第169回国会 参議院決算委員会 第7号
2008年5月16日 仁比聡平参議院議員
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
まず、要介護認定者の障害者控除についてお尋ねしたいと思うんですけれども、私どもは、家計に対する税や保険料の負担が厳しさを増す中で、障害者手帳がなくても六十五歳以上の高齢者で障害者に準ずると市町村長などが、認定を受けた方は障害者控除を受けることができるというこの制度が受け得る方にきちんと周知をされるように、そして申請がかなうように求めてきたわけでございます。この間、個人通知に取り組む自治体も広がってまいりまして大変喜ばれているところなんですが、対象となり得る方々が申請が現実にできるように、大臣、政府としても一層の取組をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(額賀福志郎君) この問題については、おっしゃるとおり、所得税法上、障害者控除の対象となる障害者とは、知的障害者、精神障害者、身体障害者のほか、年齢六十五歳以上の者で、これらの障害者に準ずるものとして市町村長等の認定を受けている者などとされておるわけでございます。市町村長等が行う障害者に準ずるものに該当するかどうかの認定についての周知については、それぞれの市町村で判断をして行っていってくれているものと思っております。


おっしゃるようなことで、国税当局におきましても、従来から確定申告において使用する確定申告の手引とか国税庁のホームページなどにおいて周知をしているところでございます。
今後とも、委員のおっしゃるような方向で周知に努めてまいりたいというふうに思っております。
○仁比聡平君 そこで、厚生労働省に改めての確認になるんですけれども、お願いしておきたいんですが、寝たきりでなければ障害者控除を受けられないというようなものではないと、この制度は。いかがでしょう。
○政府参考人(中村吉夫君) お答えいたします。
この障害者に準ずる方の認定につきましては、市町村におきまして、その方の個別の状況に応じて、判断基準に該当するということであれば認定するということで、必ずしも寝たきりでなければならないということではございません。
○仁比聡平君 例えば身体障害者に準じる方で考えますと、例えば障害六級というのは一下肢の足関節の機能に著しい障害がある場合というようなことになろうかと思うんですけれども、つまり、寝たきりというような重度の身体的な障害やあるいは認知症というような状況でなくても、この障害者に準ずるものとしてこの認定を受けるということは当然あり得るということだと思います。いかがですか。
○政府参考人(中村吉夫君) お答えいたします。
おっしゃられるとおりでございまして、例えば、お話にございましたけど、障害六級という場合には一下肢の足関節の機能の著しい障害ということが要件になっておりますので、それに該当すれば六級に相当するということで、準じるということで認定がされるということでございます。
○仁比聡平君 六十五歳以上の高齢者ということになりますと、介護保険法上の要介護認定を受けていらっしゃる方も多くおありで、制度としては、これは違う別の制度ということですけれども、現象的には重なるところもあるわけでございます。
これまで国会で、厚生労働省から、要介護認定に係る情報をこの障害者控除の認定に当たり参考にして判断をするとか、あるいはその判断の材料の一つになり得るといった御答弁をいただいておりますけれども、これはそのとおりですね。
○政府参考人(中村吉夫君) お答えいたします。
障害者に準ずるものの判断ということにつきましては、市町村におきまして、その方の個別の状態に応じて判断されるべきものであるというふうに考えておりますが、個別の認定の際に市町村が要介護認定に係る情報等を参考として障害者に準ずるものと判断することはあり得るというふうに考えております。
○仁比聡平君 そういたしますと、この障害者控除の認定に当たって、私、ちょっと相談を受けたことがあるんですけれども、医師、ドクターの新たな診断がないと受け付けてもらえないというようなことが本当にあるのかという相談を受けたことがあるんですけれども、新たなそういったドクターの診断が不可欠だということには到底ならないと思いますけれども、いかがでしょう。
○政府参考人(中村吉夫君) お答え申し上げます。
障害者控除の適用対象となります障害者に準じるものの認定につきましては、先ほど来御答弁しておりますように、申請者の障害の程度に応じまして市町村が個別に判断すべきものでございます。具体的な認定の方法の例といたしましては、医師の診断のほか、職員による調査や身体障害者、知的障害者の判定を行っている機関による判定など、市町村が適当と考える方法によるべきものであるというふうに考えております。
