○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
前回と、そして午前中の文教委員会との連合審査を通じて、遅くとも一九八〇年代以降のこの統一協会による被害の深さと広がりが極めて重大だということを議論をしてまいりました。
それを踏まえて、発議者にまずお尋ねしたいと思うんですけれども、解散命令請求に至った文化庁の説明文書を今もお配りしておりますが、そこには冒頭、解散命令事由に該当するかの判断に当たっては、法人の活動に係る十分な実態把握と具体的な証拠の積み上げが不可欠となりますと、このとおりだと思います。だからこそ、報告徴収・質問権の七回にわたる行使、それから、これまでの不法行為を認めた、あるいは不法行為をめぐる民事判決を詳しく認定するとともに、百七十人を超える被害者からの聞き取りを丁寧に行ってきたということなんですよね。
つまり、そうした事実を一つ一つ積み重ねることによって、二〇二三年の十月、本年十月に至って、ようやくこの統一協会による被害、あるいは統一協会に法人格を与えてきたことの不当性についての根拠をしっかり持って、裁判所に請求するということになったということでしょう。
この歴史を振り返って見たときに、これからの被害救済とそのために必要な財産保全処分、あるいは財産保全の在り方を考えていくに当たっては、個々の被害者あるいは潜在的な被害者をばらばらに考えては駄目なんじゃないですか。
統一協会の反社会的不法行為の手口や構造というのはこの全体をもってようやく認識をきちんとされるようになっているわけで、個々の被害者がどんな手口でどんなふうにだまされてきたか、あっ、どんなふうにマインドコントロールされてきたかということだけをばらばらにして捉えたら、全体の被害の深さ、広がりを十分に評価できない、結果、ここに至って被害者救済に戻ることになるのではないか。
ですから、法案が支援しようとしている個別の被害者の請求活動というのは、これは私も一定の意義があると思います。けれども、そのことによって、被害者はちゃんと訴えればいいんだということにとどまってしまったら駄目なんじゃないですか。いかがでしょうか。
○衆議院議員(柴山昌彦君) 委員御指摘のとおり、これまでの旧統一教会の様々な歴史を踏まえると、非常に大きな問題、社会問題を起こしてきたということで、だからこそ、おっしゃるように、文化庁において解散命令請求がなされたということだと思います。
その上で、私どもといたしましては、もちろん個別的な被害者の救済手続の支援ということを内容とした法案を提出しておりますけれども、まさしく、おっしゃったように、これは国としてそういった様々な考えられる救済を一体として行うということが極めて重要だというふうに思っておりまして、例えば、被害者に寄り添った社会的支援に関しては、国が被害当事者を幅広く全面的にサポートすべく、運用面できめ細かく柔軟に対応するのが重要だと考えております。
関係省庁が連携したワンストップ型の相談支援体制の強化を行い、また、司令塔機能を持つ内閣官房に関係省庁連絡会議を設ける、そういう必要性がある旨、私ども与党のPTでは提言をさせていただいております。
発議者としても、そういった被害者の実効的な救済の観点から、政府がしっかりと連携をして一体的にこういった取組をしなければいけないというふうに考えております。
また、個別的な司法の支援につきましても、まさに被害者対策弁護団の皆様がこれまで培ってきた経験をしっかりと持ち寄った形で連携をすることによって、より十全な形で、例えば、対象財産の仮差押えをするようなときに、知見、あるいは今実際に法的手続を取るに熟したその権利者の特定など、お互いに連携をするということを是非していただきたいというふうに考えております。
○仁比聡平君 弁護団頼みというのがこうやって与党発議者から語られるというところに歴史の大きな発展を感じる思いがいたしますけれども。
もちろん、弁護団は頑張りますよ。頑張られるに決まっていますよ。その下で国が一体的に支援をしていくというのは大切なことだと思いますが、それが精神的、福祉的な支援などに、これは大事ですよ、とても。なんですけど、その支援が法的な被害回復、不法行為に基づく損害賠償請求ということであるならば、この損害賠償という統一協会の加害責任と、そして被害者の被害ですね、この十全なる評価というところにつながっていくということが真の被害回復なんではないかと思います。そこはいかがですか。
○衆議院議員(小倉將信君) 私たちは、この司法的な救済と、あるいは個々の被害者の方への精神的な支援というのは、表裏一体だと思っております。
私どもも、元被害者の方からたくさんお話をいただきました。マインドコントロールが解けても元自分がいた集団を、団体を相手になかなか立ち向かう決意に至らないとか、あるいは、精神的なケアを受けようにしても、なかなか専門職の方からしてみれば、宗教上の理由が絡むと相談を受け付けてくれなくて、なかなかこの司法的な救済を選ぶに至らない、そのようなお話を伺ってまいりました。
