映画「この世界の片隅に」の舞台・広島県呉市。戦艦大和が建造され出撃した「海軍さん」の町は、戦後再軍備で海上自衛隊最大数の艦船の基地になり、基地をとりまくように広大な軍需工場がひしめいています。

 呉の部隊はこれまでも、アフガン、イラク戦争の際に「ショー・ザ・フラック(日の丸を見せろ!)」という米国の圧力でインド洋まで派兵され、米軍艦への補給・後方支援に従事したように、日米一体へ変貌させられ、そのたびに「うちの子も自衛隊」「戦争に巻き込まれないかとても心配」という方々にお会いしてきました。

 それでも多くの飲食店の店先に“推し”の潜水艦の写真が飾られ、まちに自衛隊員応援の空気がながれているのは、なにより「専守防衛」「災害救助」を信じてきたからだと思います。

 「専守防衛」を破り、米軍一体の集団的自衛権を認めた安倍政権の安保法制・戦争法強行から8年。いま岸田政権は閣議決定ひとつで敵基地攻撃能力保有の大軍拡を強行し、自衛隊の各部隊を米軍指揮下で中国本土も直接攻撃できる根本的大変貌を図ろうとしています。それは憲法9条が「これを保持しない」と明確に禁じた「陸海空軍その他の戦力」そのものです。

 先週末訪ねた呉。港のドックでは護衛艦「かが」の空母化工事が進んでいました。米国から爆買いするF35B戦闘機を載せ、長射程ミサイルで迫ろうというのです。

 すでに日本版海兵隊(陸自水陸機動団・佐世保)が載る強襲揚陸艦に改造された大型艦「おおすみ」は、近く沖縄キャンプ・ハンセンなど南西諸島で米海兵隊との合同演習に参加するといいます。

 そして呉と横須賀だけにいる海自潜水艦隊は、米口の原潜のように長射程ミサイルを垂直発射できるよう来年度予算で開発を始めるというのです。

 夕日の沈む広島湾。

 対岸には米軍岩国基地。山中には米軍弾薬庫。桟橋に戻った潜水艦乗組員たちの姿に、「絶対に戦場に送ってはならない」と決意をあらたにしました。(しんぶん赤旗 2023年2月1日)