問題の真相解明に当たって国会に必要な求められる文書を提出するか、正直に答弁をするか、これは国会が判断することというのが国政調査権を定める憲法六十二条の意味ですよね。つまり、国会が要求すれば政府は提出をしなければならない。もはや信頼が地に落ちた財務省や政府が出す出さないを判断するのではない。これは国会が決めること。これは、財務省は違うんですか、そういう考えじゃないんですか。

○大臣政務官(今枝宗一郎君) いわゆる国政調査権は、憲法第六十二条に規定されている国会の重要な権能でありまして、政府といたしましては、それが適正に行使をされ、国会の国政調査活動が十分その目的を達成できるよう、政府の立場から許される最大限の協力をするべきものと考えております。

三月二日の財務大臣からの調査指示以降、職員への聞き取り、文書の確認などに全力を挙げ、また、得られた一次情報同士を突き合わせて全体像の確認を行ってまいりました。そうした中で、財務省で管理されている文書の確認のみでは書換え前の文書の全てを正確に把握するには限界があると判断をしたため、最終的に捜査当局にも協力を依頼し、書換え前の文書の写しを入手し、十二日に国会に調査の内容を御報告したところでございます。

このように、財務省といたしましても、国政調査権ということを重く受け止め、可能な限りの対応を行ってきたところでありますけれども、今後とも、国会に提出した決裁文書についてのお尋ねについて、できる限り丁寧な説明を行ってまいりたいと考えております。

○仁比聡平君 何を言っているんですか。これまでも丁寧な説明を行ってきたというようなことを言うけれども、経過は全く逆だということは、国会もそして国民の皆さんもみんな承知の上なんですよ。

三月八日の予算委員会、朝の理事会に改ざんされた後の文書のコピーを大量にあの段ボール箱で持ち込んで、いわゆるゼロ回答をした。改ざん前の文書がある可能性が出てきたから、これを調べていますなんというようなことは全く言わなかった。これは、つまり、ここに及んでも事を隠蔽しようとしてきたと厳しく指摘されて当然の姿ですよね。

その上で、今御答弁にもあった、捜査当局に対して協力を願ったという部分について法務省に確認をしたいと思うんですが、皆さんのお手元に三月十四日付けの産経新聞の記事をお配りをしています。この記事が示しているのは、つまり、大阪地検特捜部が近畿財務局のパソコンをデジタルフォレンジックと呼ばれる技術で解析して改ざん前の文書を入手したと、特捜部はそれを政府に提供し、これが十日土曜日の未明に財務省に届いたと、そういう経過を示しているわけですが、これ、法務省、事実でしょうか。

○政府参考人(辻裕教君) ただいま御指摘の報道については承知しておりますけれども、お尋ねは個別事件における捜査の具体的内容に関わる事柄に及ぶものでございますので、お答えは差し控えさせていただきたいと存じます。

なお、検察当局におきましては、財務省の行う調査に対しては、その要請等に応じまして、捜査に支障のない範囲内で適切に対処しているものと承知しております。

○仁比聡平君 個別事件だから答え差し控えると言うだろうと思ったんですが、いや、だって、財務省が検察庁からもらったと先ほども政務官答弁されたじゃないですか。政務官、そういう趣旨ですよね。

○大臣政務官(今枝宗一郎君) 先ほど私の答弁の中で申し上げましたことというのは、財務省が管理をしている文書のみの確認では書換え前の文書の全てを把握するのには限界があると判断をしたため、最終的に捜査当局にも依頼をし、書換え前の文書の写しを入手し、十二日に国会に調査の内容を御報告いたしましたというふうに答弁をさせていただいております。

○仁比聡平君 刑事局は個別の事件に関わると言って御答弁はされないんだけれども、実際こういう報道があることを否定はされないし、この記事のほかにも、検察が改ざん前の文書を、当時改ざんの事実を確認できないというふうに繰り返していた財務省に提供したという報道は、これ多数あるわけです。

佐川氏が国税庁長官を辞めた日の夜中のことになるわけですが、これ提供したんだろうと、その前提でちょっと話を進めたいと思いますが、問いたいのは、先ほど刑事局長の御答弁にもありましたが、捜査に支障のない限りでとおっしゃるわけですね。事本件について、捜査当局が、政府が持っている文書を国会に提出したり、政府が、特に財務省を中心に、この問題についての認識を答弁をしたりすることが検察の捜査の支障になると判断しているとは到底思えないわけです。そういう判断をしていたら、この改ざん前の文書も、デジタルフォレンジックで分析して入手した、これを財務省に出すわけないじゃないですか。

法務省にお尋ねをしますが、検察、検察というのはつまり大阪地検特捜部は、財務省に対して、捜査に支障になるというようなことを伝えたことは、これ、ないですよね、これは確認ですけれども。先ほど財務省はそういうことを聞いたことないということでしたけど、これ、法務省、ありませんよね。

○政府参考人(辻裕教君) お尋ねは、申し訳ございませんが、捜査機関の活動内容に関わる事柄でございまして、お答えは差し控えさせていただきたいと存じますが、なお、先ほど申し上げましたとおり、検察当局におきまして、財務省の行う調査に対しましては、その要請等に応じて、捜査に支障のない範囲内で適切に対処しているものと承知しております。

○仁比聡平君 検察権の行使の内容について、私、尋ねているんじゃないんですよ。そういう認識を伝えたことがあるかないかと。財務省はないと言っているわけだから、これ法務省が、地検が伝えているわけはないわけであります。いずれにしても、国政調査権に基づく行政責任、さらには政治責任の究明と捜査による刑事責任の究明は矛盾しないんですね。