いずれにいたしましても、障害の程度が同程度である方については同じ税制上の障害者控除の取扱いとすることが公平でございますので、認定の方法につきまして、市町村においてあらかじめ方法を定めておくということが適当ではないかというふうに考えております。
○仁比聡平君 ですから、私が申し上げているのは、その医師の診断、新たに医師の診断をすることを不可欠とするというようなものではないでしょうと、医師の新たな診断がなければ全国どこでもあり得ないという制度の御理解ではないでしょうということです。
○政府参考人(中村吉夫君) お答え申し上げます。
先ほど申し上げました医師の診断のほか、職員による調査や身体障害者、知的障害者の判定を行っている機関による判定などという認定方法の例につきましては、平成十四年八月一日付けの事務連絡、老齢者の所得税、地方税上の障害者控除の取扱いについて、というもので示しておりまして、その例に従って市町村の方で適切に方法を定めるということでございます。
○仁比聡平君 はっきり答えられないんですけど、医師の診断は不可欠なんですか。
○政府参考人(中村吉夫君) お答え申し上げます。
医師の診断につきましても例示をされておりますが、それ以外に、職員による調査あるいは身体障害者、知的障害者の判定を行っている機関による判定なども例示されておりますので、適切なものをそれぞれの市町村において選択して定めておられるというふうに承知しております。
○仁比聡平君 つまり不可欠ではないんですよ。私の度重なる質問にも不可欠だというふうにはもちろんおっしゃらないということで、うなずいていらっしゃいますから、もうこれ以上、何かその答弁メモがそれ以上動かないのであれば仕方がないからもうこれ以上聞きませんけれども。
そうしますと、寝たきりじゃなきゃ駄目だとか、あるいは寝たきりじゃなければならないのでそうでない方の申請は最初から受け付けないとか、窓口に申請に相談に来られた方に新たなドクターの診断が必要ですと言って初めからその申請の相談に応じないとか申請書を渡さないとか、こういった扱いが現場であれば、今の御説明からしますと大変狭い、申請をしようという高齢者にとっては厳しいものになると思いますけれども、御感想はいかがですか。
○政府参考人(中村吉夫君) 障害者に準じる方の認定につきましては、先ほど来御答弁しておりますように、市町村において個別の申請に応じて適切に判断されるべきものでございますけれども、申請書類が提出されて、それに基づいて判断されるべきものであろうというふうに思っております。あくまでもその基準に該当すれば認定をされるということでございますので、その基準以外のことについていろいろ条件を付けるというようなことは必ずしも適切ではないというふうに思っております。
○仁比聡平君 今おっしゃられるように必ずしも適切ではないということなんですが、これ実際に私の地元の福岡市の方では、どうもこの寝たきりだけが対象だというような扱いがされているのかもしれないなと思われる気配があって、そうしますと、そもそも申請できないし、申請しないというような悪循環が広がっているようで、昨年度、平成十九年度も、ずっと低いんですけれども、百五十八件の方しか認定をされていないと。これ、個人通知が取り組まれているような、そういう自治体の状況を伺いますと、何千人といった形で、そういうオーダーで認定が実際にされているようでございまして、今、今日お話を伺っていて、改めてよく市にも聞いてみたいなというふうに思っているところでございます。
この関係の質問は以上でございますので、額賀大臣始め財務省そして厚労省の皆さん、御退席いただいても結構でございます。
金融庁に、続きまして、保険をめぐる消費者被害と対策の問題について残りの時間お尋ねしたいと思うんですけれども。
生命保険、損害保険をめぐって不払や保険料の取り過ぎなどの消費者被害やあるいはその苦情、これが急増しているという関係の事実が例えば今週も朝日新聞等々でも報じられておりますし、国民生活センターなどのホームページを拝見をいたしましても、この急増する、激増すると言っていいと思うんですが、相談に随分御奮闘いただいているというところかと思うんですね。
こうした被害や苦情の急増をどのように金融庁として認識をしておられるか、まず渡辺大臣にお尋ねいたします。
○国務大臣(渡辺喜美君) 平成十七年以降、各保険会社で御指摘の保険金の不払、支払漏れ、保険料の取り過ぎといった問題が出てまいりました。
