5月22日決算・水俣資料

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
私は、水俣病問題について、全ての被害者を救済する国の責任について、今日、大臣にお尋ねしたいと思います。
水俣病は、御存じのとおり、公害病の原点ですが、いまだに被害者が救済をされないという中で、今日質問をさせていただくに当たって、解決を見ずに亡くなられた被害者、患者の皆さんの御冥福を心からお祈りを申し上げるとともに、なお現在苦しんでおられる多くの、そして全ての被害者の皆さんにお見舞いを申し上げたいと思います。
まず、環境大臣の基本認識をお尋ねしたいと思うんですけれども、今年の二月八日付けで原田大臣宛てに、水俣病被害者・支援者連絡会、この団体から要望書が出されております。この団体は、我が国の水俣病被害者の患者団体そして支援団体が言わば一堂に会して、今、完全な解決を求めて運動をしておられるわけですけれども、水俣病互助会、チッソ水俣病患者連盟、水俣病被害者の会、水俣病不知火患者会、水俣病被害者互助会、水俣病被害市民の会、そうした会の代表の皆さんから大臣への要望書の冒頭にこうあるんですね。
水俣病の公式確認から六十三年、新潟水俣病公表から五十四年を経過しようとしています。しかし、いまだに水俣病患者の救済さえめどが立たない事態が続いています。水俣病に係る裁判は全国で十件、約千八百名にも及ぶ患者たちが被害の補償を求めています。水俣病の被害者たちは、体と心の苦しみを背負いながら、今も闘いを続けています。高齢化する被害者たちをこのまま放置することなど、決して許されるものではありませんという要望なんですが。
まず、いまだ水俣病の救済を求める被害者が多数存在しているというこの現状を大臣はどう御認識していらっしゃるんでしょうか。
○国務大臣(原田義昭君) 御指摘のとおり、水俣病は、環境が破壊され、大変多くの方が健康被害に苦しまれてきた我が国の公害、環境問題の原点というような大事な問題であると認識しております。政府としては、長い時間を経過した現在もなお、公害健康被害補償法の認定申請や訴訟を行う方が多くいらっしゃるという事実も重く受け止めなければならないと思っております。
環境省としては、地域の人々が安心して暮らせる社会を実現するために、公健法の丁寧な運用を積み重ねることはもとより、地域の医療、福祉の充実や地域の再生、融和、振興に引き続きしっかりと取り組んでいかなければならないと、こういうふうに思っております。
○仁比聡平君 重く受け止めなければならないとおっしゃりながら、被害者の訴え、救済を求める裁判に対して徹底的に争っておられるのが環境省であり政府なんですよ。この政府が被害者を切り捨てようとしている線引きにこれ合理性は全くないんですね。
資料の一枚目をお配りをいたしましたが、それも見ながら御覧いただいたらと思いますけれども、水俣病被害者救済特別措置法というのがあります。これ議員立法で、二〇〇九年にこの国会で成立をいたしまして、二〇一二年にその申請期限が打ち切られるという下で一定の救済が図られてきたわけです。その特措法の成立をという動きになっていったのは、二〇〇五年に提訴をされたノーモア・ミナマタ訴訟、この解決ということが大きな政治課題にもなる中でのことでした。その裁判は、二〇〇四年に、いわゆる関西訴訟の最高裁判決によって、国、県の法的責任が明白に断罪をされたという下で起こってきたものなんですけれども、その下で、資料を御覧いただきますように、五万五千九百五十人という方々が合わせて救済を受けました。
その救済範囲というのは、政府が対象とした指定地域、これは元々グレーの資料なんですが、うまくコピーが写っていませんけれども、その対象地域を超えて、イエローの地域、指定地域外、対象地域外の地域に大きく広がっております。加えて、昭和四十四年以降の出生者、若い世代にも救済対象者が広がっているわけですね。
大臣にお尋ねをしたいのは、この事実というのはチッソが排出したメチル水銀による被害がどれほど広く健康への深刻な被害をもたらしてきたかを示しているのではないかと思うんですが、その御認識はいかがですか。
