「婚姻関係の有無にかかわらず父母は互いに協力しなければならない」――離婚後「共同親権」を導入する家族法(民法)改定案が衆議院で一気呵成(かせい)に推し進められた。

 条文案が示されたのはわずか1カ月前。先立つ法制審議会では3年かけてコンセンサスが得られなかったのに衆院法務委員会はわずか6日21時間。自民や維新の議員からは「虚偽DV」などとDV加害者と見まごう質問が飛び交い、シングルマザー、とりわけDV・虐待から逃れ安心な生活をとり戻そうと苦しんできた方々から悲鳴に似た声が噴き上がるなか、まるで波風が激しくなる前にといわんばかりの拙速採決。ここにも翼賛国会の無残な姿がある。国民的合意に支えられるべき家族の基本法をこのように扱っては断じてならない。

 3月29日夜、勇気を奮い国会正門前に700人の当事者が集まった。参加したお一人がSNSに「子を寝かしつけ深夜に準備書面を作成している時、裁判の尋問に立ち震えながらしゃべる時、一人きりで怖かった。でも昨日、思った。私は一人じゃない。『私たち』だった。」と投稿された。

 2週間で151通もあつまった新婦人のアンケートには「怖がっているこどもの記憶を優しいお父さん像にすり替えましょうと真顔で言われた」「両親に育てられた方が幸せだと裁判官から言われ発狂した」などの体験が口々に語られている。

 衆院法務委員会採決の朝10万筆だった#STOP共同親権オンライン署名はその後3日で21万筆を超えた(4月15日午前)。これまで沈黙を強いられてきた多くの方々がつながりあげようとしている声に寄り添った丁寧な審議が尽くされなければならない。

 夫婦関係は破綻してもこどもの養育だけは協力して責任を果たそうとする関係性がありそれがこどもの利益にかなう場合はある。しかし愛情の強制はできない。こどもの意思に反する強制はこどもを傷付けることになる。こどもを主体に親子のあり方を考え直す国民的議論のときである。(しんぶん赤旗 2024年4月17日)