10月9日 災害対策特別委員会(184回国会閉会中審査)

 「山陰豪雨災害(7月末)の早期復旧へ 査定前着工、直営施工への国の支援をもとめる」

 

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

 今般の梅雨前線や台風による大雨、局地的豪雨は、被災前から農業の疲弊と高齢化、過疎化の困難に直面してきた農山村や中山間地域にも甚大な被害をもたらしております。そこで、切迫した課題の一つであるなりわい、農業の再建支援について今日はお尋ねしたいと思います。

 七月二十八日、また八月二十三日、四日に再び豪雨にも襲われた山陰の豪雨被災地について、私、山口の萩市の須佐や田万川の地域、山口市の阿東の地域、そして島根県の津和野の地域を訪ねてまいりまして、鳥取も含めたこの三県では、以来二か月半がたって稲刈りの時期となっておりますけれども、立ち枯れた稲が広がって収穫ゼロという農家も続出をしております。

 これは多くが水の手当てができなかったからという、本当に残念なことでありまして、もし災害復旧事業が行われていたなら、用水路はもちろん、これが整備がまだ整わない間にも、水をくみ上げて流すというような事業とその燃料費も国が大きな支援をするということなどもできただけに、何とかならないのかという声が渦巻いております。私、これまでも速やかな復旧、中でも査定前着工の活用を求めてまいりましたけれども、遅々として進んでいないというのが現実の被災農家の皆さんにとっての姿なのではないかと思うんですね。

 そこで農水省に、この三県の農地被災箇所数と被害の総額、そのうち災害復旧事業が開始された件数、そして査定前着工の件数がどうなっているか、まずお尋ねします。

○政府参考人(實重重実君) 委員御指摘のとおり、山口県、島根県、鳥取県におきまして、度重なる豪雨によって農地と農業用施設に大きな被害が発生しているところでございます。

 御指摘の三県では、六月以降、十月八日現在の農地と農業用施設の被害箇所、被害額の全体につきまして今御質問がございました。山口県では三千九十三か所で六十五億円、島根県では五千四百五十三か所で九十二億円、鳥取県では九百六十四か所で十七億円、合計で金額が百七十四億円の被害が報告されております。

 これらの被害について既に災害査定を開始しておりますが、災害査定には若干時間が掛かります。そこで、これは台風が発生する、災害発生のおそれがあるような場合には、あらかじめ、委員御指摘の災害査定を待たないで査定前着工ができるという制度についてはお知らせをして活用していただくように申し上げてきたところでございます。また、被災直後から中国四国農政局の職員を現地に派遣をいたしまして、応急工事の査定前着工を含む技術的な指導、助言を行ってきたところでございます。

 被災箇所数について今、先ほど申し上げましたけれども、これを何か所かを一つにまとめまして災害復旧工事という形で進んでいくわけでございますが、査定前着工の制度を活用している件数を申し上げますと、山口県で五件、島根県で六件、鳥取県で三件で、現在十四件となっております。

○仁比聡平君 被災件数は九千五百十件、三県合わせればですね。うち、もちろんそれが母数にそのままなるわけではないけれども、査定前着工は僅か十四件というのが現実なんですね。ですから、伺いますと、復旧には三年掛かるというふうに言われた高齢の生産者がもうやめるしかないのかという声が上がり、ふるさとに戻った後継者も絶望するという事態が起こっております。ここで農業を続けたい、住み続けたいというその思いが断たれるなら、多面的な農業の機能も果たされなくなってしまうわけですね。

 そこで、まだぎりぎり間に合う田畑もあると思います。今期の収穫あるいは来期の作付けに間に合わせるためにも、この査定前着工が活用されるように、例えば、国の職員さんが現地に臨んでここは査定前着工できますよということでもう即日やりましょうと、そうした判断を典型的なところで重ねるなどして自治体への支援を強めるべきだと思いますが、いかがですか。
○政府参考人(實重重実君) 委員御指摘のとおりだと思っております。

