193通常国会2017年5月30日参法務委員会『共謀罪、国連特別報告者への政府対応は国際公約違反』

 

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

総理、十三分しかありませんので、端的に、国連プライバシーの権利特別報告者に対する日本政府見解についてお尋ねをしたいと思います。

この件について、政府は、不適切で強く抗議すると一貫しておっしゃっているわけですが、それは国際社会に通用しないと、昨日の代表質問でも私は申し上げたとおりの認識に立っております。

ただ、総理にお尋ねしたいのですが、このお配りしている政府見解をよく読みますと、特に三項辺りに表れていますが、政府も、TOC条約の国内担保法はプライバシー権や内心の自由を保障したものでなければならないということは前提としているように読めるわけです。国連人権B規約の十七条あるいは憲法十三条と、こうしたものが保障されたものでなければならないという理解で、総理、よろしいでしょうか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) テロ等準備罪は、計画行為及び実行準備行為という行為を処罰するものであって、内心を処罰するものではなく、思想、良心の自由を侵害するものではありません。また、国民の生命、財産を守るためにテロの未然防止対策には万全を期す必要がありますが、その際、国民の権利、自由が不当に侵害されることがあってはならないことは当然のことであります。

この条約第三十四条1においては、締約国は、この条約に定める義務の履行を確保するため、自国の国内法の基本原則に従って必要な措置、立法及び行政上の措置を含む、をとると規定されております。日本国憲法第十九条においては、思想及び良心の自由はこれを侵してはならないと規定されているわけでありまして、以上のことからも、TOC条約の担保法であるテロ等準備罪処罰法案は、内心を処罰するものではないことは明らかであります。

○仁比聡平君 質問にお答えにちゃんとなられないんですけれども、先ほど三十四条の、条約の、御答弁の中で少し触れられました、つまり、国内担保法はプライバシー権や内心の自由を保障したものでなければならないと、そこを明確にまずお答えいただきたいんです。その上で、総理が、政府の出している法案は満たしているとしきりにおっしゃるのは、それはそれで総理のお立場なんですけど、国内担保法はプライバシー権や内心の自由を保障したものでなければならないと、これが大前提ですね。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 先ほども答弁させていただいたように、国民の生命、財産を守るためにテロの未然防止対策には万全を期す必要があるが、その際、国民の権利、自由が不当に侵害されることがあってはならないことは当然のことであります。

○仁比聡平君 政府が、その侵してはならない人権を、いろいろ強弁をしてこの法案を押し通すことによって侵してしまうのではないのか、それが強行採決というような形になっているのではないのかというような日本の状況に対してなされたやむにやまれぬ警鐘がケナタッチ教授の公開書簡ということだと思うんですが、国内担保法がプライバシー権や内心の自由を保障したものでなければならないということを前提にされるわけならば、であるならば、ケナタッチ特別報告者の書簡に真摯に向き合うということが当然の態度だと思うんですね。

総理、我が国は昨年、人権理事会の理事国選挙に立候補して、当選して理事国を務めるようになっているわけです。その選挙に際して、日本の自発的誓約という言葉で外務省のホームページに公開をされていますけれども、そういう文書がありまして、そこには、国連人権高等弁務官事務所、OHCHRや特別手続の役割を重視する、特別報告者との有意義かつ建設的な対話の実現のため今後もしっかりと協力していくと。

これ、言わば国際公約でしょう。この特別報告者との有意義かつ建設的な対話の実現のためしっかりと協力していくと言っておきながら、公開書簡を知ったら、まあ慌ててというんでしょうか、数時間のうちに不適切だとか強く抗議するだとか、こうした文書を出すと、これは国際社会に本当に通用しないんじゃないんですか。これは改めて抗議を撤回して、特別報告者と協議を行うというのが人権理事国になったときの日本政府の国際社会に対する公約じゃありませんか。

○政府参考人(水嶋光一君) ただいま委員の方から自発的誓約について御質問ございました。

日本政府といたしましては、昨年出しました自発的誓約、ここで表明いたしました立場には変更はありません。一方で、今般、カンナタチ教授が出した公開書簡につきましては、法案を作成した当事者であります日本政府からの説明を聞くことなく、一方的に見解を発表した著しくバランスを欠く不適切なものであったと考えております。

政府といたしましては、我が国の取組を国際社会において正確に説明するためにも、この公開書簡の照会事項については、追ってしっかりと我が国の立場を説明するものでお返しをしたいと考えております。

○仁比聡平君 いや、その外務省の答弁は繰り返し昨日も本会議場で聞いている。私は、一国の首相として総理にお尋ねをしているわけです。私の質問の意味がお分かりになっておりながら御自身でお答えにならないという、その態度そのものが驚くべき態度だと思います。

私、昨日の本会議場で感じましたけれども、籠池氏、前川前文科事務次官、そしてケナタッチ教授、自分の意に沿わない真実の証言や道理に立った批判というのは、国内においても、そして国際社会に対しても敵視し、けなし、封殺しようとする総理と安倍政権の基本姿勢がこの問題で深刻に表れているんじゃないかと思うんですね。