これまで明らかになった不払や支払漏れの大きな要因としては、各保険会社が、入口である保険の募集から出口である保険金支払まで商品の特性を踏まえた適切な管理体制が整備されていないまま商品を開発、販売してきたことが考えられます。
金融庁では、これまでこうした不払等が認められた保険会社に対して、業務改善命令など、保険金支払管理体制の整備など各種の再発防止策の策定、実施を求めてまいりました。迅速かつ適切な顧客対応を求めてまいりました。金融庁における業務改善命令を受けて各保険会社とも、この問題に対する一連の対応の中で保険金支払体制等についての業務改善が進みつつあると認識をいたしております。
○仁比聡平君 業務体質の改善が進みつつあるという御認識を今おっしゃったんですけれども、そうすると、昨年度も一昨年度よりも相談が激増していると。例えば、朝日新聞のその記事によりますと、社によっては倍増しているとか、五倍とかいうようなたしか社もあったような思いがありますけれども、そうやって急増している、相談や苦情が。これはどう受け止めているんですか。
○国務大臣(渡辺喜美君) 生保協会とか損保協会などに相談、苦情が増加傾向にあるということは分かっております。一連の保険金不払の問題がございまして、こうしたことが世間の注目を集めたと。契約者の問題認識が高まっているということもその背景の一つであろうかと思います。
一方、保険会社はこうした問題に対して業務改善を進めているところでございます。その一環として、お客様への説明体制や苦情相談体制の充実にも取り組んでいるものと思います。お客様に対して十分な説明を行うことや適切な苦情相談処理を行うことは顧客保護、利用者利便性の向上につながるだけでなく、各保険会社における苦情の的確な把握やその発生原因の分析などを通じて一層の業務改善に資するものだと考えます。
○仁比聡平君 何か渡辺大臣らしくない御答弁ぶりだと、何か委員会室みんな思っている感じがするんですけれども、もっとずばっとおっしゃるんじゃないんですか、渡辺大臣、いつもは。何だかどうしてこの問題になると、まあ今日は一連そういう感じもするんですけれども。
相談者といいますか、契約者の方の、国民の側の認識がそういう不正事案があったりするから広がって、それで相談が増えているのではないかという認識を途中で示されたんですけれども、これトラブルがないという方が相談するはずないでしょう。
この相談が激増しているというのは、今の大臣の言葉じりをとらえるようで申し訳ないけれども、それならこれまで、これまで泣き寝入りをしてきた方がどれだけ多かったかということのあかしなんじゃないんですか。そこについての認識はあるんですか。つまり、保険をめぐる被害がこれまでだって大変だったんですよ。だけれども、これが今激増する苦情や相談という形で極めて深刻な事態になっていると、消費者被害は後を絶つどころか深刻さを増していると私は思いますけれども、そういった認識はありますか、大臣。何で、何で局長なんですか。大臣でしょう。
○委員長(小川敏夫君) 大臣、大臣の認識を聞かれたようですが、渡辺大臣。
○国務大臣(渡辺喜美君) こうした不払等の問題が大変な注目を集めました。金融庁としても、こうした不払等の問題に対して業務改善命令等を通じて改善の取組を促してまいりました。各保険会社においても苦情相談の処理に対して最善の努力を尽くすよう当局としても求めてきたところでございます。
そうしたことから、数の上でこうした相談、苦情等が増えたということも言えようかと思います。
○仁比聡平君 歯切れが悪いですね、本当に。
少し具体的にお尋ねします。
この保険契約は、法律的には付合契約の典型というふうに言われておりまして、これはつまり、契約の内容が一方当事者によって事前に作成され、その契約内容で契約を締結するかどうかのみをもう一方は選択することしかできないと。つまり、保険会社が作った保険商品、これを消費者はどれがいいかなといって選ぶしかないという、そういう特徴を持っているわけですよね。先ほど、募集から支払までの入口から出口までというふうにおっしゃいましたけれども、その保険契約や、あるいは市場というようなところの環境というのはこういう特徴を持っているわけです。
ちょっと調べておりまして、改めて、ああこういう重大な事件があったなと思ったのは、五年前、平成十五年の五月九日に公正取引委員会が、日本生命のニッセイがん保険EXという商品について、これ商品としては、がんと診断確定された日からしか支払われないのに、あたかも、がんの疑いがあるとお医者さんから言われて入院を指示され、入院中に診断確定がした場合も、入院の一日目にさかのぼって入院給付金が支払われるかのような、そういう表示がされていたということで、排除命令を公正取引委員会からされているんですね、この日に。
