○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
私は共同親権についてお尋ねをいたします。
大臣は所信表明で、離婚後共同親権を導入する民法改正案を、児童虐待防止施策と並べて、困難を抱える子供たちへの取組として位置付けられました。法案の説明資料でも、子の利益の実現に向けた父母の離婚後の子の養育に関する見直しについてというふうに題されているわけです。
そこで、これまでの離婚後単独親権を変えて離婚後共同親権を導入することがどのように子の利益の実現になるのか、まず大臣にお尋ねいたします。
○国務大臣(小泉龍司君) 最も子供の利益のためを図ろうとすれば、御両親が離婚をせずにその家庭の中で子供が育つ、これが一番子供の利益でありますが、父母双方が離婚した後においても、父母双方が離婚後においても適切な形で子供の養育に関わる、そして責任を果たす、そのことによって子供の利益を守ることができるのだ、そういう考え方でございます。
本改正案は、そうした理念に基づいて、離婚後の父母双方を親権者とすることができるものとし、父母双方が適切な形で子供の養育の責任を果たすことができるようにすることで子の利益を実現しようとするものでございます。
○仁比聡平君 お手元の資料に、二枚目ですけれども、これも法務省の説明資料ですが、離婚後の子の養育の多様化を踏まえ、親権、養育費、親子交流等について、事案に応じた適切かつ柔軟な解決を可能とする規律を整備するというふうにありますけれども、大臣が今お述べになったことというのはこの説明のような趣旨ですか。事案に応じた適切かつ柔軟な解決を可能とするということが法務省の説明資料にありますが、大臣が先ほどお述べになった答弁はこれを意味しているわけですか。
○国務大臣(小泉龍司君) これまでは離婚後は単独親権だけしかなかったわけですけれども、共同親権を選び得る道も開くと。そして、適切な状況判断の下で、それは協議であったり、あるいは裁判所の判断であったりしますけれども、子供の利益にとって一番ふさわしい、一番適切な形態、共同親権なのか、単独親権なのか、単独親権の場合は、父親なのか、母親なのか、それは選べる、それを選べる仕組みになっているわけですね。
○仁比聡平君 果たしてそうなのかということが大問題なんだと思うんですね。
父母の葛藤が激しくて、夫婦関係は破綻して冷え切っていると、そういう場合、離婚する前に別居しているという場合もあります。そして、離婚するということになった場合も、子供の養育に関してだけは協力、共同して責任を果たそうと、そういう場合、それが子の利益にかなう場合というのは私も多くあると思うんですよ。けれど、それは子の養育、子供の養育については共同して責任を果たそうという父母の関係性が前提だと思うんですが、大臣はどう思いますか。
○国務大臣(小泉龍司君) まさにおっしゃるとおりです。父母の合意に基づいて共同親権を選ばなければ、共同親権を共同で、親権を共同で行使することはできません。そうなれば子供の利益を守ることはできないわけでありますので、父母のコミュニケーション、そして父母の理解、父母の合意、そういうものが調ったときには共同親権ということを選ぶことができますよと。今までそれ選ぶ道がなかったわけですよね。そういう制度でございます。
○仁比聡平君 選ぶことができるようになるというふうに大臣しきりに強調されるんですけれども、法案はそうではなく、合意ができない場合に裁判所が判断をすることができるという、そうした枠組みになっているわけですよ。大臣の今の御説明ぶりと法案の構造というのはどんな関係になるのかよく分からないですね、今の御説明では。
ちょっと別の角度で聞きますけれども、私は、別居や離婚の後も父母間で親としての責任を共同して果たすということが真摯に合意をされ、それが子の利益にかなうという場合は離婚後も親としての責任を共同しようと、それを親権と呼ぶのならばですよ、私は親権という用語を変えた方がいいと思いますけれども、親としての責任を共同しようということを親権と呼ぶのなら、共同親権とした上で、それでも実際の養育の中で意見が一致しなくなるということはあり得ますから、その調整などのもろもろの規律を定めるということはあり得ると思うんです。
けれど、それは、離婚後の監護について、現行法の七百六十六条で現に行われてきたことなんですね。離婚後の子供の監護、面会交流も含む、それを協議をして定めよう、それが定まらないときには裁判所で判断をするということがありますねというのは、現行民法の七百六十六条に規定されていることだし、それはしっかり運用されてきているわけですよね。にもかかわらず、その監護の共同や裁判とは別に離婚後共同親権を導入しなければならないと考えるのはなぜですか。
