○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
ちょっと通告と順番を変えまして、まず警察庁にお尋ねをしたいと思いますけれども、お手元に今資料が配られておりますが、せんだって警察庁の方で取り組まれてこられた令和五年度犯罪被害類型別等調査の結果が公表をされました。新聞記事にありますように、犯罪被害補償八割受けずということで、まずお尋ねしたいと思いますのは、賠償や公的給付金など金銭的な補償を受けていない人が七九・九%に上るという、こうした結果が示されているわけです。
私も、実際、犯罪被害者が実質的に補償を受けられないでいるという実情については様々伺ってきましたけれども、実際にこうしたアンケート調査を行った結果、七九・九%、つまり八割の被害者が補償を受けられないでいるというこの現実にはとても驚きましたし、重い結果だというふうに思っているんですけれども、取り組まれた警察庁としてはどのように受け止めておられますか。
○政府参考人(江口有隣君) お答えを申し上げます。
犯罪被害者等からは、これまでも、加害者の損害賠償責任が果たされず十分な賠償を受けることができていないとの声が寄せられておりまして、第四次犯罪被害者等基本計画におきましても、損害回復、経済的支援等への取組は重点課題の一つとされ、政府においては各種取組を推進しているところでございます。
今回の調査におきまして、犯罪被害者等の置かれている状況は様々ではございますけれども、議員御指摘のとおり、全体の約八割の方が事件に関連した給付、支給、賠償をいずれも受領していないと回答しているところで、されているところでございまして、引き続きの課題としてうかがわれているところでございます。
引き続き、関係府省庁と連携をし、犯罪被害者等に対する支援を充実させるべく取り組んでまいりたいと、このように考えているところでございます。
○仁比聡平君 課題としてというお言葉ありましたけれども、この課題というのがとても重いなと思っておりまして、うなずいてもいらっしゃいますけれども。
さらに、記事に続きに紹介されていますけれども、賠償交渉を行っていないのが八八%に上るというんですね。加害者と被害者の間での経済的な被害回復についての様々なやり取りを恐らく交渉というふうに呼んでいるんだと思うんですけれども、そうしたやり取りさえ行っていないという方が八八%、九割近いと。この点についてはどんなふうな受け止めですか。
○政府参考人(江口有隣君) お答えを申し上げます。
これまでも、冊子やパンフレット等の様々な媒体を通じまして、加害者側との損害賠償に関する訴訟等に係る各種手続を犯罪被害者等に御案内するなどの取組を推進しているところでございます。
今回の調査におきまして、犯罪被害者等全体の約九割の方が加害者側との損害賠償に関する訴訟や交渉等を行っていないと回答されておりまして、犯罪被害者等の置かれている状況は様々ではございますけれども、多くの方が訴訟等を行っていない状況がうかがわれるというところでございます。
現在、本委員会において御審議をいただいております総合法律支援法の改正により創設されることとなる犯罪被害者等支援弁護士制度につきましては、犯罪被害者等が弁護士による継続的かつ包括的な支援及びこれに対する経済的援助を受けられることとなるものと認識をしておりまして、このような状況の改善に資するものとも考えているところでございます。
引き続き、犯罪被害者等にそのニーズに応じた必要な支援をお届けできるよう、各種手続の周知を含めまして、関係府省庁と連携をして政府として取り組んでまいりたいと、このように考えているところでございます。
○仁比聡平君 警視庁が「被害にあわれた方へ」という表題の身体犯用被害者の手引という冊子を作っておられるのを御紹介をいただきました。その中に、犯罪被害者給付金の御紹介も含めて支援策の案内がされてはいるわけです。恐らくこうした取組を警察としては行ってきているということだと思うんですけれども、その結果がこのアンケートに示されている、交渉は行っていないというのが九割近いという現実だと思うんですよね。
確かに、法テラスで今後行うこととなる今回の法改正の取組というのはとても重要だと、おっしゃるとおりだと思うんですけれども、その一点で問題が解決するのかというと、そうではないという現実がその次の結果だと思うんですね。それは、様々な支援策があります、これを利用しなかったという人、その方々が七四・八%に達した、ここについてはどんな受け止めですか。
○政府参考人(江口有隣君) お答えを申し上げます。
今回の調査におきましては、いずれの支援制度も利用していないとの回答比率につきまして被害の時期別に見ますと、十年以上前が八二・〇%、十年前から三年前の間が、十年前から三年前までの間が五八・七%、三年以内が五六・一%と、近年の方が低くなってきておりますが、近年の方が低くなってきており、犯罪被害者等支援の進展がうかがわれるものの、いまだに高い状況にあるというのは事実でございます。
