○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

今日は、女性差別撤廃条約選択議定書の批准についてお尋ねをしたいと思っております。

お手元にUNウイメン、国連女性機関のホームページから今日においてのこの選択議定書の締約国のリストをお配りをいたしました。国連加盟国百九十三のうち、女性差別撤廃条約について百八十九か国が締約をし、うち百九か国が既に選択議定書を批准をしているわけです。私は、これは速やかに締約すべきものだと思うんですけれども、まず外務省にお尋ねをいたしますが、この選択議定書の意義ですね、これつまり女性差別撤廃条約の実効性を高めるためのものだと。そうですね。

○政府参考人(長岡寛介君) お答え申し上げます。

女子差別撤廃条約の選択議定書は、一九九九年の十月に採択をされ、二〇〇〇年十二月に発効したものでございます。これは、委員御指摘のとおり、いわゆる個人通報制度について定めているものです。

この制度は、人権条約上の権利を侵害されたと主張する個人等が、条約に基づき設置された委員会に権利侵害等を通報し、委員会はこれを検討の上、その見解を関係する締約国及び通報者に通知するものでございます。

女子差別撤廃条約選択議定書に規定されている個人通報制度は、条約の実施の効果的な担保を図るとの趣旨から注目すべき制度であると考えております。

○仁比聡平君 つまり、条約の実効性を高めるためのものなわけです。

今御答弁にもあったように、この選択議定書は九九年に採択をされまして、来年で二十年を迎えるわけです。女性差別撤廃条約は、採択から来年四十年目を迎えるわけですね。先ほどもお話ありましたけれども、二〇二〇年には東京オリンピック・パラリンピックだと言い、人権大国を目指すんだと大臣おっしゃる。これ、何で批准しないのかと。

まずお尋ねをしたいのは、これ、条約の実効性を高めるべきものなんじゃないんですか、大臣。

○国務大臣(上川陽子君) 個人通報制度につきまして、条約の実施の効果的な担保を図るとの趣旨から大変注目すべき制度であると認識をしております。

他方、通報事案への具体的対応の在り方を含め、所要の検討が必要であるということでございまして、検討事項につきましては、法務省だけで検討、解決するものではございません。

引き続き、関係省庁連携をいたしまして、各方面の意見を聞きつつ、同制度の導入の是非につきまして真剣に検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

○仁比聡平君 選択議定書あるいは個人通報制度が注目すべき制度であるというこの答弁、それから真剣に検討を進めてまいりたいというこうした答弁、これ、いつからしておられるか、大臣、御存じでしょうか。

これ、選択議定書について注目すべき制度であるという答弁は、二十六年前、国際人権B規約の選択議定書について、九二年の三月二十六日、衆議院の内閣委員会で外務省が行っていると思うんですよね。これ、二十六年ですよ。その後、九九年に選択議定書が採択をされました。

これ、大臣、何年注目していたら気が済むんですか。これ、何で批准をできないんですか、しないんですか。

○政府参考人(山内由光君) 委員御指摘の個人通報制度のこの導入につきましては、様々な検討事項が必要かと思われます。

具体的には、その個人通報を受理した場合に、委員会の見解が我が国裁判所と異なるような場合、あるいは立法にわたるような、関する意見が展開されたような場合、我が国の立法政策の関係でどのように対応しないかということを検討する必要がございますし、個人通報制度、あと受け入れる場合には実施体制というものもやっぱり問題になってこようかと思います。

こういった問題については、各種人権条約の定める個人通報制度、これ共通する問題でございまして、これについての検討を鋭意進めているところでございます。

○仁比聡平君 鋭意進めているというふうに言うけれども、昨日伺いましたら、政府においてその研究会なるものを行ったのは、これ、平成二十八年、二年前の八月が最後だと。全然鋭意進めていないじゃないですか。真剣に検討していないじゃないですか。