○国務大臣(小泉龍司君) 現行法においても、事実上、離婚後、親が監護権あるいは子供の世話、そういったものを共同で行う、合意ができて共同に行為ができる場合もあると思いますが、その場合においても親権者は片方なんですよね。どちらか、両方じゃないんです。片方の親は法律的に、法律的な立場は不安定です。法的な親権者ではないという形が残って、法的にはイコールフッティングではない、そういう不安定な状態に取り残されてしまう。そういうことを回避するために、それであったら両方の親が親権者だと合意できているわけです、実際行動できるわけですから。それであったら、法的に一緒の共同親権者だと定めていいんだ、それが適切だ、そういう判断に至っているわけであります。
○仁比聡平君 大臣の答弁、やっぱりよく分からないんです。
手も挙げておられましたから民事局長にお尋ねしますけれど、あの提案されている改正案、これは、今大臣がおっしゃったような共同行使の真摯な合意ができている場合の父母についてだけではなくて、共同行使の真摯な合意ができない父母にも裁判所が共同親権を定めることになっているのではありませんか。
○政府参考人(竹内努君) お答えいたします。
お尋ねの離婚後の親権者の判断につきましては、本改正案では、離婚後の親権者の定めについて父母の協議が調わないときは、裁判所が、子の利益の観点から、親権者を父母双方とするかその一方のみとするかを判断することとしております。この場合において、父母の協議が調わない理由には様々なものが考えられますので、父母の合意がないことのみをもって父母双方を親権者とすることを一律に許さないとするのは、かえって子の利益に反する結果となりかねないと考えております。
法制審議会家族法制部会における調査審議の過程におきましても、弁護士である委員、幹事から、同居親と子との関係が良好でないとか、あるいは同居親の子の養育に不安があるなど、父母の協議が調わない場合であっても父母双方を親権者とすることが子の利益のため必要なケースがあり得るという指摘がございました。
そのため、本改正案では、裁判所は、父母の協議が調わない理由等の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であるかなどの観点を含め、親子の関係、父母の関係その他一切の事情を考慮して、実質的、総合的に離婚後の親権者を判断すべきこととしておるものでございます。
○仁比聡平君 今の民事局長の御答弁は、父母の合意のあるなしだけで決めようとしているわけじゃないんですということなんですよね。
つまり、合意ができない場合、非合意型の共同親権を裁判所が定めることはあるという御答弁なんですけど、そうすると、先ほど来大臣がおっしゃっているように、子供の養育については共同して責任を果たそうという関係性がある場合ということが共同親権も選べるようにするんだという御答弁、御説明と、この法案の仕組みというのが矛盾しているということになりませんか。
○政府参考人(竹内努君) お答えいたします。
最後、先ほど大臣も御答弁なされたとおりで、父母が双方、父母双方が親権者として適切に子の養育に関わっていただいて、それが子の利益となるためには、父母の関係性がやはり重要な考慮要素の一つであるとは考えられると思っております。
そこで、本改正案においては、裁判所が、父母の双方を親権者と定めるかその一方を定めるかということを判断するに当たっては、子の利益のために父と母との関係を考慮しなければならないこととしております。その結果、例えば父母間での協議ができない理由などから父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるような場合には、その一方を親権者と指定することになるのではないかと考えます。
○仁比聡平君 今、民事局長が説明されておられる条文が資料の三枚目の八百十九条の改正案なんですけれども、分からないですよ、何を言っているか。
つまり、私伺う限り、父母間に親権を共同し、これを共同行使するという真摯な合意がない場合、できない場合であるけれども、ちゃんと共同行使ができる関係みたいなこと、何かそんなことをおっしゃっているのかもなとは思うんですけど、合意ができないのに共同ができるというのはどういう場合なんですか。
○政府参考人(竹内努君) 父母間で親権者に関する合意ができないというよりも、その御家族の関係性からいろいろなものが考えられるというふうに思っております。
先ほど少し申し上げましたように、同居親の養育にやや不安があるとか、あるいはその同居親と子との関係が良好でないとかいう理由で、別居親が子の養育にやはり関わった方がいいという場合が考えられるということでございます。