 災害復旧事業は、被害の拡大とか二次災害の防止や作物被害の防止などを図るという観点から、査定前着工の制度を大いに活用してもらいたいと思っております。これは、被災の概要とか写真、こういったものをいただければ、それでもって早ければ即日着工をすることができるというものでございます。

 御指摘のとおり、職員が、これは災害が発生しますと現地に行きまして、地元の市町村の自治体の職員の方々と話合いをしたり、技術的な支援、それから制度についての御紹介、こういうことをやってまいります。その中で査定前着工の活用についても大いに話を今後ともさせていただきまして、活用がされるように更に努めていきたいと思っております。

○仁比聡平君 そうした人的な支援と併せて、あるいは周知と併せて、災害復旧事業での農家の負担をゼロにすることというのも大事なこととして私、課題があると思うんですね。

 加えてもう一つ、地域の建設や土木の業者の皆さんの疲弊、あるいは廃業に追い込まれるという中で、請負事業として発注をしようとしてもパワーが足りないというような現実も伺うところです。
 そうした中で、例えば萩市のある地域で、半年掛けて実った稲があぜ道が壊れていることによって刈取りに行けないと、これをこのままにしておくのは本当に忍びないという高齢の生産者からの連絡を受けて、ユンボを持っている比較的若手の生産者が行ってみたら、これは何とかなるんじゃないかということで自らユンボを動かしてあぜ道を言わば仮復旧したことによってコンバインが入れられて刈取りができた。しかも、その田んぼは、その生産者の方だけじゃなくて、つながっていますから、ほかの生産者の方も自分の田畑に行けるようになったということで大変喜ばれているんですけれども、これは完全なボランティアでされているわけです。

 こうした自らの力、持っているユンボなども活用してこの復旧につながっていくような事業を仮に復旧事業として行うことができるなら、これは本当にどんどん復旧を進める力にもなるし、住民や被災地の生産者団体の皆さんの何とかしたいという意欲にこたえて、加えて、被災農家の来期の収穫までは基本的に農業収入がないというそういう状況の下で、収入の一部でも応援してあげることができると思うんですよ。こうしたやり方を進めるということはできないんでしょうか。

○政府参考人(實重重実君) 災害復旧の事業におきましても、例えば市町村が事業主体でおられる場合でも、農業者の方が御自身たちで実施が可能という具合に考えられます場合には、そういう作業につきましては、今委員御指摘のような雇用の創出ですとかあるいはコストの縮減、農業者の方の負担の軽減、こういった観点から、農業者の方々の直営施工という形で実施することは可能でございます。直営施工制度といいます。地元からの要望も伺っておりまして、こういう地域に対しては既に周知を図っているところでございます。

 ただ、この実施に当たりましては、農業者の方に危険があってはいけませんので、写真などによって被災状況を確認いたしましたり、労働保険等に加入をしていただくですとか、あるいは事業主体から適切な施工管理や安全管理、あるいは終わったときの検査、こういったものをやっていただく必要がございます。現地の状況等を十分に把握した上で、農業者の方にやっていただける作業であるかどうか、こういったことをこの事業主体が判断することになります。

 地方農政局の職員が災害がありますと現地に参りまして技術指導といったことを行いますので、そういった機会等を利用しましてこの直営施工についても活用を働きかけるとともに、被災状況や農業者の方々の意向も十分伺いながら自治体と連絡調整を取って進めていきたいという具合に考えております。

○仁比聡平君 是非活用をお願いしたいと思うんですが、私がその三県のうちのある県で伺いますと、残念ながら活用実例というのはゼロということなんですね。それは、今局長からお話のあったような保険への加入や、あるいは施工管理などの地元の負担がなかなか難しいものがあると、しかも復旧の資材とか機械をリースしてくる必要があるというようなスキームにちゅうちょしているという面があるのかと思うんですね。