大臣、今答弁の中にちょっと出てきましたけれども、委員会が我が国の裁判所と異なる見解を示したときどうするかというのがその様々な問題ということの一つのようですけれども、これ、かつて司法権の独立を侵すものではないかという議論があっておりました。

これ、大臣、今も司法権の独立を侵すと、そういうおそれがあると、そんなお考えなんですか。

○政府参考人(山内由光君) お尋ねのその個人通報制度の導入に関しまして、この導入が司法権の独立を侵すかという御指摘、どういうふうに考えているかという御質問かと思いますが、そのようには必ずしも考えておりませんで、我が国の司法制度と相入れないというふうには考えておりません。

しかしながら、やはり導入した場合に、先ほど申し上げましたように、裁判所の意見と個人通報を受理した委員会の意見、これが異なるような場合にどのように対応するかということについてはやはり問題があろうかというふうに思っております。

○仁比聡平君 問題があろうかと思っていると言うけれども、どんな問題があるのかも全然お答えにならずにずうっと時間だけがたっていると。これが真剣に検討しているなんて到底言えないわけですよね。

今の御答弁で、ちょっと大臣にもう一回確認しますけれども、政府参考人は、必ずしも司法制度と反するとは考えていないという趣旨の、必ずしもという、何だか曖昧なんですけれども、これ、司法権の独立と条約の選択議定書、個人通報制度が、これ反するはずがないでしょう。百九か国の国々は、これ司法権の独立、三権分立の国、たくさんあるじゃないですか。先進資本主義国たくさんあるじゃないですか。

これ、司法権の独立とは反しない、それは大臣、はっきりさせてください。大臣。

○国務大臣(上川陽子君) 先ほど答弁をさせたところでございますけれども、個人通報制度の導入自体、これは必ずしも我が国の司法制度と相入れるものではないということでございます。その意味で、以下でも以上でもないということであります。

○仁比聡平君 相入れないものではないという御答弁ですね。これ、相入れないものではないと、これ、司法権の独立に反するものではないとはっきり言うべきだと思うんですけれども。

これ、裁判所の見解と異なるときが問題だというふうに言うけれども、外務省、条約の、条約といいますか選択議定書の四条、委員会は、利用し得る全ての国内救済措置を尽くしたことを確認しない限り通報を検討してはならない、そうなっているわけで、これ、司法権の独立とは反しないでしょう。

○政府参考人(長岡寛介君) お答え申し上げます。

委員御指摘のとおり、女子差別撤廃条約選択議定書第四条の一は、委員会は利用し得る全ての国内的救済措置を尽くしたことを確認しない限り通報を検討してはならないというふうに規定をしています。

いずれにしても、政府といたしましては、人権関係諸条約に基づき設置されている委員会等に対する個人からの通報事例については、今政府の中で検討を進めている中でいろいろ事例を検討をしているわけでございますけれども、具体的に、各国、その通報されたものの中に国内救済措置を尽くしていないにもかかわらず受理をされたようなものがあるかどうかについては、我々としては承知をしていないところでございます。いずれにしても、議定書自体は国内救済措置を尽くすことを確認をすると、それが大前提になっているところでございます。

○仁比聡平君 外務省は承知していないというふうにおっしゃるけれども、それは、そういう例がないから承知をしておられないわけですよ。

これ、大臣、女性差別撤廃条約の委員会の委員を務めておられる林陽子さんの講演を読みますと、これまで百十一件の個人通報があっている、二〇一七年の三月までなんですけれども、一番件数が多いのは受理可能性なしなんですよね。これ、受理可能性なしの原因は、一番多いのは、国内救済手段を尽くしていないというものなんです。だから、委員会は国内救済手段を尽くしているかどうかをしっかり確認をしているんですよ。で、そうなっていないということになれば受理していないわけです。もちろん意見なんか出てこないわけです。

