○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
五月十四日、その前は四月の二十三日に、原発構内での特定技能一の作業についてお尋ねをしましたが、東電福島第一原発事故の収束、そして除染も含めて、三たびお尋ねをしたいと思います。
前回、経産省の製造三分野について、原子炉内部に留置されている汚染物質の除去などの作業に特定技能外国人を従事させることは想定をしておりませんと答弁をする一方で、原発構内におきましては様々な作業があり得ますので、特定技能外国人が原発構内で従事することの可否については一概に申し上げられない、個々の事案については出入国在留管理庁が個別に審査することになると経産省は答弁をされました。
そこで、長官にお尋ねをしたいと思いますが、この原発事故の収束それから除染、こういった作業での受入れの可否、その作業に必要な専門用語も含む日本語能力の基準や、それを確認する手法というのを、これ法務省は持っているんですか。
○政府参考人(佐々木聖子君) 入管関係法令におきまして、今御下問の原子力発電所における業務に関する特段の基準というものは設けておりません。
その上で、どのように判断するのかというお問いですので、申請に係る活動内容が特定産業分野に該当すること、それから受け入れる外国人が求められる技能水準、日本語水準を満たしていることなどについて、関係法令及び分野別運用方針等に照らして個別に判断をいたします。
○仁比聡平君 原発構内あるいは放射線管理区域内などの、そうした環境下での作業の基準、受入れの基準や日本語能力の基準というのは法務省は持っていないわけです。
元々、この特定技能一の制度の組立てというのは、そうした作業について十四分野に限定をし、その十四分野をそれぞれ所管する省庁、ここが必要な能力を試験などをしてこれ確認をしていくと、そういう組立てのはずであって、そういう基準もないのに個別に入管が審査する、これはとんでもない話なんではないですか。
経産省に先に確認しますが、今申し上げているような基準あるいは確認の手法というのは経産省は定めているんですか。
○政府参考人(新川達也君) お答え申し上げます。
製造三分野において特定技能外国人を受け入れる際には、一般的に国際交流基金日本語基礎テストの合格又は日本語能力試験でN4以上の水準を求めております。
しかしながら、福島第一原発での就労に当たって、放射線に関する知識や作業指示の理解等に必要な日本語能力について定めた特段の基準は設けられていないと承知をしております。
○仁比聡平君 定めていないわけです。
その下で、東京電力が三月二十八日に協力企業に対する説明を行ったということは前回政府参考人が答弁をされたわけですけれども、そこでの東電の説明なんですが、朝日新聞によると、日本語能力の確認は元請や雇用企業に求めているというふうに報じられているんですね。
これ、制度そのものを歪曲する極めて無責任なやり方じゃありませんか。基準は分野別運用方針で定められなきゃいけない、そこに定められていないものはこれは受け入れないというのが基本的な政府の説明だったでしょう。これ、東電がこうした説明をしている、これは制度を歪曲するものだとは経産省は考えないんですか。
○政府参考人(新川達也君) 三月二十八日に東京電力が関係事業者に周知を行った際に、必要な日本語能力について、東京電力は事業者に対し、放射線量の正確な理解、班長や同僚作業員等からの作業安全指示等の理解が可能な日本語能力が必要と考えられることを周知し、法務省や特定分野の所管省庁等により示される方針に基づいて対応していくことを求めたと承知をしております。
○仁比聡平君 おかしいじゃないですか。省庁が、関係機関が求める基準というのがないのに、それに基づいて外国人を受け入れると、これあり得ないでしょう。基準がないものを従えといって周知したって何の意味もない。それはつまり、受入れ制度そのものを歪曲しているということじゃありませんか。経産省、いかがですか。
○政府参考人(新川達也君) お答え申し上げます。
この段階におきまして、現時点においてもそうでございますけれども、福島第一原子力発電所で受け入れるに当たっての日本語能力の基準がないという状況の中で、東京電力は、今申し上げたことの周知、それから対応を、今後の方針に基づいて対応していくことを求めたということと承知をしております。
○仁比聡平君 何を言っているのか全然分からないでしょう。これ、分野別運用方針に基準がない、である以上は審査のしようもないですから、これ受け入れられないんですよ。これ、そういう仕組みでしょう。そう国会でずっと説明してきたじゃないですか。
これ、先に国交省にもお尋ねしたいと思いますけれども、先週、五月の十六日に超党派議連の国会エネルギー調査会が行われまして、ここでびっくりする発言をされているんですね。前回の私の質疑までは基本的に想定していないというふうにおっしゃっていたと思いますが、主たる業務に付随して行う関連業務が仮に除染や除雪だった場合には、これが日本人と同等の取扱いであればそれは差し支えないというふうに説明をされました。
これ、建設の特定技能一で受け入れると言っている職種、これ主たる目的だというふうにすれば、除染とかあるいは原発構内の作業でも、関連業務ならこれ認められるなんというようなことを一体どこに書いてあるんですか。分野別方針の、十二月二十五日に閣議決定をされた、ここにはそんなこと全然書いていないでしょう。これ、除染と受け入れると言っている職種を同列に並べるというのは、これどんな認識をしているんでしょうか。
○政府参考人(北村知久君) 今回の外国人の受入れ制度におきましては、分野別運用方針に基づいた業務について働いていただくために外国人の受入れを認めているものでございますけれども、関連して付随的に行うものについてはできるということで、あくまでもメーンの仕事ではないけれども、関連するものにはできるというような取扱いに一般的になっているというふうに承知しております。
○仁比聡平君 今、一般的になっているというようなことをおっしゃるんだが、お手元に資料をお配りしました。