○国務大臣(原田義昭君) この健康の被害をどこまで補償されるかにつきましては、今日までの様々行政上の措置、また裁判上の判断で進められているというふうに思っておりまして、いまだにそれについて悩んでおられる方、疑問を感じておられる方、たくさんおられると思いますけれども、それこそまさに訴訟等の法的な手続の中で議論されているものと、そう思っておりますので、そこの部分については、また私ども、しっかりまた誠実に対応しなきゃいけないと、こう思っております。
○仁比聡平君 悩んでいる、疑問に思っている、そうした被害者の声に応えなきゃいけない、誠実に対処しなきゃいけないと。悩んでいるというよりは、それは苦しんでいるんです。誠実に対応しなければならないとおっしゃりながら、裁判手続で被害を認めずに、徹底してその救済を拒んでいるのが大臣が今責任を持っておられる環境省なんですよ。
そもそも、国の法的責任というのはどんなものなのかと。一九五六年、昭和三十一年にチッソ株式会社の附属病院から類例のない疾患が発生したと水俣保健所に報告をされたというのが、六十三年前の公式確認ですね。けれども、環境異変や人体への被害というのは、これ戦後間もなくから現れていたわけです。
資料の二枚目に、水俣市の協立クリニックの高岡医師が作成された昭和の水俣病の歴史、水俣病における認定救済患者数という図を配っておりますが、一九四〇年には二十六歳の男性が手足のしびれで発症して、視覚障害、歩行障害を起こして翌年に亡くなっている。四三年には十七歳の男性が発症して狂騒状態となり、一九四七年には亡くなっているというような事態が既に起こっていたわけですね。
そして、遅くとも、一九五九年、昭和三十四年には、チッソは自ら猫実験というのを行って、工場からの排水が原因だということを認識をしていました。ところが、チッソはその後も増産に次ぐ増産を行って、昭和四十三年、一九六八年に千葉県の五井に工場を造って生産体制が整うまで、ずっと垂れ流し続けたわけです。
ですから、高岡ドクターが描いていらっしゃるとおり、この間に、潜在的、顕在的な、どちらかは問わずですね、患者数というのはどんどん大きくなっていったわけですよ。ですから、大臣も患者さんにお会いになられたことあるかもしれませんが、チッソがもっと早くに排水を止めてくれたなら私の体や家族の体はこうはならなかったのにと、そういう声が出るわけでしょう。
ところが、国は、この事実を知りながら、県とともに患者を抑え込んでチッソの増産を擁護し支援する、そうした態度に取られた。だから、最高裁判所は、この被害を発生させ拡大をさせたという国、県の責任を断罪をしたわけですね。国が背負っている責任というのはそういうものじゃないですか。
その下で、国が今、裁判において示しておられる態度というのは、資料の四枚目を御覧いただければと思いますが、救済策に様々な分断、差別をもたらしてきました。
行政認定患者という、一九六九年以来現在まで二千二百八十二人という認定をされています。この行政認定が余りにも狭いと、だから救済をということで集団的に提訴された裁判の闘いの中で、一九九五年の政治解決策というのが行われ、一万千五百三十七名の救済が図られました。けれども、これにとどまらず、二〇〇四年の最高裁判決を受けて、ノーモア・ミナマタ一次訴訟で二千七百九十四人、その中で、先ほど確認をしたように、特措法の救済で合わせて五万五千九百五十人という救済対象者がいるわけですね。
この救済対象となった全てで六万九千七百六十九人、およそ七万人ですが、この方々は、水俣病、つまり原因企業チッソが排出したメチル水銀と関係のない人々だなんということはあり得ませんよね。ならば、全ての方々を救済すべきではありませんかね。
○国務大臣(原田義昭君) 歴史的にお話をいただいたところでありますけれども、政府といたしましては、その時々にできる限りの努力をしてまいりました。法律も作り、長い時間を経過した現在もなお、公害健康被害補償法の認定申請や訴訟を行う方が多くいらっしゃるという事実を重く受け止めなければならないと、こういうふうに思っているところであります。
環境省としては、地域の人々が安心して暮らせる社会を実現するために、繰り返しますけれども、公健法の丁寧な運用を積み重ねることはもとより、地域の医療、福祉の充実、地域の再生、融和に引き続き取り組んでいかなければいけない、こういうふうにまた思っているところでございます。
