○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
まず、盛山文部科学大臣にお尋ねしたいと思いますが、旧統一協会の解散請求に当たって、百七十人を超える被害者からの聞き取りなどが行われました。その上に立って、文化庁は、お手元に宗教法人世界平和統一家庭連合の解散命令請求についてという文書をお配りしておりますけれども、ここにもあるように、長期間にわたり被害を受けて傷ついた結果、御自身の気持ちの整理に時間を要するなど、様々な御事情を抱えておられる方が多く、個々の心情に最大限配慮しながら対応を行ってきたということを明らかにしています。
さらに、資料、続きを見ていただきたいと思うんですが、旧統一協会の被害者、有志一同の皆さんの十一月二十九日付けの要望書の最後のパラグラフですが、ちょっと読み上げます。私たち統一協会の被害者は、高齢であったり、幼少期からの宗教的虐待により深いトラウマを負っており、社会的に生活していくだけで精いっぱいで余力がない場合がほとんどです、統一協会の信者を抱えた家族もそうです、それだけでなく、今なお抜け道をつくって行われる高額献金、霊感商法、一世信者の老後破綻や、それにより二世信者の将来が失われている問題、宗教的虐待や脱会後の精神疾患の問題など、様々な事情によって今も苦しんでいる被害者が大勢いますと。私はそのとおりだと思います。
盛山大臣は、所轄庁の大臣として、この統一協会の被害の深さについてどんな御認識ですか。
○国務大臣(盛山正仁君) 先ほど答弁、ほかの先生にしておりますことを余り繰り返しませんですけど、我々としましても、これまでに丁寧にこの関係者の方との状況把握、そういったことも踏まえまして、大変深刻な状況であるということは我々認識をしております。
そして、そうであるからこそ、宗教法人審議会に対しまして解散命令請求を出すべきではないかということを聞き、そして、全会一致でそうであるということで、十月十三日に東京地裁に解散命令請求を出しているということでございまして、我々としても、その二世の方だけではなく、多くの方々が本当に多くの被害を受けているということはもう十二分に理解をしているつもりでございます。
○仁比聡平君 大変深刻だという言葉だけしかおっしゃらなかったですよね、今、答弁の中で。それは大変深刻ですよ。ですが、大変深刻というその深刻さがどのように文化庁によって認識されて、それが解散命令請求の根拠となっているのか。そのことを私はもっと語るべきだと思うんですが。
昨年の、一年前の法案の、関連法案の審議のときに、小川さゆり参考人をお招きしての質疑がありました。この小川さゆり参考人が、昨年取り組まれた被害者のアンケートをその質疑の中で御紹介になりました。去年の九月から、献金被害を中心にアンケート調査を実施したと。約六十件の被害報告ですが、その中には、信仰を強制され、うつで不登校になった、信仰を被ると、あっ、信仰を破ると罰を受けた、兄弟共に学費を使い込まれ、弟の学費を肩代わりした、兄弟が養子に出された、妊娠中にも子供を材料に霊能者に脅迫され高額献金した、あるいは、大学に行っていないのに奨学金を借りて生活費に使われ、妹二人の学費を稼いで肩代わりしたが、結局親は自己破産した。
そうした被害の実態が紹介をされましたけれども、貧困、金銭の要求、教育費を使い込まれ進学に影響が出た、親の老後の不安、ネグレクト、信仰的な強制、脅迫、こうした被害を文化庁自身がこの一年間の取組の中でつかんできたんじゃないんですか。いかがですか。(発言する者あり)
○政府参考人(合田哲雄君) 恐縮でございます。手短にお答えを申し上げます。
私ども解散命令請求をさせていただいた理由の中に、信者本人の子供にも深刻な影響があるということを把握いたしてございます。本件宗教法人旧統一教会の信者が旧統一教会に多額の献金をしたことによって家族関係が破綻、経済的に困窮した結果、貧しい幼少期を過ごすことを余儀なくされ、大学への進学等も断念せざるを得なくなったなどの状況は把握をいたしているところでございます。
○国務大臣(盛山正仁君) 今、文化庁の方から御報告したところでございますけれども、これまで我々は、七回にわたる報告徴収・質問権の行使だけではなく、全国弁連や百七十人を超える被害者の方々からの実態その他を御報告を受け、我々、そこは十分に理解し、その深刻な状況については十分に把握、認識しているつもりでございます。ですからこそ、解散命令請求を行っているというふうに御理解賜りたいと思います。
○仁比聡平君 百七十人を超える被害者の方々から政府、文化庁が直接聞き取りを行って、これを根拠として解散命令請求を行っているということ、このこと自体、とても重要なことだと思います。