○仁比聡平君 そういう場合を裁判所が見極めると。法文の用語で言うと、共同して親権を行うことが困難か子の利益を害すると認められるなどのときは単独親権にしなきゃいけないということになっていますから、だから、そうではないと、共同の方が子の利益になるという場合を裁判所が認めるという話をしておられるのかなと思うんですけど、ちょっとそういうことがこの法文から読めるかという問題と、それから、実際どんなことを何の立法事実に基づいてやっているのか、説明がなされていると私には到底思えないんですね。
実際、法制審の家族法制部会の棚村政行委員が、要綱が採決された後にNHKのインタビューにこう答えています。共同親権が望ましい場合と単独親権の方がよい場合の基準や運用について十分な議論ができなかったと。ちょっと驚くべき御発言だと思うんですよ。
もう一人、法制審の部会委員をお務めになられた戒能民江委員の朝日新聞でのインタビューをお配りをしております。
御覧のとおり、二〇〇一年にDV防止法ができ、二十年余り掛けて蓄積して、ようやく被害者の安全を守ることができつつあります、それを後戻りさせてしまうような民法改正になってしまわないか強い懸念を持っています、指摘をされた上で、具体的にこんな指摘があります。殴られたからすぐに逃げるとは限りません、子供のことを考え、夏休みとか新学期まで待った上で、秘密裏に子供を連れて家を出ることは少なくありません、こうした場合は急迫の事情にしっかり含まれるのでしょうかという疑義ですよね。
当の法制審の委員が条文の意味や解釈について重大な疑義を出すと。これは大臣、コンセンサスが得られていないということなんじゃないんですか。
○国務大臣(小泉龍司君) これ、法制審に諮問しましてから答申、要綱の答申をいただくまでにちょうど丸三年、長ければいいというものでもないかもしれませんけれども、たくさんの論点があり、たくさんの御意見があり、それを丁寧に丁寧に聴取しながら議論を重ねてきています。
全ての意見がここに盛り込まれたわけではありませんので、いろいろな御反応もあり得るとは思いますけれども、運営を担ってきた法務省としては、完璧というわけにもそれはいきませんけれども、ベストを尽くしたに近い、そういう努力をしてきたということも事実でありまして、積み重ねてきたものの中にまだ足りないものがあれば、これからの御議論で補っていただくと、我々もそういうふうには考えております。
○仁比聡平君 大臣御自身が法案は完璧じゃないと言ったという話じゃないですか、今の御答弁は。
この戒能先生が指摘をしている今回の条文案で、どうなるのかという問題があれこれありますよね。これ、今後しっかりと議論されていかなきゃいけないんですけれども、その中で戒能先生がこうおっしゃっています。同居親の安心、安全は、子供が安心して暮らせる基盤となるものです、子供の利益を考えるならば、安心、安全をまず第一に考えなくてはならないはずですと。そのとおりだと思うんですよ。
大臣、いかがですか。
○国務大臣(小泉龍司君) 子供の利益を守るためには、安心、安全、これを守ることが不可欠だと思います。
○仁比聡平君 周りにいる大人から愛されて、養育者を信頼できる、そうした安心できる環境というのが子供にとって絶対必要ですよね。現行法の離婚後単独親権は、そうした同居親と子供の安心、安全の防波堤になっているという現実があります。
父母間に真摯な合意がない場合に共同親権とその行使を求めるということが、別居親の干渉だとか支配を復活、継続させる仕掛けに使われ、子の権利や福祉を損なうことにならないかと、そこに根本的な問題があるんだと思うんですよね。大臣うなずいておられますけれども。
大臣、改正条文によって新たな人権侵害が起こってはならない、改められる条文がそうした危険をはらむものではあってはならない。それはいかがですか。
○国務大臣(小泉龍司君) この直前の御答弁で申し上げたように、子供の利益を守るためには、子供の安全が確保されなければなりません。法改正によって、新しくそういうリスク、危険が増してくるということはあってはならないと思います。
○仁比聡平君 そのとおりでありまして、そうした危険はないんだと言えるためには、被害者や専門家から噴き上がっている数々の不安や懸念に安心できる回答が示されなければならないと思います。大臣もうなずいておられるとおりです。肝腎なのは子供の権利と福祉の保障なんですから、申し上げてきたようなキャッチボールがなされないまま押し切るようなことがあっては絶対ならないと強く指摘をしておきたいと思うんですが。
戒能さんは、今の日本ではDV被害者は逃げることでしか保護されないとおっしゃっているんですが、民法改正によって子連れ別居が違法と判断される可能性が出てくれば、これあらゆる取組が萎縮しかねないと指摘をしていますが、民事局長、この法案によって子連れ別居は違法とされるんですか。
○政府参考人(竹内努君) お答えいたします。
委員御指摘の点は、今回の改正案のうち特に急迫の事情のところに係るものだというふうに解釈をいたします。