○仁比聡平君 大臣、私の問いにお答えになっておられないんです。
少し歴史を長く御紹介をしましたので質問の焦点が不鮮明だったかもしれませんが、つまり、そのような裁判、国は被害を否定しようとする、しかし、患者や支援の運動が大きく広がって医学的にも解明が進むという中で、行政認定、つまり公害健康等補償法に基づく政府の認定患者以外に、九五年政治解決、それからノーモア・ミナマタ訴訟の勝利和解の救済者、特措法の救済者が六万人を超えていらっしゃるわけですね。この方々はチッソが排出したメチル水銀と関係してこの被害を受けたに違いない、そうでなければ水俣病被害者として政府が救済するわけないわけですから。だから、水俣病被害者でしょうと、チッソのメチル水銀の排出と無関係ではないでしょうということをお尋ねしているんです。
○政府参考人(梅田珠実君) お答えいたします。
平成七年の政治解決、そして水俣病特措法も、公害健康被害の補償等に関する法律に基づく判断条件、これを満たさないものの救済を必要とする方々、このような方々を対象者として受け止めをし、救済措置が講じられたものでございます。したがいまして、救済対象となった方々が水俣病問題と関係がないという認識には立っておりません。
しかしながら、いずれの方々も差別や偏見を受けることがなく地域で安心して暮らしていける社会の実現に向けて、今後も真摯に取り組んでまいりたいと考えております。
○仁比聡平君 当たり前のことを問うているのに、大臣が答えることができずに環境部長が出てきて答弁をされた上に、水俣病問題と無関係とは考えていないと、答弁をまたごまかされる。
私はそんなことを聞いているんじゃないんです。チッソが排出したメチル水銀の結果起こっている被害でしょうということを問うているんですよ。部長、いかがですか。
○政府参考人(梅田珠実君) お答えいたします。
平成七年の政治解決におきましては、水俣病とは判断できないがボーダーライン層に対して何らかの対策が必要という審議会の指摘を受けて、そのような方々を対象とし、また、水俣病特措法におきましては、公健法に基づく判断条件を満たさないものの救済を必要とする方々、これらの方々を水俣病被害者として受け止めをし、その救済を図るという、そのような方、このような立場で、対象として対策を行ってきたところでございます。
○仁比聡平君 そんなふうに言葉をごまかされても、水俣病被害、つまり、原因企業チッソが排出をしたメチル水銀による健康被害だからこそ、社会的な大問題となり、救済も前進をさせていっているわけですよ。今の部長がおっしゃるような環境省の論理だけを振り回して、というのは、つまり、昭和五十二年につくった判断条件に金科玉条のようにしがみついて、被害者を水俣病患者ではないといって救済を拒否するというのは、その態度はもはや私、無意味だと思うんですね。
昭和五十二年判断条件に当てはまって公健法上の救済を受ける被害者の方々いらっしゃいます、もっといらっしゃると思うけれども。その五十二年判断条件に当てはまらない方々もメチル水銀による健康被害というのを受けているじゃないかということが、例えば裁判ではもうはっきりしていますよね。
二〇〇四年の最高裁判決は、四肢末梢優位の感覚障害のみで水俣病罹患は認められると判決をしましたし、例えば二〇一七年の十一月二十九日に新潟水俣病行政訴訟の東京高裁判決がありますが、メチル水銀の暴露歴があり、それに相応する四肢末梢優位の感覚障害が認められ、その感覚障害が他の原因によるものであることを疑わせる事情が存しない場合は、その感覚障害はメチル水銀の影響によるものである蓋然性が高いと言うべきであると。これ当然ですよ。そうした判決を支えてきた被害の実態の解明というのはどんなものなのかと。
資料の三枚目を、大臣、御覧いただきたいと思うんですが、先ほど来御紹介申し上げている水俣協立クリニックの高岡ドクターによるメチル水銀暴露の程度と健康障害の重症度という図なんですが、つまり、感覚障害が起こる責任病巣というのは、これは中枢神経なんですよね。脳なんですよ。だから、メチル水銀の暴露が重ければ重いほど、公式確認当時に国民の皆さんがよく覚えていらっしゃる劇症、重症の被害者の方々があります。