今この法案に関して問題になっている被害の深さと広がりを一体どう認識するのかということについて、もちろん解散命令請求手続は非訟手続ですから、その詳細をここで具体的に語れというのは無理かもしれないけれども、大臣として、あるいは我々が政治家として、この被害の深さ、広がりをどう捉えるのか、ここは、大変な被害だと言うだけじゃなくて、もっと認識語るべきだと思うんですよ。
ちょっと別の角度で聞きますけど、そのアンケートを紹介しながら、小川さゆり参考人は、両親と統一協会のことで何年も悩まされ、死にたいと思うぐらい苦しんできた、正直もう統一協会のことは忘れたいと思っていた、しかし、事件後にたくさんの方の被害があることを知り、また、四月に子供も生まれて、その子に、また同世代の子供たちにもう同じような被害に遭ってほしくないと思って、顔を出して発信を始めましたと語っておられますが、こうした被害者の思いについて、盛山大臣、どう思われますか。
○国務大臣(盛山正仁君) もう忘れたい、語りたくないという気持ちを抑えて、ほかの人のために顔を出して勇気を持って御対応していただいているその姿には本当に頭が下がる思いでございます。
また、そのようにお声を上げることができない方が多数いらっしゃる、こういったことにも我々は思いをはせ、そして、どうすれば少しでも対応をできるのか、そういうことを考えていかないといけないと思いますし、そして、我々は政府側として不十分という御批判を浴びるかもしれませんが、私たちとしては精いっぱいの対応を取らせていただいているつもりでございます。
○仁比聡平君 そのような被害が、政府によって言わば公的に調査をされ、認識をされたのが今年の十月になったと。つまり、解散命令請求の根拠として、今おっしゃるような認識に到達したのが二〇二三年の十月であるという、このことというのは、一方で極めて重大だと思います。
お配りしている資料の最後につづってあるのは、一九九九年に日弁連が反社会的な宗教的活動にかかわる消費者被害等の救済の指針を発表し、そこから抜粋をしたものです。
文化庁の認識にもあるように、昭和五十五年頃から、この統一協会の反社会的不法行為というのはもう遅くとも昭和五十五年に認識されるわけですよね、始まっているわけです。一九八〇年のことですよ。弁護士は、現場でその救済に取り組みました。けれど、個別救済ではもう駄目だと書いてあるでしょう、上に。個別救済を進めてきたけれども、それにとどまらず、宗教的活動に関わる人権侵害そのものを正面から問う必要がある。そうした認識で四半世紀前に書かれているものですが、発表されたものですが、それは御覧のとおり、今日、国が解散命令請求に至っている根拠を既に指摘をしていますよね。
特に今の二世被害の問題について、二枚目に、未成年者、子供への配慮が果たして行われているかと、そんなことはないという告発があります。未成年者を長期間施設で共同させ、共同生活させる、未成年者本人の意思に反して宗教団体内の、団体等の施設内の共同生活を強制する、学校教育法上の小中学校で教育を受けさせない、高等教育への就学の機会を妨げる、あるいは食事、衛生環境について極めて貧困な事態を強いていくということがあるから、そんなことをやっているというのは人権侵害にほかならないという認識がここに示されているんですよね。
文化庁が今日到達している認識、統一協会による被害の認識というのは、特に二世被害についてこれと共通するのではありませんか。
○政府参考人(合田哲雄君) ただいま御指摘をいただいたことでございますが、私どもは宗教法人法の規定に基づいて、法律と法律に定めるプロセス等、事実関係に基づいて報告徴収・質問権を行使し、解散命令請求の事由に該当すると判断したところでございます。
その過程の中では、先ほど御答弁申し上げましたように、信者本人の子供に対して深刻な影響があったということは把握をいたしてございますし、そのことは宗教法人法の八十一条一項一号及び二号前段の解散命令事由に該当するということの一つの重要な根拠になっているというふうに認識をいたしてございます。
○仁比聡平君 そういうふうになっているんですよ。
つまり、今日そうした認識に政府は到達した、だから、統一協会側が争おうとも、解散命令請求を必ず勝訴をするために頑張ってもらわなきゃいけないんですよ。ですが、その被害というのは、既に四半世紀に、個別救済ではなくて、国として、社会、日本社会としてこれは根絶しなきゃいけないものなんだという発信がされてきたということなんですね。
二世被害者、小川さゆりさん始め二世被害者の人生考えると、こうした時期にお生まれになって苦しみながら育ってきた、で、今も苦しみ続けておられる。本当に胸が苦しくなりますよ。