子の利益のため急迫の事情があるときというふうな文言を使いましたが、これは、父母の協議や家庭裁判所の手続を経ていては適時に親権を行使することができず、その結果として子の利益を害するおそれがあるような場合をいい、DVや虐待からの避難が必要な場合はこれに該当するというふうに考えております。
先ほど委員の御指摘の中で、暴力や虐待の直後ではなくて、子供の夏休みや新学期を待って家を出るというようなお話もされましたが、法制審の家族法制部会におきましては、この急迫の事情が認められるのは加害行為が現に行われているときやその直後のみに限られず、加害行為が現には行われていない間も急迫の事情が認められる状態が継続し得ると解釈することができると確認をされております。
したがいまして、先ほど委員御指摘のような暴力や虐待の直後でなくても急迫の事情があると認められると考えておるところでございます。
○仁比聡平君 そういう議論を本当に徹底してしなきゃいけないし、普通、一般にそういう事態のことを急迫という表現はしないんですよね。
だからこそ様々な議論が起こってしまっていると思いますが、この別居ということに関わって、総務省においでいただいていますが、住民基本台帳事務におけるDVや児童虐待、ストーカー等の対策として行われる支援措置、これはどのような措置で、主な相談機関はどこで、支援の必要性がどのように判断されるか、簡潔に御説明いただけますか。
○政府参考人(三橋一彦君) お答えいたします。
住民基本台帳事務におきましては、DV、ストーカー行為等、児童虐待及びこれらに準ずる行為の被害者の相手方が住民票の写し等の交付などを不当に利用して被害者の住所を探索することを防止するDV等支援措置を実施しております。
具体的には、DV等を受けた方から市町村長に申出があった場合に、その相手方が当該申出者の住所を探索する目的で住民票の写し等の交付などの請求を行うおそれがあると認める場合に、その交付などをしないことができることとするものでございます。
本措置の実施に当たりましては、市区町村長の判断の客観性を担保するため、専門的知見を有する警察、配偶者暴力相談支援センター、児童相談所等の相談機関の意見を聴取することなどにより支援の必要性を確認することとしております。
○仁比聡平君 ありがとうございました。
九枚目の資料に令和元年以降の実施件数、対象者数を示しておりますけれども、令和元年の六万四千件、十三万八千人というところからどんどん増えているわけですが、令和五年での推移はどうなっていますか、数字はどうなっていますか。
○政府参考人(三橋一彦君) お答えいたします。
住民基本台帳事務における令和五年度のDV等支援措置の実施件数及び申出者の、子供などを合わせて支援を受ける者を含めた対象者数は、令和五年十二月一日時点でそれぞれ八万三千九百十六件、十七万三千八百七十五人となります。ただし、この数字は、能登半島地震の影響により未回答の一部の団体を除いた数字というふうになっております。
内訳につきましては、DVは実施件数で三万七千六十二件、対象者数で八万五千四百六人、ストーカーは三千二百十七件、六千八百十二人、児童虐待は三千四百六十八件、七千三百六十五人、その他は四万百六十九件、七万四千二百九十二人となっております。
○仁比聡平君 これだけの方々が居場所を絶対に知られたくないと恐怖をしているというのは重いことだと思うんですよね。DVの本質は支配し従属させるということであって、こうした被害に取り組んでいる配偶者暴力相談支援センターや児童相談所は、それぞれどんな構えで相談や支援を行い、この支援措置については意見を述べておられるんでしょうか。
○政府参考人(小八木大成君) お答え申し上げます。
配偶者暴力相談支援センターにおきましては、被害者からの相談を受けるに当たりまして、被害者に寄り添い、被害者の意思を尊重した対応が重要であると考えております。このため、被害者の相談対応に当たる職員につきましては、被害が潜在化しやすいというふうなことの配偶者からの暴力の特性を十分理解した上で、被害者の立場に配慮して職務を行うことができるよう、積極的に研修の機会を提供することとしております。
また、個々の相談に対しまして、被害者からのお話を十分にお聞きした上で、どのような援助を求めているのかを把握し、被害者の抱える問題を適切に理解して助言を行うこととしております。
御指摘の支援措置につきましては、措置の申出を受けた市町村長からの、市町村長からの照会に応じまして、各センターにおいてただいま申し上げたような姿勢で被害者からお聞きした内容を踏まえ、相談機関の意見を記載しているものと認識しております。
○政府参考人(野村知司君) お答え申し上げます。
児童相談所でございますけれども、全ての子供が心身共に健やかに育ち、その持てる力を最大限に発揮することができるよう、子供及びその家庭などを援助することを目的として、常に子供の最善の利益を優先して、個別の相談事例が児童虐待に該当するかどうかの判断を含めた相談援助活動などを行っているところでございます。