政府におきましては、これまでも、犯罪被害者等がそのニーズに応じた必要な支援を適時適切に受けることができるよう、基本計画等に基づきまして各種支援制度の周知、支援体制の整備などの取組を推進しているところでございます。
さらに、今般、警察庁におきましては、昨年六月の犯罪被害者等施策推進会議決定を受けまして、地方における途切れない支援の提供体制の強化に向け、有識者検討会で議論を行っているところでございます。
引き続き、関係府省庁、地方公共団体と連携をしながら、犯罪被害者等が必要な支援を受けることができるよう取り組んでまいりたいと、このように考えているところでございます。
○仁比聡平君 私、みんなで考えなきゃいけない問題だと思うんですよ、これ。様々な支援策の中には法テラスを始めとした法務省所管の支援策ももちろん含まれているわけですけれども、大臣は、そうした支援策を利用しなかった人が七四・八%に上るというこの結果についてどのように受け止めて、今後対応を考えておられますか。
○国務大臣(小泉龍司君) これまでも御説明、御答弁申し上げていることと重なりますが、犯罪被害者、またその御家族、被害回復のために必要な対応を自ら行うことが難しい、また経済的に困窮して弁護士による援助も受けられない、こういう状況がございます。
この委員御指摘の様々な犯罪被害者支援策を利用しなかった人、七四・八%というこの数値は、今申し上げたそういう状況の一端を示すものではないかと受け止めております。こうした犯罪被害者やその御家族に対し、早期の段階から包括的、継続的に法テラスで援助していこうと、そういう制度改正、新しい制度の創設を本法律案として提出をさせていただいたところでございます。
○仁比聡平君 今回の改正は重要なものだと私も思うんですけれどね。けれど、これだけで解決するかといったらそうではない。
こうした誰にも相談できないというこの被害者の実情というのは、これまでも例えば内閣府の男女共同参画で取り組んできた性暴力の被害者の実態調査などでも示されてきました。記事にも、児童虐待や性被害、ドメスティック・バイオレンスで高い割合を示しているということに要約されているとおりなんですね。
こうした中で、私たちが課題としてやっぱり捉えなきゃいけないと思うところは、大きく二つ私は今日申し上げたいと思うんですけれども、第一は、この訴えられない、相談できない、あるいは沈黙を強いられるという被害者の実情、心情にどう寄り添って取り組んでいくのかということ。もう一点は、相談をすれば、ここまでのハードルがとても高いんですけど、相談するというハードルが高いんですけど、勇気を奮って励まされて相談をすれば、人として尊厳が尊重され、被害の実情にかなう結果が得られる、少なくとも社会的に相当な補償が受けられるという、そうした制度とその国民的な周知ということがとっても大事なんじゃないかと思うんですよ。
日弁連がこの点で、二〇二三年の三月十六日付けで犯罪被害者等補償法の制定を求める意見書というのを出しています。これをよく御検討いただければと思うんですけれども、つまり、被害者がその尊厳にふさわしい処遇を保障される権利の主体であると位置付けられていることに基づいて、一たび犯罪が発生し被害が生じてしまった場合には、被害者等が日常生活を取り戻すための経済的支援を行うという国の責務をはっきりさせて補償法を新設すべきだという考え方なんですね。
これについて御検討が様々な場面であっていると思うんですけれども、少なくとも今回の調査結果を受け止めて、こうした結果になっている要因、そしてそれに対する対応策、これまでの支援策では足りないと、この抜本的な拡充を速やかに検討すべきだと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(小泉龍司君) 今回の法律の制定を、新しい制度の創設を一つの大きな契機として、それが犯罪被害者の方々にしっかり行き届くように、情報としても、あるいは手続としても、あるいは利用しやすさにおいても、本当に利用してもらえるものになるように、そういう努力をしっかりやっていくということが非常に重要だと思います。それが一点目。もう一つは、犯罪被害者の方々をもうみんなで守っていくんだ、みんなでケアしていくんだという国民的な意識、そういったものも醸成していく必要があると思います。その先に公費負担でどこまでできるかという今の御議論も出てくるとは思います。
まずはこの法律を通していただいて、これを契機として、犯罪被害者にこれが使ってもらえるようにする。様々な改善点はほかの支援策にもあると思います。そういったものも総点検する。そして、犯罪被害者の方々をみんなで、みんなで守っていくんだという国民的な意識をつくっていく。そういうステップを踏んで本格的な取組をしていく必要があるというふうに私は感じます。
○仁比聡平君 大臣が今おっしゃっているような、被害者を尊厳ある存在としてきちんと処遇すべきだという国民的な合意は既にあると思います。やっぱり制度として、あるいは補償の在り方として踏み出すときがもう来ているんだと思うんですね。