 私、そうした中で、例えば生産者や農業団体が自前で持っている機材をその直営施工の実施主体が借り上げるというような形を取るとか、せめて激甚災害に指定されるような大規模災害では地元の負担を軽減するような柔軟な考え方をするとか、あるいは市町村だけに限らず生産者団体などの実施主体をもっと柔軟に考えると、そうしたやり方をすれば、地域に、頑張ろうと、何とか復興しようというふうに頑張っている潜在力を引き出していく力になるのではないかと思うんですね。そういう現場の実態に見合った柔軟なスキームとして運用を是非速やかにしていただきたい、是非今期の災害でそこを突破してもらいたいと思うんですが、いかがでしょう。

○政府参考人(實重重実君) 農業基盤整備事業全体について申し上げますと実例はかなりございまして、二十四年度で百十五地区、延べ参加者の農業者の方を中心に八千五百四十三人、二億五千二百万円という実績がございます。ただ、災害復旧の場合には二十四年度は実績がございません。今委員御指摘のとおりございません。

 やはり災害箇所が危険であったり、あるいは今御指摘のように保険ですとかそういった手続があるというような点がございますが、機材等の面につきましては、例えばポンプが必要でしたら、国が相当、何百台と持っておりますので、これを貸し出して対応することもできます。

 このように、最大限、今御指摘のように柔軟に対応しながら、地元の要望に沿って対応ができるように努めてまいりたいと思います。

○仁比聡平君 もう一つ大変になっているのが、農業用機械の損害なんですね。自宅も納屋も、その中に格納していた大型のトラクターも土砂災害で埋まってしまって、もうどうすればいいのかという被災者の方に私もお会いをしましたが、このままにすれば離農ということになってしまう。

 この生産者の生産施設や農業用機械、ここに対する支援というのをどんなふうに進めるかという点ではどうでしょうか。

○政府参考人(高橋洋君) 今委員御指摘のような救済措置をとるために、被災農業者向けの経営体育成支援事業というものを適用しております。今年度の六月八日から八月九日までの豪雨と、それから九月中旬の台風十八号などの被害に対してこれを実施することにしておりまして、例えば、申し上げますと、六月から八月にかけての梅雨前線豪雨等による被害について、今ほど来御指摘の山口、島根、鳥取、この三県については、鳥取、島根県からはこの事業の申請はないわけですが、山口県において、二十二経営体、国庫補助金額で五千三百万円程度の活用を見込んでおります。この事業を活用して、引き続き支援に努めてまいりたいと考えております。

○仁比聡平君 この事業の適用についても、現場からは様々な、もっと充実をという声がありますので、これは来年度予算にも向けて是非充実を求めておきたいと思います。

 最後に、大臣、先般の国会で成立をした災害対策基本法の理念について、大臣から、大規模災害から地域住民の生活を立て直し安定をさせることにある、被災者一人一人の生活再建を図ることにあると、そうした理念も改めて明確にされているところなんですが、政府全体として、今日少しお話をした農山村を始め、経済的、社会的に疲弊した地域の復旧復興と、この実情と課題をつかんで今後の災害対策に反映させていくべきではないかと考えますけれども、一言お願いいたします。

○委員長(竹谷とし子君) 古屋防災担当大臣、簡潔にお願いいたします。

○国務大臣(古屋圭司君) はい、分かりました。

 災対法でも、基本理念、被災者の援護、それから復興法においても生活の再建、経済の復興、これ基本理念に入っていますね。やっぱり今指摘があった農村、こういった疲弊した地域には、被災者の生活再建を図る、極めて重要ですね。
 今、農水省からも答弁がありましたように、例えば査定前着工、更なる活用というのが取り組むべきことですし、また、被災者台帳の活用というのを市町村に促して、被災者一人一人へのきめ細かな支援、こういったものも取り組んでいきたいというふうに思っています。

 いずれにしても、被災者と被災地域と地方公共団体、そして関係省庁がしっかり連携をして、被災地域の復興、それから復旧復興を図ってまいりたいと、こういうふうに思っております。

○仁比聡平君 ありがとうございました。