そして、先ほど来環境部長も言われる判断基準、これはおおむねハンター・ラッセル症候群と言われる症状の複数の組合せを求めるという判断基準だと思いますが、これは、四肢の感覚障害、運動失調、難聴、言語障害、求心性視野狭窄、震えなどの共通の症候群だというふうに言われている。そうした被害者の方々は当然いらっしゃいますよ。けれども、メチル水銀の健康被害というのはそこにとどまらず、むしろその基礎として広い感覚障害のみという症状がある。
しかも、この間の研究で、その下の図にありますが、二〇〇九年、千人の被害者の方々を検診をされた結果から、三人に二人は一九六八年以降にそうした症状を発症するという事実を解明をされました。つまり、遅発性というのはあり得るということです。加えて、中枢神経細胞障害のメカニズムがこの間解明をされてきて、症状が変動するということは、これ医学的な根拠があるんだということがはっきりしてきた。しかも、低濃度のメチル水銀であっても、これがどれだけいかに強い毒性を持っているかということがこの軽症から無症状の間に、高岡ドクターが胎児、小児、高感受性集団への影響とお書きになっているように、水俣病被害によって生まれてくることができなかった命が多数あると。多くの被害者が流産を繰り返しているし死産を繰り返す、そうした深刻な被害があって、当然、そうした被害者たちは生まれてこないんだから救済対象になっていないじゃないですか。こうした病像というのが裁判を支えてきた医学的な理解ですよ。
そこで、大臣にお尋ねしたいと思うのは、こうした水俣病の確認といいますより、発生以来、膨大な被害者を見てきた医師、医学者の解明に対して、これを否定するような、多数の検診を行い調査を行ったことというのはあるんですか。データに基づいて、この私が今申し上げた、素人なりに申し上げたこうした病像を否定するという調査研究を行ったことが一度でもありますか。
○政府参考人(梅田珠実君) お答えいたします。
様々な民間のドクターの方々、調査研究をされているということは報道等で承知しておりますが、調査研究の詳細は承知しておりません。
しかしながら、平成二十一年に制定された水俣病特措法の規定等に基づきまして、政府といたしましては、メチル水銀が人の健康に与える影響を把握するための調査等の手法の開発を図ることとしておりまして、現在、着実に取組を進めているところでございます。
○仁比聡平君 環境部長がまたとんでもないことを言うので、もう条文読んでください。水俣病救済のその特措法ですね、三十七条一項、これ、部長、何と書いてありますか。
○政府参考人(梅田珠実君) 御指摘の水俣病特措法の三十七条、調査研究に関するものですが、「政府は、指定地域及びその周辺の地域に居住していた者の健康に係る調査研究その他メチル水銀が人の健康に与える影響及びこれによる症状の高度な治療に関する調査研究を積極的かつ速やかに行い、その結果を公表するものとする。」となっております。そして、それに関して手法の開発を図るということとなっております。
○仁比聡平君 という答弁を二〇〇九年の法成立のときのこの参議院の審議以来ずっと言い続けているんですよ、十年間。その間にどれだけの被害者が苦しんで裁判を闘っているか。裁判に手を挙げるなんて普通の人できませんからね。そこを大臣はどう認識しているのかということなんですよ。
今のような態度を取りながら、自分たちは住民、被害者についての健康調査をまともに行わない、熊本県知事が要求をしたことのある、要求をしてきた悉皆調査、これを行わずに、実際には切り捨ててこられたわけです。
資料の一枚目をもう一度御覧いただきたいと思いますけれども、対象地域による線引きというのは一体どういうものなのかと。
このイエローの対象地域外と言われるところに四角く囲んであるのは、不知火患者会の会員さんで特別措置法の救済を受けた方なんですよ。例えば姫戸町というところ、現上天草市ですけれども、ここに七十九人いらっしゃる。同じように暮らしてきた方が、ノーモア・ミナマタ第二次訴訟として百六十七名いらっしゃるんですね。