児童虐待の被害を理由とする支援措置申出書に係る確認書の送付を児童相談所が受けました場合は、児童相談所において、この確認書における申出者の状況に相違ないものかどうか児童記録票などの記録に基づいて確認した上で対応を行っていくと、かような段取りになってございます。
○仁比聡平君 それぞれ本当に御苦労さまでございます。
時間の関係で、大臣に一問だけ聞いて終わりたいと思うんですけれども。
今のような取組の中で支援措置というのが出されています。ところが、一月、衆議院の予算委員会で、大臣も御答弁に立たれていますけれども、維新の市村議員が、そうした支援措置を受けている人も含めて、裁判所が保護命令、これ令和四年で千百十一件ですけれども、を出したもの以外は、九九%でっち上げ、虚偽DVだと非難をする質問を行いました。千百十一件の裁判所による保護命令が出された以外の相談、その中には当然今申し上げているような八万数千件の支援措置の対象者も含まれているわけですが、これをでっち上げ、虚偽DVだと非難する質問を一月の衆議院の予算委員会で行われたでしょう、質問をされたでしょう。
私は、今伺ったような相談機関それぞれの専門性や支援の取組の中で、支援の必要性が確認されているものを虚偽DVだと言って非難をする、その支援に取り組む弁護士たちを誹謗すると、これは誤りだと思いますが、大臣、いかがですか。
○国務大臣(小泉龍司君) 当事者の主張の当否、これは各個別の事件ごとに事実関係に基づいて判断されるべきものでありますが、保護命令が発令されていないことのみをもってDVの主張を全て虚偽だと評価することはできないと考えております。
○仁比聡平君 時間が参りましたので、続きは後ほどの予算委嘱で行いたいと思います。

 

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
先ほどの大臣所信質疑に続いて、共同親権に関わって、まず最高裁にお尋ねをしたいと思います。
先頃、深刻なDV被害を訴えておられる当事者が超党派の勉強会に御参加になられまして、裁判所から、あなたには保護命令は下りないから取り下げなさいと言われて深く傷ついている、そうした思いをお訴えになりました。
裁判所はDV被害にまともに向き合ってくれないと、そう訴えている当事者、国民の皆さんはかなりの数いらっしゃると思います。私自身、広く聞かれるというふうに思うんですけれども、こうした声について最高裁はどう受け止めていますか。
○最高裁判所長官代理者(福田千恵子君) お答えいたします。
まず、申立ての取下げに関してでございますけれども、裁判所において申立てを強制的に取り下げるといった例があることは承知をしておりませんが、却下決定が見込まれる場合において、裁判所が申立人に対して申立てを維持するかどうかを、その意向を確認することはあるというふうに承知をしております。
もっとも、その際に、取下げを強制していると申立人に受け止められることがないよう十分に配慮をする必要があると考えておりますし、また、申立てに対しては適切に審理、判断をする必要があるというふうに考えております。
○仁比聡平君 男女共同参画白書の令和五年版にはそうした保護命令の運用状況についての図が掲げられているんですけれども、令和四年でいいますと、取下げ等が二百四十九件あるということが明らかです。もちろん、その中にはいろんなものがあるでしょうということであるんですけれども、被害者が保護命令の申立てに至るというのは、これはよほどのことなんですよね。そう簡単に保護命令を申し立てるということはできない。ですから、当の裁判所から、申し立てている裁判所から、あなたには保護命令は下りないというふうに言われてしまうということがどれだけ深刻なことか。
今回、共同親権を裁判所が判断することがあり得るというそうした制度が議論される中で、一つの例だと思うんですけれども、こうした保護命令の取下げを促すということだったり、そうした事態に至った事情を分析し検討したと、これを家族法制部会に示したということがありますか。
○最高裁判所長官代理者(福田千恵子君) お答えいたします。
取下げは申立人の判断において行われるものでありますところ、取下げを行うに際し理由は求められておらず、また取下書に通常理由は記載をされませんことから、裁判所としては申立人が取下げに至った事情について把握をしておりません。このため、取下げに至った事情について分析や検討をしたことはございません。
そして、今委員御指摘のこうした内容を法制審議会家族法制部会において示したことがあるかどうかということに関しましては、示したことはないというふうに理解をしております。
