○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
今日は我が国の火山活動観測体制についてお尋ねをしたいと思っておりまして、山内文部科学副大臣にもおいでをいただきました。どうぞよろしくお願いいたします。
資料をお手元に今お配りしておりますが、その一枚目を御覧いただきますと、我が国の活火山というのはこのように百八あるわけです。それぞれ委員各位の御地元あるいは御縁のある土地の火山は思い当たられると思いますけれども、まさに火山大国なんですね。
まず、気象庁長官にお尋ねしたいと思いますが、こうした百八の活火山のうち気象庁が連続観測を実施しておられる火山は幾つありますか。

○政府参考人(櫻井邦雄君) 気象庁では、火山活動が活発であるとか、それから連続監視が必要な火山におきまして、関係機関と連携をいたしまして監視・観測体制の強化を進めてきており、現在、三十四の火山で連続監視を行っております。

○仁比聡平君
百八のうち気象庁が連続監視をしているのは三十四にとどまるわけです。そうした気象庁の観測網についても、火山噴火予知連絡 会会長で東大地震研究所の藤井敏嗣教授は、一年ほど前の論文におきまして、「火山監視にあたる気象庁の観測網の現状は必ずしも満足できるものではない。」 というふうに述べていらっしゃるんですね。
少し御紹介いたしますと、「常設的な観測とはいえ、地震計が一点しか置かれていない火山や、複数観測点があっても、その配置上の問題から火山体内部の震 源を十分な精度で決定できない火山もある。また、観測点の精度や感度の問題から、火山性地震の発生回数の計測には十分でも、研究に活用するには適切な精度 での地震波形を得られない観測点もある。」というふうに指摘をしていらっしゃいます。
続けて、「このため、現状では大学の観測点のデータを気象庁に分岐し、気象庁独自の観測とこれらの観測データを合わせ、活火山の活動状況の把握、評価を 行っている。大学がマグマの蓄積過程や噴火機構の基礎研究のために展開している観測点のデータが、現実的な火山防災の目的に活用されているのである。」と いうふうに述べていらっしゃいます。
こうした権威の指摘を踏まえて気象庁長官の御認識をお尋ねしたいと思いますが、いかがですか。

○政府参考人(櫻井邦雄君)
気象庁におきましては、噴火警報の発表等防災上支障のないよう、必要な活火山の観測・監視体制を大学等関係機関と協力をして構築してきたところでございます。
現在、火山噴火予知連絡会におきまして、今後の災害軽減のため、観測・監視体制を充実すべき四十七の火山が選定されたところでございます。この検討を踏まえまして、今後も、関係機関と協力をし、防災上必要な観測・監視体制の充実に努める所存でございます。

○仁比聡平君
ただいまの長官の答弁にもうかがわれますとおり、元々、我が国の火山観測は、大学や研究機関の観測網とそこから得られる知見が果たしてきた役割が極めて大きいわけでございます。そうした観測研究体制が歴史的に形成されてきたというふうに言っていいかと思うんですね。
その国立大学の観測網における重点観測対象火山につきまして、これまでの三十四火山を今年、〇九年から十六火山に大幅に減少させると、八火山からは撤退 すると。これ文科省は重点化、高度化というふうに表現をしておられるわけですが、この方針が報道におきましても大変衝撃的に受け止められております。委員 長御地元の秋田県でいいますと、火山防災の強化に逆行する動きだという不信感が述べられているんですね。
そこで、国立大学の観測体制についての認識を山内文科副大臣にお尋ねしたいと思うんです。
もう一方の専門家の論文を紹介いたしますと、防災科学技術研究所という重要な機関がございます。ここで火山防災研究部の副部長をお務めの藤田英輔研究官 が今年の一月号の雑誌の論文で、今後の課題についてこう述べられていらっしゃいます。「観測体制が脆弱で、予報の責任機関である気象庁の観測網だけでは信 頼性の高い活動把握ができず、またこれまで協力を得てきた大学の観測維持が危機に瀕している。」という大きな問題点を指摘されているわけです。
なぜ危機に瀕しているかというこの原因は、平成十六年の国立大学の法人化なんですね。この藤田研究官は、国立大学では、「法人化に伴い研究予算および職 員が削減され、老朽化した火山観測機器の更新や火山観測施設の維持が出来ない状況となっているところがある。」というふうにおっしゃっておりまして、今年 度から始まる「地震及び火山噴火予知のための観測研究計画」という新しい計画では、「火山噴火予知の基礎となる観測の重要性を謳っているものの、現実には 観測体制を縮小せざるを得ないというジレンマに陥っている。」というふうに述べられています。
現場の専門家、権威が学術論文でこうした現状の指摘に及ぶというのは、これはよほどのことだと思うわけですね。昨年七月に科学技術・学術審議会の建議がなされておりまして、私も読ませていただきましたけれども、ここにも同様の危機感が表れているかと思います。
こうした専門家の認識について山内副大臣がどのように受け止めておられるか、お尋ねしたいと思います。