総理は国連のグテーレス事務総長と会談をされました。その際、事務総長がどう言ったかということを昨日も、今外務省が少し答弁をされたようなケナタッチ教授に対する言わば言葉を極めた非難の中に織り交ぜて、この点についてグテーレス国連事務総長も、その主張は必ずしも国連の総意を反映するものではない旨述べていましたなどと昨日御答弁をされたんですが、五月二十八日に国連のホームページに同じ会談のプレスリリースがアップされています。そこでは、私が読む限り、特別報告者について、事務総長は首相に、特別報告者は国連人権理事会に直接報告をする独立した専門家であると説明しましたと国連はリリースしている。

これ、総理が言うような、まるで日本政府の口を極めての非難と事務総長が同じ立場であるかのようなこうした引用ぶりは、私はこれは事実と違うのではないかと思うんですが、総理、実際には、事務総長との会談、その中での説明というのはどんなことだったんですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 私とグテーレス国連事務総長との間の懇談の概要については、日本側が既に発表したとおりでございまして、この懇談の内容についてはそれぞれの立場から公表したものであり、対外的に発表する際に文言を一言一句まで相互にすり合わせたものではないわけであります。

したがって、日本側の説明と国連ホームページのプレスリリースの内容が一言一句一致していなくても不自然ではありませんし、国連のプレスリリースにおいて我が国の発表内容がこれは否定されているわけではないわけでありまして、我が国として発表したとおりのやり取りがあったわけであります。

○仁比聡平君 否定されているわけではないとおっしゃるけれども、少なくとも、日本政府が引用している文脈、総理が昨日の本会議答弁でおっしゃった文脈と事務総長のプレスリリースは全く意味が違うじゃないですか。

昨日、総理は、事務総長も日本政府と同じ立場だと言わんばかりの御答弁になっていますよ。議事録ちゃんと読んでください。もう御自身でおっしゃったんだから、それは分かっているとおりなんですけれども。

だって、特別報告者の任務というのは、プライバシーの権利保護、促進に向けて、情報収集、国際会議などへの参加、意識啓発などを任務とする、特別報告者は、その任務の範囲内で各国への情報提供の要請あるいは調査訪問等を行うことができる、これは、昨日、外務大臣が御説明になったとおりですよ。

その特別報告者が日本政府に総理への書簡で照会をしている、そのこと自体を、事務総長が日本政府が今使っているような言葉と同じ趣旨で非難するなんてあり得ないじゃないですか。

事務総長が、あるいは国連のホームページにある、特別報告者は国連人権理事会に直接報告をする独立した専門家であるというこの認識、独立した専門家として物事をやっているんだと、この認識こそが、国際社会の当たり前の、常識といいますか、それをゆがめるというのは私は本当に断じて許せないと思います。

このケナタッチ教授は、今回、今日審議が始まった法案について、その文言が曖昧で、恣意的な適用のおそれがある、対象二百七十七犯罪が広範で、テロリズムや組織犯罪に無関係の行為を多く含んでいる、いかなる行為が処罰対象となるかが不明確で、刑罰法規の明確性の原則に照らして問題があると。結果、プライバシー、表現の自由を著しく侵害する、そういう懸念があるということを示しているわけですね。

この指摘の中身こそがとても大事なんじゃないんですか。この懸念にしっかり応える、そういう審議を尽くすということが私はこの委員会の任務だと思いますし、政府は強行採決などごり押しをするんではなくて、これはきちんと的確にこの質疑に応じていく、そういう責任があると思いますが、総理、いかがですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 政府として日本側がこれ発表したものについては、これは、事務総長は、特別報告者は国連とは別の個人の資格で活動しており、その主張は必ずしも国連の総意を反映するものではないと、この旨を事務総長が述べられたのは事実でありますから、これは言わば非難するという文脈で使ったのではないわけでありまして、言わば国連の総意としてのものではないという、国連事務総長の発言を言わばファクトとして申し上げたわけであります。一方、特別報告者は、国連人権理事会に直接報告する独立した専門家であると、これも事実でございます。

そして、その上において、政府がこの委員会においてどういう対応を取っていくかといえば、丁寧に、そして分かりやすく法案について説明していきたいと、その上で成立を期していきたいと考えているわけでございます。

法案、この法案をめぐる国会の運営についてはまさにこの委員会でお決めになることであろうと、このように思います。

○仁比聡平君 昨日の総理の答弁は、そのようなファクトを示したというそういう文脈にはなっておりません。非難に援用しているというのは極めて不当だと申し上げておきます。

私は、昨日の理事懇談会でも申し上げましたが、立法ガイドを作成したパッサス教授、そしてこの特別報告者カナタッチ教授、このお二人を是非この委員会に参考人としてお招きをするべきだということを強く主張して、今日の質問は終わります。