実際には、この地域は水俣市から離れているように見えますが、実際に船に乗って水俣湾の沖まで漁に行っていましたし、例えば芦北の漁師さんたちがここに大量の魚を積んで港に着けたりしてきました。これ、劇症患者も当時あったのではないか。猫の狂い死にというのを記憶しておられる方もあるんですけれども、そうした下で、この百六十七名、これは二〇一五年八月時点のものですけれども、その原告の被害者性を国は徹底して今争っておられるわけです。ほかにも、そのようなことになっているわけですが、この対象地域の線引きというのはもはや全く合理性がないものだと私は思うんですね。
先ほどの高岡ドクターの示す、水俣病とは何かというところを見ればそれは明らかですが、加えて、二〇〇四年から二〇一六年にかけて一万人を超える水俣病被害者の検診をされて、その結果について、いわゆる一万人検診記録というふうに言われていますが、朝日新聞と共同で医師団が分析をされました。
救済対象地域に一年以上居住歴がある千八百五十四人と一年以上の居住歴はないという千六百十九人を比べると、症状の現れ方はほぼ同じなんですね。うまく話せないというような言語障害だったり、あるいは難聴だったり運動失調だったり、それから感覚障害、この出方というのは対象地域にいる人とそうでない人と全く同じなんですよ。
汚染されるはずのない奄美大島と比べたら、これはもう格段の差がある、当たり前ですよね、これ。それを否定するような調査、これはされてこられましたか、部長。
○政府参考人(梅田珠実君) お答えいたします。
御指摘の民間医師団が行った調査の詳細については承知はしておりません。したがいまして、検診時の所見の記録ですとか検診の方法や分析の在り方について、情報が不十分な中で評価することはできませんので、コメントは差し控えさせていただきたいと存じます。
○仁比聡平君 私は、医師団の研究について評価せよと言っているんじゃないんですよ。あなた方がやってきましたかと言っているんです。
○政府参考人(梅田珠実君) 御指摘の線引きに関してのお尋ねですが、水俣病特措法の対象地域や出生年、これはノーモア・ミナマタ訴訟において裁判所が示した和解所見を基本に、訴訟をしなかった団体との協議も踏まえて定められております。
また、対象地域外の方や昭和四十四年以降に生まれた方でも暴露の可能性が確認されれば救済の対象とすることとされておりまして、関係県において丁寧に審査がされてきているものと承知をしております。
○仁比聡平君 そうやって、協議に基づいたと言って自らを正当化しようとしているけれども、そうやってあなた方が引いた線引きが全く合理性がないから、この第二次訴訟において、提訴以来、二〇一三年の提訴ですから六年間も、熊本でも近畿でも東京でも新潟でも、被害者たちが苦しんでいるんです。その裁判を最大長引かせているのは、今の部長を始めとした環境省の応訴態度ですよ、大臣。
これ、一番最初から、今申し上げているように、不知火患者会で救済された人というのは分かっていますから、同じように暮らしてきた人が、ここの町に暮らしてきました、同じように生活しています、同じように魚食べてきたんだから、だから暴露されているに決まっているじゃないか、だったらば、同じ症状が認められれば水俣病被害者として同じように救済されるべきじゃないかと。
ですから、不知火患者会などに参加をしておられる方以外の、当然特措法救済を受けているわけですから、その方々の情報を明らかにしてくださいということが求められてきました。皆さんが応じないものだから、政府が応じないものだから、だから裁判の争点になって、大阪地方裁判所には二〇一六年に文書送付嘱託というのが申し立てられました。裁判所は、当然、当裁判所は本件の争点の審理に資すると考えるといって、その送付嘱託、情報を出しなさいという決定を二〇一八年の三月に行ったんですが、その後、やっと国が、あるいは県が裁判所に提出したのは、この間の三月のことなんですね。
その裁判の審理の中で争われたのは、大臣、それから議場の皆さん、今ここで私が環境部長と議論をしている中身ですよ。既に救済した人たちと同じ症状なのに水俣病患者じゃないと、なぜかというと、昭和五十二年の判断条件に合わないからだと、そんなことを言って、出せる資料も出さない。裁判所は、当たり前のように、それは審理に必要でしょうという決定をして、国、県、お出しになったわけですが、この間、裁判だけでいっても三年を超えているでしょう。何でこんなに苦しめるんですか。そんな争い方はやめて、速やかに被害者を救済すると、そうした態度に立って、支援、救済の枠組みそのものも、私、考え直すのが大臣の当然の責任だと思いますよ。