○仁比聡平君 部会の方から求められたこともないんじゃないかと思うんですけれども、そうした審議になっているんじゃないか。強制的に取り下げさせるというのはあり得ないことだと思います。ですから、ですからというよりも、にもかかわらず、取下げということに至って深く傷ついた訴えが随分時間がたってからさえなされると。そのこと自体、沈黙を強いられてきたのではないか、重く受け止めるべきだと私は思うんですね。
大臣にちょっと別の角度で伺いたいと思いますが、親が子の権利や福祉を害するという多くの事態が本当に残念なことながら現にあると、それが社会の現実なんだと思うんです。そして、そうした権利侵害を行う親、加害親の弁解として、例えば、親権者なのだからどうしようが自由だとか親としてのしつけだといった類いの、親権が弁解としてしばしば持ち出されるということがありますけれども、このことをどのように考え、それが、共同親権の行使、これ現行法でも婚姻中は共同親権ですから、その行使だったり、あるいは改正案による離婚後共同親権、これを認めるのか認めないのかといった判断に当たって、どのように判断をしようというのでしょうか。
○国務大臣(小泉龍司君) この法案にも書いてございますけれども、親権は子供のために行使しなければならないものであって、親権行使の名目で親が子の権利を不当に侵害するということは許されないものであります。また、本改正案においてもこのような親権の性質を明確化しています。親権に服するという現行法の書き方、これを改めて、親権は子の利益のために行使しなければならないということを明確化しております。
また、本改正案では、裁判所が親権者の定めをする場合には父母と子の関係を考慮しなければならないこととしており、父母が親権を適切に行使しているかどうかも重要な、親権者を決めるときの重要な考慮要素の一つになります。例えば、子供に対する虐待があるような場合は単独親権とするなどの配慮が働くわけでございます。
○仁比聡平君 重要な考慮要素の一つというふうなおっしゃり方で本当に安心できるのかと、そこが今問われているんだと思うんですよ。
どんな深刻な実態があるのかということに関わって、お手元に、こども家庭庁の方で出していただいた児童相談所長又は施設長等による監護措置と親権者等との関係に関するガイドラインをお配りをいたしております。
こども家庭庁、この趣旨を御説明いただけますか。
○政府参考人(野村知司君) お答え申し上げます。
今し方御指摘のございましたガイドラインでございますけれども、これは、平成二十三年の民法等一部改正法による児童福祉法の改正において、児童の親権者などが、児童相談所長や児童福祉施設の施設長あるいは里親などが行う監護及び教育に関する措置を不当に妨げてはならない旨を明確化したこと、こういったことを踏まえて策定をしたものでございます。
このガイドラインでは、児童相談所、施設、里親などの対応に資するように、親権者による不当に妨げる行為の考え方であるとか例示であるとか対応方法などについてお示しをしたものでございます。
○仁比聡平君 三ページ目から五ページ目辺り御覧いただきたいと思うんですけれども、詳細に具体的な親が子供を害する場合というのが列挙されているわけですが、親権者等の意向に沿った場合に児童に不利益を与えてしまうという場合について、例えば、正当な理由なく、児童が必要とする契約や申請に同意せず、又は妨げる行為、例えば携帯電話や奨学金、自立する際の賃貸住宅や旅券など。あるいは、児童が希望しており、適切と考えられる就職や又はアルバイトについて、正当な理由なく、親権者などが同意せず、又は妨げる行為。又は、児童に必要とされる医療での診察、検査、治療、入院を含む、を正当な理由なく受けさせない行為、いわゆる医療ネグレクト。児童に必要とされる予防接種や健康診査等の保健サービスを正当な理由なく受けさせない行為。学校で通常行われている授業や行事について、正当な理由なく、出席や参加をさせない行為。児童の意思に反し、学力等に見合わない学校への進学を要求する行為。正当な理由なく、児童が希望する進路に同意しない行為。児童の望まない又は参加困難な部活動、習い事、学習塾などを強要する、要求する行為などなど、親がこうあれという意向によって行う行為がその子供の権利を害するという場合が具体的に様々指摘をされているんですが、こども家庭庁、こうした不当に妨げる行為というのはどのようにして取りまとめられたんでしょうか。
○政府参考人(野村知司君) お答え申し上げます。
このガイドラインでございますけれども、児童相談所長であるとか児童養護施設等々における監護措置と親権者の行為とかの間で、葛藤といいましょうか違いというか、がある前にどうするのかということで整理したわけでございますけど、その取りまとめに際しましては、この平成二十三年の児童福祉法の改正に向けての議論でございますとか、あるいは施行準備の過程を通じて、当時の担当は厚生労働省の担当部署ということにはなりますけれども、そちらの方で、児童相談所あるいは社会的養護の現場において対応に苦慮する場面として指摘をされたり、あるいはそういったものとして想定されたりするものを検討、整理をし素案をお示しした上で、自治体などの関係者に広く御意見をお伺いして作成をしたもの、そういったものでございます。