小川さんは、昨年のその参考人質疑の中で、先ほどのアンケートを紹介した後、「余りにもつらい内容が多くて、私は読んでいて体調が悪くなりました。このアンケートはただの被害報告ではありません。国によって放置された被害の事例です。そのことを重く受け止めていただきたいです。」とおっしゃっていますが、盛山大臣、どんな御認識ですか。
○国務大臣(盛山正仁君) 人権侵害という一言で表せないのかもしれませんが、本当につらく厳しい、そういうような人生を送ってこられたんだろうなというふうに拝察しております。
○仁比聡平君 もう一問、盛山大臣に私は聞いておかざるを得ないのですけれど、その統一協会の関連団体ということのようですが、盛山大臣、昨年の三月に集まりに御自身出席をされて挨拶をしておられますよね。そうした行為が一体、被害者にとって何をもたらしてきたのか。統一協会と歴代自民党政権が深く癒着してお墨付きを与え、広告塔になってきた。その中で被害が発生し、拡大をしてきた。そのことについて盛山大臣御自身はどんな御認識を今お持ちなんですか。
○国務大臣(盛山正仁君) 今御指摘の点に対しましては、先日来何度も御答弁しているところでございますが、昨年、旧統一教会の関係の団体と全く知らずに、地元の方から知事、秘書も来るので来てくれというふうに言われて出ていったということでございます。
そうした旧統一教会との関係につきましては、自民党の方からも明らかにしているところでございますが、現在及び今後において当該団体及び関連団体との関係を持たないことは引き続き徹底してまいるということもこれまでも申し上げているところでございます。
その上で、今の仁比先生の御質問に対して、我々の行動というのをもっとよく自覚をして行動しないといけないというふうに私自身反省しているところでございますし、また、そのいろんなところに、我々自身も、こちらが考えていないような形で利用されることもあるんだなというふうに私自身大変深く反省しているところでございます。
○仁比聡平君 統一協会の反社会的不法行為の大きな特徴は、正体を隠すということなんですよね。正体を隠してマインドコントロールに陥れていくということにあるんですが、御自身経験されて、正体隠しって極めて巧妙だと思いませんか。
○国務大臣(盛山正仁君) おっしゃるとおりです。同感いたします。
○仁比聡平君 そうした中で、小泉法務大臣にこの被害の深さ、広がりについての御認識をお尋ねしたいと思うんですけれども、今申し上げているような統一協会による被害の深さや広がりは果たして日本社会と我が国の司法制度の下で、とりわけ裁判を中心にした司法制度の下で、本当にそこをついて全面的に評価され、不法行為法であれば損害として認められてきたのかと。果たしてこれまでの司法の運用、それに乗っかって物事を考えていいのかと。私はそうじゃないと思うんですよ。
一九九九年、四半世紀前に、日弁連が宗教活動というその人権侵害、宗教活動に関わる人権侵害を基準として明らかにして、あるいはヨーロッパではもっと早くこのカルトの被害というのは人権侵害として認識されてきました。ところが、日本の裁判においては決してそうじゃなかった。二世の精神的損害だって、損害賠償として評価され尽くしてはいないんじゃないですか。どう思います。
○国務大臣(小泉龍司君) 確かに、先生おっしゃるように、統一教会に関わった方々の被害というのは、経済的な、財産的な、物的な被害だけではなくて、内面から崩れていく、外から奪われるだけではなくて、内面が崩れていく。二世の話もありましたが、家族が、人間関係が、親子が崩れていく、その人の人生が崩れていく、そういう広がりを持った、深さを持った、そういう被害だということは御指摘のとおりであります。
ただ、それが我が国の司法制度で全て救済できないんじゃないかという御議論でありますけれども、ちょっと通告もいただいていなかったので、ここでお答えするには余りにも大き過ぎる問題であります。問題提起としてしっかり受け止めて、研究を深めたいと思います。
○仁比聡平君 私が申し上げているのは、救済できないのではない、我が国の司法制度だと救済できないのではありませんよ。憲法と司法制度の下で救済可能です。社会的に政治の力で救済可能ですけれども、それ、それが救済されるべきが救済されてこなかったと。これが現実だということをしっかりと共有しないと、これからの解散命令請求が向かう中で、進む中での被害の完全な回復、救済というのは検討できないんじゃないのかということを強く申し上げて、あとは午後の法務委員会で発議者の皆さんと議論させていただきたいと思います。
ありがとうございました。