今検討されている犯罪被害者給付金に関わる水準の抜本的な引上げの問題だったり、あるいは、先ほども御議論ありましたが、同性婚、事実婚カップルの最高裁判決を受けた取組などについては、我が党の井上哲士議員が昨年十二月七日、それから今年四月九日の内閣委員会でそれぞれ抜本的な議論をしていますので、今日、私の方で申し上げることはしませんけれども、今、大きな転機に来ていると。警察庁はもちろんですが、法務大臣の責務はとても重いということを申し上げておきたいと思います。
残る時間、ちょっと関連をして、一昨日の委員会で提起をさせていただいた子供自身の代理人の問題について認識をもう一度深めておきたいと思うんですけれども、まず法務省にお尋ねしますが、子供は一般的に無資力で、弁護士費用を自ら負担できません。虐待というケースが典型ですけれども、親子が対立関係にある場合に、親に費用負担を期待するというのはそれは無理なことなわけですね。ところが、現在の法テラスの事業、民事法律扶助の事業では、子供さんが自分でその法テラスの援助を受けて弁護人を、弁護士を代理人として選任するということ、これできないというふうに聞いていますが、その理由はいかがですか。
○政府参考人(坂本三郎君) お答えいたします。
法テラスの民事法律扶助における代理援助では、法テラスが立て替えた弁護士費用等を利用者が償還する義務を負うため、未成年者が法定代理人の同意を得られない場合には代理援助の利用が認められていないということでございます。
もっとも、このような場合であったといたしましても、未成年者は、必要に応じまして、法テラスが日本弁護士連合会から委託を受けて実施しております子供に対する法律援助によって弁護士費用等の援助を受けることができるということとなっております。
○仁比聡平君 つまり、立替え償還制だから法テラスの事業は受けられないと。日弁連が、全国の特別会費、弁護士の特別会費ですね、あるいは善意のカンパで運営している委託援助事業ということに今現在なっているんですね。
あわせて、今の民事法律扶助では、前回、こども家庭庁も積極的な意義をお認めいただいた児童相談所への行政手続代理、これは対象になっていませんね。
○政府参考人(坂本三郎君) お答えいたします。
法テラスは、民事法律扶助における代理援助におきましては、認知機能が十分でない特定援助対象者が行政不服申立て手続において代理援助を利用する場合を除きまして、行政手続を援助の対象とはしておりません。
もっとも、児童虐待等の被害を受けた未成年者につきましては、児童相談所を始めとする適切な相談窓口を紹介する情報提供、児童虐待等の被害者に対する法律相談援助、あと、先ほど申し上げた日弁連の委託援助に基づく行政手続代理等に関する弁護士費用等を援助する子供に対する法律援助等の制度を利用することができることとなっております。
○仁比聡平君 そういう運用が今されていまして、お手元の資料の四枚目に、申し上げている委託援助業務というのは一体何かということを二〇二三年版の弁護士白書から御紹介をしました。日弁連の委託援助業務の概要という欄の⑥、人権救済を必要としている子供に対して、児童相談所などとの交渉だったり、子供の手続代理人の活動だったり、こうした費用を援助するという事業を法テラスに委託して日弁連が行っているということなわけです。
この援助、委託援助というのは、上の欄にあるように、元々は法テラスになる前の法律扶助協会が国からの補助金を用いない自主事業として行っていたもので、今も全国の特別会費やあるいは贖罪寄附によって運営をされていると、そういう理解でいいですよね。
○政府参考人(坂本三郎君) 委託援助事業は、日弁連に費用負担していただいておると承知しております。日弁連の方では、先ほど委員の御指摘にありました特別会費等を徴収して、その費用を捻出しておるというふうに承知しております。
○仁比聡平君 法テラスができて随分時間もたつ中で、この委託援助業務として行われてきたものから国が国費として位置付けていこうという取組というのはやっぱり幾つもあって、今回の犯罪被害者に対する取組も、③に犯罪被害者というところで援助内容を書いてある。これの一部を国費による法テラス事業にしていくんだということなんですよね。
これまで、生活保護の受給者に対する取組だったり、大規模災害の被災者への法律相談活動だったり、それからDV、ストーカー、児童虐待の被害者相談だったり、こうした事業を国費でやっていくんだという改定をしてきたじゃないですか。だから、本当に必要な相談というのは、犯罪被害者に対する取組はもちろんなんだけれども、私が申し上げているような子供代理人も含めてしっかりと実現をしていくと、そういう意味での抜本的な拡充を国として図っていくということが必要だと思いますけど、大臣、いかがですか。
○国務大臣(小泉龍司君) 方向性としてはそれが適切だと思います。具体的な進め方については、様々な法制度、様々な予算措置、こういったものを一度整理をして検討してみたいと思います。
○仁比聡平君 方向性としては適切という大臣の言葉は重いと思いますので、是非速やかな御検討と実現をお願い申し上げまして、今日は質問を終わります。