○仁比聡平君 ありがとうございます。
つまり、担当者が頭の中で考えたとかいうんじゃなくて、現実に日本社会の中で行われて、起こっている虐待あるいは不当行為ということの抽出なんですよ。
そうした中で、私、重い、とても重いものだと思うんですが、そうした中で、医療ネグレクト、この実情と、それが子の心身に与える重大な影響について御紹介いただけますか。
○政府参考人(野村知司君) お答え申し上げます。
このガイドラインにおきましては、いわゆる医療ネグレクトに該当するものとしては、児童に必要とされる医療、この医療といいますのは精神科を含む医療機関での診察、検査、治療で、この治療といいますのは薬物療法、処置、手術あるいは入院によるもの、そういったものなどを含めでございますけれども、こうした医療を正当な理由なく受けさせない行為といったものを例示として掲げさせていただいております。
こうしたいわゆる医療ネグレクトにつきましては、児童虐待に該当し得るものであって、子供の生命、身体に危険が及び得るものでございまして、こういった医療ネグレクトを含めた児童虐待の発生防止に引き続き取り組んでいく必要があると考えております。
○仁比聡平君 厚生労働省にお尋ねしますが、こうした医療ネグレクトという現実もあるという下で、医療現場において親権者はどのように位置付けられているんでしょうか。
○政府参考人(宮本直樹君) お答え申し上げます。
医療は医療従事者と患者との信頼関係に基づいて行われることが重要でございまして、医療法においては、医師等の医療の担い手は、医療を提供するに当たり、適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るように努めなければならないと規定されております。
一方、現行の医療法上、親権者を含め本人以外の第三者の決定、同意について医療法上にルールは存在いたしませんけれども、患者の個別の病状や判断能力に応じて医療現場で適切な医療を提供しているものと承知しております。
○仁比聡平君 医療法上と御紹介があったのは、医療法第一条の四第二項にインフォームド・コンセントの理念として、医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならないという規定をされている条文です。この条文が医療を支えているわけであって、の土台なわけであって、医療法上、親権者という規定はないんですよね。
この医療と親権の関わりについて、大臣、衆議院の本会議でも御答弁を一部されてはいるんですけれども、ちょっと私よく分からないんですよ。
つまり、離婚後共同親権となった場合、子供の医療は同居親だけで決められなくなってしまうのか、別居親の合意が得られなければ家裁の判断を必要としてしまうのか、そもそも医療における親権者の同意って何ですかと。医療法の世界には、それが規定はない、そういう概念はないのに、何でそれが親権の名で語られてしまうのか、今。いかがですか。
○政府参考人(竹内努君) お答えいたします。
まず、法制度の面ですが、子の利益を確保するためには、父母双方が離婚後も適切な形で子の養育に関わっていただいて、その責任を果たすことが望ましいと考えております。もっとも、父母の双方が親権者である場合でも、父母間の協議を経ていては適時に親権を行使することができないようなときは、父母単独の判断であっても迅速に決定する方が子の利益に資することになると考えられます。
そこで、本改正案では、父母双方が親権者であるときは、父母が共同して親権を行うこととしつつ、子の利益のため急迫の事情があるときや監護又は教育に関する日常の行為をするときは、親権の単独行使が可能であるとしております。
委員御指摘の子の医療行為に関する決定に関しましても、子の心身に重大な影響を与えるような医療行為については、一般的には、父母双方が熟慮の上で慎重に協議し判断することとなると考えられ、そのことが子の利益に資することになると考えております。他方で、緊急を要する治療につきましては急迫の事情があると認められますし、また軽微なけがや風邪等の治療につきましては、監護に関する日常の行為と認められ、そのような協議を経る必要はないこととなると考えられまして、そのことが子の利益に資することになると考えております。