○副大臣(山内俊夫君)
仁比議員の質問にお答えさせていただきます。
今いただいた資料の中で、私が住んでおります四国は全くないということなんで、それだけ地盤が安定しているのか古いのか分かりません。
ただいまの質問にお答えさせていただきますが、国立大学の法人化に伴いまして観測点等の維持管理が困難になりつつあるということや、火山観測研究に携わる人材確保もかなり厳しくなっているという現状は十分認識をいたしております。
このような状況を受けて、昨年十二月に科学技術・学術審議会火山部会におきまして、大学は本質的使命である教育、研究の原点に立ち返り、今後は学術的に 重要と考えられる火山についての観測、研究に重点化しつつ、さらに独立行政法人等の研究機関により新たに整備される観測データを利用することにより、今後 の観測研究体制を強化していくという方針を取りまとめをいたしました。
具体的に申し上げますと、大学においては、活動度の高い、先ほど委員がおっしゃいました十六火山については研究価値の大きい火山に重点化いたしまして、 その他の火山についても気象庁の火山噴火予知連絡会において火山防災対応に支障のないよう検討することとされ、気象庁は関係機関と連携して監視・観測体制 の強化を図るということとされております。
文部科学省といたしましては、厳しい現状を踏まえつつも、プロジェクト研究の実施や、独立行政法人防災科学技術研究所により整備されます基礎的な観測網のデータを流通させて、大学の火山噴火予知研究の強化に努めていきたい、このように考えております。

○仁比聡平君
本年度予算で特別研究費は増額をされたということなんですが、それはこれまでの三億円を四億円に一億円増額をしたというにと どまっているわけです。増額をしたこと自体は現場からも歓迎をされているかと思うんですけれども、しかしながら、これまでの観測体制が大変な危機に瀕して いると言われている中で政治の責任は極めて重いものがあるというふうに思っております。
先ほど山内副大臣が当面の方向性を御答弁をされましたが、その前提として人的、物的な観測体制の危機ないし脆弱さについての認識をお持ちだという御答弁があったことは大変大事だと思うんですね。
予算の問題について少し続けてお尋ねしたいんですが、先ほど御紹介した藤田研究官は、「気象庁のみの観測体制では質の低下を招く可能性も否定できな い。」と述べられております。東大の藤井教授は、「大学の観測体制の縮小は、日本の火山防災力が衰退することにもつながりかねない。」と警鐘を鳴らしてお られるわけです。有珠や雲仙、三宅島などの経験に照らしましても、火山にはそれぞれの個性、特徴があるわけです。だからこそそれぞれの常時観測、研究とそ の成果を防災行政に活用することが私は求められていると思います。
火山噴火予知のような自然災害を軽減するための基礎研究というのは、短期的な競争的な環境だとかマーケット、市場にはなじまないわけでございまして、地 味かもしれないけれども、長期にわたる観測、研究、それが研究者の自由な発想が生かされる形で行われ、継続的な若手研究者が確保される、観測機器が更新さ れる、観測施設を維持する、こうしたことが不可欠だと思うんですね。
危機に瀕していると言われている大学の観測体制を抜本的に強化するために予算を確保することが国の責任であると思いますけれども、山内副大臣、そして中央防災会議を担当されます佐藤大臣、それぞれ決意をお尋ねしたいと思いますが、いかがですか。

○副大臣(山内俊夫君)
文部科学省におきましては、大学等の火山観測研究の高度化に寄与するため、プロジェクト研究や防災科学技術研究所 の観測網の整備を実施する予算といたしましては、二十一年度予算においては、前年度から三億円増加をいたしましてトータルで五億、ちなみに昨年度、二十年 度については一億九千六百万でございます、約二・五倍に増額を計上いたしております。
そして、今後とも国民の安全、安心を確保するためには、国の責務であるという認識の下に、火山観測研究の充実のために、気象庁、国土地理院等の関係機関と連携を図りつつ、文部科学省における火山観測研究に係る予算の確保にしっかりと努めていきたいと思っております。

○国務大臣(佐藤勉君)
先生おっしゃられるとおりだというふうに私も思います。
そして、火山噴火が予想される場合には、住民の避難誘導等を確実に行うために、噴火の前兆現象をとらえて気象庁が的確に噴火警報を発令する必要があると いうふうに思います。これは、先日、浅間山の噴火のときに、まさしく気象庁がかなりの確率でこういう警鐘を鳴らしていただきました。そのために、観測点の 整備等の観測・監視体制の充実強化、噴火の前兆現象の把握手法の開発等の調査研究の充実が不可欠であるというふうに思っておりまして、防災担当といたしま して、でき得るだけの御支援、また予算の獲得等々を支援してまいりたいというふうに思っております。