このときに公取が、併せて保険商品の新聞広告などでの表示がどうなっているかというのを調査をして、これ報告を詳しくしているんですけれども、例えば責任開始時期だとか、告知が必要かどうかとか、例えば加入時に告知必要はありませんといって大きく新聞記事に書いてあったり、広告に書いたりする広告あるわけですよね。だけれども、実際にはその加入前の病気に基づく保険金をめぐっては、これは大変なトラブルが起こるということになります。そういった数々の不当な不適正な広告がたくさんの会社によってなされているというのが、これ公取のその時点での調査なんですよ。
時間がありませんので端的に聞きますけれども、大臣、この調査が行われて、発表がされて五年間たったんですけれども、その間に昨年十一月の一件のみしか金融庁は保険業法に基づく優良誤認などのこうした不当、不適正を処分していないと。御存じですか。そういった事態をどう思われますか。
○国務大臣(渡辺喜美君) 御指摘の公正取引委員会から排除命令を受けた保険会社に対しては、平成十五年五月十三日に金融庁より業務改善命令を発出いたしております。
それ以降の保険の広告表示に関しての行政処分としては、昨年、平成十九年十一月十六日、生保一社に対して、募集用の資料に誤表記が多数発生した等のことから業務改善命令を発出いたしております。
○仁比聡平君 誤表記っておっしゃるけど、ちょっとびっくりしますね。
今生保とおっしゃったのは、金融庁のホームページに出ている発表資料によりますとアリコジャパンですね。元気によくばり保険という保険の広告を一般日刊紙に出しておられるんだが、ここでは、あたかもがんに診断された場合には一時金が支払われるかのような表示がされていたんだけれども、実際には、診断されて治療を目的とした入院中に所定の手術をしたという場合にしか支払われないということなんですね。これが誤表記ですかと。実際、処分の根拠も虚偽のことを告げた、そして誤解させるおそれのあることを表示する行為だというふうに認定しているんですよ。これ、そんな誤記とかいうような話じゃない。
私が深刻だなと思いましたのは、この金融庁のその時点での調査によっても過去五年間において三十一件、そういった不当表示がされて二万八千三百五十三件の契約が行われているんですね、その間に。二十七件、二万六千五百八十八契約については、今申し上げたような法に触れる形になっていると。
しかも、このアリコの会社は、この法令違反を認識していなかったというふうに調査の結果なっているようなんですね。既に五年前にニッセイはそういった処分を受けて、そして多数の会社の問題があるよということを公取から指摘をされながら金融庁が一件しか取り上げていない。で、その一件見ると、法令違反つまり違法性の認識がなかったというわけでしょう。
こんなとんでもない宣伝、募集をやりながら違法性も認識していないと、そんな事態をどうしてほったらかしているんですか。これ、これまでそういう扱いしかこの分野でやってなかったということについてどう考えているのか、これからどうするのか、最後、大臣に聞いて質問を終わりたいと思います。
○国務大臣(渡辺喜美君) 広告を含む募集用の資料の作成に関しては、お客様にとって保険に加入するか否かを判断する極めて重要な材料でございます。当然のことながら、正確で分かりやすい内容になっていなければなりません。
金融庁としては、募集用の資料の適切性が大事であるという観点から、まず保険契約の判断、保険に入るか入らないかという判断に影響を及ぼすことになる重要なものについては誤解させるおそれのある表示を行わないこと、そして、実際の保険商品よりも優良であったり、有利であったり、誤認させるような表示を防止するための体制整備を行うことということを保険会社に求めておるわけでございます。
また、先ほど御指摘になられた昨年十一月の生保一社に対する業務改善命令の発出を契機に、金融庁として各保険会社に、広告を含む募集用の資料について、その作成・審査体制を適切に構築し、分かりやすい適切な表示を確保することを要請をいたしております。
○仁比聡平君 大臣がここでその答弁メモをお読みになっても、それだけではこういった事態は、現場の事態、市場の事態はですよ、これは変わらないじゃないですか。そういった不当、不適正があるというのを実際に摘発して、処分してやめさせるということをきちんと金融庁がおやりにならないということも大きな一つの要因として、この間の大変な被害や苦情が私は激増しているのではないかという思いもございます。
ほかにも通告はたくさんあったんですが、今日はこれで質問を終わって、別の機会に引き続き議論させていただきたいと思います。