○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
今日は、法案がどんな不公平を解決しようとするのか、大臣に基本的な考え方を聞きたいと思うんですけれども。
今日も確認があっています配偶者居住権あるいは特別の寄与、この改正部分に顕著なわけですけれども、つまり、とりわけ長く連れ合った配偶者、あるいは療養看護に努めた家族の置かれている現実が不公平であって、その公平を図るということがこの法案の基本なんだと思うんですね。
大臣がそうした保護を強める必要性、この社会の現実、今の現実についてどんな認識をお持ちでしょうか。
○国務大臣(上川陽子君) 今回の法律の趣旨ということで申し上げているところでございますが、昭和五十五年以来の改正ということになります。この四十年間の間にそれぞれ男性も女性も、女性も男性も平均寿命が延び、また高齢化が進んでいく中にありまして、そのところの配偶者の、高齢になった配偶者の皆様のその先の居住権や、また生活の安定性を図るために様々な制度につきまして検討を加えて、今回の法律の提出に至ったところでございます。
本法律案におきましては、長期間婚姻をしていた配偶者に対しまして、居住用の建物等が贈与された場合に、その間の貢献等を考慮をして、遺産分割における配偶者の取り分、これを増やす方策、また相続人以外の者が被相続人の療養看護に努め、その財産の維持又は増加に寄与した場合におきまして、その貢献を考慮するための方策などが含まれているところでございます。
いずれも、被相続人の財産の維持又は増加に貢献した者に、その立場やまた貢献に応じた保護を与えようとするものでございまして、利害関係人の間の実質的な公平を実現しようとするものでございます。
○仁比聡平君 つまり、実質的な公平を実現しようとするものだというのは、現在の日本社会において、実質的公平に反するとかそぐわないとか、そうした現実が法改正を必要とするほどやっぱり存在するんだという、それが前提の認識のはずなんですね。
私、続けて問いたいのは、そうした不公平というのは事実婚でも起こり得るし、現に起こっていると、それが現実だと思います。中には法律婚の場合以上に、残念ながら紛争が起こったときにこれが複雑化する、長期化するということがあると思うんですけれども、これ大臣は、その点はいかがですか。
○国務大臣(上川陽子君) 本法律案につきましては、先ほど答弁したとおり、利害関係人の間での実質的な公平性を担保するということであります。逆の言葉でいえば、不公正の是正という視点が盛り込まれているということでございます。
被相続人の財産の維持等に貢献した者にその立場や貢献に応じた保護を与えようとする方策が含まれているわけでございますが、委員御指摘のように、このような実質的な不公平につきましては、事実婚の関係にある者の間でも起こり得るものというふうに考えております。
また、事実婚のパートナーが死亡した場合に、その財産関係をめぐりまして紛争が複雑化することがあり得るということにつきまして、委員先ほど御指摘いただきましたが、そのように私も考えております。
○仁比聡平君 そのとおりだと思うんですね。
法の基本的な在り方、あるいは法の、あるいは制度の運用に当たる司法の実務といいますか、この在り方というのは、同様の不公平は同様に解決していくと、そういうことだろうと思うんですね。これまで、この相続における配偶者の保護、あるいは事実婚や内縁の保護ということで積み重ねられてきた議論もそうだろうと思うんです。
今回の法案でも語られていますけれども、最高裁判所が使用貸借を推定して居住権を保護するとか、あるいは遺産分割協議を実質的に公平ならしめるために、かつては預金債権は当然分割承継だとなっていたけれども、その考え方を改めて、遺産分割協議の対象にするんだというふうになってきたのも、つまりは被相続人が亡くなった場合の財産や権利関係の実質的公平を図ろうとしてきたからだと思うんですが、そうした考えでよろしいですか。
○国務大臣(上川陽子君) 相続法制につきましては、これまでも配偶者の相続分の引上げ、寄与分制度の創設等の改正が行われてきたことでございますが、これらはいずれも相続人間の実質的公平を図ることを目的とするものでございます。
本法律案につきましても、先ほど述べましたとおり、相続に関する利害関係人間の実質的な公平を図る目的のものが含まれておりまして、相続法制におきまして実質的公平を図ることは重要なことであるというふうに認識をしております。
もっとも、具体的な制度の在り方を検討するに当たりましては、法律関係の明確性など様々な事情を考慮して総合的に判断をする必要があるというふうに考えております。
○仁比聡平君 様々なことを考えなきゃいけないというので今回の法案を出しておられるわけで、けれども、その実質的公平を図るための法定の権利だとか選択のオプションだとかおっしゃる新制度を活用できるのは、相続人である配偶者、これは配偶者居住権の場合、それから特別寄与の場合は、被相続人の親族で相続人以外の場合、つまり相続人あるいは親族に限られているわけです。これがどうなのかということの議論をちょっと進めなきゃいけないと思うんですけれども。
大臣にまずお尋ねしたいと思いますのは、仮に選択的別姓制度が実現をすれば、別姓を選択して婚姻届をするというカップルが生まれてくるわけですけれども、そうしたカップルは当然にこの改正後の配偶者あるいは親族に当たることになりますね。
○副大臣(葉梨康弘君) 仮に実現すればというお尋ねですけれども、どのような制度設計になるかということ、仮にということでございますので、明確にはなかなかお答えはしづらいところですけれども、法律婚として認められれば配偶者になるということだろうと思います。
○仁比聡平君 私の問いは極めて簡明なのでして、答弁にこうやって迷われるという、そこに今回の法案に対しての多様性を排除するものではないかという批判、ここが当たっているのではないかという思いをしてしまうわけですね。