時間が迫ってきて、一問しかお尋ねができる時間がないでしょうから、ちょっと認識を併せてお尋ねしますけれども、資料の八枚目、九枚目に、この間政府が原因企業チッソに対する債務の返済猶予を行っているという記事を紹介しました。今申し上げてきた水俣病特措法に基づく未認定患者に対する一時金などのために、県債として九百九十三億、これチッソは借りなきゃいけなかった。これの当然利子が付くわけですが、返済期限が今年度から始まる。ところが、これを返済できる見通しが立たないと。以前からの公的債務、これを先行させるということだけでも、それも難しいという状況の中で、とうとう無利子で、各年度判断するということだけれども、返済猶予しましょうと。今年はやれるのかもしれない、払えるのかもしれないけれども、今の特措法の債務というのは、これ返済には至らないんですよ。
こういうチッソの支払能力にひも付けられた枠組みでは、全ての被害者の救済というのはこれできないじゃないですか。こういう補償枠組みによって全ての被害者の救済が限定されてはならないと、新たな支援枠組みをちゃんとつくらなきゃいけないと思いますが、大臣、最後、一言いかがですか。
○国務大臣(原田義昭君) 非常に大事なことを歴史的な状況に遡って議論されたことは本当に有り難いことだと思っています。
その上で、私どもは、先ほどから申し上げましたように、その時々にできる限りの努力をしてまいりました。法律を作り、そしてそれに当たらない人は被害者救済という形で行政措置もとってきたところであります。
今委員が、それに漏れた人がたくさんいて、その上で、その人たちはどうするかと、それは結局訴訟に訴えて、それしか方法がなかったと、それを三年間やったけど何の変化も見られないと。
先ほど、委員が争うという言葉を何回もおっしゃいましたけど、別にこれは、政府はそれを否定しようとしてやっている訴訟でも行政的な議論でもありません。それは、皆さん方の意見をしっかり聞いて、そして私どもが今基準として考えるところ、線引きという言葉がありますけど、物というのはどこかでやっぱり線を引かなきゃならないんです。
ですから、今言いましたように、今に出てきた病状と過去の認定された病状との間、あるいは似ているかもしれないし、あるいは違っているかもしれない。そういうことも含めて、しっかりとした研究体制でそれを見てもらうということが今政府がやっているところなんです。
ですから、そういう意味では、争うという言葉はいかにも頭から否定しているかのようなことを言っておられるようですが、決してそういうことではありません。私どもは、皆さんたちのお話を、意見を本当に誠実に聞いた上で、それが私どもが今まで法律で作った基準、さらには訴訟で、行政訴訟で、処分で作った基準等々を開きながら、しかし、今の段階でそれをどう見るかということについては真剣に検討しているということをまず御理解いただきたいと思います。
その上で、今、チッソ株式会社の補償については、私どもはその補償金をきちっと払うということを最大の仕事と考えております。株式会社ですから赤字になることもあると思います。そういう意味では、その分について政府が特別な融資を、ないしはそれを、支払遅延を認めているというのも、一にも十にもその被害者に対する損害を払わなきゃならないというその法的な義務を守ろうとしていることであります。
今委員が本当に思いを込めて訴えられたことは、私どもは本当に十分理解した上で、さらに改善することがあれば努力いたしますし、ただ、私が申し上げましたことをしっかりまた御理解いただきたいなと、こう思っております。
冷たいようですけど、どうぞよろしく御理解いただきたいと思います。
○仁比聡平君 大臣、真剣に検討しているんだとおっしゃった大臣の言葉を是非実らせていただきたいと思います。
現実には、今日明らかにしたように、まともな調査研究もせず救済を拒んでいるのが政府の態度ですから、これ以上被害者を苦しめることは許さず、全ての被害者の救済のために新たな枠組みを是非ともつくっていただきたいということをお願いして、質問を終わります。