今年、平成三十一年三月付けで、法務省、国土交通省の連名で、分野別運用方針、閣議決定したものとは違う運用要領、建設分野の基準についてというのを出しておられまして、ここの二枚目ですね、「建設工事に該当しない除染・除雪等の業務に従事させることを主な目的としている場合は、建設業への従事を目的とした受入れに該当しない」としながら、「ただし、これらの業務について、同じ特定技能所属機関に雇用され、特定技能外国人と同様の業務に従事する他の技能者が従事している場合、特定技能外国人に同程度の範囲内で従事させることは差し支えありません。」と書いてあるわけです。
これ、例えば、除染で放射線量がすごく高い土壌を重機で掘削をしたり運んだりする、そうした作業を行うということになれば、これは安全を確保するために相当な注意やあるいは義務付けが必要なんですよね。ところが、それを、皆さんが試験で確認すると言っている職種の日本語能力、これのみで、原発構内あるいは高濃度の放射線があるような地域、そうした地域で作業をさせるときに特段の義務付けを全く行わない、特段の基準を持っていないということが説明をされ、大変驚いているわけです。
国交省、確認ですが、今申し上げているような放射線環境下での作業について、日本語能力について特段改めて基準を設けているわけではありませんと先日説明されていますが、そのとおりですね。
○政府参考人(北村知久君) お答え申し上げます。
建設分野に特有の専門用語に関する能力につきましては、建設分野の技能試験を日本語で実施することで確認することとなり、その試験の内容については、現在、業界団体において検討しているところです。
一方で、今回のその建設分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領では、労働安全衛生法に基づく特別教育又は技能講習等が必要とされる業務については、受入れ企業は、特定技能外国人に対し、当該教育又は講習等を修了させなければならないということを明記してございます。
除染等の業務につきましては、特定技能外国人を従事させる場合には、いわゆる除染電離則に規定されている除染等業務に係る特別の教育を受入れ企業が行う必要があり、当該教育を行わなければ特定技能外国人を除染等業務に従事させることはできません。
国土交通省としては、関係省庁や業界団体とも連携しつつ、適切に対応してまいりたいと思います。
○仁比聡平君 答えてくださいよ。だから、原発なり除染なり、そういう作業についての日本語能力というのを国交省としては試験で確かめないでしょう。
○政府参考人(北村知久君) お答え申し上げます。
委員御指摘のとおりに、その除染とかについての専門的な能力を試験で確認するということはいたしてございません。
ただ、今申し上げましたとおり、こういう講習をしっかり受けさせるということを義務付けることによって、必要な知識は身に付くものというふうに考えてございます。
○仁比聡平君 必要な知識が身に付くって、一体、現場の廃炉作業だとか除染作業でどれだけ労働安全衛生法違反の実態がありますか。
お手元に、厚労省の福島労働局が今年三月二十九日に発表された監督指導結果の概要、お配りしていますが、廃炉作業で監督実施事業者数のうち違反したのは五三・一%、除染作業においては六一・四%ですよ。
その違反の中身について、もちろん経年で変化はありますけれども、例えば、二枚めくっていただくと、労働安全衛生法で、電離健康診断、これの実施をしていないとか、その結果を報告しなければならないのにしていない、あるいは、被曝線量の測定結果の確認、記録そのものをしていない、こうした事業者が御覧のようにたくさんあるじゃないですか。除染作業の中身で違反の実態でいいますと、二枚更におめくりいただくと、作業場所の事前調査を義務違反というのが二十一、放射線量の測定義務違反四件、除染電離健康診断の結果の報告をしていない、二十一事業者もあるわけですよ。
これ、厚労省にお尋ねをしますが、そもそも、低線量被曝だったり内部被曝だったり、そうした危険というものを労働者、従事者そのものがしっかり認識をして、だからこそ事業者は何が義務付けられているのか、安全衛生法自体に何が義務付けられているのかということをちゃんと従事者の方が認識するということがなかったら身が守れないじゃないですか。なし崩しにそんなやり方やらせるなんて、これ、とんでもないんじゃないですか。
○政府参考人(椎葉茂樹君) お答えさせていただきます。
本年四月に創設されました在留資格「特定技能」の枠組みにより日本国内で活躍される外国人の方々でございますが、先生の御指摘のとおり、その大半は五年経過後に帰国されること、また日本語それから我が国の労働慣行に不慣れであることといった点を勘案する必要があると考えているところでございます。
現状では、御指摘のような業務に特定技能外国人の方々に従事していただくか否かにつきまして極めて慎重な検討を行う必要があると考えておりまして、本日、厚生労働省から東京電力に対しまして、本件に関する慎重な検討と検討結果の報告を求める旨、文書で通知したところでございます。
○仁比聡平君 本日そのような通知をしたと、そのこと自体は前向きに捉えたいと思いますけれども、慎重な検討を求めるんじゃなくて、制度をゆがめてこうした作業に受入れをしようなんという、この方針そのものを撤回をさせなきゃ駄目ですよ。
もう大臣の答弁いただく時間ありませんけれども、今私が申し上げている立脚点というのは、秋以降、国会で徹底して議論してきたことじゃないですか。立場は違うけれども、閣議決定をして、全体像を示して、それ以上の受入れはしないと言ってきたじゃないですか。そこに書いてもいないことを、日本語能力を確認をする、労働者が身を守る、その基準さえ定めていないのに、法務省も所管省庁もその基準さえ持っていないのに、東電に受入れを委ねるなんというようなことは絶対にあってはならない。
断固として撤回をさせるべきだと強く申し上げて、質問を終わります。
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