ですから、だからこそ、私どもは、司法的な救済に被害者の方々が勇気を持って進んでいくためにこそ精神的な支援が重要であり、これを貫徹をすることによって、私どもが用意をさせていただきました今回の議法の基にした民事的手続、これを一人でも多くの被害者の方に選んでいただくことにつながると、このように認識をいたしております。
○仁比聡平君 そこでお尋ねをしますけれども、法案に言う特定不法行為の被害者という概念があります。この特定不法行為の被害者の被害というのが、救済されるべき被害というよりも、支援されるべき被害ということなんだと思うんですが、ここには、改めて伺いますが、二世を含む被害者の精神的損害、これは含まれるわけですね。
○衆議院議員(山下貴司君) お答え申し上げます。
まず、精神的に被害が含まれるかということについては、これは本当に釈迦に説法でございますが、民法七百十条がございまして、例えば他人の財産を侵害した場合とかなどいずれであるかを問わず、七百九条により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害についても、その賠償をしなければならないということで、民法上、精神的損害についての損害賠償責任が明記されているということでございます。
したがって、そうした精神的損害について、二世の方が固有の損害を負ったという場合におきまして、この精神的な損害も含まれるというふうなことになります。
○仁比聡平君 その点で、これまでの日本の裁判所の活動などにおいても、その二世を始めとした被害者の精神的な被害というのが損害賠償として正当に評価されてきたのかということについては、私はそうなってはこなかったのではないかという思いを持っておりまして、そのことは、この法案が支援を拡充しようとしている法テラスによる援助にも関わる話になります。
もうこれも釈迦に説法ですけど、法テラスによる援助の要件には、勝訴の見込みがないとは言えないことというのが元々ありますよね。ですから、財産的損害だって、念書が書かれていてこれがあるとか、あるいは証拠が全くない、物証がないとかいうような問題があるとともに、今日午前中に御紹介をしたような二世の生まれ育ち丸ごとの被害ということを考えると、その被害者の訴えだけしか今のところ目の前には証拠がないというようなことがあります。
これが勝訴の見込みがないなどといって援助の対象外になるなんてあり得ないと私は思うんですが、まずいかがですか。
○衆議院議員(山下貴司君) まず、勝訴の見込みがないという部分の解釈ですけれども、やはりこれ、わざわざ我々は特例法を作っておいているわけでございますから、この法案の趣旨に照らして、これはもう弾力的に考えて、要するに積極的に判断するという形で期待をしているということで、できる限りその法テラスの利活用によって権利救済を図っていただきたいというふうに考えているところです。
○仁比聡平君 各地の法テラスがこの援助申請があったときにどう取り組むかを考えたら、統一協会の被害者だということになれば、これはもう全部受けるということになると思うんですよ。その勝訴の見込みが云々なんというのは問題にならない、やっぱりこの期に及んでね。
だからこそ、それをちゅうちょなく行える予算の確保は皆さんの責任だというふうに思いますし、それから、立替金や立担保の返還という問題に関しては、これ端的に聞きますけど、万が一に敗訴しても返還は求めないということですよね。
○衆議院議員(山下貴司君) その点について我々修正案で御提示させていただいたということで、立担保に関しましては、悪意又は重過失がある場合を除いて、またあと、まあちょっと全体的な状況を見て、これはちょっとその免除するのが不相当ではないかというのが社会通念上認められるというような場合を除いて、これはそういった賠償を求めないということは明文上明らかにさせていただいたというところでございます。
○仁比聡平君 そのような趣旨がきちんと、法テラスの業務方法書だったり立担保の手続細則などがありますけれども、これらにきちんと反映されるようにきちんと取り組んでいただきたいというふうに思います。
もう一点だけ法案について伺っておきますけれども、対象法人の財産処分に関して、通知を行わないで行われたときはこれは無効というのは、これ宗教法人法の準用なんですが、この宗教法人法、その準用される宗教法人法には、善意の第三者には対抗できないというただし書があります。
統一協会が仮に通知なしに関連団体に財産を処分するなんかを行ったときに、これ善意だなんてあり得ないと思うんですよね。解散命令請求が行われ、こうした弾劾が社会的になされているということを知らないで不動産買いましたとか担保付けましたなんてあり得ない、善意などあり得ないと思うんですが、いかがですか。