実際認容された件が二十三件ですけれども、百十一件のうち二十三件しか実際には認容されていない。だから、個人通報のハードルは高いんであって、かつ、日本の国内でしっかりした司法審査をしていれば恐れるに足りないとおっしゃっていて、これ当たり前のことですよね。国際人権基準の司法審査あるいは立法政策を取らないとでも言っているのかと。人権大国どころか人権鎖国かというのがこの選択議定書を批准しようとしない今の政権に向けられるべき批判だと私は思うんですね。

二十八年の十月二十五日のこの委員会で糸数議員が議論をしたときに、これ、引き続き各方面の意見を伺いつつなどという答弁もあったんですけれども、その点に関わって伺いたいと思います。

二〇〇九年の四月二十一日の朝日新聞で、ひどい女性差別、ある、ない、自民部会で激論という記事があります。ここでは、今申し上げている問題について、国連に助けを求めるほどの女性差別は今はない、我が国には伝統文化に根差した法制度があるといった反対意見あるいは慎重論というのがこれは続出したというんですけれども、私、これちょっと理解ができないんですね。全くの誤解じゃないのかと。あるとかないとかいう問題ではなくて、条約の実効性を高めるためにこの選択議定書を各国は締約をしているわけでしょう。

これ、大臣、今申し上げた、あるとかないとかという話の議論についてどんなお考えですか。

○政府参考人(山内由光君) 委員の御質問にあった、あるとかないとかという点について、ちょっと趣旨を把握しかねているところがあるかもしれませんが、冒頭質問にありましたのは、個人通報に関するもう様々な意見というのがあるという話についての御質問だというふうに受け止めさせていただきまして、その点について申し上げますと、個人通報に関しては様々な意見が実際ございます。

例えば、この個人通報制度、人権の各種条約の選択議定書に盛り込まれておりまして、その全部について検討しないといけないのかでありますとか、それとも特定の条約について検討すべきであるのかという点についての様々な意見でありますとか、あるいは、実際その個人通報を受け入れた場合、その勧告あるいはその意見についてどのように実施するか、その体制をどうすべきかについての意見でありますし、冒頭申し上げましたように、裁判係属中であったものについての例えば意見が出されたような場合でありますとか、あるいは通報者が損害賠償を求めている、あるいは補償を要請するというようなことについて何らかの見解が示された場合に、それにどのように対応するか、それに関してはもちろん様々な意見がございます。そういった意味での意見がいろいろあるということでございます。

○仁比聡平君 私の問いに正面からお答えになれないというのは、つまり、国連に助けを求めるほどの女性差別が今はあるとかないとかという議論が、選択議定書を締約しない、批准しないという理由にはならないということをお認めになったのと同じだと思いますよ。

これ、委員会から、なぜ進捗しないのか、どのような進捗があったかについての情報をちゃんと提供し、批准を可能にする達成期限、タイムフレームを示せと、そうした勧告が繰り返されているわけで、これ、大臣、批准をするという方向で大きく踏み出すべきではありませんか。ちょっと最後、決意を伺います。

○大臣政務官(山下貴司君) これ、批准をするか否かというのは、これは外務省が検討すべき課題でございまして、もとより我々法務省としても、関係省庁の一つとして外務省その他関係省庁と検討しながら考えてはいきたいと思いますが、今ここで批准をするかどうかということに関しては、直接は外務省にお尋ねいただきたいと思います。

○委員長(石川博崇君) 仁比聡平君、時間が。

○仁比聡平君 はい。

時間が来ましたから今日はこれで終わりますけれども、これ、結局、引き続き各方面の検討を伺うとか、法務省だけで検討できる問題ではないとか、昨日伺うと、そうしたら、法務省、外務省で決められるのかと言ったら、それはどこと相談しなきゃいけないか分からないなんというようなことを言っているんですよ。そんなことで来年を迎えるなんというようなことは、これ、大臣、絶対にあっちゃならないと、そのことを厳しく申し上げて、今日は質問を終わります。