○仁比聡平君
安全、安心は国の責務であり、この観測体制の整備充実のために予算をしっかり確保したいとした山内副大臣の御答弁、考え方と して大変大事なことだと思うんです。現状の予算の規模というのは、これは大学の運営交付金の配分の問題も含めまして、私は決して十分でないからこそ現場か らこうした厳しい指摘が出ているものだと思いますので、その点はよくお含みおきいただきたいと思います。
あわせて、佐藤大臣からございました気象庁の予報に当たっても、大学の観測網から得られたデータやそこでの知見というのが大変大きな役割を果たしている と思いますから、そういった面でも防災会議の中であるいは内閣の中で抜本的な予算増に努めていただきたいとお願いを申し上げておきます。
続きまして、火山活動が活発化をしています桜島についてお尋ねをしたいんですが、この火山活動の現状と見通しを簡単に気象庁長官にお尋ねしたいと思います。

○政府参考人(櫻井邦雄君)
桜島では、昭和火口の噴火活動が、平成十八年六月の噴火以降、長期的には次第に活発化している傾向が見られてございます。

○仁比聡平君
気象庁の発表しておられるペーパーを見ますと、そうした次第に活発化する傾向の下で今後の火山活動の推移に注意する必要があ るというふうにも述べていらっしゃるわけですが、昨年春に発表されました京大の防災研究所の「第十回桜島火山の集中総合観測」の序文におきましては、京大 防災研の石原和弘教授が、「過去半世紀に経験した二度の山頂噴火活動の激化を上回る活動が近い将来に発生すると予想される。」と、あるいは井口准教授は、 「早ければ数年後に昭和噴火級の大規模な噴火が起きることは十分考えられる」とした指摘をしておられまして、政府に万全の備えを求めたいと思います。
今日は、関係自治体の降灰除去事業に対する国の補助に絞ってお尋ねしたいと思うんですが、お手元の資料を続けて御覧いただきますと、これは私が平成十八 年末に現地に調査にお訪ねをしたときに市からいただきました資料で、平成十八年でも、噴火して降ればこうした形で大変な灰の状況になるわけです。
この降灰を除去する、とりわけ道路で活躍をするのがこのロードスイーパーなんですけれども、三枚目、もう一枚めくっていただきますと、大変老朽化いたしまして、ほとんどが十年以上、中には二十年以上たった車もあるわけです。
その次のページには、その事業の需要費、修理費を鹿児島市の方から数字をいただきましてお配りいたしましたけれども、毎年一千万円以上、一千四百万とい うオーダーの多額の負担が自治体にかぶっている格好になります。平成十三年度まではほぼ二分の一の国からの補助を受けてきたわけですが、十四年から受けら れなくなっている。けれども、その負担の額は変わらないわけですね。
どうしてかといいますと、降る灰が減って、基準地点での降灰量が基準の千グラムに満たなくなったということになるわけですけれども、最後の資料を見てい ただきますと、よく見ますと、県内四か所の採択基準の観測地点があって、そこでは確かに千グラムに届かないかもしれないが、鹿児島市の有村、ここでは四千 五百グラムですし、桜島の湯之平、二俣上あるいは二俣、こうした地点では千を超える大変な量が降っておりまして、全体として見ればさほど変わらないという のが私の実感なんですね。
このまま事業の補助ができないということになると現実に自治体の負担も大変だと思いますし、まして多量の灰がこれから降ったときに迅速な降灰除去に支障 を来すおそれもあるわけで、基準地点の見直しも含めて補助できるようにすべきだと考えますけれども、国交省の河川局長、いかがでしょうか。

○委員長(鈴木陽悦君)
なお、時間が過ぎておりますので、答弁は簡潔にお願いいたします。

○政府参考人(甲村謙友君)
降灰除去事業でございます。
採択基準が、基準地点におきまして平方メートル当たり千グラム以上という採択基準になっております。確かに、基準地点以外におきましても、委員御指摘の とおり降灰がございます。この点につきましては、鹿児島県から基準地点の見直しの要望もございますので、関係省庁、関係部署と連携して制度の運用について 総合的に検討を行ってまいりたいと考えております。

○仁比聡平君
地元の苦労と負担の実態に見合った形で補助を実現するということが大変望まれていますし、これは大変、毎年繰り返されている超党派の課題でございますので、是非この機に実現をいただきたいということをお願いを申し上げまして、質問を終わります。