○衆議院議員(柴山昌彦君) 一般に、法律の言葉の善意というのは、御指摘のとおり、ある事実を知らないということを意味するわけなんですけれども、本法律案の場合で考えれば、指定宗教法人が所轄庁への通知をせずに不動産を売却した場合であるものの買ったという場合には、通知義務違反の事実を隠されていた場合等が想定をされます。
通知せずに行われた資産処分の効力については具体的な事案において判断されるものではありますけれども、本法案において通知義務が履行されているかどうかということは所轄庁の公告を見れば容易に判断できるわけでありますので、取引の相手方においては通常確認するところであるというふうに思っておりますし、また、当該指定宗教法人の指定に当たって、やはりしっかりとしたその報道あるいはアナウンスメントというものが必要になってくるということですので、通常であれば、御指摘のとおり、善意ということはなかなか想定はされないというように考えております。
ただ、我々としては、通知しないでなされた処分行為が無効ということをやはりしっかりと貫徹できるように、関係各行政機関に対して遺漏なきような対応を求めたいというように考えております。
○仁比聡平君 時間が参りましたのでもう質問はできませんけれども、そうした点も含めて、状況をしっかり見ながら、今後の被害救済と財産保全の在り方について、この委員会でも議論になってきた、仮に裁判所の判断で包括的保全処分を行うという野党が提起している課題に照らせば、管理人の権限や調査権、あるいはその管理に反する処分の効果などをどういう規定にすれば実効性が担保されるかなども含めて、被害者の皆さんにも参画していただいて、議論を党派を超えてしっかりと進めるべきだと私は強く思います。
この委員会としても、次の国会も含めて、被害者の方々をお招きしての調査をしっかり進めるということ、御協議いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○委員長(佐々木さやか君) ただいまの件につきましては、後刻理事会において協議いたします。
○仁比聡平君 終わります。

 

○仁比聡平君 私は、日本共産党を代表して、特定不法行為等に係る被害者の迅速かつ円滑な救済に資するための日本司法支援センターの業務の特例並びに宗教法人による財産の処分及び管理の特例に関する法律案に賛成の討論を行います。
賛成の理由は、本法案による法テラスの特例援助、特に、立担保など訴訟費用の実費負担、対象宗教法人の財産監視制度などに、個々の被害者の旧統一協会に対する請求を後押しする一定の意義を認めるからです。
しかし、個々の被害者による民事保全は、その被保全債権の限りで行われるものです。今求められているのは、それにとどまらず、今は声を上げることができていないでいる潜在的被害者を含め、全ての被害者の全面的救済のために、財産の散逸を防ぎ、被害者の救済を実効あるものにすることです。
旧統一協会の反社会的な不法行為と深刻な人権侵害の中核は、正体を隠して勧誘し、マインドコントロール下に置いて、信仰の自由を始め精神的自由を著しく侵害して、教義を植え付け、入信させ、人々の人生をめちゃくちゃにしてきたところにあります。
この点につき、文化庁が解散命令請求に当たって、百七十人を超える被害者からの聞き取りなどを行った上で、遅くとも昭和五十五年、すなわち一九八〇年から、旧統一協会が、長期間にわたって継続的に、その信者から多数の方々に対し、相手方の自由な意思決定に制限を加え、正常な判断が妨げられる状態で献金や物品の購入をさせて、多額の損害を被らせ、親族を含む多くの方々の生活の平穏を害する行為を行っているとの認識に到達したことは重要です。
今まで四十年以上の長期にわたって継続してきた被害の深さと広がり、その下で生まれ育ち、苦しみ続けてきた二世被害者の被害の深刻さは、これまで我が国の司法制度の下でも正面から捉えられてきたとは言えません。救済されるべき被害の全貌は、法案発議者の認識を大きく超えるものと言うべきであり、包括的な財産保全こそ被害者救済の要です。
正体を隠したマインドコントロールによる被害の深さと広がりを明らかにし、全ての被害者の被害を回復するためには、個々の被害者任せにしては絶対になりません。二世被害者が共通して、事件後、二世の声を聞き、私と同じような被害に遭っている方がいて驚いていますと訴えるとおり、被害者を分断するのではなく、包括的救済の道を国が主体的、積極的に進めるべきです。
歴代自民党政権が旧統一協会関連団体と深く癒着し、お墨付きを与え、広告塔となって被害を発生、拡大させてきたことへの真剣な反省に立つなら、完全に関係を絶ち、国が被害者救済に積極的に踏み出すべきことを強く求め、討論といたします。