○仁比聡平君 家庭裁判所の実態からして、審判の、審判というか、調査の期日、調停の期日だってそんなに簡単に入らないのに、二か月先みたいな話になっちゃうのに、適時適切に判断なんかできるわけがないという批判があるのはもちろんなんですけどね。私が今問うているのは、医療の世界で、今局長がおっしゃったような重大な影響とかいうことを裁判所が判断するような、何かそんな枠組みの話なんですかと。インフォームド・コンセントというのはそういうことではないようにも思うし、その辺りの議論というのはどうなっているんですかと。全国の病院あるいは医療の関係者から懸念の声が急速に上がっているというのは、この医療という問題についてどう考えるのかということが問われているからなんだと思うんです。
保育についてお尋ねをします。
保育所への入所や保育の実施や退所などにおける保護者の役割と親権者という概念の関係についてはどう考えるんですか。
○政府参考人(黒瀬敏文君) お答え申し上げます。
保育所の入退所に関する手続につきましては、子ども・子育て支援法に基づいて、保護者が市町村から保育の必要性認定を受けた上で、保育所の入所申請、入退所の申請を行うこととされてございます。
そして、同法におきまして、保護者とは、親権を行う者、未成年後見人その他の者で、子供を現に監護する者と定義をされているところでございまして、そして、この現に監護する者に当たるかどうかにつきましては、どの程度子供の監護を行っているか、関わっているかという点を市町村が確認をして、各家庭の事情を十分踏まえた上で判断することになりますため、子供の親権を有していることのみをもって当該子供の保護者になるというものではございません。
したがって、子供の親権を有していたとしても、子供を現に監護する者に当たらない父又は母については同法上の保護者には当たらないため、例えば、両親が葛藤をしている、高葛藤な状況で別居しているような場合におきましては、保育所の入退所のための手続は子供を現に監護する者のみによって行うことが可能となってございます。
○仁比聡平君 保育についてそういう議論があって、それは、受験や進学、転校や居所の変更、パスポートの取得や手当や給付金、あるいは税務上の控除といった子育ての様々な場面で、保護者とかあるいは親権者とか法定代理人とか、そうした条項というのは相当の数あるんですよ、私もちょっと調べかけていますけど。それぞれ利益状況が違う、問題の状況が違う、それぞれ規定があり、基準があり、運用をされていると思うんですが、そこの場で真の子の利益とは何かということを見極めていくためには、それらの基準や運用を全て明らかにして、ちゃんと確認をしなきゃいけないと思いますが、大臣、いかがですか。
○政府参考人(竹内努君) お答えいたします。
法令において親権者ですとかあるいは保護者等の合意や関与が必要とされている事項に関しまして本改正法が影響を及ぼすかどうかなどにつきましては、一次的にはそれぞれの法令を所管する関係各府省庁等において検討されるべき事柄でありまして、法務省において関係法令の規定や運用の基準を明らかにすることはなかなか困難な面もございます。
しかし、当然のことながら、法務省といたしましては、この法案提出に至るまでの間に関係府省庁と検討を行ってきたところでありまして、その際には、法律関係が類似いたします婚姻中別居の場合の各法令における取扱いを参考にいたしまして、離婚後共同親権を導入した場合にどのような取扱いがされることになるかについて検討してもらうよう、協議を重ねてきたところでございます。
今後も、本改正案の趣旨が正しく理解をされ、離婚をされた方々が各種手続において困惑することのないよう、関係府省庁と連携してまいりたいと考えております。
○仁比聡平君 今後の連携の問題じゃなくて、法案の前提でしょう。他省庁に、そうやって何だか、げたを預けてというか、どうするんですかと私は思います。
この乳幼児を含む子供の意思や心情を把握して配慮するというために、特別の取組が今行われています。時間がなくなってしまったので、ちょっとこども家庭庁に御答弁をいただくことはできないのかもしれませんけれども、子供の福祉と権利ということを考えたときに、法案に言う子供の人格の尊重というだけにとどまらず、そこに子の意見表明権をしっかり明記し、子供の利益をしっかり考えていくんだと、そうした議論をこの国会で進めるべきだというふうに思います。
よかったら、こども家庭庁、御答弁いただきたいと思いますが。
○委員長(佐々木さやか君) 申合せの時間を過ぎておりますので、簡潔に御答弁をお願いいたします。
○政府参考人(野村知司君) お答え申し上げます。
こども基本法の基本理念において、全ての子供について、その年齢及び発達の程度に応じて、自己に直接関係する全ての事柄に関し意見を表明する機会が確保されるということがその基本理念に掲げられております。したがいまして、こども大綱の中でもそういった旨というものを盛り込んでいるところでございます。
こども家庭庁といたしましては、こういった子供の意見を聞こうという取組を広げていけるように、各種取組、進めてまいりたいと考えております。
○仁比聡平君 ありがとうございました。