もう一回大臣に聞きますけれども、御存じのとおり、九六年法制審答申を受けて法務省も法案を準備されたわけです。これが現在の民法あるいは相続法と矛盾のないものであることは明らかであって、それが実現をすれば別姓を選択する法律婚が生まれるわけですね。
そもそも選択的別姓というのは、今や世界で我が国だけになっている法律上の同姓の強制をやめて、カップルがそれぞれ自らの姓を選択してアイデンティティーを尊重し合う生き方、信条、これを法律婚から排除しないという法律婚の在り方なわけです。であれば、これが実現をすれば本改正案に言う配偶者、親族にこれ当然当たると。これ、大臣、よろしいですね。
○国務大臣(上川陽子君) 委員御指摘のとおり、仮に選択的夫婦別氏制度、これが導入された場合、事実婚の状態にあった者が婚姻の届出をするということになります。それに伴いまして、法律上の婚姻関係に至ったということになります。したがいまして、これらの者につきましても相続法におきましての配偶者として扱われることとなるわけでございます。
したがいまして、例えば、本法律案におきまして新設する配偶者居住権等につきましても取得することができるということになるものでございます。
○仁比聡平君 配偶者なんですから当然親族だということになるわけですけれども。
ところが、自民党は選択的別姓の実現に背を向けておられ、政府は自民党を気にしてばかりおられるという状況にあるわけですが。もちろん、現在事実婚を選んでおられるカップルが、その理由として同氏の強制だけを理由にしているわけではないということだと思います。けれども、選択的別姓が実現をすれば法律婚をしたいと願っているカップルはたくさんいるわけですね。その選択的別姓さえ実現をしない下で、法律婚の尊重、法定相続分の重視だということを柱にして配偶者保護を図るという今回の法案が、だったらば多様性を排除することになるじゃないかという強い批判にさらされているのは当然だと思うんです。
大臣は、この法案は事実婚あるいは同性婚という生き方を排除するものなんですか。
○国務大臣(上川陽子君) ただいま委員御指摘になりました選択的夫婦別氏制度、これにつきまして、これを認めるか否か、また同性婚を認めるか否かといった問題につきましては、今回の相続法制の見直しとは別個に検討されるべきものでございまして、その意味で、本法律案自体につきましては、事実婚や同性婚など多様な生き方を排除するものではございません。
そして、現行法におきましても、御指摘の事実婚や同性婚の相手方に対しまして、遺言を活用することにより自分の財産の全部又は一部を与えることが可能であるということでございまして、そのような意味でも、遺言制度につきましては、家族の在り方等が多様化している日本の社会におきましてより重要な位置付けを持つべきものであるというふうに考えております。
本法律案におきましては、遺言の利用を促進するための方策につきましても設けておりまして、このような生き方を選択された方につきましても一定の配慮をしているものであるというふうに考えております。
○仁比聡平君 そうはおっしゃるけれども、結局、制度上これ排斥したというふうな批判に対してどう応えていくかということがこれからの大きな課題になるんだと思うんですよ。
法制審の議論の中でも出ていますし、法案の説明を受けても、法務省が言うには、例えば近所のおばちゃんが療養看護を務められたという主張があったときに、遺産分割協議の対象にこの人たちが入ってくるとなると、どこまでなのかと、複雑化、長期化するじゃないかというようなお話をされるんですけれども、これ大臣、近所のおばちゃんと、実際に婚姻の意思を持って同居し、助け合って親密な共同生活を行っている、男女の事実婚だったら子供も産み育てているという、そういうカップルを同列に扱うという、それしか法律上、法理上、解決の道ないんだなんて、それはあり得ないでしょう。そこはどうですか。
○国務大臣(上川陽子君) 今委員御指摘いただきました、一般的には、法制度上、事実上の配偶者と単なる隣人とでは異なる取扱いがされることもあり得るものというふうに考えております。
もっとも、相続につきましては、被相続人の権利義務を相続人が包括的に承継するということを内容とするものでございます。誰が相続人であるかは、第三者にもできる限り明確かつ画一的に判断することができるようにする必要がございます。
事実婚の配偶者に該当するか否かにつきましては、様々な要素を総合的に考慮して判断しなければならないわけでございまして、事実婚の配偶者に当たることを公示するという制度も存在しておりません。このため、仮に事実上の配偶者に相続を認めるとすると、相続をめぐる紛争が複雑化、長期化いたしまして、利害関係人までもが紛争に巻き込まれて不測の損害を受けるおそれがあるなどの問題も生じるところでございます。
このようなことでございまして、法律案におきましての区別につきましては合理的なものであるというふうに考えておりますが、この法律案につきまして、成立し、また施行された場合におきましては、その施行状況、また社会経済情勢の変化、特に多様な家族の在り方に関しましての状況等に十分留意しつつ、今後も必要な検討を行っていくことが重要であるというふうに考えております。
○仁比聡平君 今大臣がおっしゃった、区別が合理的なものかということが、この法案できっちり議論されなければならないと思うんですね。
時間がなくなったので、あとは次回に譲りますけれども、これまで法律婚が認められてこなかったカップルや家族のアイデンティティーと多様性、信条を尊重する社会をつくろうという流れが後戻りすることは、私ないと思います。
この渋谷区のパートナーシップ条例だとか各地の公営住宅の入居など、同性婚を尊重しようという動きも強まっているわけですよね。我々がやらなきゃいけないのは、法律婚の女性も、あるいは、一方で現行制度では法律婚できない事実婚や同性婚の人たちも、パートナーが亡くなったときに実質的な不公平を強いられないようにすると、これが政治の果たすべき役割だと思います。
今回の改正を機に是非その議論を深めたいということを申し上げて、今日は質問を終わります。
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