大臣にお尋ねをしたいと思うんですが、佐川前理財局長の証人喚問が議決をされ、来週実施をされます。官僚が重大な犯罪行為による公文書の改ざんを進んで自らやるわけがない、もっと大きな圧力が働かなければこんなことは起こらない。国政調査権を徹底して行使をして真相を徹底究明することは我々国会の使命だと思います。仮に、大臣、この件が、つまり国会による真相解明が捜査を理由に不十分になるということになれば、国民の議会制民主主義への信頼を取り戻すことは到底できないと思いますが、大臣の御認識はいかがですか。

○国務大臣(上川陽子君) 重ねての御質問になるわけでございますが、現在、財務省において調査中である案件ということでございますので、法務大臣としての所感を申し述べることにつきましては差し控えさせていただきたいと思います。

いずれにせよ、国会におきましては、国民の皆様から信頼が得られることができるように丁寧な説明を行う必要があるというふうに考えております。

○仁比聡平君 いや、繰り返し情けない御答弁なんですけれども。

大臣、この真相解明、森友学園に関わる公文書改ざん事件の真相究明の対象は、これ、主権者国民の共有財産である公文書でしょう。これが改ざんされていたということは明らかになっているのであって、その経緯や目的、誰の指示で行われたのか、その政治責任を明らかにする、これこそが公益だと。刑事責任の解明という捜査がこれに差し障るという理由は、これ、どこにもないんじゃないですか。公文書をめぐるこうした事態、この解明が捜査を理由に拒否されるとか差し障るといって不十分になるとか、そんなこと、それこそ初代公文書管理担当大臣だった上川さん、許されないんじゃないですか。はっきり述べるべきではありませんか。

○国務大臣(上川陽子君) 公文書の重要性につきましては、公文書管理法の規定にのっとり、民主主義の大変大事な基盤として重要な役割を果たしていると考えております。国会審議におきましてどのような説明をするかということにつきましては、それぞれの行政機関が判断される事柄であるということでございます。

先ほど来の繰り返しの答弁ということで大変恐縮ではございますが、現在財務省において調査中であるということでございまして、法務大臣として答えるということにつきましては、所感ということで述べることは差し控えさせていただきたいと思います。

いずれにしろ、国会におきましては、国民の皆様から信頼が得られるように丁寧な説明を行う必要があるというふうに考えております。

○仁比聡平君 極めて残念な姿勢ですけれども、国民はみんなこの国会を見ているわけです。既に、検察の捜査に支障を与える可能性があるなどと言って隠蔽を続けようとしてきた、それは国政調査権に反して絶対に許されないということははっきりいたしました。この期に及んで何をちゅうちょするのかと、真相を明らかにすることは政治の責任であって、捜査を理由にこれを阻むことは絶対にできないと厳しく重ねて指摘をしておきたいと思います。

残された時間がほんの僅かになりましたけれども、ちょっと緊急の問題で大臣に冤罪再審についての基本認識を問いたいと思います。

十九日、お手元に資料を配りましたけれども、鹿児島の大崎事件について検察が三度目の再審開始決定に対する特別抗告を強行いたしました。この請求人の原口アヤ子さんは九十歳になられます。逮捕されたときから三十九年間、一度たりとも自白したことはありません。あたいはやっちょらぬと、その声をずっと上げ続けて、今度の高裁の再審開始決定では、これ事件そのものがなかったという認定に至っているわけですね。どの角度から見てもこの無罪は明らかと。

こうした決定に対して特別抗告を行って、最高裁でのまだ再審開始決定を争うのかと。検察が何か言い分があるのであれば、再審を開始して再審公判で主張すればいいじゃありませんか。こんなやり方は人道に反すると思われませんか。

○国務大臣(上川陽子君) 御指摘の事件につきまして、福岡高等裁判所宮崎支部が検察官の即時抗告を棄却したのに対しまして、本年三月十九日に検察官が特別抗告を行ったということにつきましては承知をしているところでございます。

お尋ねの点は個別具体的な事件における検察官の活動内容に関わる事柄でございまして、法務大臣として所感を述べることにつきましては差し控えさせていただきたいというふうに存じます。

○仁比聡平君 そうやって個別の事件について所感差し控えると大臣が言い続けてこういう事態に至っているから、あえてこの質問をしているわけです。

この再審請求人の娘さん、西京子さんは、最高検に対して、面白がってやっているのかと、本当にそんなことができるんですかと、検察がいつまでも争い続ける制度そのものが不条理ではないかと厳しく追及を、声を上げておられますけれども、大臣、御地元でもある再審袴田事件について、近く即時抗告が私は絶対に棄却されると思いますが、そうした決定が間近になっています。その場合、速やかに再審無罪を確定すべきなのであって、特別抗告をして、あの死刑執行が停止をされて、国民みんなが目の当たりにした袴田さんのむごい姿、お姉さんも高齢になっています。これ以上争い続けるなんていうことは、これはあり得ないと。

そうした中で、弁護団はもちろんのことですが、支援団体の皆さんからも、検察庁法十四条に基づく大臣の指揮監督権限を問う強い声が出ているわけですね。特別抗告などあり得ないと、袴田事件について。大臣、どう思われますか。

○国務大臣(上川陽子君) まさに、お尋ねの件でございますが、現在、即時抗告審に係属中の個別の再審請求事案に関わる事柄であるということでございます。お答えにつきましては差し控えさせていただきたいと存じます。

○仁比聡平君 検察、そして法務大臣が、人権はもちろんのこと、人道と正義の立場に立つことができないとなれば、この国の民主主義というのは崩壊しますから。この支援の皆さんの声、国民の声に必ず応えていただきたいと強く申し上げて、今日は質問を終わります。